2008国民春闘共闘情報
全労連HP

第 36 号  2008年06月06日

 

高齢者医療制度は即刻廃止せよ!

後期+前期の負担が保険料収入の44.5%に

 健保・国保・共済組合が「交流会」と厚労省交渉

 国民春闘共闘は6月5日、全労連会館で「健保・国保・共済組合交流会」を開催し、全労連や純中立懇の単産、東京土建代表ら20人が参加。直前に実施した「財政運営に関する調査」結果が発表され、後期+前期高齢者医療制度への支援金・納付金などの現役負担が保険料収入の44.5%に達し、各組合の財政を圧迫している実態が明らかになりました。交流会では、各代表が内部留保や積立金の取り崩し、保険料の値上げ、給付の削減などで対応している実態を報告。終了後に、厚生労働省保険局に対し、「後期高齢者医療制度の廃止」や財政逼迫組合への支援などを求めて交渉しました。

 主催者あいさつした老田弘道代表幹事は、後期高齢者医療制度をめぐって四野党共同法案が委員会採決されることを紹介し、ひきつづく運動の強化を要請。また、後期・前期医療制度への支援金・納付金などによって、健保・国保・共済組合の財政運営がピンチに見舞われており、危機打開のための方策を交流、研究し合おうと呼びかけました。あわせて、労働組合の任務として、「賃金だけでなく、健康問題や労使負担割合などを総合的に取り組もう」と強調しました。



新年度予算、やりくりしても9割の組合が赤字

 国民春闘共闘の中島事務局員が、この間実施した「健保・共済組合の財政運営に関する調査」結果(民間の健保17組合、公務の共済8組合、計25組合)について、概要を報告しました。
 その特徴は、
(1) 後期と前期医療制度への支援金・納付金、ひきつづき退職者医療・老人保健への拠出金と、メタボ特定健診へ補助金などの負担が保険料収入の44.5%に達している。昨年までの老人保健と退職者医療などの拠出金総額40.25%に比べ4.26ポイント(引上げ率10.6%)の負担増になっていることを明らかにしました。このほか、
(2) 新年度予算の収支差がマイナスを計上している組合が9割に近い21組合。
(3) 収支バランスのための対策として、内部留保・積立金の取り崩しが13組合、保険料の値上げが6組合、今年は踏みとどまっても来年値上げが多数、医療・投薬の見直しが2組合、資産の売却が1組合。
(4) トータルの新料率は、60.30‰〜95.0‰まであり平均78.7‰、労使の負担料率は、労働者の平均が35.85‰、使用者の平均が40.49‰。
(5) 健保連の共同事業から受けている支援は、高額医療交付金事業が9組合と多い。
(6) 後期高齢者医療制度へ移動させた人数は、19人〜3000人まであり平均1100人。「本人が移動を拒否」などの問題も。
(7) メタボ特定健診の受診率目標は示しているのは7組合で、「受診率72%」「70%(平成24年度)」「特定健診75%、保険指導30%」など、となっています。
 これらの調査結果に基づき、「後期高齢者医療制度の中止・撤回」と、当面する国民医療の改善を求める対政府要求(別紙)を紹介し、これを深める討論を要請しました。



 討論  健保も共済も限界超える支援金

「組合解散」は避けたい。負担軽減を!

 討論と運動交流では、官民の担当者全員が健保・国保・共済組合の取り組みを報告しました。

[JMIU] 計機健保の理事に就任。とたんに後期・前期高齢者医療制度の負担増で財政が赤字になった。健保事務局では、制度が変わり事務量が増えて追いつかない状況だ。組合員を拡大し、前年の繰越金を繰り入れ、今年は何とか乗り切れそう。

[東京土建] 建設国保を守るために、国の補助金(08年度予算・歳入の38.8%)と都費補助金(同5.6%)が欠かせない。このため、国への要請はがきは昨秋150万枚、今春150万枚、都議全員の賛同と党派を超えた支援、メタボ特定健診と保険指導への都費補助を認めさせる運動などを展開してきた。何よりも組合員の拡大に努め、13万人を超える史上最高の峯を築き、収入増と平均年齢を下げる(給付減に連動)ことに寄与した。それでも、後期・前期の支援金と特定健診などの負担が増え、組合員の保険料は699円引き上げて2万0518円になった。ケガや病気の保障は建設職人にとって命綱であり、5000円以上の高額部分は保険財政から還付している。

