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【談話】ILO総会での「仕事の世界における暴力とハラスメントの除去」に関する条約採択について

2019年6月26日
全国労働組合総連合
事務局長 野村 幸裕

 6月21日、ILO(国際労働機関)は第108回総会において「仕事の世界における暴力とハラスメント」に関する条約(以下条約)および勧告を賛成多数で採択した。
 総会では、ILO創立100周年を記念し、「2019年の仕事の未来に向けた記念宣言」(以下宣言)も採択した。宣言は、「仕事の世界が変容」する中で、さらに次の100年を見通して、「仕事の未来のための人間中心アプローチ」を推し進めるべきと唱え、◇機会及び待遇における男女平等の実効的な実現、◇効果的な生涯学習と全ての人への良質な教育、◇全ての人に開かれた包括的で持続可能な社会的保護(社会保障など)の機会、◇労働者の基本的な権利の尊重、◇充分な最低賃金、◇労働時間の上限、◇労働安全衛生、◇ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を促進し、生産性を高める政策、◇適切なプライバシーと個人データの保護を確保し、プラットフォーム労働を含み、仕事のデジタル変容に関連した仕事の世界の機会と課題に対応する政策と措置などの具体的な行動を呼びかけている。 
 宣言にも示される通り、世界各地でジェンダーに基づく差別、ハラスメントの根絶が叫ばれる一方、雇用の劣化が進み、非正規雇用や雇用に依らない働き方が広がる中で、雇用されている労働者に限らず「仕事の世界における」ハラスメントを禁止する国際条約が採択されたことは、今後の労働運動の新たな指針が示される歴史的な成果である。

 条約は、暴力とハラスメントを「ジェンダーに基づくものを含めた身体的、精神的、性的、経済的な危害をもたらす可能性のある容認できない行為と慣行」と定義し、その適用範囲は非公式経済を含めたすべての分野における仕事に関連し、仕事に起因して起きるものとし、暴力とハラスメントを法律により禁止することを盛り込んだ。また前文には、仕事の世界における暴力とハラスメントが人権侵害であること、ジェンダーに配慮したアプローチが不可欠であること、ドメスティック・バイオレンスが雇用、生産性に影響を与えると指摘している。
 また条約は、契約上の地位にかかわらず、あらゆる労働者及び従業員を保護することを目指し、研修生やインターン、見習い実習生、雇用契約が終了した労働者、ボランティア、求職者、求人広告への応募者なども含むものとしており、さらに、「使用者の権限、義務、責任を行使している個人」も暴力やハラスメントからの保護対象となり得ることを認めている。ハラスメントに第三者が関連する場合もあることを認め、雇用主には被害防止へ職場で適切な措置を取るように、政府には法律の施行や被害者の救済支援を求めている。内部通報者らが報復を受けることのないような防止策も必要とし、暴力やハラスメントが発生した場合は必要に応じて「制裁を設ける」とも明記した。

 日本政府と労働者代表は条約採択にあたり賛成したが、使用者代表は棄権した。
 今後、5月に成立したハラスメント関連法を運用するための省令・指針が、厚生労働省内の三者構成の審議会で議論され定められる。全労連は、ILO条約が求める水準を指針等に取り込ませる運動を進めるとともに、ILO条約が批准できるハラスメントを許さない禁止規定を盛り込んだ法改正を再度行わせていく運動を大きく広げていく決意である。

以上

 
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