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国旗 世界の労働者のたたかい
イタリア
2005

雇用防衛・経済政策転換のたたかい

 近年、イタリアでは、産業の衰退が深刻化している。製鉄、電気通信、自動車、化学、薬品、繊維などの部門で、企業の閉鎖・撤退・経営危機が相次いでいる。2004年2月にCGILが発表した調査結果によれば、最近6ケ月で20万以上の労働ポストが危機にさらされ、最近一月だけで8500人以上の労働者の紛争が政府の介入を求めていた。工業生産も36ケ月停滞を続けており、2004年1月には、前年同月比で6%のマイナスを記録した。
 こうした状況のなかで、CGIL、CISL、UILの三大労組は3月10日、ローマで統一代議員集会を開き、3月26日に政府の経済政策転換を求めて4時間のストライキを行なうことを決定した。また、ストライキ前に全ての職場で集会を行なうことも決められた。ストライキのスローガンは「イタリアの未来を作ろう」であったが、そこで追求されるべき優先事項は経済成長と雇用の防衛であった。そのため、政府の経済政策転換、新しい所得政策、社会政策の改善が求められた。経済政策の転換とは、新自由主義的政策を促進している政府に対し、産業の衰退と対決して積極的な役割を果たすことを求めるもので、研究・開発への財政支出の増加や技術革新促進政策、地域生産システムの競争力改善のための地域政策などを内容とするものであった。
 3月26日、北はトリノから南はパレルモまで、イタリアの多くの都市でストライキと広場への参加は「異常なほど」であった。また、この日に先立って、組合の要求や提案を広く市民に理解してもらうための行動や集会も行なわれ、多くの人々の関心と共感を集めた。
政府の経済政策転換を求めるたたかいは、11月30日にも4時間のゼネストとして行なわれた( このたたかいについては後述 )。以下では、雇用防衛のたたかいについて幾つかの典型的ケースを見てみる。

○FIAT
 FIATでも深刻な雇用の危機が続いている。Mirafiori工場では、約3000人の労働者が1月26日から2月初めまで、所得補填金庫に止まっていた。Thesis、 Alfa166などの車種を生産するラインは停止していた。2月20日、この工場の三大組合組織は、統一して雇用防衛のためのたたかいを再開することを決定した。たたかいの目標は雇用が現在の1600~1700人のレベル以下にならないことであった。そのため、組合は日産1300台の生産量を維持すること、この工場の将来のため新しい車種の生産がこの工場にまかされることを要求した。Mirafioriにまかせる新モデルがない場合は、犠牲がFIATの全工場で分割されることを要求していた。
 再開された交渉で、経営側は現在の雇用レベルを保証するとしていたが、5月半ばの時期には、Mirafioriの生産量は1日800台に制限され、その保証は危ういものになっていた。6月9日、金属機械組合は<トリノのための24時間>と銘打った動員を行なった。トリノFIAT諸工場の労働者の80%は4時間のストライキに参加し、関連企業の労働者も含めて2万人が、Mirafiori工場の第5門から市内のカステッロ広場までデモ行進を行なった。
 トリノのFiom、Fim、Uilm、Fismicの四組合は、さらに、Mirafiori争議を支えてトリノで全工業部門のゼネストを行なうよう総同盟組合に提案した。他方、金属機械全国組合は国全体の経済政策においてMirafiori問題を最優先課題とすることを求めるアピールを出した。
Mirafioriの問題はトリノだけの問題ではなく、より広い視野のなかで取り組まれねばならないからである。また、組合は、6月に予定されるFIATグループのリーダー、マルキオッネとの会談において、Mirafioriとグループ全体の将来計画を明らかにさせることとした。
 10月6日の経営側との会談のあと、組合は、11月5日にグループ企業の全工場で4時間のストライキを行なうことを決定した。中・上級車生産を放棄するとともに、国内生産を縮小し海外での生産を拡大する、そのため関連業者の見直しを開始するとの経営側の方針に対する抗議のためであった。11月5日のストライキへの参加も80%以上の参加を得て、成功した。Mirafiori工場では、労働者の80%が作業を放棄し、約5000人の労働者が工場内でのデモ行進に参加した。パレルモのTerni Imerese工場など他地域のグループ企業でも98%から60%の高率の参加が見られ、、その他の関連工場では参加率が100%に達するところもあった。

