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国旗 世界の労働者のたたかい
オランダ
2003
「ワッセナー合意」

 1970―80年代はじめに高失業率に悩まされたオランダは、フルタイム労働者との均等待遇を保障したパートタイム労働を大規模に導入し、着実に失業率を下げてきた。パート労働導入のきっかけになったのは1982年、政労使三者間で結ばれた「ワッセナー合意」であった。このなかで政府は、産業や企業の交渉担当者に対し、現行の団体協約から生計費スライド条項を撤回すること、失業の削減と利潤増大のために労働時間短縮を行うことを勧告した。事実、労働組合の指導者であったウィム・コック(その後首相になる)は賃金抑制とひきかえに、仕事の保障、社会保障給付の維持、国の決定機関への参加について、政府と経営者に同意した。これがその後の改革の出発点をなした。1983年から1986年の間に賃金は急激に低下し、労働時間が短縮された。しかし高い失業が続き1990年代初めには10%になった。
 1993年の労働法改正から2000年7月にいたる一連の措置によってこの合意が発展させられ、パートタイム労働とフルタイムとの均等待遇の保障が確立した。パート労働者には賃金・給与、年金、保健、社会保障、労働条件など、あらゆる面でフルタイム労働者との差別が禁止された。2000年7月施行の労働時間調整法では、フルタイムからパートタイムへ、またその逆への変更を労働者の意思で決めることが可能になった。この結果、同国のパートタイム労働者の割合は37.9%(1997年)で経済協力開発機構(OECD)加盟国の中では最高となった。失業率も約3%にまで低下した。
 「ポルダー・モデル」(オランダ・モデル)とは、決定の過程において政労使間で協議を行うこの国の機構のことである。実際の段階は1994年に政権にあった労働党(PVDA)、自由党(VVD)、中道左派自由党(D-66)の第一次連立政府の間で作られたが、モデルの諸要素は先のワッセナー合意とオランダ社会の戦前の組織にさかのぼる。
 喧伝されたこのモデルは労使協調を特徴としているが、いまでも労働者は協調的でたたかっていないように考えられている。しかし、すでにこの社会の内部でも「もうそのモデルの役割は終わった」と考えている人たちがいる。以下は2002年における団体交渉、たたかい、その他の例である。研究の余地があるので、まず1年間をみていただきたい。
 なお、2002年5月15日に総選挙が行われた。キリスト教民主党(CDA)が第一党(43議席)になり、8年続いた労働党を中心とした連立政権に代わり、フォルトゥイン党(LPF)、自由民主党(VVD)の三党連立政府が成立した。2002年3月に結成されたばかりで、下院に議席がなかった、移民の増加反対など極右的政策を掲げる「フォルトゥイン」党の第二党への進出は、内外の人々に懸念を抱かせ、ヨーロッパに波及している右翼勢力台頭の流れを改めて裏付けた。労働党は45議席から23議席に減った。
 その後、10月16日、この中道右派バルケネンデ政権は、LPF内の混乱をきっかけに連立政権継続を断念し、誕生後3ヵ月足らずで総辞職した。総選挙は2003年1月。

経団連の望む団体協約の内容

 2001年末以来、主要経営者団体は来るべき団体交渉に備えてきた。その中心点は弾力的支払い制度、法定休日の権利の無効化を団体協約に組み込むことである。
 主要な経営者団体であるVNO、AWVNは年末になって交渉に臨む態度を決めた。かれらの重点の一つは賃金で、これら二つの組織はともに、賃上げを自動的に許してはならない、それは労働者の成果に結び付けるべきだと考えた。経営者はとくに構造的(Structural)賃上げを憂慮し、これは世界的不況のもとで、オランダ企業の競争的立場を低下させると述べた。こうした立場は産業別の経営者や企業への指針に過ぎないように見られるが、全般的なゼロ賃上げと成果に結びついた個人別の賃上げという構想については、エレクトロニクス企業フィリップや、建設産業の経営者が具体的に取り上げた。経営者はこの二つの協約を、オランダにおいて先頭をいくものと考えた。
 休暇の問題については、経営者は法定休暇を団体協約によって無効にするよう協定したいと思っている。

