熊谷議長あいさつ

議長あいさつ

2005.7.27−28
全労連第37回評議員会

 評議員会参加の皆さん、暑いなか大変ご苦労様です。全労連幹事会を代表して御挨拶申し上げます。本日からの評議員会の開催目的は、大会に代わる機関会議として、昨年の定期大会で決定した運動方針がどのように実践され、どのような到達点と教訓をつくりだしているかを総括し、今後1年間の運動課題と方針を決定することにあります。

 昨年の定期大会は参議院議員選挙の直後で、プロ野球界再編を巡って選手会労組がストライキをかけてたたかっている最中に開催され、労働者蔑視の巨人軍渡辺オーナーの「たかが選手」発言への怒りと、選手会への支援の輪が全国に大きく広がろうとしていたもとでの大会でした。また、昨年の定期大会はアジア各国の労働者・労働組合との連帯重視から大勢の海外代表を招待し、国際交流も行いながらの大会でした。
 この大会で私たちは、戦後史をかけたたたかいとして憲法改悪を阻止すること、新たにスタートする組織拡大基金と全労連オルグをテコに組織の飛躍的拡大を追求すること、労働者犠牲の諸攻撃を跳ね返しながら「21世紀初頭の目標と展望」で明らかにした課題の着実な前進をかちとることなどを最重点課題として決定しました。
 その到達点・教訓・今後の課題などについては、坂内事務局長が議案提案で具体的に明らかにしますが、私たちの運動は、「九条の会」の呼びかけへの支持・賛同の拡大や改憲阻止の共同を全国各地に大きく広げ、JMIUや日本医労連など幾つかの単産が前年比での純増を実現したほか、非正規労働者や大企業関連労働者の組織化など組織拡大を運動としても前進させ、春闘でも生活改善には及ばないものの4年ぶりで前年比増を実現するなど新たな運動前進への確かな手がかりを掴むことができた1年間であったといえます。

 昨年の大会方針は世界情勢の大きな変化について強調しましたが、この1年間は日本でも、JR西日本の福知山線の大惨事をはじめ今日の大企業や日本経済のあり方が根本から問われる事件が相次ぎました。このことは財界の後押しで中曽根政権以来の自民党政権、とりわけ小泉首相などが強引に進めてきた「市場万能論」による新自由主義的な「構造改革」・規制緩和路線が、年金や医療・福祉などの社会保障制度の相次ぐ改悪をおしすすめると同時に、消費者や利用者への製品やサービスの安心・安全よりも営利や効率を優先させ、経済のグローバル化に名を借りた「コスト削減」を至上命題にリストラ・人減らしと成果主義などで従業員の生活や雇用・健康安全を脅かし、その犠牲のうえに大企業の史上最高の利益をつくりだしていること。また、そのことが他方では、「雇用の流動化」などにより企業の将来展望にもかかわる技術・技能の継承を困難にしているばかりでなく、「二極化構造」といわれるような所得格差・弱肉強食の社会の拡大、企業そのものの存立にもかかわるモラルハザードを絶えることなく引き起こしていることなど、現在の「市場原理主義」に基本を置いた小泉自公政権の経済政策がわが国の企業と経済のあり方を大きく歪めていることを社会的に判りやすく明らかにしていると思います。

 また、この1年間は小泉政権の安保・外交政策の行き詰まりをも明確にしました。何の大儀もない米英軍によるイラクへの侵略戦争は、引き続く大量の民間人殺戮とイラク国内で後を絶たない占領軍への攻撃などにより泥沼化し、さらには最近のイギリスやエジプトでの自爆テロ事件など国際的な暴力の連鎖をも生み出しています。それだけに、すでに多くの政府が軍隊のイラクから撤退ないしは撤退表明をしています。ところが、いまや政府説明の「派兵目的」が終了しているのに小泉政権は自衛隊の撤退を決断できないでいます。小泉政権のブッシュとの盟友ぶりと同時に対米従属の日米軍事同盟の存在が独立国としてのわが国の自主性や外交政策をゆがめているからだと思います。また、小泉首相の参拝固執で浮き彫りになった靖国神社問題や「つくる会教科書」問題などが中国や韓国など日本が最も重視すべきアジア諸国との相互信頼を傷つけ、アジアにおける日本の孤立という状況をつくりだしています。

 このように、内政でも外交でも小泉自公政権の大企業とアメリカいいなりで民意を反映しない政策の行き詰まりが明白になってきたというのが、この1年間を振り返っての情勢の最大の特徴ではないかと思います。
 しかし、政治の場では、自公の連立政権が国会内で多数の議席を占め、小泉政権も歴代内閣に比べるなら依然として高支持率を維持しています。また、自民党批判の受け皿として議席を拡大してきた最大野党の民主党は野党の看板を投げ捨て「政権準備政党」を自称し、政治献金で財界との直接的な結びつきを強め、政策的にも国政の基本において自民党と接近しながら「構造改革」や「改憲」「消費税増税」などを競い、「保守二大政党制」を形成しようとしています。このような政治状況のもとで悪政を打ち破るためには、広範な諸階層・諸団体との具体的要求にもとづく全国各地からの国民的な共同や一致する課題での政党との協力・共同の強化、さらには政治革新をも展望した私たちの主体的で攻勢的な運動が不可欠であることがいっそう明確になっています。