○Ast
  Astはウンブリア州テルニ市にある、Thyssen Krupp(以下、ティッセンクルップ)支配下の製鉄会社(従業員数900)で、主にマグネット薄板を生産している。ティッセンクルップのこの企業を閉鎖するとの突然の決定のあと、この町では「反乱」が起こった。街路が封鎖され、組合事務所が占拠され、この決定を伝えた企業管理者が滞在していたホテルは激怒した労働者によって取り巻かれた。
 2月6日、組合はゼネストを宣告したが、それに参加したのはテルニ市民全体であった。彼らは、この製鉄所の閉鎖が県全体の生産・雇用体制を危機に陥れることを自覚していたのである。組合は、「テルニの工場は、約束された投資によって計画量を生産すれば十分競争力を持っている。欧州で生産されているマグネット薄板の60%はイタリアで消費されている」と主張して、政府における産業政策の不在を批判していた。
 2月11日、生産活動省で行なわれた交渉で、大臣は、ティッセンクルップの決定は受け入れられない、マグネット生産の他の欧州国への移転には根拠がない、と述べた。エネルギーコストについて政府が優遇措置を講じているし、労働コストもドイツより低いというのがその理由であった。また、大臣はドイツ企業からAstへの追加投資をおこなうとの約束を得ていることも公表した。
 だが、2月18日以降始まった交渉は、7ケ月たった9月になっても、ティッセンクルップからAst存続の明確な約束を取り付けるのに成功しなかった。それは、製鉄生産部門の中国への移転プランを示しながら、Astでの生産・雇用目標を確認する前に、2012年までの電力優遇供給の便宜を求めた。11月末、ティッセンクルップは、一度キャンセルされた後、企業、政府、州、地方自治体、組合の間の合意議定書署名で長い紛争に終止符を打つはずであった会談を無期延期し、その後、マグネット生産部門(関連労働者約700人)の閉鎖方針を通告した。
 組合は、ドイツ企業の翻意は理解しがたいとし、交渉のテーブルに直ちに戻るよう要求した。そして、この行為が交渉断絶の道を選択したことを意味するとすれば、労働者はこれを受け入れないだろうとして、12月13日、各勤務番終了前の2時間のストライキを宣告した。12月14日には、8時間の全市民的ストライキを行なうことも決定された。だが、これらのストライキは、12月17日に交渉が行なわれることが決まって、撤回された。

○Alitalia
 Alitaliaでも、会社の提出した2004-06年企業再編プランをめぐって労使紛争が起こっている。このプランによれば、従業員2万1300人のうち2700人が余剰人員とされていた。余剰人員のうち1200人は事業の外注化によって発生するものであった。1月8日、航空管制官がストライキを行い、約600便が運行を中止した。当局側は、交渉が継続されている中でのストライキであることを理由に、不当なストライキとして非難した。1月19日には、パイロットの組合を除く諸組合が8時間のストライキを行なった。このため、364便が運行を中止し、64コースがルート変更を行なわざるをえなかった。
 6月25日、政府を交えた交渉は、パイロットと「飛行アシスタント」について人員削減を10月いっぱいまで延期するという合意に達した。政府による資金の「橋渡し貸与」の約束と夏季における紛争停止などがその条件であった。6月30日には地上要員についても協定が作られた。協定には、休暇中に勤務に就いた場合の割り増し手当てが廃止され、代休をとることで代えるなどのコスト抑制措置が含まれていた。
 9月末、ノンストップで続けられていた交渉は、企業再編プランについての合意で終了した。合意されたプランは、Alitaliaの二つの会社(FlyとService)への分割を定めた。この案は、初め、組合からの強い批判にさらされた。サービス部門の切り離しは、その後の売却につながる危険性をもつというのがその理由であった。だが、会社の倒産を避け、解雇を避けるためにはやむを得ない選択として、最後には、組合によっても受け入れられた。組合の懸念する「会社の一体性の欠如」の埋め合わせとしては、新しいサービス部門企業の資本金の51%は、Flyから出資されることとなった。10月28日以降会社と組合の合意案に対する従業員全員投票が行なわれた。

