【談話】

介護保険法等「改正」法案の閣議決定にあたって

2005年2月8日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


  1.  政府は本日、「介護保険法等の一部を改正する法律案」(以下「法案」)を閣議決定し、国会に提出した。
     2000年4月から実施された介護保険制度は、「利用料、保険料が高すぎる」「安心して利用できない」「特別養護老人ホームの入所待機者が34万人超」「介護労働者の劣悪な労働条件」など、改善すべき問題が山積みしているところである。
     しかし、今回の「法案」の主な内容は、(1)新予防給付・地域支援事業の創設、(2)介護保険3施設等の居住費・食費を保険給付対象外とし自己負担に、(3)地域密着型サービス・地域包括支援センターの創設、(4)第1号保険料設定方法の見直し、年金からの保険料天引き対象を遺族年金・障害年金に拡大、などであるが、先の切実な改善の願いには応えないばかりか、逆に財政対策優先の露骨な給付抑制、負担増が中心の改悪法案であり、全労連は到底容認できない。

  2.  新予防給付について、厚生労働省は最大20%の給付抑制効果があると試算している。しかし、いま要介護者の生活支援に重要な役割を果たしている家事援助のホームヘルプサービスやデイサービスを全面抑制し筋力トレーニングなどを行うことは、予防効果どころか引きこもりなどにより要介護状態の重度化が進み施設入所が増大するとの懸念も識者から指摘されている。
     施設入所者の居住費・食費を自己負担とすることでは1,320億円の給付費削減になるとされており、相部屋でも3万円強の負担増となる。介護保険料の大幅値上げも想定されているし、保険料の地域格差拡大も指摘されており問題である。
     また、今回の見直しでは、ホームヘルパーなど実際の介護サービスを担っている介護労働者の労働条件問題について何等の改善策がなく、逆に新予防給付での低介護報酬化が懸念されるなど大きな問題である。全労連などの「ホームヘルパーに関するアンケート調査」(回収2,421人。05年9月発表)では非正規職員が83.1%、月収は7万円未満が44.8%、社会保険加入はわずか21.5%など労働条件はきわめて劣悪だし雇用が不安定であり、この改善こそが急務である。
     厚生労働省が今回の見直しで最大課題としていた被保険者の範囲の拡大・保険料徴収年齢引き下げは各界の反対で見送られたが、法案附則に「社会保障に関する制度全般についての一体的な見直しと併せて検討を行い、…平成二十一年度を目途として所要の措置を講ずるものとする」との検討規定が設けられたことも問題である。

  3.  全労連は、「法案」の国会審議にむけて、「安心して利用できる介護保険制度」「介護労働者の身分・労働条件の改善」などを強く求め、中央社保協をはじめ国民諸階層と共同してとりくみを強める。また、「社会保障全般の一体的見直し」にむけての闘争を強化する決意である。