2013国民春闘共闘情報
全労連HP

第44号 2013年7月22日

最賃大幅引き上げで貧困と格差をなくせ

全国一律最賃1000円以上に

 中央最低賃金審議会における第2回目の「目安に関する小委員会」が、22日午前中に厚生労働省内で開催され、生活保護費との乖離状況や30人未満の事業所の賃金改定状況などの統計資料が出され議論が行われました。審議に先駆けて、全労連・国民春闘共闘委員会は、全国一律最低賃金1000円以上の実現を求めて厚生労働省前で宣伝を行いました。

写真〜生きる希望となる最低賃金に〜
 参議院選挙明け、9時30分から行った厚生労働省前での宣伝行動には緊急の行動提起にもかかわらず50人の仲間が参加しました。
 はじめにマイクを握った首都圏青年ユニオンの山田真吾事務局長は、東京都・小平市にある業界大手の食品加工会社が、東京都の最低賃金850円で雇用をしている状況などについて語り、「最低賃金で家を借りて東京で生活をするのは困難だ。貧困をなくすための最低賃金になるように審議してほしい。最低限ではなく生きる希望となる最低賃金にしてほしい」と力を込めました。
 全労連・女性部の小畑雅子部長(全教・中央執行委員)は、「今や労働者の38%が非正規雇用となっている。そのうち58%が女性であり、圧倒的多数がパートやアルバイトなど時間給労働者だ。年収200万円以下のワーキング・プアと呼ばれる人の74%が女性となっている」と男女格差の実態を紹介。「貧困が少子化を進めている」と非正規雇用化を促進する政府の失策を批判。「最低賃金の大幅引き上げでこそ格差は是正できる。子供を産み、育てることが出来る経済的基盤を整えることが重要だ」と述べました。
 自治労連の松尾泰宏中央執行委員は、増え続ける自治体関連の非正規雇用ではたらく仲間の現状を報告し、「指定管理者制度などのアウトソーシングでは、業者が変わるごとに委託料金が下がり、そこで働く労働者の賃金も下げられていく。最低賃金の引き上げで歯止めをかけることが必要だ」と語りました。
 生協労連の柳恵美子副委員長は、中央最低賃金審議会の労働者委員に立候補したが、未だに厚生労働省から当落の連絡すらないことに怒りを露わにし、「地方・地域での雇用創出のためにも、198円の格差は絶対に無くさなくてはならない。審議会の中には入れなかったが、全国一律最賃1,000円以上をめざして訴え続ける」と決意を表しました。
 全労連・全国一般の大木寿特別中央執行委員は、「若い人たちが安心して働き、生活できるようにすることが政府に求められている。しかし、安倍政権は不安定雇用を増やそうとしている」と安倍政権が推し進める非正規雇用促進の政策を批判。アメリカなど世界各国で最低賃金が大幅に引き上げられていることについて触れ、「日本の最低賃金の水準は、先進国の中で最低クラスだ。これを変えるのは政府と審議会の責任だ」と訴えました。

〜ごまかし計算でも11都道府県の最低賃金が生活保護を下回る〜
 7月22日(月)午前、最低賃金額改定の「目安」を決める中央最低賃金審議会の第2回目安委員会が開かれました。最低賃金が生活保護を下回っている「逆転現象」は、厚生労働省によって少なく見積られた計算でも、11都道府県で発覚しました。また、従業員規模30人未満の企業の賃金上昇率は一般労働者で0.8%(前年0.2%)、パート労働者で0.9%(前年−0.2%)と前年より伸びていることが報告されました。
 税込み時間額で決定される最低賃金と、月額の可処分所得で支給される生活保護費とを比較するにあたり、厚生労働省は、所定内で月173.8時間もの就労を前提とし、税・社会保険料を沖縄(最低賃金645円)のケースで計算して他の地方に適用するなど、様々なごまかしをして乖離を小さく見せています。労働時間を平均的な155時間程度とし、勤労必要経費(勤労控除)も含めて生活保護をまともに計算すれば、すべての都道府県の最低賃金は1000円を上回らねばならないはずですが、ごまかし計算をしても、北海道の22円を筆頭に、東京(13円)、広島(11円)、宮城、神奈川(各9円)、大阪(8円)、埼玉(6円)、兵庫(4円)、京都(3円)、青森(2円)、千葉(1円)などで逆転を隠すことができなかったということです。
 委員会では、このほか、地域ごとの賃金分布や、最低賃金引き上げに向けた中小企業の支援事業の実施状況、経済指標、東日本大震災の復興・復旧の資料、2010年に労使合意された、「できる限り早期に全国最低800円を確保し、景気状況に配慮しつつ、全国平均1000円を目指すこと」とした雇用戦略対話合意の文章も提出されました。中小企業の支援事業では、業務改善助成金を活用して最低賃金を時給40円以上引き上げて800円以上にした1,627事例のうち、訪問介護、技術サービス、造園、飲食店が紹介されました。
 今年度の審議会にあたっては、「アベノミクスは大企業をもうけさせるだけで、賃金は上がらない」という国民の批判をうけ、田村憲久厚労相自身が審議会に出席し、最低賃金の引き上げを求める諮問をしました。ワーキング・プアをなくし、地域振興を軸にデフレ不況からの脱却を進めるためにも、最低賃金は地域格差を解消しつつ、1000円以上の水準を目指して大幅に引き上げられることが必要です。そのための環境づくりに向け、政治には、手厚い中小企業支援や労働行政の拡充を進めることが求められています。

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