2011国民春闘共闘情報
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国民春闘共闘 2011年度年次総会

大黒作治代表幹事の開会あいさつ

2010.10.27

 国民春闘共闘委員会2011年度年次総会を開会します。開会にあたってご挨拶を申し上げます。

 昨年の年次総会以降、2010年春闘を経て、秋年闘争はまだこれから山場を迎える単産・地方が大半だと思います。
 菅内閣のもとで臨時国会が12月3日までの予定で開会されています。総額4兆8513億円の補正予算案と公共事業の前倒しを加えると実質5兆円を超す補正予算案が明日にも出されようとしています。「国民の生活が第一」という看板から大型公共事業優先へと変貌する姿勢が鮮明になってきています。前国会で継続審議となった労働者派遣法の改正案が出されますが、いまだに審議のめどが立っていません。派遣の実態や弊害について国会内外で明らかにし、実効ある改正を勝ち取り、今国会で必ず成立させる決意を固めあいたいと思います。
 10月24日投票で行われた北海道5区の衆院補欠選挙で自民党の町村信孝氏が当選し、民主党の政権運営が一層厳しくなることが予測されています。しかし、菅内閣は、もともと「日米同盟の深化と構造改革の推進」が考え方の基本にあり、民主、自民ともアメリカ言いなり、大企業の支配に忠実という点に違いがなく、オール与党政治に近づくほど政治の閉塞感は深まります。みんなの党も含めた「無駄使いの削減」という国民向けのパフォーマンスで、公務員人件費と衆議院比例定数を削減して、いわば「強権政治」に突き進む危険も持ち合わせている点を警戒しなければなりません。

 ここにきて急激な円高が続き、15年前の79円75銭という最高値を更新するのか注目されています。これには、様々な考え方があります。アメリカは、15年前より物価は35%、ヨーロッパも同じくらい値上がりし、賃金はそれ以上に引きあがっている。従って貨幣価値も下がっているから騒ぎすぎるきらいがあるという考え方や、購買力平価では1ドル114円が妥当という2009年のOECDのデータから見ると3割程度実力より円高だという分析もあります。
 成長も賃上げも止まった日本では国内の貨幣価値は変わらず、円高で直撃を受けている中小の輸出企業への援助を積極的に行い、下請け単価切り下げを強要する大企業の横暴を止めさせるための政治の力が必要です。同時に、円高の主要な原因は安上がりな労働力と下請単価をたたいて競争力をつけ、さらに円高に向かうとまた同様の手口を使い、結果的にはまた円高に向かうという際限のないスパイラルです。円高を根本的に是正するには、国内での消費購買力を高め、民間設備投資など国内経済が活性化する仕組みをつくることが必要です。消費購買力の引き上げ、すなわち賃上げや最賃の大幅引き上げ、民間の設備投資や社会保障の拡充、地域経済の活性化によって内需主導の経済へ転換することで、持続可能な社会へと転換できると考えます。内需主導の経済体制へと転換しない限り、負のスパイラルから抜け出せないことは明らかです。私たちは、時間がかかってもこの方向を粘り強く追求しなければなりません。

 先ごろ発表された国税庁の民間給与実態統計によれば、2009年の民間企業に働く労働者の平均給与は405万円。前年より23万7000円、5.5%も減り、全体の給与平均も1997年の467万円から62万円減り、給与総額も1998年の222兆円から192兆円と30兆円も下がった。その一方で、資本金10億円以上の大企業は内部留保を10年前の147兆円から229兆円にも積み増しています。大企業の内部留保は労働者の賃上げや適正な下請け単価の保障といった内需拡大への環流策は全くない。手元資金は52兆円もあると言われ、「金は手元にあってだぶついているが、使い道がない」というのが本音の声として聞こえてきます。

 2010年春闘で、大企業を中心に業績がN字回復したにもかかわらず、連合は「ベアは要求せず、賃金カーブの維持」を決め、結果もおおむね満足というコメントが出されました。多くのマスコミから「このチャンスにベアを要求しなかったらいつ要求するのか」と強い批判が出され、その後の春闘は中小にまで否定的な影響を及ぼしたことは言うまでもありません。連合は、来春闘においても同様なスタンスで臨もうとしています。しかし、大企業は引き続き黒字基調で内部留保も1年間で11兆円も積み増し、首脳陣が今やその金をどう使うか悩んでいるにも関わらず、賃上げや下請け単価の改善などに回して国内に還流させることを提言すらしないのかと言いたくなります。
 それでは私たちはどうするのかと問われるわけです。構造改革と規制緩和で広がった「貧困と格差」、「働く貧困層」の増大は一向に改善されず、非正規労働者は1800万人、ワーキングプアは1100万人近くに増え、失業者は5%と高止まりしている状況のもとで、「貧困と格差」の解消と国民の暮らしを立て直すために、すべての労働者の賃上げ、雇用の確保を実現するために、各産別と地方で統一行動を構えて、大きく成功させたいと思います。

 2011年春闘方針は、本日提案する構想案を11月25日、26日の討論集会でさらに深めていただきたいと思います。春闘共闘は民間中小と公務が主力であっても、すべての労働者を視野に入れた賃上げ要求を出し、粘り強く追求することが第1です。第2は、日本経済と労働者の暮らしはどうしたら改善されるのかということを、誰にでも分かりやすく解き明かし、政府や財界、各企業や自治体などに、賃金の底上げと最賃の大幅引き上げ、公契約の法制化や条例化を申し入れ、その実現を迫ります。そして、目に見え、音に出して国民的世論を広げ、たたかいを発展させたいと思います。
 第3に、後期高齢者医療制度の廃止や最低保障年金制度の確立、農業や地場産業の再生など社会保障の拡充や内需振興策の実現を求めて、様々な団体と共同を追求します。また、期限切れとなる米軍への思いやり予算や軍事費にメスを入れ、大企業・大資産家優遇税制是正などの要求を来年度予算に反映させるたたかいと、当面11月28日投票の沖縄県知事選挙でのイハ洋一候補の勝利に向けて積極的に取り組み、大きな変化をつかみ取りたい。そして春闘、いっせい地方選挙勝利に向けて変化の波を起こしたいと思います。

 最後に、東京土建の皆さんが、今年次総会から春闘共闘の正式メンバーに加わっていただきます。東京、神奈川、埼玉、千葉の首都圏土建という新たな枠で常任幹事を送りだしていただけるということで、大きな力を得たと大歓迎したいと思います。
 当面、来春闘を展望するにふさわしい秋季年末闘争・国会闘争を展開しつつ、積極的な討論を期待して、開会にあたってのあいさつとします。

以上

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