【談話】

偽装請負を許さず、安定した雇用確保の闘いを強化する

2006年8月8日
全国労働組合総連合(全労連)
事務局長 小田川義和


1.労働者派遣法の成立によって、他人が雇用した労働者を自己の指揮命令の下で働かせることが可能になり、さらに2003年の製造業への派遣解禁、派遣期間の延長などの法改悪によってトヨタや松下などの製造現場にも派遣労働が蔓延している。

しかし、派遣期間が制限され、期限を超えると直接雇用申入れの義務が生じるため、「請負労働」という偽装した雇用形態で雇い入れるという違法な「労働者派遣事業」がひろがってきている。そして「偽装請負」に象徴される違法・劣悪な雇用が「ワーキングプアの増大」、「格差の拡大」を深刻なものにし、大きな社会問題にもなってきている。企業犯罪と言えるこのような法違反は直ちに改められるべきであり、労働者派遣法の成立と改悪によって事態を深刻にした政府・厚生労働省は厳しく批判されなければならない。

2.トヨタの関連企業である光洋シーリングテクノ株式会社(徳島県)では、永年にわたって「請負労働者」と言いつつ、光洋シーリングの機械を使用し、その社員の指示の下で働き、正社員と全く同じ仕事をこなしながらも、「時間給で賃金は正社員の半分以下」「一時金の支給なし」「いつ首になるかわからない」という「雇用」が行われてきた。これらの仲間たちが、全労連・JMIUの労働組合を結成して立ち上がり、偽装請負を告発し改善を求めて闘い、大きな前進をかちとった。

このほど光洋シーリングテクノ(株)は、JMIUに対して「偽装請負を解消するため、請負労働者を経験年数順に「期間契約社員」として直接雇用し、さらに正社員への登用をおこなう」という画期的な回答を行なってきたのである。

この到達点は、何よりも、「偽装請負」として働かされてきた若い仲間が労働組合を結成し、人間の尊厳をかけて勇気をもって告発をおこなったこと、そして全国的な支援の広がりによっておおきな世論の流れをつくってきたからに他ならない。労働者・労働組合の闘いによって前進をかちとったことは特筆されるものである。

3.現在、多くのマスコミで「偽装請負」問題が報道され、いくつかの大企業で是正がはじまっている。それらは、まだ一部の反映に過ぎないが、光洋シーリングテクノの仲間の先進的な闘いが切り拓いてきた成果である。

今、松下プラズマディスプレイ、イナックスメンテナンス、ナック、シューワ石油などの企業においても、偽装請負の改善を求める闘いがひろがってきている。

全労連は、あらためて偽装請負の告発を強め、その一掃はもとより、派遣・請負で働く多くの仲間の雇用・賃金・労働条件の改善をめざした取組みを強め、未組織の派遣・請負労働者の組合加入、組織化に特別の手立てをつくすものである。

同時に、これらの事態が労働法制の改悪、規制緩和によってもたらされたものであることを厳しく指摘し、当面する労働法制改悪を阻止し、人間らしく働くルールを確立に全力をつくすものである。

以  上