 さる6月21日に政府の税制調査会が、「個人所得課税の抜本的見直し」についての報告書を発表しました。その内容は公明党の強い主張で半減が強行決定された定率減税を全廃することに加え、消費税率の大幅引き上げをも視野に入れつつ、給与所得控除などの縮小や廃止により勤労者に空前の大増税を押し付けるものとなっています。年収500万円の労働者の場合、定率減税の廃止と各種控除の廃止等で給与所得控除が3分の1に縮小されたら、年間36万3千円、月額3万円もの増税に、縮小幅が2分の1になれば増税額はさらに膨らみ42万円にもなると試算されています。これに消費税率が引き上げられたら労働者・国民の暮らしや日本経済はどうなるのか。
 今春闘での賃上げは、昨年を上回ったとはいえ月額数千円程度にとどめられています。加えて、健康保険本人の3割負担や医療・年金・雇用保険料などの引き上げによる負担増など小泉自公政権の悪政がこれに追い討ちをかけ生活苦をさらに深刻なものとしています。
 それなのに、月額3万円もの大増税、冗談じゃないといわなければなりません。今こそ、大企業の負担をいっそう軽減し労働者・国民に大増税を押し付ける策動を許さないために、労働組合の底力の発揮で労働者・国民の怒りを社会的にも見えるものとして国民的運動を大きく作り上げていきましょう。

 また、皆さんも御承知のように自民党は11月15日の結党50年の記念大会で「憲法改定案」を発表するとしてその具体的作業が進められていますが、その最大の狙いが財界も強調している憲法第9条を改悪し、日本を「戦争をする国」に変えることにあることは、7月に公表された「新憲法起草委員会・要綱 第一次素案」によっても明らかです。また、自民党は連立与党である公明党はもとより、民主党をも巻き込んで改憲を進めようとしており、民主党もまた具体的な改憲案をまとめるべくその具体的作業をすすめています。
 こうしたもとで、本評議員会直後の7月30日には「九条の会」が東京の有明コロシアムで1万人規模の大講演会を予定していますが、これを成功させることが改憲策動を押し返すために極めて重要になっています。
 さらに、全労連は「戦後史をかけた」改憲阻止の重要な節目のたたかいとして、本評議員会の議案のなかで改憲への具体的一里塚である「国民投票法案」を絶対に阻止するため、そのたたかいの重要な局面では「ストライキ」をかけてでもたたかう闘争態勢の確立を呼びかけています。官民すべての職場組織がたとえ短時間でもストライキをかけてこの戦後初めての改憲策動を阻止するためにふさわしい歴史的な総決起の闘争態勢を築きあげることができるかどうか、戦後労働運動の積極的伝統を引き継ぐ全労連と各単産・地方組織の真価を問う問題として、職場・地域でおおいに討論で深めていただきたいと思います。
 今年は先の悲惨な大戦終結から60年、広島・長崎に人類史上初の原爆が投下されてから60年という歴史的節目の年です。戦争反対・改憲阻止の課題とも結合しつつ、草の根の運動から核兵器廃絶の具体的展望を切り開くために、目前に迫った原水爆禁止世界大会を大きく成功させることも重要です。今年の世界大会には全労連の招待でアメリカの労働組合代表が初めて参加しますし、フランスやインドの労組代表も参加する予定となっています。平和運動や労働運動の後継者をつくる視点からも各単産・地方組織から若い仲間を是非とも大勢参加させていただきたいと思います。

 いずれにしても、これからの1年間は、大増税と改憲を阻止することを最大の課題に、これらの策動と裏腹の関係にある、医療制度など社会保障制度の更なる改悪や国と地方の公務員労働者への人員削減と賃下げ攻撃、教育基本法改悪の策動などをはねかえすたたかい、さらには、今が最大の山場となっている郵政民営化法案の行方によっては総選挙も必至といわれているもとでこれを国政革新へのチャンスとして受け止めるなど、歴史的転機にふさわしい運動を悔いなく展開するため、「11・19国民大集会」の成功をはじめ、引き続き全国の仲間たちが全力を挙げて奮闘することを私は心から呼びかけるものです。
 先にふれたように、小泉自公政権の内政・外交の行き詰まりとそのもとでのさまざまな矛盾の表面化は、衆院での郵政民営化法案の僅差での可決に見られるような自民党内部の矛盾の拡大や地方での変化、自民党支持層などの中からも大きな変化をつくり出しています。まさに今日の情勢は、私たちの奮闘如何では文字通り、労働者・国民の生活が大切にされ、「安心・平等、平和な日本へ」にむけ「もう一つの日本」を可能とする条件を拡大しています。このことに私たちはしっかりと確信を持つ必要があります。
 また、その可能性を現実のものとするためにも、その最大の保障である全労連の構成組織の飛躍的拡大をかちとること、そしてすべての構成組織が多数派形成を追求しながら来年の定期大会を増勢でむかえるために、すべての闘争を組織拡大と結合して奮闘することを本評議員会参加の単産・地方組織の総意として意思統一できるよう積極的な討論をお願いして幹事会を代表してのあいさつとします。


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