全労連 TOPへ戻る BACK
国旗 世界の労働者のたたかい
ルクセンブルグ
2003

グッドイヤーの団体協約

 グッドイヤー・タイヤ製造企業において、ルクセンブルグ独立労働組合連合(OGB-L)が、新しい団体協約の提案を受けた。この企業は約3,700人を雇っており、この国では鉄鋼産業を除けば最大の雇用主である。
 提案の2年協約は2002年1月1日から2003年12月31日までを期限とし、いじめの場合の手続きおよび土曜日に働いた場合の割増手当てに関する条項を含んでいる。しかし、全般的賃上げの規定は何もない。このグループが史上二度目の欠損を出し、タイヤ産業が世界的に過剰生産状態にある厳しい時期の交渉であった。協約には主として次の点が規定されている。

  1. 職場でのいじめの場合、犠牲者は敏速に使用者と従業員代表に連絡をとり、かれらが問題を取り上げ助言できるようにする。
  2. 例えば、新しい仕事の賃率が前の仕事より低い場合には、新たに作業グループを設立し、具体的な再配置上の詳細な取り決めについて仲間に助言する。
  3. 諮問グループを設け、この会社の従業員への補助年金制度導入について通知する。合意が成立すれば、使用者の適切な拠出金を2002年初めにさかのぼって支払う。
  4. 手取り賃金の0.3%の金額を別に蓄え、2002年および2003年の時間賃率引き上げにあてる。新規従業員には請負賃率を廃止する。
  5. 全従業員にグッドイヤーの100ユーロのクーポン券を支給する。
  6. 現行の早期退職制度を維持する。
  7. 全従業員に2003年1月15日に、400ユーロの一時金を支払う。
  8. 新規従業員が土曜日の仕事を行う場合、1シフトについて43ユーロ、半シフトについて21ユーロを支払う。この給付はこれまで新規従業員が受け取っていた手当の50%に相当する。

鉄鋼産業のスト回避

 全体的に協調的な労使関係にある国で、鉄鋼産業全体のストライキが計画され、回避された。その後で、政府、鉄鋼経営者、労働組合のいわゆる「鉄鋼三者会議」が1月に開かれることになった。
 鉄鋼産業の労働者は、ヨーロッパの鉄鋼大手三社、アルベド(ルクセンブルグ)、アセラリア(スペイン)、ユジノール(フランス)が合同し、世界最大規模の鉄鋼会社になるという2001年2月の発表を、不承不承に受け入れた。新しいコングロマリットのアルセロールは12月に発足し、2月18日から操業した。アルセロールは粗鋼の年産が4,500万トンであり、年間の総取引高は300億ユーロ、全世界の雇用労働者数は11万人である。
 ルクセンブルグは鉄鋼産業と政府が協力する長い歴史をもっている。1970年代の経済危機の際、政府はアルベドの株30%を所有し、最大の民間経営者となった。しかし政府と経営者が合同する観点で産業の未来を何ヵ月も討論し、結局2001年10月に鉄鋼の三者会議が開かれた。ルクセンブルグ独立労働組合連合(OGB-L)とルクセンブルグキリスト教労働組合連合(LCGB−国際労連)は、労働組合の関心事が認められていないと感じた。
 この合同で、ルクセンブルグでは他の国のように多くの雇用喪失がもたらされはしなかったが(主にベルギーでは、第一段階として、ワロニアでおよそ1,500人の仕事の喪失が懸念された)、労働組合には憂慮すべきことがたくさんあった。例えば、国の将来の役割、三者会議の将来、鉄鋼生産の主要現場の保護と「周辺」ビジネス(アルベドに加盟しているが、直接鉄鋼生産を行っていない)の保護、従業員共同決定の将来の役割、多くの労使・人事の問題である。これらを解決するために2002年1月に鉄鋼産業三者会議が開かれた。
 この会議を前にして、OGB-L、LCGB、NGLは2001年11月、それぞれの幹部を先頭に2,000人が参加して、ピケ、デモ、行進などを含む行動デーを成功させた。しかし鉄鋼生産は続いていたので、これはストライキではなかった。
 12月初め、労働組合は、もし三者会議が前進の方向で合意に達することができなければ、2002年1月にゼネストを行うと宣言した。しかし三者会議で次の点を含む合意が得られたため、ストライキは中止された。

  • ルクセンブルグ国家は引き続き新会社の主要株主であり、重役会にはルクセンブルグのメンバーが参加する。
  • ドデリンゲンとロダンゲの重要現場は、将来確保する。
  • 早期退職の条件は、将来も鉄鋼三者会議の議題に掲げる。
  • 現在の共同決定モデルは維持する。
  • 「周辺」ビジネスは、将来も鉄鋼三者会議に参加する権利をもつ。

 組合が要求を達成できなかった大きな失策は、鉄鋼産業の共同決定モデルを周辺ビジネスに広げられなかったことである。
 全体として、労働組合による11月の行動デーおよび部門別ストは中止されたが、三者会議で到達した合意点は、将来の討論にとっての土台であると労働組合は考えている。

ハスキーにおけるリストラ

 土壇場で経営者と合意に達した後、この工場の唯一の労働組合であるルクセンブルグ独立労働組合連合(OGB-L)は、噴霧器鋳型製造ハスキーSAにおいて少なくとも33人の雇用を守り、解雇される労働者のための一連の手当を確保した。
 2001年11月12日、デュデランジにあるハスキーSAの経営者は、68の雇用喪失を発表した。ホワイトカラー労働者(37名)もブルーカラー労働者(31名)も対象となった。工場の団体協約に署名したのはOGB-Lだけであるが、この組合は喪失する雇用を最小限にし、容認できる労使計画にこぎつけようと、3週間にわたって経営者と交渉した。結局、協約はもともとの期限満了日より2日遅れた2001年11月30日に調印された。合意された計画によると、33ないし43の雇用が確保され、余剰人員は労使の基準および職業的基準の組み合わせにしたがって合意される。この計画の詳細は次のとおりである。

  • 20人の労働者は、会社のリストラのためのレイオフ(部分失業)という規定の一部として、最大限12ヵ月にわたって仕事が確保される。これは通常、13.5%の賃金喪失を必然的に伴うが、会社は9.5%で準備することで同意した。つまり、賃金の全体的な損失は4%だけということになる。
  • 13人から23人の労働者は、成功裏に再格付けされれば、会社の他の部門において、以前は外注していたが、今は会社に取り戻した仕事などに配置されるだろう。これらの措置が成功するかどうかは、リストラ計画に必要とされる技能と職業格付けをもった労働者を確保できるかどうかにかかっている。どのくらいの数の仕事を救助できるのかは、当該する労働者との個々の面接の成果にかかっている。
  • 仕事を失った労働者は、集団解雇一括案のもとで合意した一連の手当を受け取る資格をもつ。一人当たりが受け取るのは、6ヵ月の賃金と、この会社で働いてきた期間の1ヵ月につき37.18ユーロである。また18歳以下の被扶養者、あるいはフルタイムで教育を受けている被扶養者のそれぞれにつき2,107.19ユーロである。

 こうした協定の詳細に従って、最善の場合で25人、最悪の場合で35人が仕事を失う。
 最後に、労使は、職業紹介所(ADEM)および労働省とともに、若干の職業訓練を確立し、予告期間の終わりには失業者が労働市場にふたたび参加できる可能性を追求することで合意した。