【見解】

憲法改悪に道を開く国民投票法案上程に反対する全労連見解

2005年4月13日
全国労働組合総連合
憲法改悪反対闘争本部


  1. 2004年12月3日、国民投票法等に関する与党協議会は、日本国憲法改正国民投票法案骨子を確認するとともに、衆参の憲法調査会を常設の機関とし、同法案の審議権を与える国会法「改正」と国民投票法案を第162通常国会に提出することを了承した。  本年3月11日、自民、公明、民主の三党の憲法問題担当者の協議が行われ、国民投票法案の協議機関を設置することについて持ち帰って検討することになった。民主党の枝野憲法調査会会長は、「協議できるのが望ましい」と語っており、三党協議の上にすり合わせ、浮上したときには強行される危険性が強い。
     国民投票法は、憲法96条にもとづく手続法であり、制定は当然であるとの主張が改憲勢力からなされているが、戦後の長きに渡り同法の制定が問題にもされなかったのは、国民の現憲法に対する圧倒的な支持のもとで、憲法「改正」が俎上にのぼらなかったからである。
     いま、国民投票法の制定を声高に主張するのは、自民党、民主党が、4月に各々改憲の試案、提言を出す予定であり、憲法9条を中心に現憲法を変えて、「戦争する国づくり」をめざしているからに他ならない。一部に手続きを定めるものでありやむを得ないとの意見があるが、改憲の流れを見ない議論である。
     また、改憲の手続きを定めた憲法96条を変え、衆参2/3以上の賛成があれば、国民投票を抜きに改憲を可能にすることもねらわれており、いわば、国民投票をなくすことに道を開く国民投票法ともなる。
     全労連は、改憲への一里塚としての国民投票法制定に強く反対するとともに、同法案与党骨子が極めて重大な問題点を有していることを指摘するものである。

  2. 2001年に憲法調査推進議員連盟(自民216人、民主87人、公明12人)が出した国民投票法案をベースに与党骨子がつくられており、三党協議も与党案が骨格となるとみられている。仮に国民投票法を制定するにしても、国の基本法であり社会の枠組みを規定する憲法改正にかかわっては、主権者である国民の権利行使が最大限保障されなければならない。しかるに、与党骨子は以下のように、国民の目と耳を塞ぎ、手足を縛る内容となっている。

    (1)国民投票の方法
     憲法の複数の条項について「改正」が発議されたとき、条項ごとの個別投票か、一括投票かの選択は、改憲の発議のときに法律で定めるとしている。ねらわれているのは一括投票であり、条項ごとの国民の判断を否定し混乱を持ち込むものである。環境破壊やプライバシー破壊を進めてきた自民党等が、口をぬぐって憲法への環境権やプライバシー権などの明記を主張し、抱き合わせで9条改憲を通そうとしているとき重大である。

    (2)国民投票の期日
     国民投票の期日を国会の発議より30日以降90日としており、改憲議連の案であった60日以降より更に短くなっている。憲法の改正に当たっては、国民の中での議論や運動が充分に保障され、改正の中身が国民に充分周知されることが望まれるが、発議から国民投票までを極めて短期間に区切り、国民の権利保障に重大な制約を加えている。

    (3)憲法改正の成立要件
     憲法改正の成立要件を、有効投票の1/2以上としており、最も少ない賛成で改正が成立する。複数条項での投票による大量の白紙投票などが想定される。

    (4)運動と報道への規制
     国民投票にあたっては、国民が主権者として主体的に判断できるよう、表現の自由、報道の自由の最大限保障と国民投票にかかわる運動は原則自由であることが求められる。しかし、与党法案骨子は、「公務員等及び教育者の地位を利用しての運動の禁止」、マスコミの「虚偽事項の記載、事実をゆがめての報道の禁止」、外国人の投票運動の禁止を打ち出している。公職選挙法より一層厳しく、公務員・教員に政治弾圧が加えられ、マスコミも改憲案への批判が一切できない規制が加えられる可能性があり、断じて認められない。国民投票運動期間の制限と合わせ、改憲への国民の反発を非常に恐れていることの証左でもある。

    (5)投票の資格
     改憲議連案では、軽微な選挙違反による公民権停止者に投票権を認めていたが、与党骨子はこれを認めず、さらに、18歳以上の未成年者にも投票を認めていない。

     改憲の動きの中で、ビラ配布への弾圧など言論・政治活動への抑圧が強まっており、国民投票法案は、このような状況とも連関しているものである。重大な問題を持ち、改憲の道をつける国民投票法案の国会提出を許さないたたかいを、憲法改悪反対のたたかいの大きな発展と結び全労連は緊急に強めるものである。