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2009年7月29日

目安を乗り越え、生活できる最賃を実現しよう
- 中央最低賃金審議会目安答申にあたっての談話 -

全国労働組合総連合 事務局長 小田川義和

1.本日、中央最低賃金審議会は厚生労働大臣に対し、2009年度地域別最低賃金額改定の目安を答申した。35県については目安を示さず「現行水準の維持を基本」とし、他の12都道府県についてのみ、最低賃金が生活保護を下回っているとして2円から30円の幅での引き上げを求めている。不況のもとでの経営危機をアピールする使用者側の言い分に耳をかし、賃金底上げの時流に冷や水を浴びせた今回の目安は、不当かつ不適切な内容であり、認めることはできない。

2.今年の最賃審議の最大の議題は、日本社会が直面し、緊急に解決すべきワーキングプア問題への対応ではなかったか。多くの非正規労働者が、自助努力だけではまともな仕事と生活を手に入れることができないほど、雇用と賃金の底抜け状態は深刻になっている。そのことは、全国各地の“派遣村”によって、事実として社会に突きつけられた。普通に働けば生活できる賃金を実現する道筋を、生活保護との整合性を求めた改正最低賃金法の趣旨にそって着実に前進させることが、審議会には求められていたはずである。しかし、目安答申はその期待を裏切った。
 問題はそれだけではない。これまで以上に地方と大都市圏との最賃格差をつけたことも見過ごせない。地域間の賃金格差構造は地方から都市部への労働力の流出を生む。それも派遣労働などの不安定雇用としてである。そのことが地方経済を冷え込ませ、職と同時に住まいを失う多くの労働者を生み、今回の経済危機をより深刻化させている。にもかかわらず、多くのC,Dランク地方に最賃据え置きを求めた答申は、新たな事態を直視せず、従来どおりの対応をなぞったものと言わざるを得ない。

3.世界的にみても、今回の経済危機から脱却するためにとるべき手段として、最賃引き上げが重視されている。このような世界の流れに背を向け、確たる証拠もないままに雇用問題を持ち出し、支払能力に過剰に配慮した最賃改定を行っていては、景気回復は遠のくばかりである。むしろ、貧困層増加による経済危機の深刻化さえ懸念される。
 審議会は「支払能力低下論」を前提にするあまり、重大な論点を見誤り、検討すべき課題を議論できなかったのではないかとの疑問がわく。例えば賃金改定状況調査結果が対前年比でマイナスとなったということは、それにあわせて最賃を下げるという筋で読むべきデータではなく、昨年の最賃「大幅引き上げ」でも中小零細企業の賃金コストに影響していないと見るべきである。実際に中小企業団体によるアンケートでも、昨年程度の引き上げでは「ほとんど経営に影響はない」とされている。他方、全労連は、昨年の生活保護の算定方式に多くの問題が含まれていることを再三指摘し、勤労必要経費を含める計算方法などを提案したが、そうした点は審議の俎上にも乗せられていないで、看過されている。

4.全労連は、この間、中央・地方で数次にわたる統一行動を配置し、全国で最低賃金引き上げの運動を粘り強く展開してきた。各単産・地方組織は、署名や街頭宣伝での世論喚起、意見書提出にとどまらず、「最賃生活体験」、「生活保護を活用した最低生計費算定法の検討」、「東北Dブロック最低生計費試算」など、生計費原則重視に焦点をあてた取り組みも行ってきた。
これらの運動の到達を背景に、目安が示されなかった35地方では、格差是正や内需拡大の要求を掲げて地域最賃引き上げを粘り強くせまろう。12地方では、生活保護以下の最賃は即刻解消の運動を強めよう。全国の仲間のたたかいへの集中と奮闘を呼びかける。

以 上

 
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