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国旗 世界の労働者のたたかい
オランダ
2004
FNVが時間外労働削減を要求

 オランダ労働組合連盟(FNV)は、WOA障害者給付制度の改革計画を発表した。
 FNV計画に含まれる14の提案の一つは、構造的時間外労働の大幅削減である。FNVはまた、労働条件法(アルボエット)に違反した企業への罰金を5倍にするよう要求している。労働組合は、WAO加入者数を1万8千人削減し、1億ユーロを節約できると主張している。このようにして労働組合は、「問題の根源」に取り組んでいるといっており、専門家は受給者数の多さは、部分的には労働条件によって説明できることに同意している。
 01年5月、ピエト・ハイン・ドナーに率いられる政府の委員会が、SER経済社会理事会が行ったように、障害者として登録されている者の人数を削減する計画の概要を発表した。しかしこの助言は、現政府が2002年7月に成立した後で、部分的に採択されただけであった。新しい選挙は03年1月22日に行われる。FNVによると、これらの提案は、加入基準の厳正化ならびに給付基準の適正化に重点をおいており、他方で、予防措置がよりすぐれた出発点であるとしている。FNV議長ロデヴィク・デ・ヴァールは、予防のほうが、制度を変更するよりも確実であると述べた。

時間外労働の増大

 オランダ科学調査機構(TNO)による調査では、00−02年に平均時間外労働は50%増えた。労働者が行った時間外労働は、2000年の6.5時間にたいして、2002年には9.5時間になった。労働組合はこの時間外労働の増大を憂慮している。CNV議長は、「驚くべき兆候である。これだけの労働で10万の雇用を創設できるはずだ。非常に多くの雇用が脅かされているのだから、理由をはっきりさせなければならない」と述べた。
 経営者団体VNO-NCWは、労働者の労働時間を少なくしても、雇用は創出されないといっている。 しかし労働組合は、労働時間が長いと病気になりやすいと考えている。

賃金の上昇は緩慢

 ヘイ・グループ人的資源協会の調査によると、03年の賃金上昇は6年来の最低であった。02年7月から03年7月までの基本賃金の増加は、前年度の4.2%に比べて2.9%であった。ヘイ・グループは250社の中企業、大企業に働く35万人の従業員の賃金を調査し、高い地位の従業員は前よりわずかに低い賃上げ(2.6%)であり、低い地位の従業員の賃上げはそれより高く3.1%であった。04年には、このグループは同じ250社で、賃上げは2.2%と見込んでいた。しかし最近の協定による賃金凍結で0.9%になりそうである。
 調査で明らかになったその他の点は、

  • 労働者は次第にボーナスによる報酬を受け取っている。調査に参加した約92%の企業は、何らかの形の従業員ボーナスを定めている。そして、
  • 同時に、企業は自動車、携帯電話などの臨時支出を倹約し、支出を以前より細かく調べている。

 週刊「人的資源」誌の調査は、経済不況が労働市場に新たに参加した者にどんな影響を与えているかも明らかにしている。人生の出発をし訓練もあまり受けていない青年の賃金は少なく、雇用の期間は短く、6ヵ月契約である。職業訓練を終え、産業で働き始めた青年は前年に仲間がもらっていた賃金より平均で2.3%低く、公務部門で働く青年の賃金は前年より2.8%低い。しかし学位をもって産業で働く青年は、職業資格をもつ仲間より平均で0.1%高く、公共部門においては3.8%高い収入を得ている。

鉄道部門における団体協約

 雇用者協会NSRは、鉄道部門従業員を代表する鉄道労組と新しい団体協約を結んだ。新協約は雇用の保障に加えて、27ヵ月にわたる6%の賃上げを規定している。この協定は以前の協定より高い賃金を規定しており、高齢の労働者にも経営者の財政的負担で新しい措置を取っている。以前の規定では、高齢者が労働時間の短縮を望む場合には、コストを自分で負担しなければならなかった。
 賃上げは二度にわたって行われ、02年10月1日から3%、04年1月1日からさらに3%である。これに対し、前回は18ヵ月にわたって4.5%であった。協定には初めて、成果賃金が盛り込まれた。NSRの職員全体が対象となる。さらに、情報提供などの顧客サービスにたいし、0.5%の賃上げが追加される。
 CNVの交渉担当者は、「貧弱な協定であるが、すべてを考慮してみると積極的である」と述べた。労働組合は、仕事の保障が以前は2010年まで約束していたが 今回は協約の期限に限るという点に失望を述べた。
 多くの労働者が新技術の導入で職を失っているので、仕事の保障は重要である。また、運輸省が大量の業務を売却しているので、多くの雇用が失われるだろう。乗務していない労働者はすでに仕事の構造的再編成に直面し、790人の正規職員が仕事を失った。

