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国旗 世界の労働者のたたかい
ベルギー
2004

新しい全国団体協約

 3つの労組連合、ベルギー労働総同盟(FGTB)、ベルギー・キリスト教労働組合連盟(CSC)、ベルギー自由労働組合連合(CGSLB)と経営諸団体は2002年12月12日、2年間の新団体協約の基本について合意した。新協約は03年および04年について賃金の枠組みを決め、同時にブルーカラー、ホワイトカラー両労働者の統一規定の延期など、若干の重要問題での歩み寄りを示すものである。労働組合は、オランダ語を話さない青年移民者を雇った場合に経営者に提供する特別手当を激しく批判した。デリケートな地域に大きな差別を持ち込むからである。
 新全国協約にかんする労使の交渉は、伝統的に全国経済評議会によるいわゆる賃上げ幅について秋に提案された後で行われる。今回は交渉に先立って、労働組合が新全国協約の内容にかんする独自の要求を発表した。これには2年間にわたって6%の賃上げ、現行のタイム・クレジット制度の延長、現行の早期退職制度の維持、最低賃金の引き上げ、昼食バウチャーの一括支払いへの変更が含まれている。
 この協定を労働組合は03年1月14日に、経営者は数日遅れて調印した。
 交渉の中で最も激しい議論が行われたのが、賃上げ幅の設定であった。これは最大限の賃上げ勧告であり、指数化、手取り賃金、賃金ドリフトを始め一連のデータにもとづいて計算されている。前述のように組合は6%を要求し、経営側は5.1%を回答した。結局合意に至ったのは5.4%であった。
 また食事手当への経営者出資を4.46ユーロから4.91ユーロへの追加引き上げが合意された。労組側は昼食バウチャーを100〜150ユーロの支払いに代えるよう要求した。
労働組合の反応
 三労組連合の組合員は、圧倒的多数で受け入れた(CGSLBは71%、FGTBは78%)。現行の早期退職制度が維持されることで労働者は安心した。また賃金の限度には基本的に反対であるが、業績のよい一部の部門で高い協定をかちとる可能性があることを喜んだ。また新たな弾力化措置が盛り込まれなかったことに満足した。
 しかし次の点には失望した。

  • ブルーカラー労働者とホワイトカラー労働者の統一規定が協定されなかった。
  • 最低賃金が引き上げられなかった。現在は21歳以上で1ヵ月1、163ユーロである。
  • 中小企業の組合代表制の合意がなかった。100人以下の企業の労働組合代表制を法は認めていない。
  • 経営者は将来、青年労働者3%の割り当ての一部にベルギー人以外の未熟練労働者を雇うことで、二重に有利である。
    CSCの議長は、不況の折だからまずますの協定だと語った

 一時的失業  現在、受注の一時的下降のため働けない労働者は、解雇されずに、会社が雇用を続け、これまでの賃金の60%を政府から受け取る。労使は03年7月1日からこれを65%に引き上げるよう政府に要求した。
 雇用創出の制度  雇用推進のための政府予算は、7、100万ユーロであり、これは青年に新しい雇用を創出し、現在58歳以上(57歳を含む)の労働者の雇用を拡大するために使われる。
 ロゼッタ計画 青年の雇用創出の計画であり、経営者に従業員数の3%を青年および未熟練労働者の中から雇用するよう義務付け、次の層から雇用した経営者に報償を与えるものである。

  • 30歳以下の移民
  • 障害をもつ労働者

 ベルギーでの青年の失業は22%、ほとんど資格を持たない青年の場合は30%である。数字は地域によって異なり、ブリュッセルやフランドルのワロニアでは2倍に上る。トルコ人、モロッコ人になると50%という高さである。ロゼッタ計画は、ヨーロッパ雇用戦略のもとに、EUにおける失業を減らすため1997年末に始められた。とくに青年の失業や長期失業という困難な領域に向けられている。ロゼッタ計画は主に次の二つの構成部分からなる。

