【談話】

中国の反日デモ及び韓国の動きにかかわって

2005年4月19日
全労連事務局長 坂内三夫


 教科書検定問題や日本の国連常任理事国入りなどに抗議して、4月9日に北京で行われた反日デモは、杭州、上海などにも広がり、大使館への投石など一部で暴力行為も行われた。
 全労連は、日本の侵略の歴史を直視し真摯な反省の上にこそ、21世紀のアジア諸国との自立、平等、平和、繁栄の国際関係が形成できるとの立場に立つものであるが、「愛国無罪」などと暴力を行使することを容認するものではない。こうした暴力行為についてはいかなる理由をもっても正当化されるものではなく、中国政府に対し、中国在留邦人の安全確保をふくめて毅然とした対処を求めるものである。
 また、韓国でも教科書検定問題、竹島問題での島根県議会での条例採択にかかわって、抗議行動が行われるとともに、3月17日には政府声明が出され、「日本は東北アジア平和勢力として隣国と共存しようという意思があるのだろうかという根本的な疑念を、我々に抱かせている」とまで述べている。
 中国と韓国で厳しい日本批判が広がっているのは、日本の一部政治家が侵略戦争と植民地支配を正当化する発言を繰り返しているだけでなく、とくに小泉首相就任後、歴史をゆがめ侵略戦争を正当化する教科書の検定合格、首相の度重なる靖国神社参拝、国連常任理事国入りを狙う外交など、この間の日本における政府・自民党の歴史を後戻りさせる動きが要因となっている。
 国際平和と正義、安全を確保するために設置された国連において、戦争責任をあいまいにしたまま日本が常任理事国となることに対し、厳しい目が向けられるのは当然である。
 侵略戦争の反省のうえに国民主権、戦争放棄、戦力不保持などを明記した日本国憲法をめぐっては、本年11月の自由民主党結党50年の大会で「日本国憲法改正草案」の決定を予定するなど、これを変える動きが強まっている。中国、韓国をはじめアジア諸国民の批判の的になっている歴史教科書や靖国神社をめぐる動きは、憲法を変えて日本を「戦争する国」にする動きと深く結びついており、単に過去の歴史だけにとどまらない重大な問題である。
 全労連は、これまでも「侵略戦争の過ちを繰り返さない、日本国憲法をまもりぬく」という立場から中国、韓国の労働者・労働組合との友好関係を発展させてきたが、あらためてアジア諸国民と世界の平和を求める人々と連帯し、歴史を逆行させる策動を許さない闘いに全力をあげる決意を表明する。
 また、領有権や領海問題は、国際法と歴史的経緯を踏まえて冷静に解決されることを願うものである。