衣服産業での団体協約

 最近、衣服産業で新しい団体協約が締結された。協約は2年半にわたるもので、衣服繊維部門の約1万人を対象としている。協約はモディント経営者協会とこの部門の労働組合のあいだで締結され、02年5月1日から04年4月までの期間に5.25%の賃上げを定めている。労働者が受け取るのは03年1月1日から3%賃上げ、03年11月1日からさらに2.5%で、年間の平均引き上げ率は2.6%になる。
 協約はまた、傷病手当を一時的に最大限30%削減することを含んでいる。FNV執行委員はこれを誇るべき協約と述べている。しかしかつて労働者は、病気の場合、6日間の待機日数を持っていた。これの廃止とひきかえに、労働組合は、一定の条件のもとで、病気の報告後最初の20日に賃金を70−85%引き下げられることがある。労使が病気休暇の扱いで合意できなかったため、交渉は頓挫した。

オランダ鉄道でのいっそうの雇用削減

 オランダ鉄道(NS)がさらに450人の削減を発表した。この最近の削減で、NSは1年間に4千万ユーロを節減し、すでに790人を解雇したアイダ再編計画の一翼をになうことになる。
 計画されている1,240人の雇用削減は400人分の空席、290人分の期限付き契約を含んでいる。FNV鉄道労働組合は、争議に訴えることを排除してはいない。
 労働組合は再編成のスピードを憂慮している。全体の過程は3年以上続く予定である。同時にNSは収入の増加をねらっており、このため03年の始めには運賃を4.9%引き上げた。NSはさらに03年7月から運賃の引き上げを望んでいるが、これは3月21日に裁判所が反対の裁決をした。

労働組合は週40時間制への復帰を拒否

 オランダの大手企業は、週40時間労働に復帰しようと呼びかけた。オランダ労働組合連盟(FNV)とオランダ・キリスト教労働者全国連盟(CNV)はこれを拒否した。弾力的に働いている人が増えているときに、これは不適切だからである。呼びかけたのは経営者団体VNO−NCW議長である。彼はこの方法こそ、弱くなる一方のこの国の経済競争力を改善すると考えた。また労働力の老齢化のため低下している生産性を改善する道であると考えた。
 FNV代表によると、「前世紀に、労働時間はいっそう短くなった。この動きを支えたのは、労働者が自由時間の増加とひきかえに、賃金の引き下げを受け入れた措置のためであった。」CNV議長は、20世紀に支配的であった考え方にしがみつく経営者を非難した。現在、ほとんどの労働者の週労働時間は、40時間以下であり、公共部門での平均週労働時間は36時間である。
 NVO-NCWは組合の立場は理解しないと主張し、「労働者が労働時間の短縮を望もうと、もっと弾力的な働き方を望もうと、われわれは個々の労働者に合わせて個々の措置を取りたい。これは36時間内で行うと同じように、40時間の中でもできる。」また、経営者団体は高齢者について、今働いている人はもっと長い時間働いて、国民経済の成長に貢献すべきである、といった。したがって経営者団体は、早期退職を廃止する政府の計画を支持している。
 もう一つ経営者が提起した問題は、来年度は構造的賃上げの代わりに、一括払いにすることである。FNVとCNVは、これは一部の業績の上がらない部門では役立つかもしれないが、中央で一律に取り上げるべきではない、と述べた。

