【談話】

男女雇用機会均等法見直しにあたっての労働政策審議会雇用均等分科会「今後の男女雇用機会均等対策について(報告)」に関する談話

2005年12月27日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


 厚生労働省労働政策審議会雇用均等分科会は、27日、男女雇用機会均等法の見直しに向けて「今後の男女雇用機会均等対策について(報告)」(以下、「報告」)をまとめ、厚生労働大臣に建議した。

 男女雇用機会均等法制定から20年。今回の改正は、女性労働者から大きな期待が寄せられているが、「報告」がその期待に充分応えられるものとはなっていないことは遺憾である。「報告」は、妊娠・出産に関する不利益取り扱いの禁止やセクシュアルハラスメント対策では、女性労働者の声を反映したものになっている。しかし、国際的にも指摘されている「間接差別の禁止」については、法律に盛り込むことになったが、女性労働者の5割をこえるパート・臨時・派遣労働者の賃金・労働条件改善が男女差別是正の観点からも重要な社会問題であるにもかかわらず、その対象からはずされたことは重大な問題である。また、ポジィティブ・アクションの効果的推進方策は、事業主の努力を推奨するのみであり実効性が不十分である。以下、内容についてコメントする。

 均等法を、「男女双方に対する差別を禁止する規定とする」、「均等法9条については・・・現行の枠組みを保持する」としたのであるから、法律名も「男女雇用平等法」とすべきである。前回の改正とセットで、労働基準法の女子保護規定「深夜・時間外・休日労働の禁止、制限」が撤廃され男女差別是正の具体的な進展がないままに、女性も男性並みの長時間過密労働を余儀なくされている。一方、男性の長時間労働も解消されていない。「少子化の背景のひとつとして、子育て期にある30歳代男性の4人に1人は週60時間以上就業している」(2005年厚生労働白書)という実態がある。男女ともに職業生活と家庭生活を調和できる働き方をするために、また、「仕事と家庭の両立支援」の視点からみても「仕事と生活の調和」を目的・理念に規定すべきである。

 差別禁止の内容等については、「配置において権限の付与・業務の配分が含まれていることを明らかにするとともに、降格、雇用形態又は職種の変更、退職勧奨及び雇い止めを追加」するとしている。女性労働者の半数以上がパート・臨時・派遣等の非正規労働者に置き換えられ、男女の賃金格差、正社員とパート労働者等の賃金格差が大きい現状を変えるためには、対象外となっている「賃金」を加えるべきである。また、差別の温床になっている「雇用管理区分」については削除すべきである。
 「報告」では、間接差別の対象基準を「募集・採用における身長・体重・体力要件」、「コース別雇用管理制度における総合職の募集・採用における全国転勤要件」、「昇進における転勤経験要件」の3つに限定し、省令で定めるとしているが、限定列挙には反対である。限定列挙では、3つ以外は「間接差別にあたらない」とされ、福利厚生の適用、家族手当・住宅手当等の支給やパートタイム労働者に対する差別等が解決されない。「判例の動向等」とあるが、間接差別が3つに限定されたらそれ以外の判例が出ることは考えにくい。法律に間接差別の定義、間接差別の禁止を盛り込み、事業主が適切かつ必要であることを立証できない場合は、労働者の性別を理由とした差別であるとみなすことを法律の中に明記すべきである。また、間接差別と考えられるものは指針で示すべきである。

 ポジィティブ・アクションの効果的推進方策は、企業の自主的な取り組みを推奨するにとどまり義務付けを行わなかった。ポジィティブ・アクションは差別是正のための積極的な改善措置である。「事業主に計画の策定と実行、実施状況報告を義務づける」ことなど積極的な措置が必要である。

 セクシュアルハラスメント対策について「報告」は、「男性もセクシュアルハラスメントの保護の対象とする」、「事業主の措置義務規定とする」、事後措置の一つとして「調停に付すこと」など、規定が整備された。しかし、セクシュアルハラスメントに泣き寝入りをする女性が多い実態からも、事前防止規定の義務付けも事後の対応措置の義務付けとともに重視すべきである。

 実効性の確保では、セクシャルハラスメント及び母性健康管理についても調停の対象とすることや企業名公表制度の対象とするなどの一定の前進面はあるものの不十分である。全労連は、「事業所における救済制度である「苦情処理委員会」の設置を義務化。行政による救済制度(都道府県労働局・雇用均等室)の権限強化。あらたに政府から独立した紛争解決機関「男女雇用平等委員会」の設置。違反したものへの制裁をおこなうこと」を要求している。

 女性の坑内労働の規制緩和については、依然、坑内労働による塵肺などの職業病が発生し続けていることから、母性保護の観点から女性の坑内労働解禁は時期尚早である。労働基準法上の母性保護規定については「引き続き検討」とあるが、緩和や撤廃について反対である。その他、「報告」には述べられていないが、公務労働者へ適用や労働基準法の第3条、第4条の改正が必要である。

 全労連は、2006年通常国会で、前回の均等法改正時の国会付帯決議や、女性差別撤廃条約、ILO家族的責任条約(第156号)、北京宣言と行動綱領等、国際的な男女平等への到達点を踏まえ、国連女性差別撤廃委員会の「最終コメント」が生かされる形での実効ある男女雇用平等法への改正を求め奮闘する。

以上