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【談話】国民生活優先の経済運営、人間性尊重の労働への転換の視点ない企業利益優先の「骨太方針2019」

2019年6月26日
全国労働組合総連合
事務局長 野 村 幸 裕

 政府は6月21日、「経済再生運営と改革の基本方針2019について」(骨太方針2019)を閣議決定した。この方針は、「経済再生を最優先」した「アベノミクス」は、「局面を打開することに成功した」としている。そのうえで「社会保障の充実と財政健全化にも資するよう」「全世代型社会保障の構築に向け」10月の消費税増税を強行することを決定した。しかし、「下方リスク」があることを認めており、経済への影響を2兆円程度に抑制したうえ、2019予算において2.3兆円の措置を盛り込んだとしている。しかし、消費税増税を前提とした方針では「経済再生」も「改革」も実現できない。景気悪化のもとで増税は、格差を拡大し、労働者・国民の生活を冷え込ませ、国内消費の6割弱の個人消費を抑制し、日本経済を低迷させることとなる。
 さらに重視する視点として@潜在的成長率の引き上げによる成長力の強化A成長と分配の好循環B誰もが安心して暮らせる社会を挙げている。しかし、潜在成長率(資本・生産性・労働力をフルに利用した場合に達成される、仮想上の成長率。)の引上げでは、労働力の総体を増やす、即ち、賃金の引き上げや労働時間の短縮ではなく、Society5.0による生産性の飛躍に依拠している。この10年間の一人当たりの生産性が約2割上昇しているにも関わらず、実質賃金は2%減少している事実に背を向けた視点では持続的経済は発展しない。さらに成長と分配の好循環では「企業収益を拡大しつつ」と企業利益を優先し消費の拡大を賃金の増加を通じて図るとしている。企業利益は必要であるが低下する労働分配率の改善に触れていない。第3の視点は人材としての「人づくり革命」を繰り返し、労働者の労働を通じた社会参加や働く意義に触れることなく、企業のための労働を求める視点となっている。

 また、社会保障では「持続可能な社会保障制度」とし、「制度」の持続性は求めているが、具体的な内容は病床の削減や医学部定員削減、自治体の国保料減免に対する「早期解消」を求めるなど削減方針である。しかも民間参入をすすめようとしている。、「給付と負担の見直し」は参議院議員選挙後の検討としている。国民の批判を避けた結果である。全労連含め労働者や国民の議論への参加を保障すべきである。
 このような骨太方針の誤りは、第一に現状の経済情勢を正確に把握していないこと、第二に国民である労働者の生活より、企業の利益を優先していること。第三に経済を循環ではなく「利益」「儲け」づくりに置いている。内部留保を増やし続けている経済は底力や自力を弱めていること繋がっている。
 こうした中で、就職氷河期世代プログラムや最低賃金、東京一極集中の是正などに触れている点はこれまでの運動の成果であり、国民世論に応えている。しかし、具体化はこれからであり、労働者の実態を反映する必要がある。また、最低賃金については中小企業等に対する「思い切った支援策」、下請中小企業振興法の徹底を含め「取引関係の適正化」を進め「取引対価への単価の円滑化」などを生産性の向上を要件とすることなく進めることを求める。さらに「加重平均1000円」ではなく、直ちに最低1000円、全国一律最低賃金制度の確立を求める。

 今、労働者は、「低賃金」「長時間労働」「年金2000万円不足」など現在および将来の不安を抱えている。労働者・国民の生活の向上、経済的格差を社会的格差にしない政府の役割を発揮すべき時である。労働者・国民の税財政運営への転換を求め、参議院選挙で奮闘すると共に、政策づくりの共同も含めて検討する決意である。

以   上

 
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