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2006年12月19日

【談話】企業の社会的責任を省みない「格差の拡大路線」は許されない
- 2007年版経営労働政策委員会報告について -

全国労働組合総連合
事務局長 小田川 義和

 本日、日本経団連は「2007年版経営労働政策委員会報告」(経労委報告)を発表した。その特徴は、現場の第一線で働く労働者の労働実態や苦しみ、怒りなどにはまったく目を向けず、大企業のもうけ拡大による経済成長を追い求めるため、雇用、労働、賃金の「弾力化・柔軟化」や「個別化」を主張し、それらを実現するための後押しを政府に求め、労働者と労働組合に屈服を迫っている点にある。
 全労連は、この国の社会のあり方、労働者・国民の生活に大きな影響を持ち、責任を負っている財界が、格差と貧困の拡大、青年層を中心とするワーキング・プアの増加など、社会のゆがみをさらに深刻にすることが確実な「経労委報告」を出し続けることに抗議の意思を表明する。

 「経労委報告」の特徴は、そのサブタイトルにも現れている。今回のサブタイトルは、「イノベーションを切り拓く新たな働き方の推進を」となっている。昨年の「経労委報告」のそれが「経営者よ正しく強かれ」としていたことと比べても、現状に背を向けた独善的なものであることを明らかにしている。
 小泉構造改革のもと、弱肉強食の市場原理をすべてとする新自由主義がはびこり、「勝ち組・負け組」の二極分化による「格差社会」の出現は、多くの国民の不安を増大している。それに追い討ちをかけるように、大企業は、派遣労働の拡大にととどまらず、偽装請負やただ働き残業の強制などの脱法行為を繰り返し、その結果としての過去最高の利益を更新した。しかし、偽装請負の違法性を追及された御手洗経団連会長は、「請負法制に無理がありすぎる」とし、「法律の方が悪い」といわんばかりの開き直りをおこなっている。「イノベーション」を言うのであれば、国際的な基準にも合致した働くルールの遵守を基本においた「企業の社会的責任」を確立する経営者の決意を示すことが先決であると考える。

 「経労委報告」は、日本を「希望の国」とするためにとしながら、総額人件費の抑制、退職金・企業年金の見直し、定期昇給の廃止など、労働者のわずかな「希望」さえ奪い去ることを主張している。
 「日本経済は2002年初めから、景気の回復傾向が続いている」としつつも、国際競争を理由にベースアップの「余地はない」とし、労働者への配分を拒否している。
 増加し続けているパートタイマー・契約社員、派遣・請負などの非正規雇用労働者の処遇について、多様な働き方を口実に、「将来に亘る活用の仕方」を理由に均等待遇に背を向け、正規雇用とすることについては「資質、能力」と個別企業の実情を条件にした転換を主張し、法的な強制を退けている。加えて、一定期間を経た派遣労働者に対する雇用申込の義務の「撤廃」までも主張している。これでは、一度、非正規労働に追い込まれたら、再チャレンジの道は「狭き門」であることを意味している。

 加えて、最低賃金制度については、その金額の低さには何もふれず、「セーフティ・ネットは地域別最低賃金で担保されている」からとして産業別最低賃金の廃止を要求しており、「ワーキング・プア」への対応などかけらも伺えない。
 さらに、日本版ホワイトカラー・イグゼンプションの導入を強く要求し、適用範囲を広めるために年収要件の緩和を求めている。正規労働者には、過労死促進法ともいうべきこの制度の導入で、無定量の働き方を迫るとしている。
 「経労委報告」では、「公正な競争の結果として経済的な格差が生ずることは当然」とまで言い切っているが、貧困ラインさえ下回る非正規労働か、過労死におびえる正規労働かの究極の選択を迫ることが、「公正な競争」とは到底考えられない。

 「経労委報告」で見過ごすことのできないもうひとつの点は、さらなる法人税の実効税率の引き下げを求める一方で、年金・医療・介護の社会保障制度の「改革」を求めていることである。大企業のもうけの確保のための「支援」を国に求めながら、労働者・国民には「自助努力」を求め、「公的な制度に依存する姿勢の是正」を説教するという矛盾は、個人消費をさらに冷え込ませ、景気回復に逆行するだけでなく、日本社会の安定を損なうものである。

 全労連は、財界の「春闘方針」である「経労委報告」の具体化にも反対する立場で、07春闘のとり組みに全力をあげる。
 これまでの「構造改革」で深刻となった労働者層での格差の是正と貧困の解消を求め、働くルールの整備、確立をもとめる職場・地域での取り組みをすすめる。
 すべての労働者の賃上げをめざし、(1)「誰でも月額1万円以上」の賃上げ、(2)「誰でも時給1,000円」の引き上げ、(3)最低賃金「月額15万円」「日額7,400円」「時間額1,000円」を掲げてたたかい、賃金の底上げを重視する。
 「全労連統一要請書」をすべての経営者に提出する運動や自治体への要求行動をすすめていく。また青年や非正規の仲間に、まともな雇用と生活できる賃金をめざして職場・地域から、最低賃金や初任給の改善、非正規雇用労働者の均等待遇、青年の雇用拡大などを広く社会にむけてアピールを強める。その中で国民との共同の輪を広げながら、財界・大企業の横暴をただすたたかいをすすめていく決意である。

以上

 
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