【談話】

「今後の高年齢者雇用対策について」の報告について

2004年1月21日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


  1.  労働政策審議会職業安定分科会は1月20日、「今後の高齢者雇用対策について(報告)」(以下、報告)をまとめた。
     報告では、厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げにより定年退職後に収入の空白期が生まれる恐れがあることなどから、高齢者の雇用確保策が必要として、65歳までまでの雇用を確保するよう、定年年齢の引き上げ又は継続雇用制度の導入を企業に義務付けるとしている。ただし、施行は2006年4月からとし、対象年齢については段階的に引き上げ、完全実施は2013年4月からが適当としている。
     また、中高年齢者の再就職を促進策として、トライアル雇用や紹介派遣制度の積極的活用、募集・採用時に年齢制限を設定する企業には具体的な理由を明らかにすることを求めるほか、「多様なニーズ」に対応した雇用・就業機会を確保するとして、短時間勤務や多様就業型ワークシェアリングの導入、短期的な雇用や派遣・請負による就業、起業、ボランティア就労等に関する相談・情報提供、シルバー人材センター活用なども提言した。

  2.  報告は「現在の厳しい雇用失業情勢の下、中高年齢者は一旦離職するとその再就職は困難な状況にある」としているが、こうしたなかで、高齢者雇用対策を充実することは緊急の課題であり、今回、法律によって65歳までまでの雇用確保が義務化されることは評価できるものである。
     しかし、労使協定で継続雇用する労働者の基準を定めれば対象者の限定を認め、労働組合との協議が難航し協定が結べない場合、大企業で3年間、中小企業は5年間独自に基準を決められる猶予期間を認めるとしたこと、何等の罰則規定がないことなどは大きな問題であるし、全労連がこの間求めてきた年齢差別禁止法については困難とし、募集・採用時に年齢制限を設定する企業への理由明示にとどまったことは遺憾である。
     また、現行法でも60歳までの雇用確保が法定されているにもかかわらず、中高年齢者はいま企業によるさまざまなリストラの第1の対象とされ、多くの中高年齢者が職場を追われているが、リストラ規制や年齢差別禁止などをはじめ保護策は検討されていない。
     さらに、トライアル雇用や紹介派遣制度、短期的な雇用や派遣・請負による就業、起業、ボランティア就労、シルバー人材センターなどについては低賃金・不安定雇用の再編・活用など基本的な問題点がある。

  3.  全労連は今後、高年齢者等雇用安定法の改正要綱案の検討と法案の国会提出、審議にむけて、こうした問題点をふまえた改善、実効ある内容へのとりくみをリストラ規制、働くルール確立、年金改悪反対のたたかいと結んで強めるものである。