全労連 TOPへ戻る BACK
国旗 世界の労働者のたたかい
ギリシャ
2005

概 観

2004年の指標
(「欧州委員会経済予測」2004年秋版、他)
経済(GDP)実質成長率
3.80%
消費者物価上昇率
3.00%
失業率
6.50%
財政赤字の対GDP比率
△5.5%
累積債務の対GDP比率
△112.2%
労働組合組織率(1999年)
26.70%

 ギリシャでは、3月7日の総選挙で11年ぶりに保守が勝利し、政権がPASOK(全ギリシャ社会主義運動)から保守の新民主主義党(ND)に移った。
 経済状況は下表に見るとおり、いずれの指標も厳しい状況の継続を反映している。経済成長率は2003年4.5%(実績)から2004年3.8%(予測)に後退、失業率は同期間に4.0%から6.5%に上昇している。とくに、8月のアテネ・オリンピック終了後、経済成長が停滞し、失業が増加傾向にある。

2004年の主な闘い・できごと

  • 2月10日 ギリシャ労働総同盟(GSEE)が「職業上の燃え尽き症候群」に関するセミナーを開催し、「職業上の燃え尽き症候群」の職業病としての認定、予防対策、労働安全衛生上の規制強化などを要求・提案した。
  • 3月7日 総選挙で11年ぶりに保守が勝利した(詳細は別項「総選挙で11年ぶり保守政権に ― 社民政権が敗北」を参照)。
  • 3月17〜19日 ギリシャ労働総同盟(GSEE)が、全国労働協約交渉をめぐる闘争でゼネストを構える中、第32回大会を開催し、新執行部を選出した。
  • 3月31日 ギリシャ労働総同盟(GSEE)が、8%賃上げ、労働時間短縮などを求めて交渉中の全国労働協約交渉を前進させるために、24時間ゼネストを決行した。
  • 4月28日 ギリシャ労働総同盟(GSEE)と内務省が、8月のアテネ・オリンピック開催にともない、年次有給休暇の取得の延期に関する法的措置と対応策に関する通達を出した。
  • 6月22日 失業者その他の就職困難者を公務・公共部門にパートタイム、有期雇用契約で採用するための新法が可決した。
  • 5月24日 全国レベルの労使関係当事者が、最低賃金引上げ、退職一時金増額、労働時間短縮などを内容とする全国総合労働協約に調印した。
  • 6月30日 銀行・金融業部門で、賃上げ(2004年=6%、05年=5.9%)などを内容とする労働協約が調印された。
  • 8月中旬 携帯電話会社Cosmoteで、賃上げ、仕事と家庭の両立対策、労使協議委員会の設置などを内容とする、同社および同産業部門で初の労働協約が締結された。
  • 6月下旬 労働組合側と商業海運省の交渉の結果、DANE海運社が所有していた3船舶の乗組員が、未払い賃金の一部を受給することに成功した。
  • 10月18日 一連の労働組合が、この日、放送開始された、失業者に賞としての職(雇用)を獲得競争させる番組に抗議した。
  • 6月22日 公営電力企業DEIで、公営電力企業全職員労働組合(GENOP-DEI)が賃上げ2年間で12.2%などを内容とする労働協約に調印。
  • 10月21日 ギリシャ公務員連合(ADEDY、医師、看護師、教員、航空管制官、建設労働者を含む)賃上げ、出産・育児手当の引上げ、労働条件改善などを求めて、全国ストを決行した(詳細は別項「公務公共部門労働者が24時間スト ― 賃金・諸手当引上げなどを要求」を参照)。
  • 11月2日 ギリシャ労働総同盟(GSEE)が、税制、所得政策、失業問題、労使関係などの改善を求めて、12月13〜15日ストライキを決行すると発表した。

総選挙で11年ぶり保守政権に――社民政権が敗北

 3月7日投開票で実施された総選挙で、保守の新民主主義党(ND)が過半数(定数300議席)を上回る議席を獲得し、全ギリシャ社会主義運動(PASOK)を破って11年ぶりに政権に復帰した。PASOKは90年代最初の3年を除き過去20年近く政権の座にあった。
 PASOK敗北の背景として、同党政権が進めてきた緊縮政策と失業問題が指摘されている。ギリシャは、2001年1月に欧州経済通貨同盟(ユーロ)に参加した。しかし政権は、参加後も、財政赤字を国内総生産(GDP)の3%以内に抑えなければならないなど、緊縮政策を迫られた。そのため、同政権は、公務員賃金引下げや年金受給開始年齢の引上げを提案したが、年金制度の改定ではPASOKの支持基盤である労働組合がゼネストを行うなど強く反発した。
 年約5%の経済成長率にもかかわらず、失業率は8・8%で、ここ2年間でわずか1.2%しか減っていない。低賃金労働力を求めて国内の企業が他のバルカン諸国などに生産拠点を移したことも影響した。
 NDは「変化」を訴えたものの、「民営化の推進」など、政策的にはPASOKとの間で大差はない。

公務公共部門労働者が24時間スト――賃金・諸手当引上げなどを要求

 ギリシャ公務員連合(ADEDY、医師、看護師、教員、航空管制官、建設労働者、地方公務員労働者を含む)が10月21日、前年に続き、賃金、家族手当、出産手当の引上げなどを要求して24時間全国ストライキを決行した。ストには70%以上の関係部門労働者が参加した。
 ギリシャでは近年、公共サービス部門および地方自治体でのパートタイムや有期雇用の労働者採用が急増し、2005年予算案もそうしたことを前提とし、公務公共部門での成果主義的個別賃金導入を予定しつつ、賃上げを3.2%と見込んでいる。
 ADEDYは8月20日、内務・公行政・地方分権省宛に、来るべき労働協約交渉での要求内容を送付していたが、予算案などに進展が見られないため、ストに踏み切った。
 ADEDYが掲げた主な要求には次のものが含まれる。

  1. 義務教育修了の公務員労働者の基本賃金月額の、590ユーロから1100ユーロ(勤続35年時2200ユーロ、大卒者同3300ユーロ)への引上げ。
  2. 新規採用手当176ユーロの支給対象大幅拡張。
  3. 遡及支給を伴う新家族手当制度の導入。
  4. 家族手当2倍化と、一人親家族への同額支給。
  5. 各出産児に対する出産手当の引上げ。
  6. 兵役期間の年金算定期間としての認定
  7. 保健、教育予算の(GDPの5〜6%への)増額。
  8. 重負担・非健康的職種公務員労働者に関する特殊規定の適用範囲拡大。

 ADEDYは政府に対して、2005年5月に正式の労働協約交渉を開始するよう求めている。(宮前忠夫)