各産業での団体交渉の進展

 経済情勢の悪化に直面して、経営者側は賃上げ要求の自粛を要請した。しかし、団体交渉はあちこちで急速に進み、労働組合がこの要請に応える兆候はほとんど見られなかった。
 非常に多くのレイオフがあったが、熟練労働の不足するなかで、経営者は困難な交渉に直面した。経営者は2%を超える賃上げは望まず、経団連MKB会長は賃上げゼロを懇願した。
 かつて労働組合は、その産業の経済力にふさわしい賃金要求を出すのだといった。AWVN所属の経営者は労働組合が個々の経済部門の事情に関係なく、軒並み4%を要求していることに不満を表明した。2001年度の経済はいっそう順調で、技能の大幅な不足もあって、賃上げの平均は4.1%であった。したがって、これを上回るのはむずかしかった。
 この中で園芸部門が真っ先に協約を締結した。それは8.8%の賃上げで、2年間にわたって段階的に実施するものである。フィリップのような大手企業の交渉は決裂し、建設産業も同様であった。
 アングロ・ダッチ鉄鋼会社コーラスは、最初に1%賃上げプラス一時金0.5%を回答した。組合側は具体的要求を出した。すなわち、4%賃上げ、タイム・バンキング制度、管理職員の週36時間労働(週5日ではなく4日に)、育児手当の引き上げ、60歳退職の維持である。経営者は、2月14日以前の交渉を拒否した。この日までに組合はストに入る通知を出すことになっていた。コーラス経営者は直ちに回答を考え直すと応えた。会社は熟練労働が不足していたので、労働組合の立場は強かった。オランダ・キリスト教労働者全国連盟(CNV)が2002年の賃上げは全般に2.2%−4%にすべきだと宣言し、経営者が引き下げた賃上げを受け入れるつもりはなかった。

「賃金抑制について話し合おう」との政府のよびかけ

 政府は10月、「オランダは労働コストが高いため、企業の市場運営が困難である。もっと低い賃金の協定を結ぼう」と労使に呼びかけた。労使は、政府が労働廃疾規定改革、雇用補助金の減額、貯蓄賃金制度廃止の計画を明らかにするなら、協定を結ぶ用意があるとした。
 しかしオランダ・キリスト教労働者全国連盟(CNV-36万、国際労連、欧州労連)議長は、このような協定は賃金を抑制するだけの協定より広範にわたるものであるとの考えを表明した。とくに彼は、貯蓄賃金の廃止で政府の猶予を求めた。この協定が結ばれるならば、労働廃疾手当て(他のヨーロッパ諸国に比べて高い)を要求する多くの労働者の問題を解決するため、他の話合いも可能であると応じた。
 オランダ労働組合連盟(FNV-120万、国際自由労連、欧州労連)議長は、賃金抑制協定を受け入れる用意はあるが、まず「相互に話し合うこと」や「労働廃疾規定、貯蓄賃金、年金を含めた一括案を討論すること」が、組合員に何かを提案する立場から必要であると述べた。
 経営者団体MKB議長は政府に、財政赤字を0.5%増やし、さらに20-30億ユーロを経済に投入するよう呼びかけた。
 労働大臣は、労働廃疾問題を直ちに取り上げる必要があるが、労働組合側の要望(手当ての引き上げ)と使用者の要望(罰金の廃止)は、新規受給者が減り始めれば達成できると述べた。

ストライキを構えるフィリップの労働者

 多国籍企業フィリップおよびオランダの建設部門がストライキを構えて、新しい団体協約の交渉を始めた。オランダに本拠を置くフィリップは、世界最大のエレクトロニクス企業で、最近の発表では26億ユーロの損失があり、全世界で18,600人を解雇した。同社の国内生産部門は順調であるが、さらに人員削減をすると発表した。
 同社のオランダ労働者32,000人の賃金交渉は2001年11月に始まったが、2002年2月に最終ラウンドの話合いに入る前に決裂した。他の経営者は協約をうまく締結する先例になると見守ったが、経営者が回答した1.25%プラス一時金0.5%を、労働組合は「侮辱的である」とみた。フィリップの最初の回答は0.75%であったが、労働組合は4%の要求から始め、ついでこれを3.75%に下げ、15ヵ月にわたって支払うよう要求した。
 2月19日オランダ労働組合連盟(FNV)は、フィリップの1部門に対し7月1日から2%の賃上げと1%の一時金という経営者の最終回答を提示した。しかし、FNVは会社全体の組合員にたいし、これを受け入れないよう勧めた。経営者が3月15日までにその後の交渉を提案しないなら、フィリップのFNV、オランダ・キリスト教労働者全国連盟(CNV)、デユニの三組合は共同ストライキを行うと通告した。

