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【談話】地域別最低賃金額を改定するための目安審議にあたって
−ワーキング・プア根絶のため、最賃大幅引き上げを実現せよ−

2007年7月25日
全国労働組合総連合
事務局長 小田川 義和

1.地域別最低賃金を改定するための目安審議が、大詰めを迎えている。7月13日の中央最低賃金審議会において、柳澤厚生労働大臣は、「成長力底上げ戦略推進円卓会議における賃金の底上げに関する議論にも配慮した」調査審議を求めるとの諮問を手交した際、「生活保護施策との整合性」にも言及し、「格差をなくしていくため、従来の考え方の単なる延長線上ではなく、パートタイムや非正規問題などを考慮した考え方で、働く人の賃金の底上げがおこなわれるような議論を」と要請した。第2回の目安小委員会が開かれる本日、全労連としても、あらためて、従来の延長線上ではない、大幅な引き上げを実現するよう、中央最低賃金審議会ならびに目安小委員会に要請する。

2.審議会の使用者委員は、円卓会議でだされた50円の引き上げですら、中小企業に打撃を与え、失業が増えるという。本当にそうだろうか。中小企業の「全従業員」が最賃レベルで働いているわけではないし、支払い能力十分の企業が、最賃レベルの低賃金労働者を活用している実態もある。また、多くの地方では、もっとも低賃金の労働者を活用しているのは自治体である。さらに、実際に地域の小規模企業に聞き取り調査をすると、平均賃金こそ大手より低いものの、最賃より相当高い金額を支払っているケースが多いことがわかる。小規模企業の場合、たった一人の退職でも、熟練の喪失と求人・教育訓練のコストが重く経営にのしかかるため、転・退職抑止もあって、できるだけ高い賃金を支払っているというのだ。労働者を大切にする、こうした経営者の敵は、低賃金労働者を使い捨てにしてコスト競争を仕掛ける経営者だ。使用者委員は、「最賃底上げによる中小企業破綻」説のような、もっともらしい空論に拘泥せず、地域で頑張る小規模企業の経営者を支援する観点で、公正競争ルール確立のためにも、最低賃金引き上げを決断するべきだ。

3.一方、労働者の生活実態からすれば、最低賃金の引き上げは待ったなしだ。上場企業は5年連続の増収増益、株主配当も過去最高を記録するもとで、働いても最低限の生活すらままならない「ワーキング・プア」が増えている。雇用労働者の5人にひとりは、年収200万円以下。貯蓄0の世帯も23%にのぼる。今でも、青年層では失業率が10%近くあり、就労できても半数は低賃金の非正規雇用だ。「結婚できない」「子どもを産めない」「暮らしていけない」といった悲惨な状況が広がり、ネットカフェ難民などのホームレス化も進行している。頼みの綱の生活保護も、餓死者を生むほど冷酷な運用で、自殺者は年間3万人の高水準から下がらない。今の日本には先進国にあるまじき光景が広がっている。貧困労働者の増大は、消費の低迷、地域経済の低迷、少子化の進行、労働モラル低下と企業の「現場力」喪失、家庭崩壊、社会保障の崩壊、社会不安の醸成を連鎖的に起こし、社会の存立を根源から危うくする。至急、低賃金・不安定雇用が蔓延する社会構造を改革する政策の断行が求められている。

4.もちろん、中小企業の経営環境改善も重要である。全労連は、最低賃金の大幅引き上げを先行させつつ、間髪を入れずに、(1)中小企業向けの税負担緩和措置(消費税の免税点数を1千万円から3千万円へと戻す等)を行なう、(2)原材料費・燃料費の高騰だけでなく、最賃引き上げコストを価格に転嫁した場合、大企業は断れないものとする、(3)夕方発注・翌朝納品や金曜発注・月曜納品などの発注には、労働基準法にならって「割増単価」を義務付ける、(4)時間あたり下請単価を1,000円引き上げる、などを実施することを求めている。付言すれば、そもそも最低賃金の大幅引き上げは、中小企業支援策である。低所得者の消費性向は高いが、奢侈品は買えず、地域の中小企業が多くかかわる産業分野の消費を増やし、地域循環型の経済を刺激するからだ。自治体にもメリットがある。生活保護に依存する低所得者の自立を促し、税・社会保障の支え手に変えるからだ。大企業が富を独占する現状を切り替え、中小企業と労働者の手に、適正な配分がまわる経済構造をつくることが、今の日本では重要であり、そのために打つべき最初の手が、最低賃金の大幅引き上げなのだ。使用者委員にはこうした観点や施策もふまえて、最低賃金の引き上げを支持してもらいたい。

5.厚生労働省が、従来のように、30人未満の小規模企業の賃金改定状況調査結果をもって、「上げ幅」を決めるやり方から、「あるべき水準」を議論する方向に一歩踏み出した点は評価できる。しかし、それに関わって「目安審議に際して留意すべき考え方」として示した4つの指標は、はなはだ不十分である。(1)一般労働者の所定内賃金比で37.7%または38.8%への引き上げ、(2)高卒初任給の8割または小規模企業の女性高卒初任給の第1・十分位数への引き上げ、(3)小規模企業の一般労働者の賃金の50%までの引き上げ、(4)労働生産性上昇(5年間で1人当り時間当たり成長力を5割増)を見込んだ引き上げ、など13〜34円程度の上げ幅を示したが、これらは「格差是正」というより、「差別温存」の枠組みだ。しかも、円卓会議が筆頭にあげた生計費(生活保護水準)の視点が欠落している。これでは、今年の諮問の精神を汲んだとはいえない。

6.最低賃金の当面の目標は、すでに社会的に明らかだ。「フルタイム就労で年収200万円、すなわち時給1,000円未満の低賃金労働をできるだけ早くなくす」という要求は、今春闘と国会での審議を経て、全労働団体と多くの政党の掲げるところとなっている。この目標を、単年度で実現することに不安があるのであれば、例えば3年間で1,000円到達などの目標を掲げつつ、今年度の改定額を決めていく、というような目標と展望の見える審議を求めたい。全労連は、ワーキング・プアをなくし、働けば全国各地の誰もがまともな生活ができて当たり前の社会をつくるため、全国の労働者や使用者と共同し、最低賃金の大幅引き上げと全国一律最低賃金制の確立を求めて、さらに運動を強める決意である。

以上

 
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