○カラブリア州の繊維産業
 この州の繊維部門は、北から南まで全域にまたがって、組合によって「臨終期」と表現されるような危機的状況にある。コセンツァ県では、Mdc(Manifattura del Crati)が倒産し、350人の労働者が職を失ったし、Marlaneは織物部門の労働者191人を移動リストに移した。紡績部門では150人がまだ残っているが、組合はその寿命も長くはないと懸念している。レッジョ・カラブリア県でも、San Gregorioの150人の労働者が「所得補填金庫」に送られた。組合の調査によれば、この州で、全体として700以上の労働ポストが失われ、関連企業ではその倍のポストが危機にさらされている。
 こうした状況にもかかわらず、州政府の対応は消極的なものであった。政府の対応も無責任なものであった。1月21日、カラブリア州の繊維部門の消滅を避けるために政府は何をしようとしているか”がテーマとなった上院での審議で、政府は明確な回答をすることが出来なかった。組合は、州政府に対し、状況の深刻さを把握し、労働者と市民の生活防衛のために配慮することを求めて、また、政府の地域政策・産業政策の欠如に抗議して、昨年12月1日に続いて、2月3日、ストライキを行なった。

福祉国家擁護のたたかい

○年金
 年金制度改悪(「社会保障委任法」)に対するたたかいは、昨年秋から年末にかけて大きな盛り上がりを見せた結果、政府から組合との対話を継続すること及び一ヶ月かけて法案を再検討するという譲歩を引き出していた。しかし、今年に入り、1月10,21日と行なわれた会談でも、法案修正の姿勢を示さず議会審議の再開と対話の継続のみを求めてきた。1月31日、ローマで行なわれたデモの後、2月19日の会談で、漸く、政府の回答が届いた。青年雇用促進のため年金保険料の企業拠出を軽減する案の撤回と社会保険支出の0.7%削減を主な内容とするものであった。組合は、前者を昨年来の組合要求を受け入れたものとして評価しつつも、後者については年金受給可能年齢の引き上げをもたらすものとして、反対した。
 4月3日、年金者はローマで、政府の年金政策に反対して、大規模な集会とデモを行なった。サン・ジョバンニ広場は、全国から船や列車で集まってきた100万人の年金者で埋まった。参加者は関係省庁前で座り込みをし、三つの隊列に分かれてデモをした。

○医療
 この分野でも、ベルルスコーニ政権が登場して以来、予算法によって公的医療システムへの国庫資金の支出は大きく削減されてきた。CGIL公務部門書記M.コッツァによれば、「2001年以来、公的医療システムのため州に払い込むべき義務的資金を経済省が払い込まないため、約300ユーロの資金不足に陥っている。これが埋められなければ、今後2~3年で、全システムが破壊されるだろう。」公的医療システムのこうした危機的状況を前に、医療関係者のたたかいが相次いだ。2月9日と3月8日、病院医師、医療技術者、全国医療システム管理者が作業放棄を行なった。このたたかいは、三年以上前に期限の切れている労働協約の更新を求めるとともに、市民の健康権を守り、全国的・公的医療システムを守るために行なわれた。同様の目標で、4月16日、家庭医と小児科医が全国ストライキを実施し、救急診療所の90%が休診した。4月24日には、病院医師の今年四回目の24時間ストライキが行なわれた。