フィリップの新しい団体協約

 フィリップと小さなデユニ組合が、この企業の他の労働組合との協議をせずに、1万4000人の上級職員のために新しい団体協約の交渉を行った。FNV、CNVおよびフィリップのなかで労働者の20%を代表するVHPPにとって非常に困ったことには、この企業のわずか数百人を代表する最小の労組デユニが2002年3月7日に、経営者と新しい団体協約の交渉を行い、調印した。他の労組が参加していないにもかかわらず、フィリップは「これは全上級職員に適用する」と宣言した。
 新協約は2002年1月1日に発効し、14ヵ月間有効である。協約条文によって、構造的(Structural)賃上げ2%が7月1日から実施される。6ヵ月後の2003年1月1日に、これに0.5%の構造的(Structural)引き上げが上積みされ、その月末に0.5%の一時金が加えられる。この協定に対し、CNVの交渉担当者は「不適切なやり方」と批判し、VHPP の交渉担当者は会社が労働者のことを真剣に考えていないと非難した。
 交渉中、他の労働組合(FNV、CNV、フィリップVHPPの金属・エレクトロニクス部)が一年という協約期間で3.75%賃上げを要求した。結局、フィリップがこれら労組に出した最終回答は、2003年1月1日からの0.5%の定期賃上げは別として、おおよそのところデユニ労組の合意したものと同じである。デユニとの協約が結ばれていたので、VHPPはフィリップのこの回答を拒否した。

<賃上げをかちとった最終協約>
 その後2002年3月、フィリップのエレクトロニクス・グループは、前の協約から除外された労働組合との団体協約に調印した。
 フィリップのストライキは、歴史上最大であった。新しい協約はその一週間後に成立した。CNVの組合は、経営者に回答の引き上げ説得する上で、このストライキが役に立ったと考えている。フィリップが2.5%を最大限として回答した後、労働者は一年間にわたって3.5%の賃上げという新しい団体協約をかちとって職場復帰した。
 結局のところ、フィリップはその回答を3.5%に引き上げ、それは16ヵ月という団体協約の期間、つまり2002年1月1日から2003年5月1日までのあいだに二段階にわたって支払われることになった。協約によると、2%の引き上げが2002年7月に支払われ、その後2003年にさらに1.25%が支払われる。デユニとの協約はそのまま維持されている。この企業は2001年に記録的な損失を蒙り、2002年の経済的見通しもまだ定かではなかった。この適度の賃上げは経済環境が良くないことを見越してのものであり、2002年度においてはこれがモデルになっていくと見られた。

建設産業における広範なストライキ

 広範に及んだ建設部門でのストライキは、賃上げ自粛を望む経営者の立場と鋭い対比をなした。
 建設労働組合であるFNV Bouw、CNV、ヘト・ズワルテ・コープは、18万建設労働者の団体協約改善の交渉を要求したが、使用者は組合が通勤手当の減額に応じないとの理由で拒否した。そのためこれらの組合は、2002年3月末からストライキを続けた。経営者組織NVOBに加盟する小規模経営者の建築現場にもストライキが拡大し、22の建築現場で3,000人以上の労働者が4月4日からその週末の4月6日まで職場を放棄した。労働組合は団体協約の全体を一括して取り上げるため、経営者を交渉のテーブルに就かせようとした。
 4月9日、ストは広がり、3万人を巻き込んだ。労働組合は経営者にたいし、とくに深刻な財政的影響を与える行動を集中的に繰り広げる方針をとった。例えば、新しい高速鉄道の作業を中断すると経営者には1日25万ユーロの損失であるといわれている。しかし経営者団体AVBBはストの影響はさしてないような言い方をした。FNV Bouwによると、4月19日には経営者の決意が揺らぎ始めた。事実、ヘイマン建設会社はAVBBの態度は手ごわすぎる、条件をつけずに交渉を行うべきだと宣言した。この会社は5,000人を雇っていて、影響力が大きい。これに他の二つの会社が続いた。
 そうこうするうち、組合は6週間のわたってストの計画をつづけた。4月19日、11,300人の労働者がストを続け、4月25日には36,000人に増えた。
 7週間にわたったストライキを経て、使用者と労働組合はこの産業における新しい団体協約の原則について合意した。協約施行は2002年1月からで、支払いは次のとりである。

