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【談話】「パートタイム労働対策研究会」報告にあたって

 9月15日に厚労省・「パート労働対策研究会」は、「改正パート労働法(2008年施行、以下パート法)」の検討課題を取りまとめた報告を行った。
 検討は、施行後3年を経過した時点での法令見直しを規定したパート法附則7条に基づき、劣悪な実態の改善を求めるパートタイム労働者の強い要望にも押されて設置した研究会で行われてきた。

 「報告書」は基本的考え方として、「通常の労働者とパートタイム労働者の間に、依然として待遇の格差が存在する中で、パートタイム労働者も含めて労働者の働き・貢献に見合った公正な待遇をより一層確保していくことは、社会の公正という観点から、きわめて重要である。」とし「パートタイム労働者の均衡待遇の確保を一層促進していくとともに、均等待遇を目指していくことが必要」とした。
 そしてパート法の目玉である第8条(差別的取り扱いの禁止)について、その適用要件に該当するパートタイム労働者がほとんど存在しないことを認め、「(今後8条を活用して)改善を進める余地は小さい」と現行法の限界と法改正の必要性を明確にした。また、第9条(均衡待遇の確保)についても、賃金に対する不満・不安が最も高くなっており、「より一層の待遇改善を推進する方策について検討する必要がある」とした。いずれも、この間、全労連の問題指摘に近いものであり、正当な認識を示している。

 しかし、現状認識をふまえた問題解決策となると、「均等待遇の確保」等について「考えられる選択肢」を「幅広く整理」したものにとどまってしまい極めて残念な内容となっている。
 「報告書」では、第8条の適用要件を緩和し、「職務内容が同一であれば差別を禁止する」という積極的な選択肢も提示されているが、逆に、過酷な正規労働者の働き方を基準とした「人材活用の仕組みが同一の場合にのみ差別を禁止する」という、現状の格差を容認する選択肢も併記されている。
 また、「合理的理由のない不利益取り扱いを禁止する」との方法も提示されているが、「合理的理由」の例示には格差を容認・固定化するような要素も含まれており、「大穴」付きの規制となる危険性がある。
 第9条にかかわっては、義務規定にすべき、との積極的意見の一方で、パートタイム労働者の賃金は外部労働市場の影響を受けており安くても仕方がないのだという、企業の言い分をそのまま併記している。その上で、結論的には「(賃金制度等は事業所ごとに多様だから)法律等で一律の基準を設けることには限界がある」として、実効性ある法規制を放棄している。「職務評価」「教育訓練」「通常の労働者への転換」などとあわせ、事業主が自主的に改善計画を策定・推進していくことを誘導するとの結論にとどまっており、不十分と言うほかない。
 また、正規労働者の賃金引き下げによる格差是正や、勤務地限定・職種限定労働者を「別扱い」にして事業所閉鎖や職種廃止の際の整理解雇を認めると言う解雇要件の緩和に言及するなど、きわめて不当内容もある。

 パートタイム労働者の賃金は正規労働者の5割前後であり、キャリアアップも見込めず、勤続を重ねても賃金はほとんど上昇しない。一時金はごくわずかで、多くのパートタイム労働者が年収200万円以下に押しとどめられている。いつ解雇・雇い止めにされるか判らないという雇用不安を抱えながら働かされ、そのことがハラスメントの要因にもなるなど、劣悪な労働条件にすえ置かれている。パート法改正検討で、このような実態に目を向け、労働者の立場に立った改善が強く求められる。
 今後は、労働政策審議会に移っての議論となる。使用者側のまきかえしを許さず、「均等待遇」「働きに見合った公正な賃金を」というパートタイム労働者の願いに応える法改正をかちとるために、学習・宣伝・要請行動をはじめ全労連として全力を挙げていくものである。 

   2011年9月20日

全国労働組合総連合
事務局長  小 田 川 義 和

 
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