  • 就職したすべての青年を全体に統合して行く道を保障する活性化計画。
  • 労働者の労働市場への統合のための主要なレバーをなす最初の雇用協定。

 公共・民間の雇用者は、計画の範囲で、青年をそれぞれ1.5%、3%を雇用する義務をもつ。新たに労働者を採用する場合は現有労働力を超えなければならず、解雇は許されない。雇用者としての特典は、未熟練青年労働者を採用した場合、社会保障の掛け金が引き下げられることである。青年を3%雇用していない企業は、強制的に一定比率の懲罰金を毎日払うことになる(もっとも今までにこれが徴収されたことはあまりない)。
 この制度のもとでの最初の雇用は00年4月に生み出され、5万件の雇用契約が結ばれた。当初の目標の4万5千を超えていた。

新政府は20万の雇用創出を約束

 5月に連邦選挙が行われ、自由党・社会党という前回の連立を引き継いだギ・ヴェルホフスタト率いる新政府は、むこう4年間で20万の新規雇用の創設を約束し、財源は8億ユーロの所得税(一般税ではなく、一定層を対象とする)の減税に求めると約束した。これは特定グループの雇用増によって、減税コストの40%を埋め合わせるものと推定される。これら対象者は低賃金労働者、早期退職者、非営利部門の従業者、一部技術労働者である。この最後の2グループについて、連立ニ政党の意見は一致していない。自由党は社会的な拠出金を新たに制限したいと望んでおり、社会党は資金を低賃金労働者の援助にまわすほうを望み、現行の社会保障制度を変えようとは思っていない。
 03年第1四半期には、前年同期と比較して、失業が1万3千人増えた。失業のほとんどは製造業と建設で起こっている。現在、この国の失業者数は40万、つまり11.6%である。対策は秋に開かれる労使および地方政府との雇用会議で討議される。すでに発表されている措置は、課税最低限度額が1ヵ月1,700ユーロから2,000ユーロに引き上げられるので、低所得者には有利になる。また高齢の労働者は、免税開始の年齢が現在の57歳から55歳に引き下げられ、課税最低限度額が1,600ユーロから4,000ユーロに引き上げられる。
 最近の労働力調査では、46万2千人、つまり13.2%が、1週間に4,432,000時間の時間外労働をしている。これは記録ではなく労働者の回答によるものなので、実態より高いかもしれない。しかしこれは一人1週あたり9.6時間に相当し、これを1ヵ月に1週間の休みとすれば、10万の雇用を創出できる。
 ベルギー・キリスト教労連(CSC)は政府のこうした言い分に疑問を抱いている。社会党および自由党系のFGTBとCGSLBの反対はさらに激しい。
 
「雇用会議の結果」― 連邦政府は04年に5億200万ユーロを投資し、07年までの雇用創出支出総計は35億ユーロとすることに合意した。
 この会議と6万の雇用を創出する諸提案は、4年間に6万の仕事を創出するとの政府の約束の実現に大きな役割を果たす。2.2%の成長が見込まれていることも有利である。
 CSCは、会議の成果は不十分であると批判している。

週38時間労働の導入

 03年1月1日、ベルギーのすべての企業で、週労働時間が1時間短縮されて38時間になった。
 労働者は今でも週39-40時間働くことはできる。しかしその場合、これらの労働者は超過して働いた1時間について、一年間に6日の代替え休日を取らなければならない。これによって平均週労働時間が38時間に短縮される。この短縮は00-01年全国協約において交渉された。雇用主の99%以上はすでに時間短縮を実施している。労働大臣ローレット・オンケリンクスは、雇用促進の点から、雇用者による次のような時間短縮奨励策を取っている。