  • 2%の賃上げ、
  • 約5.5%の自動的な物価補償を27ヵ月にわたって行う、
  • 二度にわたって、150ユーロおよび125ユーロの支払いを行う。

 使用者と労働組合はこの協約に満足の意を表明した。2002年2月初め、デッドロックを解決するため非公式の協議をした後でこの成果を得た。民間住宅の所有者はこのストライキで大きな打撃を受け、その損失は1200万ユーロと推定されている。

病院労働者のデモ

 FNVおよびCNVの労働組合連合のホテル・食品サービス部門労働者は、適切な労働条件を提示した新団体協約を支持して、10月に1ヵ月の行動をやりぬいた。
 病院部門にはおよそ30万人が働いており、そのうち4万人が組合に加入している。この部門の労働者は一度もストライキ行動を行ったことがないが、労働条件を改善する団体協約はどうしても勝ち取りたかった。多くの労働者は長時間働いているが、賃金の額はまちまちである。また多くの労働者がインフォーマル部門で働いているが、経営者はしばしば日曜出勤にたいする当然の手当を支払わない。他方、2分の1から4分の3の労働者、とくに同じ経営者のもとで何年も働いている者は、団体協約に規定されている以上の収入を得ている。また、資格をもった、経験ある高齢の労働者と、若くて、熟練度が低く、しばしばパートタイマーである者との間には、分断がある。
 この部門の経営者団体(KKHN)は、企業協約を推進したがっており、この年の初めに団体協約で決めた賃上げを免除するよう提案している。これは、多くの労働者が賃上げに預かっていないことである。CNV議長は経営者、とくに中央経営者組織(VNO-NCW)にたいし怒りを表明した。

ズボレにおける工場閉鎖

 フィンランド所有のジーゼル・ガスエンジン製造のバルチラが、ズボレの工場を閉鎖し、9月に700人を解雇することになった。会社は生産の過剰と需要の低下をその理由とした。ズボレ工場は三つのタイプのエンジンを製造しており、これを全部イタリアにあるこの会社の施設に移すことになった。会社は、トリエステにあるイタリアの工場はズボレより弾力的だという。この会社はフィンランドとフランスにも工場を持っている。
 しかし労働組合はこの決定に憤激し、オランダ・キリスト教労働者全国連盟(CNV)はズボレ工場には地方当局によって、周辺のインフラを含めて大量の投資が行われたと主張した。CNVは会社に、この閉鎖の決定を再検討し、ヨーロッパの他の施設からズボレに生産を移動すうよう要請した。CNVはまた、この地域にある他の多くの企業がこのバルチラ工場に依拠しているので、閉鎖の影響は2,000人以上になるだろうと警告した。
 オランダ政府も会社の決定には批判的であり、経済省は工場を閉鎖するなら、雇用増大のため新しい生産物開発を援助した1,950万ユーロの技術開発ローンを取り消すと主張した。オランダの国会議員も経済省にたいし、ズボレのオランダ工場がイタリアの工場に比べて不利な環境なのかと質した。
 しかしバルチラの経営者は、経済相がズボレ工場は多額の公共投資とオランダの弾力的労働市場のため多くの利点を持っているといっていたが、工場閉鎖の決定を覆すつもりはないと述べた。オランダ政府はイタリアへの生産移管を中止させるため、欧州委員会に提訴する予定である。
 その後閉鎖にたいして広範な抗議が起こり、会社は810の解雇予定のうち440を確保する計画を持ち出した。このうちの275はズボレ工場の雇用である。しかしこれでは370人が解雇される可能性がある。会社はズボレで生産されている型の自動車生産をトリエステに移し、ズボレには二つの販売部をもつサービス部門を残し、210人を雇う。新しい部品工場を設け、モーターブロック、シリンダーヘッド、ロッドを生産してトリエステ工場に送る。新工場はバルチラの一部ではないが、生産物を3年間受け入れることにした。労働組合は新しい部品工場を歓迎した。なぜならシリンダーヘッドの製造は高度な技術を利用するので、オランダの研究と開発にとって有利だからである。この閉鎖で最終的には、5900万ユーロを投資した工場と、関連事業を含むこの地域の2,000人の仕事が失われる。これはヨーロッパ議会で取り上げるに値する規模の問題であり、労働組合、企業の職場評議会、この産業の供給者、政治家の怒りを引き起こしている。