新しい労働者病休制度の合意

 9月12日、政府は労働組合の病休にたいする新たな、より厳しい制度の枠組みについて合意した。新法は06年1月1日に発効し、目的は病休給付法(WAO)による給付全額を新たに受け取る人数を年間6万人から2万5千人に減らすことにある。将来は、全面的に能力を失い最低5年間働けなかった者だけが完全な資格を与えられる。
 部分的に不能となり働けない者は、最初は失業手当をもらい、次に最低の社会給付をもらう。部分的に不能となりパートタイムで働く者は、給料の補助をもらう。35%以下の不能の者は、雇用者のもとに留まる義務をもつ。
 04年1月から、雇用者は2年間にわたって(今までは払っていない)、労働に障害のある従業員に賃金を払いつづける。しかし2年目に、その従業員の賃金満額の70%以上を払うことは許されない。
 法律は変更を加えられているところであるが、05年には、WAO病休制度にかんする旧来の規則にしたがってさらに審査されることはない。そのかわり、給付支払機関(UWV)は、働く能力に関して現在の労働障害の人びとを査定する。現在、労働障害とされる人はざっと98万人いるが、05年にはそのうちの約10万人が再審査される。医学的審査を受けるのではなく、働く能力に関して査定される。新基準の導入はこの過程が迅速に行われることである。
 政府は1億ユーロの基金を準備し、職場復帰の奨励に使う。新制度の初めの10年間に、労働障害の人数は大幅に減るだろう。その結果、07年にはWAO支払いが13億ユーロ節約され、08年にはこれが25億ユーロとなる。現在の費用は、1990年代後半における受給者の激増のあとで、年間120億ユーロである。政府は制度の変更を望んだが、関係者全員の合意に達しなかった。
 00年に現在の司法大臣を長とする委員会が設立された。委員会の報告を受けて、三者構成のSER労働財団の代表が合意に達し、実施されているところである。
 しかし労働組合は、これに含まれていない多くの重要問題に気付いている。一例は、もう働いていない部分的障害のある人のことである。当局は、その配偶者に収入があるかどうかという審査を導入した。これで当事者は給付を要求する権利を失っている。
 解説 ― 最近オランダ政府は2年間の支給凍結の協定を経営者、労働組合と結んだ。首相はこれを「経済的にきわめて重要」と述べた。政府はこれをみんなの利益であり、オランダのビジネスの競争力を強め、年金制度にこのましい影響をもたらすといっている。政府と労使がこの種の協力をやり遂げたのは初めてではない。1980年代の始め、「ポルダー・モデル」という協調的労使関係を生れている。

2年間の賃金抑制協定

 10月14日、労使は現在の経済情勢を改善するため、政府とともに実施する社会的協定の一部として2年間の賃金抑制にかんする協定を結んだ。賃金は04年に凍結され、05年には事態が次第に回復した部門や企業では臨時の賞与を出すという見込みがある。それとひきかえに政府は、労働者病休制度の改革案に関連するものを含め、一連の譲歩に合意した。
 協約内容 ― 政府は02年の末にかけて、諸企業の競争力改善のため、賃金抑制協定の締結を労使に呼びかけた。政労使間の数週間に及ぶ困難な交渉を経て打ち立てられる枠組みは、04年および05年の団体交渉ラウンドを争議に訴えず、これで順調に運ぶと考えた。
 労働組合は最初、これを受け入れることで一致しなかった。CNVに加盟する11組合は、真っ先にこの協定を正式に承認したが、FNVはその15組合の120万組合員のあいだで、この社会協定に賛成すべきか、拒否すべきかで一般投票を行った。結局、一般投票に参加した21万8千人、つまり56.4%が受け入れ、41.7%は反対投票した。11月17日にFNV評議会がこの協定に賛成するや、これに反対投票したFNVと連合する3労組、つまり建設労働者、美容労働者、ホテル労働者もそれに同意した。
 社会相はこの協定を「歴史的」といったが、経団連(VNO−NCW)会長はこれを社会全体に役立つ「将来に向けての巨大投資」だと述べた。
 05年の賃金抑制に同意する代わりに、労働組合は経営者が訓練、刷新、労働条件の改善の分野へ投資することを願った。しかし賃金凍結は長期にわたって、収入を構造的に削減することになるので、労働組合の側は経営者以上に大きな譲歩を迫られることになる。
 賃金抑制 ― 労使は団体交渉において、04年の賃金の凍結に合意した。05年には経済情勢次第であるが、賃金はごくわずか上がるかもしれない。しかし、団体協約の中で規定されている業績に関連する賃上げは実施される可能性がある。これは個々の企業ごとあるいは部門ごとに実施されよう。賃金凍結は購買力の喪失となる。04年にはインフレが1.5%と推定されているからである。団体協約によって定期昇給を享受している労働者は、これをいつものとおり受け取るが、年金の掛け金が上がるので、収入は実質的に減少する。
 労働組合の反応 ― FNVもCNVも、中小企業MKBを代表し、04年1月1日以後の団体協約を再交渉し、すでに合意した賃上げをゼロ賃上げに置き換えようという、この経営者団体の要求に同意することは拒否した。
 FNV組合員が「2年間の凍結は、業績のよい部門や企業での賃上げの展望に影響しないか」と尋ねたが、FNVの交渉担当者は、そうした絶対的賃金凍結はまったくない。そういうことは起こりえない。余裕のあるそれらの部門や企業では、さまざまな方法で一括引き上げも交渉できる。交渉者はそういう状況を抜け目なく利用していく」と述べた。

