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国旗 世界の労働者のたたかい
スペイン
2003

 スペイン経済は2000年にGDP4・2%上昇後、2001年同2.7%に下がり、引き続き下降傾向にある。主因は国内需要の停滞にあると見られている。2002年の経済指標は、経済(GDP)成長率1.9%(「欧州委員会経済予測2002年秋」による推定値、以下同様)、消費者物価上昇率1.7%、失業率11.4%(対前年比0.6%増)、財政赤字(対GDP比)なし、累積債務(対GDP比)55.0%だった。スペインは2002年前半、EU議長国を務めた。

2002年の主な闘い・できごと

  • 2月、ユーロ現金導入に関連した労資紛争
  • 3月13〜16日、UGT第38回大会開催
  • 4月17日、カタルニアで在宅介護労働者が労働協約締結を要求してスト
  • 5月24〜27日、政府が「失業手当改革」政令強行公布・実施。労組側がゼネストを呼びかけ
  • 6月20日、「失業手当改革政令」撤回要求ゼネスト
  • 10月5日、マドリードで「失業手当改革法案」撤回要求20万人デモ
  • 10月7日、政府が「失業手当改革法案」の内容を修正、「失業手当改革」の大半を撤回
  • 10月24日、カタロニアで労働災害防止要求闘争
  • 10月下旬、ナバレ自治州で臨時雇用を減らす協約調印

ゼネスト含む闘争で失業手当改悪政策撤回をかちとる

 政府(アスナール保守政権)は失業手当制度の財政が大幅な黒字になっているにもかかわらず、4月17日、「失業手当制度改革法案」(「失業保護・基盤的雇用改革法(案)」を公布・実施した。法案には次の3点を柱とする内容が含まれていた。
 1)失業者が提供された職を拒否した場合に失業手当が削減されるが、その基準(とくに、求職者に「適した職」概念)の拡大と削減額の引上げなど。
 2)現行制度では、不当解雇として訴訟になった場合、裁判所の判断が出るまでの間、企業が当該労働者に賃金を支払わなければならなかったが、この制度を排除する(訴訟継続中の賃金支払いの排除)。
 3)農業部門の有期雇用労働者を対象とした失業手当制度を全国に広めるが、新規労働者の同制度への参入を認めない(現在までは農業労働者への失業手当制度はスペイン南部のアンダルシアとエストレマドゥラの2州に限られていた。両州では農産物収穫作業の季節性が高く、多くの農茉労働者が収穫期以外は失業状態にあった。1980年代初頭にこのような労働者を対象とした失業手当制度が導入されたが、これが農業部門の余剰人口の発生につながった、またその後、状況も変化したとされる。この改定は同制度の漸次廃止を意味する)。
 こうした「改革」に対し、労働者総同盟(UGT)と労働者委員会(CCOO)の2大労組ナショナルセンターをはじめとするほぼすべての全国労組が反対を表明し、書簡を送るなどして法案撤回を求めたが、政府は政令として5月24日公布を強行し、同27日実施に移した。
 労組側はこれに抗議し、撤回を求めて6月20日にゼネストを決行した。労組側はさらに、「改革」の全面的撤回を求めて10月5日には首都マドリードで抗議の大デモを行った。「改革」の一環として導入された農村雇用保障制度の漸進的廃止で大打撃を受ける南部アンダルシア州からは、300人の労組員が1週問以上かけてマドリードまで行進し、デモに合流した。また最大野党の社会労働党や、スペイン共産党を中心とする統一左翼などの左派政党の代表らも多数参加し、デモ参加者は20万人に達した。
 デモの2日後の10月7日、サプラナ労働相はUGT、CCOOの両書記長との会談で、失業手当制度「改革」法案を国会審議に持ち込むのに先立ち、労組側の要求を大幅に取り入れ、大幅修正することを明らかにした。しかし、政府は農村雇用保障制度の「改革」だけは譲ろうとしなかった。
 こうして最終法案では、当初の「改革」内容は大半が撤回されたが、政府と財界は当初の意図を捨てたわけではない。その意味で、闘いは続行中である。

週35時間制の広がり、UGT大会と諸要求

 スペインの2大労組ナショナルセンターの一つ、労働者総同盟(UGT)が3月13〜16日、マドリードで第38回大会を開催し、カンディド・メンデス書記長(再選)、中央執行委員13人らを選出した。スペインでは1997年以降、自治州、地方自治体などを先頭に、週35時間労働制の導入が進行している。今大会でも労働時間短縮、とくに法定による週35時間制(週4日制)実現の問題が主要課題の一つとして討議された。UGTの集計によれば、2001年現在、労働者の約9%にあたる135万人が、自治州だけをとると労働者の67%が、すでに週35時間制で働いている。
 大会ではそのほか、次の諸項を含む諸要求が決定された。

  • 最低年金を平均所得の50%に(現行は最低賃金の75%)
  • 繰上げ退職(早期年金入り)の権利の保障、および65歳以前への繰上げ年金入りの場合の減額率の軽減
  • 労働者の地理的移動を容易にするために十分な住宅供給を
  • 最低賃金を月666ユーロに引き上げる(現行442.20ユーロ)
  • 育児休暇を1年に延長する(現行4ヵ月)
  • 各機関への労働組合代表の代表(参加)権の拡大