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国旗 世界の労働者のたたかい
マレーシア
2003

 マレーシアの経済は、2002年第1四半期の国内総生産(GDP)の伸び率が前年同期比1.1%で、3期ぶりにプラス成長に転じた。01年第3四半期にGDPは前年同期比マイナス1.2%を記録、第4四半期にも前年同期比マイナス0.5%と2期連続してマイナス成長を記録していた。中央銀行総裁は、今回のプラス成長への転化について、おう盛な消費支出が成長をけん引し、外需の増大がそれを支えたと説明、今後もこの傾向は続くとの見通しを示した。部門別にはサービス部門が4.6%増と引き続き伸び、成長のけん引役となった。マレーシア経済の中心である製造業は2.1%減であったが、前四半期の8.4%減よりも改善された。
 こうした経済状況の中で、マレーシア労働組合会議(MTUC)が現行の4業種だけの最低賃金制を全部門に拡大するよう政府に要求している。また、プランテーション労組が請負業者の悪質な不法行為から労働者の権利を守るための規制を政府に要求した。

MTUC、業種別最低賃金制の全部門への拡大を要求

 マレーシア労働組合会議(MTUC)は02年5月18日、現在4業種に限って最低賃金の設定を定めている1947年賃金評議会法を改正して、全部門の低賃金労働者を同法による最低賃金制の適用対象とするよう、政府に要求した。
 1947年賃金評議会法は、使用者との賃金交渉の主体である労働組合を組織するのが困難な業種について賃金評議会を設置し、これに最低賃金を設定する権限を与えることを定めているたが、対象は1)配膳・ホテル業、2)店員、3)映画館員、4)船荷降ろし労働者の四業種に限られている。
 MTUCによれば、労組に加入しているのは1,030万人の労働者のうち123万人( 12%)にすぎず、そのため900万人以上いる未組織労働者の大半が、1ヵ月に最低必要とされる賃金額900リンギ(MTUCの算定)を大きく下回る300〜500リンギ(1米ドル= 3.8リンギ)といった低賃金水準におかれている。賃金評議会法が適用されている4業種の現行最低賃金も月額350リンギにすぎず、経営側によって賃金を低く抑えるために逆用されている。
 MTUCはこれまでも全労働者を対象にした法定最低賃金制度の導入を要求、2000年には月額900リンギという具体的な最賃額を提示して導入を求めてきたが、使用者側の強い反対によって実現されてこなかった。
 今回のMTUCの1947年賃金評議会法改定要求は、こうした状況をふまえて提出されたもので、要求の主な内容は、1)同法の適用対象を全部門の低賃金労働者に拡大すること、2)休眠状態の賃金評議会の活動を再開させること、3)雇用法、従業員社会保障法、従業員積立基金法などの改正も視野に入れた包括的な労働者保護政策を示すこと―などを求めている。

プランテーション労組、請負業者の規制要求

 マレーシアの全国プランテーション労働者組合(NUPW)は、01年12月30・31日に開いたNUPW第16回大会で、政府に対し、プランテーション(農園)労働者の権利を守るために請負業者の悪質な行為を規制するよう要求した。
 マレーシアのプランテーションでは、地元の請負業者が所有主から作業の全般を請け負い、労働者の斡旋・調達、農作業の手配、労務管理などを取り仕切っており、プランテーション労働者の半数以上が請負業者によって供給されているという。
 NUPWによれば、これら請負業者はしばしば、社会保障制度(Socso)や従業員積立基金(EPF)への掛け金を拠出しなかったり、法的には認められている外国人労働者の組合加入を許さず、組合に加入した労働者に対して国外退去させたり就労許可証の更新を拒絶するといって脅迫するなど、労働者に対し不当な労働慣行を強いている。
 NUPWのナヴァムクンダン事務総長は、人的資源省に対して、プランテーション労働者の権利を守るために請負業者の不当な行為を規制する法律を制定すること、法律の実施にあたっては透明性を確保することなどを要求した。