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【談話】労働実態に基づく労働者性を認めた最高裁判決を活かそう

 4月12日、最高裁判所は、新国立劇場の合唱団員、INAXメンテナンスの委託労働者について、いずれも労働組合法上の労働者と認定する判決を下した。出演基本契約や労働委託契約という契約の形式論を重視し、労働者ではないとした東京高等裁判所の原判決を全面的に棄却した。今回の最高裁判決は、従来の判例や中央労働委員会の扱いを補強し業務委託契約の実態を重視して労働者性を判断するという立場を再確認するものである。全労連として最高裁判決を評価し、勝利判決を勝ち取るためにたたかい続けた原告に敬意を表する。
 新国立劇場事件では、東京地裁・東京高裁で、いずれも労働者性を否定する判決が出されたため、最高裁では、労働者性を認定したうえで、東京高裁に不当労働行為がなかったかどうかについて差し戻し審理を命じた。INAXメンテナンス事件では、東京地裁で認められた労働者性を、東京高裁が否定した原判決を破棄したため、同社で働く事業請負契約で働くカスタマーエンジニアについて労働組合法上の労働者であることを認め、団体交渉の拒否が不当であると判断し東京地裁判決が確定した。判決では、(1)組織への組み込み、(2)契約の一方性、(3)報酬が労務提供の対価であること、(4)契約履行責任、(5)指揮命令と拘束性の点から、実態に基づき判断し、労働者性を認定した。
 当時の日経連が1995年に発表した「新時代の『日本的経営』」で労働力の流動化が主流となり、労働者の非正規化が急速に進んだ。同時に「非労働者化」もすすめられ、労働者と同様の就労形態でありながら、個人事業主として扱い、労働法制の適用を逃れようとする動きが広がり、全国で120万人を超えると推計されている(厚生労働省労使関係法研究会資料より)。
 「個人請負労働者」は、労働者でありながら、社会保険、労働保険だけでなく、労働諸法制による労働者保護の枠から外され、無権利な状態で不安定な労働に従事している。そのように、弱い立場である労働者が、労働契約書の書面だけで使用者と対等の関係で話し合うことを認めた憲法28条の適用から外されることは、断じて認めることはできない。
 最高裁の判断は、これまでの判決を踏まえ、労働基準法の規定よりも、より広義な規定をもつ労働組合法3条による労働者として、明確に判断したところに重要な意味がある。CBC管弦楽団事件、新国立劇場事件、INAXメンテナンス事件をつないでみると、実態として労働者として使用していながら、契約書面上だけで労働者性を否定することは許されないとする流れができたとみることができる。これは、全国各地で横行している「委託契約」「個人事業主」を口実とした使用者による労働者性の否定の流れに歯止めをかけ、労働者を労働者として扱うことは免れない義務であること、労働組合を通じた適正な労使関係の構築が基本であることを、社会的に広げる契機となるものと確信する。
 そして、労働実態が労働者である「個人事業主」に、憲法28条の労働3権が保障されていることを広く呼び掛け、労働条件改善のために、団結権を行使されることを広く訴える。

2011年4月13日

全国労働組合総連合(全労連)
事務局長  小田川 義和

 
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