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【談話】「新たな経済対策」の閣議決定にあたって

 政府は9月10日、「新たな経済対策」(「新成長戦略実現にむけた3段構えの経済対策」)を閣議決定した。この時期に経済対策を決定したのは、急激な円高と深刻化するデフレに対応するためだとしている。
 「新たな経済対策」は、雇用、投資、消費、地域防災、規制改革の5分野に、予算実額で9,150億円、事業規模で9.8兆円程度の対策を講ずるとした。しかし、その内容は、消費の基盤づくりを口実にした「家電エコポイント」の延長などに予算額の半分(4,500億円)事業規模の8割を割き、緊急な対応が求められている雇用の拡大、維持や中小企対策には予算規模で2割弱の1750億円、事業規模では1割強(1.1兆円)を振り向けているに過ぎない。雇用重視を言明する菅首相の姿勢は、「看板倒れ」に終わっている。

 「新たな経済対策」は、政府が6月に決定した「新成長戦略」を前倒し実施するものである。製造業大企業の国際競争強化など「(企業の)成長」と外需頼みを一つの柱に、公的分野での規制緩和、民営化による「新たな公共」分野での雇用創出をもう一つの柱とする「新成長戦略」は、内需拡大や持続可能な地域経済をめざす政策とは異質なものである。
 そのこともあって、「新たな経済対策」では、円高の深刻な被害を受けている中小企業支援策や農林漁業対策が不十分なものにとどまっている。これでは、地域での雇用拡大や経済再生への期待を持つことはできない。

 雇用についても、新規学卒者の雇用の場の拡大などが強調されるが、5%台に高止まりしている失業者への対策や、雇用の不安定化の要因となっている労働者派遣法の改正、有期雇用規制など労働者保護の強化には一切触れていない。
 そればかりか、円高の要因である投機規制を強化する「取引課税」には触れずに、2011年度実施での法人税率引き下げに言及し、真っ先に財界要望に応える姿勢さえ示している。
 結局、「新たな経済対策」は、供給サイドである大企業の経営支援策が中心であり、自公政治が推し進めた「構造改革」と同様の立場に立つものと言わざるを得ない。
 国民生活の安定による真の内需拡大策に背を向ける経済対策では、円高もデフレも是正することはできず、労働者、国民の生活をさらなる苦難に直面させかねない。
 労働者派遣法改正などによる雇用の安定、質の向上と、社会保障拡充による富の再配分機能強化を中心とした真の内需拡大策を講じるべきである。

 なお、閣議決定では、「新成長戦略実現会議」を政府に設置し、「新卒者就職支援本部」を各労働局に設けることなども決定されている。労働者の労働条件とも密接にかかわる施策の検討では、政労使三者の社会的対話の充実が求められているが、既に設置された新成長戦略実現会議のメンバーは、そのような枠組みとはなっていない。
 これまでの審議会と同様に、批判的意見を排除した構成であり、一部利益に偏った政策決定となることが容易に想定される。そのような不公正な審議会のあり方は直ちに是正するよう、あらためて主張する。

  2010年9月13日

全国労働組合総連合
事務局長  小 田 川 義 和

 
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