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国旗 世界の労働者のたたかい
ボリビア
2005

 ボリビアは、米国と多国籍企業の利益と、国民とりわけ貧しい労働者や農民の利益との矛盾がもっとも典型的に噴出している。そのなかで、労働組合、農民運動、先住民の運動が、国の主権と自主的経済発展の道を求める困難なたたかいを続けている。
 
人口わずか900万人の南米の最貧国ボリビアは、鉱物資源が豊富だったが、何世紀にもわたってヨーロッパ、北米に略奪された歴史をもつ。とくに天然ガスは世界でも有数の推定埋蔵量(52兆立方フィート)であるところから、このエネルギー資源をどのように開発し、役立てるかはボリビアの国の将来そのものがかかっている問題になっている。
 
その天然ガスが民営化されはじめたのは1989-93年のハイメ・パス政権の時代であったが、次のゴンサロ・サンチェス・デ・ロサダ(Gonzalo Sanchez de Lozada)大統領の政権下でいっそう進行した。その結果、国営のエネルギー会社YPFBを外国の多国籍企業に経営をまかせてしまった。さらに、国内法規で、ボリビアの主権を犠牲にする形で、外国企業に天然資源がとられていった。これは、最貧債務国の債権国との交渉への参加と交換条件でだされてきた要求にしたがうものだった。しかし、外国の要求を受け入れた後も、ボリビアの債務は増えつづけた。また、ボリビアは生産コストが、ベネズエラやメキシコの四分の一という、多国籍企業にとって「おいしい」国としてターゲットになっているという現実もある。そうした多国籍企業はアメリカだけでなく、フランス、オーストラリアのものもある。
 
2003年10月にサンチェス・デ・ロサダ大統領が辞任し、副大統領が昇格して大統領になった、あの政変は、この資源を外国の多国籍企業に売り渡してしまうような政策をとっていた政権にたいする国民が怒り立ち上がった結果であった。ボリビア政府は当時、天然ガスをチリに輸出し、同時にボリビアがチリの港を使って米国に天然ガスを輸出できるようにするという方針をもっていて、これに国民の多数は反対したのである。(ボリビアは、1879-1883のチリとの戦争で沿岸部を失い、海がないため海上輸送するにはチリあるいはペルーの港が利用できることが不可欠。)多くの人々は、天然ガスの国有化を求めている。じつは、この運動の口火を切ったのは、エル・アルト(El Alto) 地域に住む先住民アイマラの人々の、サンチェス・デ・ロサダ政権に抵抗し、その打倒をよびかける運動だった。このたたかいは首都包囲作戦を展開するなど激しいものとなり、2003年10月、大統領は米マイアミに逃げるに至った。このなかで、労働組合のナショナルセンターであるボリビア労働総同盟(Central Obrera Boliviana)は、その中心にはいなかった。
 
カルロス・メサ(Carlos D. Mesa)副大統領が大統領に昇格したが、この天然資源をどうするのかが大きな問題だった。メサ政権は、国民投票を実施してきめることを明らかにした。
 
2004年7月18日に国民投票がおこなわれたが、これにむけて労組ナショナルセンターのCOBは、6月21日に、天然ガス国有化を要求する百万署名の運動を開始。国有化が選択肢にはいっていない国民投票はボイコットを、とよびかけた。
 
投票の結果、81%が大統領の政策を支持した。だが、この投票には有権者の50%が棄権し、その他白票を含めると60%が棄権したのと同じだったのだ。「国有化」が、選択肢のなかにはいっていなかったからだ。この国民投票は、国際的関係のなかでのボリビアの将来にとって非常に重要なものであったが、主要国メディアはほとんど伝えていない。ベネズエラで8 月15日におこなわれた、チャベス大統領のリコールを求める国民投票がメジャーな報道機関によって連日のように報道されたのと大違いだった。
 
いずれにしても、メサ政権の天然ガス政策では、米国あるいは、スペイン、イギリスなどの多国籍企業に売られることになるのは明らか。だから、投票の1ヵ月あまり後、メサ政権のガス政策に抗議するデモ行進に10万人が参加したのだ。エル・アルトや首都ラパスのその外の地域ではCOB加盟の労働組合の人たちが地域住民と一緒になって、トラック運転手のガソリン価格一年凍結要求の行動に参加した。大統領はいったんはこの要求をのむことを明らかにしたが、その後、石油企業からの圧力で、「2ヵ月間の凍結」に訂正した。同じ8月、コチャバンバで (ボリビア第三の都市) では、数千人がCOBと「ガス防衛連合」の旗のもとデモ行進をおこなった。
 年が明けてメサ大統領は、チリに天然ガスを輸出することを認めることによって、ボリビアの太平洋側からのガスの輸出をチリ経由でおこなえるようにすることをあらためて明らかにし、COBなどはひきつづきメサ政権の政策に抵抗の構えを強めている。
(岡田則男)