○教育
 この分野でも、過去3年で約3万人の教職員のポストが削減されてきた。さらに、政府は「モラッティ改革」と呼ばれる全般的な教育改革を進めようとしている。それは、全体として、教育機関向けの財源を減らすことによって、学校システムのあり方に大きな影響を与えるものであった。例えば、教師数の削減によって一クラスの生徒数が増加するとか、授業の時間数が減少するなどである。1月17日のローマでの集会以来、教育部門の労働者は「モラッティ改革」反対の様々なたたかいを展開してきた。このたたかいには、学校教職員ばかりでなく、家族、学生、地方団体、その他の社会諸勢力が参加した。
 10月20日、全国の学校で政府の「多年度投資プラン」を要求して、「チェス盤式ストライキ」(チェス盤の上を進む駒のようにストライキが地域単位で少しずつ行なわれる)が始まった。教員、事務職員、学校管理者が授業開始時一時間のストライキを行った。このストは、20日のバジリカータを手始めとして、21日には、トスカーナ、プーリアなどで、22日にはエミリア・ロマーニャ、ウンブリアなどで続き、さらに、その後28日までイタリアの全州を巻き込んで行なわれた。
 11月15日には「モラッティ改革」と2005年予算案に反対して、10万人の教師がローマをデモ行進した。予算案は教員ポストを更に14000削減することを盛り込んでいたのである。ストライキへの参加率は平均70%に及び、所によっては90%に達した職場もあった。

○05年予算案・政府の経済政策修正を求めるたたかい
 10月末、CGIL,CISL,UILは政府の05年度予算案と経済政策への厳しい批判、税制改革撤回を初めとする重要な修正要求を含む共同文書をまとめた。そして、11月30日、地域ベースで4時間の統一ストライキを行なうことを決定した。実施されれば、ベルルスコーニ政権が成立して以降、五度目のゼネラルストライキであった。組合の主な批判点の一つは税制改革であった。それは消費と投資を増加させないが故に無益であり、購買力削減という形でより犠牲になるのは中・低所得者である一方、富裕な階層が優遇されるが故に、誤っているというのが組合の批判であった。第二の批判点は、予算案がリジッドで無差別な支出削減方針を採っていることであった。組合は、「真に優先的な選択」を伴う支出の選別的削減を主張し、経済成長とそれを支える訓練や公的インフラへの投資、賃金と年金の購買力強化、福祉国家の防衛と質の向上のための予算の増額を要求した。
 11月30日、全国の主要都市でで、数百万の人々が三大労組の呼びかけに応えて、ゼネストに参加した。平均して80%, 若干の大工業企業グループでは90%に達する参加率であった。ミラノでは10万、トリノで6万、ボローニャで5万、ローマで4万、ベネチアで4万、フィレンツェで3万、パレルモで2万5000が広場をうめ、全国で70の地域でデモが行なわれた。部門別で見ると、医療、地方自治体など公務部門の参加率が高く、政府部門でも80%の参加率が記録され、多くの美術館も閉館された。工業部門では建設部門労働者の参加が目を引いた。

