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【談話】「企業栄えて、労働者は貧困化」の社会は認められない
- 「2008年版・経営労働政策委員会報告」への批判 -

  1. 12月19日、日本経団連は、「日本型雇用システムの新展開と課題」との副題がついた標記の報告書(経労委報告)を公表した。
      「経労委報告」はその冒頭で、「政府・民間による改革が実を結び、わが国企業の足腰は強化」されたとし、「企業活力の維持・向上の実現、ひいては国民の所得や雇用の拡大につなげていくかが最大の課題」とする問題設定をおこなっている。


  2. 企業が栄えれば労働者・国民の生活は良くなるとする「経労委報告」は、その基本的な認識からして誤っている。大企業の業績が5期連続して拡大しているもとでも「貧困と格差」は拡大してきた。「経労委報告」は、「わが国の賃金水準は依然として世界でもトップクラス」としているが、労働者の平均賃金は9年連続低下し、先進国では唯一賃金水準が低下し続けている。こうした事実を意図的に無視し、労働者・国民の生活実態をまともに検証しない机上の論議に終始していることが、「経労委報告」の基本的な問題点である。


  3. 「経労委報告」では、08年春闘にむけた日本経団連の対応課題として、「生産性に見合った人件費設定」と「ワーク・ライフ・バランスの実現」をあげている。前者は、賃金にかかわり、後者は労働時間と雇用にかかわっている。
     賃金では、手取り収入の伸び悩みや個人消費の増勢鈍化への懸念も表明し、「企業と家計を両輪とした経済構造」の必要性に言及したうえで、企業の支払い能力を基準に、「付加価値額の増加額の一部は、人材確保なども含め総人件費改定の原資」として賃上げを容認することを提起している。相変わらず「市場横断的なベースアップ」は否定しているが、賃上げ容認に踏み込んだ背景は、この間、大企業が業績拡大を続ける一方で、中小企業と地域経済の疲弊、労働者・国民の貧困化、格差の拡大がすすみ、これらに一定の配慮をせざるを得ない状況に追い込まれたことへのあらわれである。


  4. 「経労委報告」は、最低賃金制度の見直しにも言及し、中小企業のコスト増を口実に、「生産性を無視した最低賃金の引き上げ」を一蹴している。しかし、中小企業の生産性を阻害しているのは労働者でなく、単価低減を強要し燃料・原材料高騰の価格転嫁を拒んで、中小企業に負担を押し付けてきた大企業である。また、そもそも最低賃金は生計費を基本に検討されるべきものである。「経労委報告」は、ワーキング・プアと言われる労働者の深刻な貧困状況を生み出している財界・大企業の責任こそ言及すべきである。


  5. 「ワーク・ライフ・バランスの実現」では、「自らのライフスタイルに合った働き方」などの美しい言葉を使いながら、労働法制改悪についての日本経団連の従来の主張を繰り返している。断念に追い込まれたホワイトカラー・イグゼンプション制度の言い換えにしか過ぎない「自主的・自律的な時間管理を可能とする制度」の導入、労働者派遣制度の規制緩和、職業紹介事業の民間開放など、美辞麗句に隠した挑戦的ともいえるこれらの主張は、企業の社会的責任に背を向ける許しがたいものである。


  6. 全労連は、08春闘に向け、積極的なベア要求を掲げ、その実現に向けたたたかいを強調するとともに、最低賃金「時給1,000円」の実現を中心課題とする「なくせ貧困」の取りくみを、単産・地方組織が力を合わせて展開するよう提起している。「経労委報告」は、労働者の実態、要求と真摯に向き合うべきである。全労連は、労働者の深刻な労働実態を明らかにし、国民諸階層との共同もひろげながら、財界の攻撃を押し返す08年国民春闘勝利に向け奮闘する。

2007年12月20日
全国労働組合総連合
事務局長  小田川 義和

 
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