解雇を出さないための造船所での論議

 9月初め、造船会社IHCカランドは、クリムペン・アン・デン・リッセルにあるこの会社のヴァン・デル・ジッセン・デ・ノルト造船所で250人ないし270人の労働者を解雇すると発表した。この造船所は現在赤字をだしており、ヴァン・デル・ジッセンの前所長ジック・ブリンクは、モナコで開かれた最近の重役会で再編計画を提起していた。この計画はIHCカランドの中ではいい計画だとされてきたが、ブリンクはこれを実施できなかった。ブリンクは職場評議会から支持されてきたが、それは彼の提案した計画が労働者を1人も解雇せず機構の再編成を行うものだったからである。
 この造船所での問題は、モント・セント・ミシェルのフェリー建造で始まった。これはヴァン・デル・ジッセンが労働者の雇用を維持するために引き受けた。このフェリーは2100人以上を収容し、海峡を渡る最大のものの一つである。しかし市場は飽和状態で、ほとんど需要はなかった。そのため会社は激しいコスト競争を強いられた。そのうえフェリー建造は当初計画したよりずっと複雑であった。建造の完成が遅れ、それを買う海運会社から補償を要求されたばかりでなく、外部から高給で専門家を雇わなければならなかった。こうして、以前は利益のあがっていた造船所が大きな損失を蒙った。

協議から排除されたFNVとCNV

 経営者団体KHNは、ホテル・飲食産業の30万労働者の団体協約に関して、オランダ労働組合連盟(FNV)およびオランダ・キリスト教労働者全国連盟(CNV)との協議が6月半ばに行き詰まり、その後、この産業の少数派のデユニ組合と協議した。討議続行から排除された2組織は憤激した。ほとんどのホテル・飲食企業はKHNに加盟している。
 デユニ組合議長は弾力的で個別的な労働条件を取り入れ、2組織の組合員を排除して協約を成立させるチャンスであると考えた。議長は、「この考えは良くないが、ほかに方法がない。他の産業でもやっているように、われわれは経営者と労働組合の掛け橋になりたい」といった。デユニは全国で10万の組合員を持ち、そのうち500人がホテル・飲食業に働いているが、この産業でのFNV、CNV加盟の組合員はあわせて4万人である。
 CNVの交渉担当者はKHNのやり方に憤激し、デユニがこの産業の交渉権を持っているわけではないと抗議した。交渉における問題は、組合の要求が毎年4%であるのに対して、KHNが2年間で5.5%という最終回答をしたことから始まった。さらに、経営者の回答は、最賃の労働者だけは自動的に協約の賃上げを適用するとした。ほとんどの労働者は最賃以上の収入があるので、これは2組織にとっては受け入れがたく、9月30日以降ストライキを行ってきた。9月30日には全国集会を開く計画で、この産業の労働者に参加をよびかけた。