  • 従業員の週労働時間を自発的に38時間以下に短縮した企業は、38時間以下の1時間あたり、労働者1人につき、800ユーロの一時金を受け取る。これらの企業はまた、1労働者当たり1四半期に社会保険料の恒常的引き下げの恩恵を受ける。また、
  • 週労働時間を35時間に短縮する企業は、1四半期について150ユーロの社会保険料の恒常的引き下げを享受する。しかし、これらの特典が成功であることは証明されなかった。これまでにわずか80企業がこれによって週37時間に短縮し、53企業が36時間に、40企業が35時間に、5企業が34時間に短縮した。

タイム・クレジット制度の成功

 02年末までに、14万人余のベルギー人が、改良されたタイム・クレジット制度を利用した。これはフルタイムあるいはパートタイムの職業での休暇である。
 この数字は01年にタイム・クレジット制度を利用した人数より20%増えており、02年1月に民間部門に導入したこの制度が成功であったことを示している。
 この新制度は、労働者が最低1年間の職歴休暇を臨時に取れるような一連の方式を提供している。部門別の交渉によって、この期間を5年に増やすことができるかも知れない。
 実際的には、男子の21%、女性の34%がこの職歴休暇を選択しており、男女とも、1週間に1日の休業日をもつことは一般的になっている。男子の41%、女性の59%がこれを選択している。全体として新制度は、とくに男子にとって魅力的であり、前年度の21%に比べて、39%が利用している。

フィリップが工場を閉鎖

 アセルトという北東の町にあるフィリップ工場が閉鎖されることになり、喪失される雇用はほぼ1,000である。
 この工場はおよそ50年間操業してきたが、今度は02年の第3 四半期末に、この企業の債務60億ユーロを削減するためのリストラ計画の一部として閉鎖される。エレクトロニクス産業は全般的に下降傾向にあり、専門的なアセルト工場は、CDあるいはDVDプレイヤー用のレーザーなど、デジタル工学的応用製品を開発し生産している。研究開発活動の一部は、ロイヴェンとアインドホヴェン(フィリップ本社がある)に移動する。他方、生産および残りの開発活動は東欧および台湾に移される。失職する1,000人の労働者のうち100人はアインドホヴェンかロイヴェンに配転される。印刷プレートの生産は、02年10月にあるアメリカ・グループに売却されたが、この部門の220人だけは03年末まで保障された。
 アセルト工場全体が閉鎖されることはなさそうである。DVDリコーダーなどの新製品の生産は労働コストの安い国に移行中であるが、この企業が研究開発部門を閉鎖するとは誰も予想していない。1990年始め、フィリップはDVDなどの新製品開発の場として、デジタル光学データ貯蔵のための「卓抜したセンター」をつくることを決定した。実際1999年には、フィリップは地方自治体からの財政援助を得て、その場所に共同で研究センターを開発した。
 労働組合はフィリップに対し、新機軸の開発活動をある程度アセルトに保持し、将来の再拡張の基礎を作り、必要とされる技術と熟練労働者を保全するよう養成した。しかし今日まで、フィリップはその場所への他の投資家を見つけていない。1,000人の労働者はアインドホヴェンの本部事務所前でデモを行ったが、組合は組合員にストライキを行うことを要請しなかった。そうすると、会社に安いセンターを閉鎖させるだけになってしまうからである。他方、地方の経営者は、解雇される労働者のための社会的計画の立案を進めている。