賃上げ・労働協約更新のたたかい

○商業・観光・サービス部門
労働協約の期限が切れてから一年近くたっているのに、昨年( 03年) 11月26日以降、経営者側が交渉を中断していることに抗議して、12月20日にストライキを行っていた商業・観光・サービス等部門の組合は、今年に入って2月5日、事態の打開を求めて3月中に8時間のストライキを行うと宣告した。3月26日、今期協約更新闘争において二度目のストライキが実施されたにもかかわらず、経営側の歩みよりは見られなかった。労使の対立点の主なものは次のような点であった。
 最大の不一致点は、雇用形態のフレキシブル化に関する問題である。昨年成立した「ビアジ法」は雇用のフレキシブル化を促進する多様な雇用形態の導入に道を開いたが、これを受けてConfcommercio(商業部門の経営者団体)は法の完全な適用を求めていた。例えば、パートタイム労働者に従来認められてきたフルタイムへの移行の優先権を廃止し、日曜・休日労働の任意性を修正して新規採用のパートタイム労働者にこれを義務付けるというのが経営側の要求であった。その他、時間外労働や見習い制度についても旧協約の改悪が主張された。
 第二の対立点は賃金である。経営側の回答は100ユーロのアップであったが、組合はこの額では先の2000-02年の協約で決められたアップ分とその間の実際のインフレ分との差額分しか保障されず、2003-04年の物価上昇分は全く考慮されていないと拒否していた。組合側は2003-04年の物価上昇分として107ユーロを要求していた。
 厳しい経営側の姿勢を前に、組合は6月19日に三度めのストライキを行うことを決定した。だが、このストライキは実施されなかった。経営側が、賃金問題で、賃金の実質購買力保障を約束した1993年7月の「政・労・使協定」を尊重して、前向きの回答を行なう用意があることを明らかにしたからである。7月2日、労使が署名した協定の主な内容は次のようなものであった。
 協定は、賃金について、2003-04年のアップ分として125ユーロ(第四レベルの労働者の場合)を決めた。このアップ額は2001-02年のインフレ差額の回復のほか、2003年の2.5%の実質インフレと2004年の予測インフレ分2.3%を考慮したものであった。その他、400ユーロの臨時金が支払われることになった。
 雇用形態のフレキシブル化問題でも積極的な成果が獲得された。まず、パートタイム労働者のフルタイム移行の先任権は守られた。イタリアの大規模流通業(スーパーマーケット、ハイパーマーケツト)では約70%がパートタイマーで、そのほとんどがフルタイムへの移行を希望している状況のもとで、重要な成果であった。また、パートタイム労働については労働時間延長の問題も重要である。以前の法律では、パートタイム労働者が勤務時間を変更する場合、労使の協議を必要としていたが、昨年成立した「ビアジ法」とその後の関連法令は雇用主と労働者個人の個人的契約で行なうことが出来るようにした。今回、結ばれた協定はそれを団体協約事項として残していた。特に、労働者が経営者に一度約束した労働時間延長を健康保護、家族の事情などを理由として取り下げることを保障する「取り下げ権」の確認は重要であった。
 見習い制についても「ビアジ法」の規定は一つも適用されなかった。この法は「見習い」として雇用される者の雇用期間を従来の24~48月から72月に延長したが、労使協定では従来の規定が維持された。また、「見習い」を採用する経営者は採用された者の70%を期限のない雇用契約で将来も雇い続けることが義務付けられた。「期限付き雇用」については、この形態で採用しうる労働者の上限が、職場労働者総数の20%とされた。その他、「スタッフリース」や「呼び出し労働」の採用は新協定では認められなかった。

○公務部門
 この部門では、組合の賃上げ要求は8%であった。この額は2002-03年のインフレ格差回復分(2.7%)、2004-05年の予測インフレ分(各年2.4%)に補足協約のための0.5%を加えたものであった。一方、多くの閣僚が出席した6月の公式会談で協約更新が約束されていたにもかかわらず、政府が予算案に盛り込んだ賃上げ財源は3.6%(その後3.7%に0.1%増加)にすぎなかった。公的支出削減の必要がその理由であった。組合は、3.7%では2004年と2005年のインフレさえカバーできないとして、9月3日、政府との会談を求めたが、政府は交渉にも応じなかった。こうして10月以降、公務部門の協約更新のたたかいが激化することとなった。
 10月18日、ジェノバ、ミラノ、フィレンツェ、ナポリ、パレルモなどの都市でストライキが始まり、10月22日には、ローマ、トリノ、ベルガモ、ベネチア、ボローニャなどでストライキが行なわれた。11月30日に行なわれた経済政策転換、雇用、福祉国家擁護の4時間のゼネストには、公務部門労働者は8時間のストライキで参加した。さらに、12月前半、ローマで全国から集まった労働者による座り込み行動が展開された。組合は、2005年1月にもストライキとローマでの大規模な示威行動を計画している。

○銀行部門
 この部門では、協調的労使関係が過去数年間つづいてきたにもかかわらず、今年は経営側の姿勢は厳しかった。経営者は、工業部門の全体的な衰退の「償い」をさせられることを怖れ、労働コストを抑制しようとしたのである。
 組合側の要求は、この部門の労働者約34万人について、7.3%の賃上げであった。これは、2002-03年のインフレ回復分と2004-05年の予測インフレ分などであった。一方、経営側の回答は5.3%であった。7月13日の交渉中断の後、組合は、この回答を不満として、7月13日の交渉中断の後、地域ごとに分節化されたストライキを展開するとともに、9月10日に部門ゼネストを行なうこと、10月には地域ごとに分節化されたストライキを展開することを決定した。
 交渉は11月に入って再開されたが、経営側の姿勢に変化は見られず、12月22,23日にいたっても紛争は終結していない。