オランダ鉄道の再編成による雇用削減

 オランダ鉄道(NS)が「アイダ」と称するリストラ計画に乗り出した。第一段階は、約4、000万ユーロ節約のため、本社の人事部と通信部で350の仕事を削減することであった。
 その後で、生産支援、兵站、列車サービス補給部の労働者を削減する。運転手と車掌は不足しているので、このメンバーは維持する。余剰人員のおよそ3分の1は、空席を埋めないことと、全体として雇用を減らすことで処理する。NSはリストラを2003年2月に完了したいとしている。
 FNV鉄道労働組合執行委員は、「仕事の喪失の規模」は驚くほど大きいと述べた。NSは総勢21,000人を雇用しており、間接的にはさらに7,000人に雇用を提供している。労働組合は、最終的には仕事の喪失は2,000に近いと計算した。
 労働組合としては、とくに補給サービスの雇用を全部一度に削減するやり方は遺憾だとした。組合の交渉責任者は、「再編は継続的に進めるべきで、土壇場にすべてを進めると、いっそう多くの人に影響を及ぼす」と述べた。
 労働組合と職場評議会は、近くNS経営者との合同会議を始める。かれらはこれから数ヵ月にわたって「厳しい争議」が引き起こされるだろうといっている。これにたいしNSは、解雇される労働者の最終的な人数はおおよそ計画どおりであると述べている。

鉄道労組の争議―無賃乗車デーの通告

 10月21日、鉄道乗組員の新しい団体協約が決裂したため、オランダ労働組合連盟(FNV)加盟の鉄道労組は、組合員が交通費支払いに応じない場合には、無賃乗車デーの形でストライキを行うと通告した。
 オランダ鉄道(NS)人事部長はこの行動を「卑劣な行為」と非難した。会社は2003年1月1日から3%の賃上げ、続いて2004年1月1日からさらに1.5%の賃上げを提案した。しかしFNV交渉部長は、これを受け入れがたいと考えた。新協約は18ヵ月を通して計算すると、平均賃上げはわずか2.75%にしかならず、当時3.6%であったインフレ率を大幅に下回るからである。しかし経営者側は、インフレは2.5%、あるいはせいぜい2.75%であるから、回答は寛大なものだと主張した。
 前の協約は2002年10月に満了したが、労働組合は2002年10月1日に遡って4%、2003年10月1日からさらに2%を要求した。さらに労働組合は、NS全労働者の雇用保障を要求した。経営側は乗務員に2010年まで仕事を保障したが、財政問題のために、リストラ計画に乗りだそうとしていた。もし労働組合が要求している賃上げをかちとるなら、経営者は提案している350人の解雇に関して厳しい態度をとりそうだった。
 組合のその他の要求は、55歳以上の募集についてであった。組合はこれら労働者の社会保障の拠出を免除すべきだと考えたが、経営側は0.4%の拠出は妥当と考えた。
 FNVおよびCNVは鉄道労組の組合員にたいし、NSの回答に反対投票するよう勧めた。もし労働組合が無料乗車デーを実現するなら、経営者は組合を法廷に引き出すつもりであると、会社の財政事情の深刻さを強調した。

9.11事件後のKLMの再編と解雇

 2001年9月11日の事件による業務の欠損にもかかわらず、オランダ航空KLMは、2月現在、いかなる雇用も削減しないと約束した。労働組合は雇用を守るため賃上げの協定締結を延期することに合意した。
 KLMは2002年初め、9.11事件の結果としての解雇を認めることはできないと宣言した。7組合と経営者のあいだで、先の労働時間短縮措置と合わせた最近の協定が締結されたことで、新たな解雇を出さないことになった。KLMでは、合意した2%の賃上げの延期で、組合は2%の生産性向上に合意した。また整備員は、2002年に4日の休暇を、乗務員は6日の休暇を放棄した。KLMはこの休暇の損失を2003年に、金銭あるいは時間で補償することに同意した。13ヵ月目の賃金(ボーナス)を中止する提案については、組合は拒否した。
 中級、上級の経営者は、7%から15%の給料を5ヵ月にわたって放棄した。これは一連の作業場所の削減、投資の中止、労働時間短縮の導入、他の航空会社との協力と合わせて、KLMが実施した多くのコスト削減戦略の一部に過ぎない。組合はこれらの措置を支持し、当面する経済状況の苦しさを理解した。FNVによると、KLMの営業は1ヵ月6,000万ユーロの損失を出していた。
 年初に有効であった団体協約は4月1日に満了したが、KLMは解雇を考えてはいなかった。
 KLMは機構再編をすると発表したが、この段階では、どのくらいの解雇が行われるかは明らかではなかった。KLMは9.11事件と観光産業の沈滞のなかで、解雇を避けようと運営してきた。最近発表された再編は、二つの子会社(短距離の貨物運送のKLMUKとKLMシティホッパー)の経営を統合することである。