鉄鋼で1700の雇用喪失

 鉄鋼の生産高世界一の多国籍アルセロールが、ベルギーの2工場を06年までに閉鎖すると発表した。これによって直接1,700の雇用が失われ、さらに資材供給企業と下請け企業の5千の雇用が脅かされる。
 アルセロールは、01年にアルベド(ルクセンブルグ)、アセラリア(スペイン)、ユジノール(フランス)の合併で世界最大の鉄鋼会社になって、11万人を雇用し、年産5千万トンである。
 1月27日、会社側はこの会社の事業所評議会にたいし、二つの溶鉱炉の06年まで二閉鎖する計画を通告した。コッケリル・サンブレはベルギーで5,700人を雇っており、これらの閉鎖で1,700人の雇用喪失となる。この会社の下請け企業、その他で約5,000の仕事が脅かされていた。アクセルロールは社会計画によって、労働者に他の雇用を与える援助をしようとの意向を示し、また早期退職制度を利用できるようにしようといった。しかし計画実施前に労働者との協議をしたかった。
 アクセルロールはまた、フランスとドイツの生産施設の閉鎖を計画した。
 およそ6千人の労働者が、工場を守ろうとデモを行った。労働組合はEUから支持を得られるものと望みを託した。EUは内陸の工場を閉鎖する方針について、討議するはずであった。
アルセロールでの妥協
 アルセロール鉄鋼企業と金属労働組合は、その二つの現場の閉鎖提案を延期することで折り合った。二つの内陸溶鉱炉を06年までに閉鎖する予定であったが、その一つは07年まで稼動し、もう一つも09年まで維持することになった。これで早期退職に入る労働者が増え、強制解雇をうける者はいなくなる。
 アルセロールは、西ローロッパ生産を縮小し、その工場はアジア、米国、南米、東欧に再配置されると発表した

フォードで3000人の解雇

 10月1日、フォードはヘンク市にある生産工場の3,000人の解雇を発表した。ヘンク市ではフォード・モンデオとフォード・トランシットヴァンの組み立てが行われており、8,400人を雇用している。労働組合はこれに対して工場封鎖を組織し、トランシットヴァンやその他の工場、たとえばサザンプトン(英国)のフォード工場やゲント(ベルギー)のヴォルヴォ工場に部品が持ち去ら れないようにした。
 労働組合は封鎖のほかに、短期のスト(6日には24時間ストも)やデモを行い、現在のライン終了予定の06年以後、モンデオを引き続き建設するよう経営側に要請した。
 ベルギーのフェルホフスタット首相も「許せない行為」として同社を非難、経営陣と解雇問題で話し合った。会社は再就職先の斡旋や職業訓練実施計画を内容とする社会計画の交渉を速やかに開始したい意向を表明し、その後、二つの新モデル生産をヘンクで行い、モンデオの生産維持を発表したが、労組は闘争態勢を解いていない。
 公式発表では、06年以後の体制を確立するとはいっているが、組合側は3,000人の解雇が最終的な工場閉鎖の第一段階になるのではないかと案じている。
 先の社会計画の一部である早期退職協定は、ブルーカラー、ホワイトカラーの労働者が50歳で退職するのを可能にする。労働組合は経営者に協約の2年延長を養成した。こうすると、現在48歳の労働者も退職できることになる。フォードは50歳から52歳で退職した労働者に追加年金手当を1ヵ月515ユーロ、52歳から55歳の退職者に追加年金手当を350ユーロ支払う。この早期退職の適用を望む者は04年1月20日までに申請しなければならない。03年12月19日以前に申請した者はボーナスの支払いを受ける。約1,150人がこの制度の利用する資格をもつ。つまり残りの1,850人(解雇される3,000人中)は依然として解雇されたままである。解雇されたものの状況を改善するためのもう一つの措置は、仕事を探している労働者に助言するため、現場に臨時雇用センターを設けることである。また経営側は、労働者のあいだで仕事の分配をやり直せという労働組合の提案を考慮し、また解雇された労働者を工場の新しい仕事につけるため、外注した仕事を取り戻す可能性を検討することになっている。 同時に、フォードは5億5千万ユーロから6億ユーロの工場の投資計画をもっていると発表した。フラマン政府はEU法が認める最大限である訓練費用の40%、投資の4.2%の補助を提供している。

