【談話】

労働政策審議会「今後の労働時間対策について」の建議にあたって

2004年12月17日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


  1. 本日、労働政策審議会は厚生労働大臣に対し、「今後の労働時間対策について」を建議した。その内容は、平成4年に制定された「時短促進法」(平成18年3月31日廃止の時限立法)において国際的に公約した「年間総実労働時間1800時間」達成という数値目標を、「全労働者一律の設定は時宜にあわなくなった」としておろし、「事業場における労働時間等の設定を、労働者の健康や生活に配慮するとともに多様な働き方に対応したものへと改善する」ための恒久的な法とする、というものである。全労連は、本建議が、長時間労働を解消するうえできわめて不十分と考える。

  2. 建議は、労働時間をめぐる現状について、全労働者平均でみた総実労働時間が1850時間程度となっているのは、パートタイマーの増加という雇用構造の変化によるものであり、一般労働者の年間総実労働時間は2016時間(03年)と少なくないことを指摘している。しかも、それが所定外労働時間を中心に増加傾向にあることや、年次有給休暇取得率が5割にみたないほど低下していることを指摘し、労働時間の「分布の長短二極化」が進み、長時間過重労働による健康障害が「社会問題化していると言って過言ではない」との認識を示している。

  3. こうした問題意識にそって解決策を考えるのであれば、フルタイムで働く労働者の労働時間短縮の数値目標を明示し、その達成に向けての推進計画をたてることは、ますます大切となっているとすべきではないか。さらに、週労働時間の特例措置(44時間労働制)について一律40時間とすること、時間外労働の割増賃金率の引き上げなどを建議すべきではないか。現場における労使の時間管理の取り組みは指摘のとおり重要であるが、そのためにも、労使委員会における労働者代表の公正任命を担保する法制度の確立が重要であることや、また、労使自治で導入されたフレックスタイム制等の弾力的労働時間制度が、労働者よりも事業主の都合による時間伸縮制度として活用されてきた実態を指摘し、労働行政による強力な監督指導が重要であることなどを、指摘するべきではないか。
     建議は、これらの点については追及せず、「多様な働き方」へのニーズや、「時間ではなく成果によって評価される仕事」が拡大しているとの言及のもとで、時間規制を除外するホワイトカラー・イグゼンプションの導入につながりかねない方向を検討すべきとしている。問題に対する回答が、規制緩和の方向で歪められているといわざるをえない。

  4. 時間短縮による心身の健康保持、家庭生活、地域活動および自己啓発の時間の増加という方向性は望ましい。違法な不払残業、長時間過重労働が横行するいまの社会情勢で、これらの方向にすこしでも近づくためにも、時間短縮の数値目標を明示し、より実効性の高い時短推進計画を策定するべきである。