異常に高い病気休暇率

 ポルダー・モデルの現在の特徴は、高い経済成長率、失業率の低下、労使関係の安定、ワークシェアリングの四つとされている。また「パートタイム経済の国」ともいわれている。しかし同時に、疾病休暇率が異常に高く、2001年には労働による病気休暇者として登録されていたのは90万人で、ベルギーで病気休暇を取っている人数の2倍である。病気休暇を減らす試みがこれまで何度もなされてきたが、一般廃疾年金法と関連して、病休給付法(WAO)のもとできわめて寛大な条件が与えられているため、労働者が速やかに職場に復帰するのを妨げている。現在一年間に約8万―10万人がこの制度に加わっている。
 オランダ労働者の高い病休率はとくに問題であると考えられ、しばらく前から法律の改正が認められるようになった。政府はWAOの将来についていくつもの委員会を設置し、経済社会評議会(SER)のなかで討論を重ねた。2002年1月19日、SERにおいてWAO給付受給者の人数を減らすことで合意が成立した。現行の受給者の権利は侵さないが、一年間の新規加入者を10万から3万に減らすことが望まれている。FNVの加盟組合員はこの提案を受け入れたが、FNV中の最大の組合Bondgenoten(50万人)と警官組合の組合員は最初反対した。2002年3月20日、SERの委員33名中3人が反対に回った。
 WAOに関する討論を出発点として、ポルダー・モデルをめぐる討論が広がっている。経済学者ばかりでなく、FNVの議長もこれに疑問を投げかけている。20世紀後半に発展したこの協調的労使関係の有用な時期は過ぎたといっている者も少なくない。このモデルのもと、オランダ経済は賃金抑制と低失業を実現できたが、刷新の欠如、低い労働生産性と経済成長、決定の遅滞をもたらしていると批判されている。

FNVは労働・安全についての労使協定を要求

 FNVは、労働者、使用者、労働組合が労働廃疾、保健、安全について取り決めを行う「未来のための課題」を呼びかけている。
 FNV議長ロッドウィーク・デ・ワールが14ページの書簡を前内閣の首相に送り、経済社会評議会(SER)による労働廃疾法の改革に関する助言の採択を支持した。
 書簡はまた年金制度の近代化を要求し、給付を受けている失業者が就職したとき金銭上不利にならないよう要請した。
 CNV議長は、4月始はじめ、「ワッセナー」の精神での政労使による「社会契約」を提案し、その中で仕事の保障、社会保障給付の維持、国の決定への参加とひきかえであるなら、労働組合は自発的な賃金抑制に同意すると述べた。

2003年に向けての賃金要求

 オランダ労働組合総連合(FNV)とオランダ・キリスト教労働者全国連盟(CNV)はともに、2003年度について2.25%から3.5%の賃上げを要求している。CNVはこれに加えて、政府が廃止した「貯蓄賃金」制度に代わるものとしてさらに3%の追加を主張した。貯蓄賃金とは、賃金の一部を雇用者が特別貯蓄勘定に直接振り込むものである。
 CNV議長は、2001年度に初めて格差のある賃金要求を出した。その結果2002年度の賃上げは2.5%から4%であった。2002年の要求は0.25%低かった。しかし交渉では、この他に年金や育児費用を考慮しての追加支払いを受ける余地があった。CNVのその他の要求は、子どもの出生後の父親にたいする5日間の休暇、緊急休暇の場合の全額有給(現在は70%支払われている)である。
 FNVは2003年度には最高3.5%の賃上げ、および他の要求のために0.5%を上乗せするというものである。しかしFNVの団体交渉責任者は、「われわれにとっては所得より雇用のほうが重要だ」として、雇用を減少させないため業績の良くない部門での要求は低くすると強調した。彼はまた経済の悪化および政府の支出削減の意向という「悪い条件」を挙げた。働く人の購買力を失うとすれば、FNVは要求の引き下げはとてもできないと考え、3%―3.5%の賃金要求について真剣に討議した。FNVは3%の貯蓄賃金というCNVの要求には賛成していない。CNVは全部で6.5%かそれ以上という要求は非現実的であり、雇用を損なうと考えている。経営者団体VNOは、失業が増えているときに、組合の要求は無責任だと考えている。