銀行部門での争議

 03年2月28日、銀行部門の労働組合が、争議行為をさけて、ベルギーの四大銀行経営者と一連の会合をもつと発表した。
 1月末、銀行部門労使の新しい法令にかんする交渉はついに決裂した。話し合いは数ヵ月にわたって続けられ、この争議は公式の調停にまわされた。しかし2月19日、調停員はこの問題の解決が不可能だと宣言したため、6,000~8,000の銀行部門従業員がブリュッセルの市街でデモを行った。その後、組合はベルギーの四大銀行(フォルティス、KBC、デクシア、BBL)経営者とこの部門の従業員の70%を代表する組合との話し合いを発表した。これが不成功に終われば、全国ストにエスカレートしそうであった。
 この争議の中心問題は、銀行部門合同委員会の権限の明確化である。組合は、銀行が情報技術や人事といったサービスを、賃金や条件の悪い部門に属する他の委員会に移すことで、合同委員会の権限を侵していると主張した。組合によると、銀行従業員の70%ないし80%は潜在的にこうした地位の変更が行われており、そのためかれらは最低を保障する別の団体協約を交渉しようとしている。
 銀行部門は7万5千人を雇っており、かれらは民間部門で相対的に有利な労働条件―週35時間、追加の休暇、夜間労働と土曜労働の制限を享受している。
 調停が不調に終わったので、問題解決の責任はオンケリンクス労働大臣にかかってくる。

中小企業における労働組合代表

 食品産業の労使は最近、03-04年度の新団体協約の交渉を行った。これは中小企業での労働組合代表制にかかわるものである。
 交渉中いちばん問題になったのは、労働者50人以下の中小企業における労働組合の代表制であった。新協約は従業員25人以上の企業での労働組合代表制を認め、従業員はそれを要求していること、労働者の半数は組合員であることを明記した。これらの企業では最大限2名の代表が認められ、かれらは厳重な行動規範を守らなければならない。この譲歩とひきかえに、賃上げは次の2年間に5.4%を超えることは認められなかった。
 現行法では、従業員代表は解雇されない。50人以上の企業だけは、解雇予防委員会を設置しなければならない。100人以上の大企業に限って、職場評議会を設置する必要がある。最終的にはほとんどの中小企業は労働組合を認めておらず、したがって従業員は組合によって代表されない。しかし05年以降は、50人以上のすべての企業はEUの情報・協議指令に従って情報・協議機関を設置する。
 食品産業は成功裏に新協約をかちとったが、小売部門の交渉は中小企業の組合代表制の問題でまだ行き詰まっている。組合は商店の外にピケを張ったりして経営者に圧力をかけようとした。また、ほとんど成功しないとはいえ、正式な組合代表制を打ち立てて、中小企業界での影響を強めようとした。この部門の地域協議機関は、20-50人を雇う企業での経営者と組合の関係を監督するために、職場の外に設けられており、組合はこういうやり方は失敗だとみている。とりわけ労働者は、こんな機関に相談すれば職を失うと心配している。また、委員会はすでに解雇され、失うものは何もない労働者が持ち込むごく一部の件しか取り上げていない。経営者団体は、組合が地域協議機関をボイコットしようと脅かしていると報告している。
 小売商を代表する経営者団体や食品部門の経営者は、中小企業の組合代表制を認めたこの協約に立腹した。経営者は組合代表制を正当化するには経営者と従業員の区別がはっきりせず、従業員はそれを要求していないと主張した。また、正式な機構を作れば時間も金もかかる、さらに、多くの小経営者は労使関係の分野の知識がなく、ここでの動きを監督できる人材も知らない、最後に、自分たちの会社に解雇から守られる組合代表を置くのはいやだと言った。
 この部門での中小企業における組合代表制は依然として限定されており、この協約が先例になるとは考えられない。製材、金属、車庫ではすでに組合代表制を認めている。

