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【談話】歴史の歯車を逆転させる労働者派遣法改悪には断固反対する
− 今後の労働者派遣制度の在り方研究会「報告書素案」に対する談話 −

 8月6日に開催された「第15回今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」では、「報告書素案」が提示された。同研究会は、2012年の労働者派遣法「改正」の際、登録型派遣・製造業派遣の在り方、特定労働者派遣の在り方について検討することが付帯決議されことから設置された。
 政権交代を経て、安倍政権の「成長戦略」の中心課題として「雇用改革」が据えられ、規制改革会議や産業競争力会議でも常用代替防止という基本的考え方の転換も含む労働者派遣法「改正」が取り上げられた。今回の「報告書素案」は、雇用流動化の促進や人材ビジネス活性化などに軸足を置いた内容になっている。労働者代表が参加せず、企業の一方的な主張で進められた規制改革会議などの要望に応えた「報告書素案」が、派遣労働者の権利や労働条件改善とはほど遠い内容であることは、経過からも明らかである。

 「報告書素案」では、労働者派遣が「新規学卒者などの就労先という役割を一定程度担うようになった」とし、(1)派遣労働者の保護、(2)派遣労働者のキャリアアップ、(3)制度のわかりやすいルール化、の3点を「基本的な考え方」として検討したとする。労働者派遣を労働者供給事業禁止の例外としていることからも逸脱し、労働者派遣を雇用政策の一つの柱とする立ち位置であり、到底受け入れることはできない。

 国会の付帯決議で検討が求められた製造業派遣、登録型派遣について、禁止した場合に「労働力需給調整機能が抑制」されるなどとマイナス面を強調し、景気変動の雇用への影響は「派遣労働固有の問題ではない」と切り捨て、禁止に背を向けている。2008年リーマンショックの際に吹き荒れた「派遣切り」の分析も、反省もなしに結論づけられていることを含め、認めることはできない結論である。

 もう一つの課題とされた特定労働者派遣事業の在り方については、派遣労働者を無期雇用する派遣元に限定し、届け出により事業実施を認める方向が出されている。一定の前進と受け止めるが、その結果として特定労働者派遣事業が例外とされ、登録型派遣がよりいっそう広がることに対する懸念は払しょくできない。

 「報告書素案」はまた、規制改革会議等が検討を求めた(1)期間制限の在り方、(2)派遣先の責任、(3)派遣労働者の待遇、(4)派遣労働者のキャリアアップ、(5)派遣先の(派遣労働者)特定目的行為、についての検討結果に言及している。
 「報告書素案」が公表される直前、7月24日に日本経団連が「今後の労働者派遣制度のあり方について」とする提言を行った。その内容の多くが「報告書素案」に影響していることは、検討課題のおき方も含め、疑う余地はないといえる。

 そのことを前提に、以下の点について、問題意識を述べておく。
 第一に、派遣期間については、26業務の規制を廃止することとあわせて、現行1年の期間制限を3年に延長することを求めている。同時に、常用代替防止について、無期雇用の派遣労働者と有期雇用のそれを区分し、前者については期間制限から除外する検討を求めた。また、派遣期間の制限を業務レベルではなく個人レベルとし、常用代替防止のチェックは派遣先の労使に委ねることを求めている。
 このような結論の前提となっているのは、「常用代替防止は派遣先の常用労働者を保護する考え方」という一面的な決めつけの上に立っているからである。派遣労働者の雇用の不安定さや労働者派遣を雇用の調整弁としてしか位置づけない企業の経営姿勢などへの問題関心が薄いことが、このような結論の背景にあるものと考える。

 第二に、派遣先の責任に関しては、団体交渉応諾義務を課すことは「労働者派遣法の範疇ではない」として切り捨てている。商取引である派遣契約では、派遣先企業の優位性は否定できず、派遣労働者の労働条件を直接的に規定しているのが一般的である。その点は全く考慮されておらず、極めて不満な結論である。

 第三に、派遣先企業の事前面接などの特定目的行為について、派遣元で無期雇用されている労働者については規制対象から除外することを求めている。しかし、業績評価等の結果による普通解雇が広がりはじめている現状からしても、妥当性を欠くものだと考える。

 従前から主張しているように、労働者派遣は、業務、期間を厳格に限定することで労働者供給事業となることを避け、派遣先企業の使用者責任を明確にして派遣労働者の雇用、労働条件の安定を図り、労働者派遣事業の実施を免許制度化することなど、事業への業務監督を強めることが必要である。
 労働者派遣の現状が、ピンハネ労働を蔓延させ、労働力を景気の調整弁として位置づけることを当然視する風潮を強めている。このような雇用の現場でおきている労働者使い捨ての現実を直視し、労働者のくらし、雇用の安定に寄与する労働者派遣法の抜本改正を行うよう重ねて求める。

  2013年8月8日

全国労働組合総連合    
事務局長  小 田 川 義 和

 
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