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国旗 世界の労働者のたたかい
カナダ
2003

公共サービスの切り捨てと労働者の状態

 カナダでは2002年多くの雇用が創出されたことになっているが、その多くがパートタイム職であったことに専門家は注目している。雇用全体にしめるパートの割合は過去10年間の平均で18%だったが、この1 、2 年でその割合は9 %増え、逆に正規雇用(フルタイム) は2 %減っているという。不安定雇用の増大であるので、おのずから個人消費も減っている。
 カナダではほとんどいたるところで民間企業のリストラ、解雇の嵐が吹きまくっているという点で、サミットな 7ヵ国のなかでも例外ではなかった。また、公共部門でも、前年につづいて教育、医療、福祉の削減が、太平洋側のバンクーバーから大西洋側のハリファクスまで多くの都市でおこなわれ、労働組合もストライキで抵抗した。
 ブリティッシュコロンビア州では、2002年1 月に教育、医療などの切り捨て法案(27 、29)が州議会を通過した。これは、看護師、救命救急士など公務員10万人削減、民間の病院への参入、医療費削減、学校職員(図書館、カウンセラーなど)の削減、 1クラスの定員制廃止などを含むもので、ただちに教員や病院職員などの強い反対を引き起こした。
 法案29については、医療の下請化で病院など医療機関の労働者の首切りにつながる、労働法に定められた労働者保護の条項を死文化するものとして強い反対があった。同法案は、 5年以上勤続の労働者については解雇後の職を優先的に保障する、50キロメートル以内の配置転換は本人の同意を必要とせず、転勤命令を拒否すれば退職するものとみなすなどの条項がある。
 オンタリオ州では前年に、労働時間の短縮どころか、60時間まで労働者を働かせることが可能になる労働法改悪がおこなわれた。
 
さらに同州ではPPP とよばれる「公・民のパートナーシップ」が進められている。いわば、公設民営で、税金をつかって民間の医療機関がおこなうサービスをうけられるようにするものだが、病院をビジネスの場にする道をひらくもので、職員のレイオフにつながるものとして労働組合は反対している。
 こうした問題と関連して注目すべき問題は、医療制度改悪がカナダでも労働組合運動の大きなテーマになっていることだ。かつて英米圏では、とくに国の健康保険制度のない米国との比較で、すぐれた国民皆保険制度の手本のようにいわれたカナダであるが、この数年間、州の財政赤字の増大につけこんで医療への企業進出が目立ち、このなかで、クリニックの民営化、薬価の自由化への動きが進んでいる。

民間生産拠点の国外移転と労組の対応

 民間では、自動車工場(日本のメーカーをふくめ) などで業績不振を口実に労働組合との協約なしに働かせることができ、さらに環境保護基準も低いメキシコへの移転しはじめており、レイオフがおこなわれた。フォードはオークビル工場を閉鎖、ウィンザー工場での人員を削減した。
 GMはケベックのサンテレーズ工場閉鎖を決めている。これらにつづくは、部品工場のレイオフとなる。これに反対する労働者のたたかいにたいしては、同じ地域にあるケベック最大の鉄鋼労組ローカルの一つが支援を表明。
 カナダの自動車労働組合CAW は自動車産業の雇用をまもるたたかいを中心的課題になっている。これまでカナダの労働運動の主要ナショナルセンターであるカナダ労働組合会議CLC は、これまで労働者は、一定の条件のもとでは自由貿易、資本家のグローバリゼーションと共生できるとしてきたが、この方針を今後も維持するのかどうか、注目したいところだ。

イラク戦争ノーで労組が共同

 カナダでは、政府が米国の対イラク戦争への協力にほとんど傾き、国連の承認なしでもカナダがアメリカの戦争に参加する可能性を示唆するなかで、カナダ労働会議(CLC) は、国連の決定のあるなしにかかわらず「戦争ノー」を宣言し、他の平和運動との共同行動「戦争阻止連合」に参加している。2002年12月には、CLC がカナダ統一教会とともに国内の「戦争阻止連合」にくわわり、イラク戦争反対運動をもりあげた。