半民営化企業における雇用喪失

 ベルギーの半ば民営化された鉄道会社は、5年間の一貫した雇用拡大を経て、現在42,500人余を雇用している。しかし、会社は1万人削減の計画をたてており、数年以内に退職年齢達する約6,700人を解雇せずに自然減によって達成することにし、さらに3,300人は早期退職で55歳退職にするという。
 解雇の理由は、会社が大きな赤字に陥り、60億ユーロの連結損失を抱えているからである。会社はこのリストラによって、むこう4年間に生産性を30%向上させたいとしている。
 労働組合は生産性向上の必要は承知しているが、雇用削減で達成するとの経営側の見解に同意しなかった。6月18日、労働組合はベルギー鉄道網の交通を2時間にわたって止め、雇用削減の計画を労働者に知らせ、6月29―30日に全国鉄道ストを呼びかけた。
 半ば民営化されたあれこれの事業体が雇用削減を計画している。全国電信サービスのベルガコムも800人に加えてさらなる解雇を計画している。すでに1万人が仕事を離れたが、彼らは早期退職であった。
 郵便事業でも、07年末までに8,500人を削減する計画である。すでに一部の地方郵便局では、労働によるストレスに抗議し、人員増を要求して争議にはいっている。

郵便事業で補足団体協約の締結

 郵便事業の労使は、いわゆる「ゲオルート」コンピュータ制度導入で生ずる問題を提起したあと、賃金にかんする補足団体協約に合意した。このコンピュータ制度の導入は、郵便配達ルートの最大限の効率をねらったもので、労働者の広範な不安と一部地域のストライキを招いていた。それは配達ルート計算の場合、理論的モデルを基礎にし、地方の事情を考慮せず、ときには余分なルートを担当させて、高齢労働者に負担をかけるからである。
 この協定は若干緩和されて、地方局が計画の実行に関して発言できるようにしている。さらに地方労働者は、提案された配達ルートが実現可能かどうかを点検し、必要と考えられるところでは代わりの提案をすることができる。その後で組合と経営者が最終のルートを決める。
 「ゲオルート」制度の一つの目的は、配達の合理化で人員を削減することにある。生産性向上のもう一つの方法は、「ポストステーション」の導入によって郵便局のカウンター作業を自動化することである。組合の試算では、新ステーションを全面的に導入すると、8千人のカウンター労働者のうち5分の1が不要となる。
 ベルギー郵便事業のもう一つの負担は、すべての住民に銀行の基本的便宜を保障し、年金を配布するなど、市民向けの労働集約的な仕事もすることである。ヨーロッパの他の郵便局との激しくなる競争のなかで、またEメールやその他の新技術の広範な利用で、市場は推定で年間3%減少している。
 この中で新労働協約の交渉が行われ、労働組合は全般的な1%の賃上げと休暇手当の引き上げを要求した。
 ベルギー郵便局は正規労働者3万9千人雇っており、経営者は07年までに8,500人の削減を願った。ただし、強制的解雇は考えておらず、自然減でこれに到達できると考えている。
補足的団体協約
 その後賃金の補足的団体協約が締結された。9月初め、労使は現行の03-04年度協約に加えて、賃金協定を結んだ。
 しかしACVキリスト教労組は、若干の項目に賛成.¥できないとして交渉のテーブルを離れた。他の二つの組合、すなわち社会党系のACODと自由党系のVSOAはともに協約に調印した。
 協定は、全労働者に対し賃金総額の1%引き上げと、昼食バウチャー、贈答用バウチャーの形での賃上げを定めた。相当額の年金引き上げを保障するために、賃金等級を1%引き上げた。生産性の報償は賃上げと均衡を取るため1%減らす。
 さらに協定されたのは、30年勤続56歳の全労働者に、70%の賃金支給で1年間の休暇を与えることである。最近2年間、出勤率のよい労働者に追加ボーナスを与える制度で、郵便局は欠勤を改善しようとしている。現在ほぼ10%の郵便労働者が病休中で、これを民間の比率に相当する7%に引き下げる必要がある。この制度で郵便労働者は、通常の57歳早期退職を1年速めることができる。また労使は、完全有給の病休21日を基本とした病気休暇制度の復活で合意した。(坂本満枝)