労使協議に向けての話し合い

 7月3日の労使の話し合いに先立って、政府は次年度にさらに最低25億ユーロを節減し、EU安定協定が定める限度内を維持する意図を宣言した。
 この宣言は労働組合を激怒させ、経営者団体はこれらの削減で経済がいっそう脆弱になるとの懸念を表明した。しかし蔵相ザルムは、04年に考えられる財政赤字はGDPの2.6%で、03年より1.7%高いと懸念を表明した。
 三者協議会は、他の閣僚の合意を取り付けたあとで開かれたが、蔵相計画は労使から受け入れられなかった。オランダ労働組合連盟(FNV)の幹部は、この削減はどこからも支持されないと主張した。オランダ・キリスト教労働者全国連盟(CNV)幹部は、「かれらはまったく間抜けだ」と述べ、社会的扶助、失業給付、労働者病休制度給付のいっそうの削減を、CNVには受け入れられず、社会相の立場は疑わざるを得ない」といった。経営者団体VNO−NCWは、これは経済を弱体化させるから延期するよう政府に要請した。
 ザルム氏が討論の議題に出した問題は賃金抑制であったが、これだけではない。かれらとしては、このほかに、年金、青年の失業、技術革新、教育、WAO労働病休法について、次年度には合意したいと望んだ。
 協議は白熱したものであったが、決裂することはなく、年金、青年の失業、労働生産性について、年内に討議することを合意した。このうち、年金は間違いなくもっとも差し迫ったものであり、労働組合は早期退職にたいする財政的報償をなくすことはやめるよう政府に要求した。他方、経営者は年金のコストを賃金コストに加えることを望まず、むしろ長期に働く者に報償を出すことを望んだ。また、むこう24年で退職年齢を、毎年1ヵ月ずつ延ばして、65歳から67歳に引き上げることを望んだ。
 賃金抑制というきわめて重要な問題と労働者病休制度(WAO)の改革問題はまだ討議されていない。

中小企業の衰退

 最近の調査によると、中小企業における雇用が1980年代以降初めて減少した。02年7月から03年7月めでに、中小企業の雇用数はこの部門の1%の経済的後退によって、6万6千減少した。またとくに商業部門における長年の好況のあとで、中小企業数は減少した。今日まで企業は大規模な余剰を抱えたが、近いうちに15万の雇用が失われよう。これを阻止するために、中小企業経営者団体の新議長は、労働市場を活性化させる政策をとるよう政府に呼びかけた。
 金属加工部門は雇用の点で最悪の影響を受け、雇用喪失のほとんど半分を占めており、きわめて不均衡に男子労働者に影響を及ぼし、失業率は1%から6.1%に激増している。しかし女性の占める比率は1%高くなり、39%になった。全体として、この部門の業績は以前に比べて劣り、半数の企業は投資を止め、新製品のマーケティングは大幅に減っている。MKBの調査によると、ざっと2000社が生産を賃金の安い国に移したいと切望しており、さらに2,700社がそうした移転に関心を抱いている。(坂本満枝)