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【談話】緊急経済対策の閣議決定にあたって

 政府は10月8日に、2010年度補正予算案の前提となる緊急総合経済対策を閣議で決定した。「円高、デフレ対応」を目的としているが、閣議決定後も円高が進んでいることにも示されるように、その政策効果に対する疑問は少なくない。
 5兆円規模の緊急経済対策は、9月10日の「新たな経済対策」(9179億円規模)に続く新成長戦略実現の第2段階に位置付けられている。雇用対策や医療・介護・福祉対策、地域活性化・社会資本整備と規制・制度改革を柱としており、来年度の予算・税制改革を第3段階として、「日本経済を本格的な成長軌道」に乗せることをめざしている。
 そのような新成長戦略実現の枠組みが明らかにされているにもかかわらず、緊急経済対策は総花的であり、菅政権の政治の方向性が明確になっているとは言いがたい。5兆円の補正予算の規模自体が、自民党が求めた「5兆円規模」を意識したものであり、「地域活性化交付金」は公明党の主張を「丸呑み」したものであることなどが、マスコミ報道されている。
 与党が参議院の過半数の議席を確保できていないという「ねじれ国会」への対応が優先され、野党の政策や主張を取り入れることで補正予算の早期成立を目的化したためである。その結果、例えば三大都市圏での環状線道路建設の「前倒し」契約など、不要不急の公共事業も盛り込まれる「ばらまき」対策となった。

 政府が6月に決定した新成長戦略自体、外需依存のゆがんだ日本経済の改革よりも、企業の成長戦略の後押しが中心に位置付けられている。雇用の安定や、普通に働けばまともに暮らせる良質な雇用の実現、失業者・困窮者の職と住まいの保障、さらには低所得者の生活支援など、労働者・国民の実態をふまえた施策が優先されているとは言い難い。
 新成長戦略の実現をめざす、そのような経済対策を続けていては、労働者の年収が大きく減り、非正規労働者が増加し続ける一方で、大企業の内部留保が増加し続ける日本経済のゆがみを正すことはできない。買いたたきなどで中小零細企業に犠牲を転嫁して競争力を高め、大企業に富を集中させる構造を修正することもできない。

 政府は、新成長戦略実現の第3段階に位置付ける来年度予算で、法人税減税を行うとしている。日本企業の財務状況が「空前のカネ余り」状態にあることは公知の事実であり、先進諸国に比しても公租公課の負担が低いことは、財務省ですら認めているにもかかわらず、法人税引き下げを明言する菅政権の姿勢は理解しがたいものである。
 個人消費拡大による内需の創出が求められているときに、効果が期待できない法人税減税など行うべきではない。政府がいま取るべき施策は、最低賃金引き上げや雇用創出なども目的とした、中小零細企業への積極的な支援策を講じ、雇用の維持、拡大のために積極的な財政措置を講じ、社会保障を拡充して国民の生活不安を緩和し、公正取引を監視するために特別な手立てを講じることなどである。
 新成長戦略に固執せず、労働者と中小零細企業・事業者を中心に据えた施策で日本経済を底支えし、内需中心の経済実現をめざすよう、強く政府に求める。

 2010年10月14日

全国労働組総連合
事務局長 小田川 義和

 
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