○建設部門
 この部門の全国労働協約更新の交渉は、これまでとは違って、比較的平穏に進んだ。昨年12月に始まり中断なく続いた交渉は、旧協約の15条を修正しようとの経営側の最後の抵抗が乗り越えられた後、5月20日、終結した。旧協約の15条とは、工事を落札した企業の下請企業労働者に対する連帯責任を定めた条項である。これによって、例えば、労働者が下請け企業から賃金を支払われない場合、落札企業にその責任を問うことが出来たのである。ストライキは行なわれなかった。締結された協定は組合にとって積極的なものであった。
 第一に、労働時間制の問題では、一日の上限を13時間まで延長することを認めた66号法を適用しようとしたAnce(建設部門の経営者団体)の要求を拒否することができた。以前の労働協約で定められた一日10時間(時間外労働2時間)の規定が守られた。年間の時間外労働上限は250時間に抑えられた。
 第二は不安定雇用への歯止めの問題である。期限付き契約やスタッフリースによる雇用を新規採用者の25%以内に制限することができた。見習い工については、この資格に止まる期間を制限することによって「ビアジ法」のもたらす打撃を抑制することができた。
 賃金面では、組合要求が100%受け入れられ、190ユーロのアップ(第三レベルの労働者)が勝ち取られた。
 2004年は、この他、繊維部門、地方公共輸送部門でも、労働協約更新のたたかいが取り組まれている。

組合員拡大

 2003年もCGILは組合員を増やし続けている。これで6年連続である。前年に比べて5万4347人( 1% )増え、全組合員数は550万人を超えた。史上最高の数である。年齢別では、30歳以下の青年が21%以上の増で、性別では女性の増加が12%だった。現役と年金者の別では、年金者の増が0.43% ( 1万2649人)であるのにたいして、現役労働者が1.61% ( 3万9745人 ) 増えている。産業部門別に見ると、15ある部門別組織のうち10組織で組合員が増えているが、増加率が特に目立っているのは、Filcams( 商業、サービス等 ): 5.50%, Sna ( 学校) : 4.95% , Fillea( 2.87% )などである。擬似的自営業者の組織であるNidilは今年も17.1%と最大の伸びを見せている。
 一方、伝統的工業部門では、昨年の現状維持状態から転じて、わずかながら減少傾向が現れた。Fiom( 金属機械 ):-0.36% , Filcea( 化学 ):-0.24 , Filtea( 繊維 ) :-1.98% といったところである。だが、これらの減少は従業員の減少によるものと思われる。これら部門での失業者の数は組合員数の減少を上回っている。繊維部門での組合員減は昨年も見られたが、従業員の減のほかに、零細規模企業が多く組織化が困難というこの部門の特殊性が影響していると言われている。CGILは、これらの成果を大きな組織化努力によるほかに、昨年組合が展開した様々なたたかいへの理解と共感が労働者や年金者、市民の中に広まっていることの現われだとしている。以下では、04年に行なわれた、Filcamsの組織拡大キャンペーンの一端にふれておく。
 今年4月20日から6月22日まで、Filcamsはローマとその周辺で、「権利を行使するため、権利を知ろう」と銘打ったキャンペーンを行なった。これは、労働関係法規とこの部門の組合が獲得した労働協約のコピーを大量に配り、店主や労働者と対話をするというものだった。ローマ市街と周辺地域で、全部で40万軒の商店、バール、レストランを廻り、約25万人の労働者と接触することができたと報告されている。接触した労働者のほぼ全てが関心を示し、宣伝物を受け取り、組合員の話を聞いてくれた。対話の中で明らかになったのは、「労働協約で定められた水準以下の報酬を受け取り、不安定な資格に挌づけられている人々の多くが」全国・県レベルの労働協約の存在さえ知らないことであった。休日労働の禁止や閉店日のルールも多くの商店では守られていなかった。「しかし、この数週間で何かが変わり始めている。労働者は情報を求め、われわれの巡回カーの回りに立ち止まり、ある者は雇用主に対して『紛争を始める』と言って戻っていく」とキャンペーン参加者は述べている。(斉藤隆夫)