[生協労連] 後期高齢者医療支援金が見込み額で要請され、保険料を2‰引き上げ82‰で対応したが、その後増額されて139億円になった。このままでは資金ショートも起こり得るので、この秋から90〜92‰にしないとやっていけない。新興組合で資産や内部留保もなく法定準備金の取り崩しや「解散」説まで出ている。90‰以上(組合員負担は45‰)は国の財政支援が必要だ。また、トータルの医療制度改善が望まれる。

[建 交 労] 現在、5つの地方にトラック健保があり、年2回の交流と厚労省交渉を重ねている。今年は各組合とも大きな赤字になる見込み。大阪がとくに厳しく95‰で運営している。トラック経営が苦しく、企業が健保から脱退していくので、解散も考えている。今年、保険料を下げたところは脱退しないように措置したもので、法定準備金を取り崩している。支払基金への清算が2年後になり、脱退した企業の分まで請求する制度は改めるべきだ。

[通信労組] 27万人が加入するNTT健保で議員は22人で、組合員数の割に議員数が少ない。うち互選が11人。なんとか1人は当選させて労働者の意見を反映させたい。NTTでも前期・後期の支援金・納付金で財政赤字は333億円と昨年の倍になった。積立金を取り崩し、保養所を売却し、ゼネリック薬品に変えても及ばす、保険料の値上げが検討されている。高額医療費の還付は、かつて5000円以上だったが、いまは2万5000円以上になってしまった。

[出版労連] 今年60周年を迎え、健保連の副会長を出している。保険料率は2年ごとに引下げて、いま66‰、健保財政は「最優良」と言われ、積立金が180億円ある。但し、景気が悪いので経営は大変だ。64議員のうち半数が互選だが、後継者が育たないのが悩みだ。また、組合の方針に位置付けないと「3:7要求」も切り崩される。「折半」の逆提案もあり、新しい介護部分は折半にされた。支援金に限らず各単産は厚労省へ意見を出すべきだ。

[自治労連] 今回のように調査票を送って実態を掴むことが大事。市町村共済でも積立金の取り崩し、保険料の値上げで対応している。1年に1回、共済組合の総会をやっているが、ここに怒りを結集したい。4月には総務省交渉も実施し、政管健保の赤字肩代わりは今年度限りにすること、高齢者の医療費は国庫負担でと要求した。市町村共済は理事3人、議員40人で、多くは自治労だが、選挙に勝ちつつある。

[国公労連] 共済は年金問題のほうが大きく、健康問題は弱い。各省庁によって内容、掛け金が違うので、それぞれに交渉し、成果もあれば逆もある。しかし、今回の財政問題はみな苦しい。今年値上げしなかったところは来年だろう。高齢者医療の支援金は年々増加される。どのような運動が組めるか?方向を見出したい。(各単組)全法務、全司法、全建労などが報告。いずれも、今年は積立金の取り崩しなどで乗り切ったが、来年は値上げせざるを得なくなる。1回のインフルエンザ対策で3億円も掛かるので注意したい。

[全 教] 公立学校共済をめぐり日教組と係争中だが、調査票を送り記入してもらった。新年度予算は内部留保を取り崩してもなお414億円の赤字だ。メタボ健診は検査項目が決まっていて、その費用が大きい。支出削減の対策として、一泊ドックを日帰りにし、結婚祝金やレク補助を削って対応している。

[年金者組合] 後期高齢者医療制度が発足し、当事者も苦しいが、現役も大変だということがわかった。この間、制度反対に取り組んできたが、署名も厚労省要請行動も大きく盛り上がった。次は6月11日の国会前に500人を集めたい。この問題は年齢を区切って差別するところにある。保険制度は元々リスクをみんなで分担し合うことなのに、リスクの高い人だけを集めるというのは大問題だ。いま75歳以上の人は、戦中・戦後の混乱期を潜り抜け、ひときわ苦労をしてきたのに、人間の尊厳が傷つけられた。団塊の世代はもっと負担が押し付けられる。問題は、日本の医療・健康保険制度全体の矛盾であり、全労連には根本的な政策提起をお願いしたい。

[討論のまとめ] (1) 組合ごとに健保・共済の給付内容によって掛け金も違ってくる。人間ドックも年齢制限したり、一泊か日帰りかで経費も変わる。労働組合の関わりで議員数も違うし、システムも違う。これらのことを改めて交流、研究し合っていこう。
(2) 要望のあった、医療・健康保険制度全般の政策づくりは全労連に要請する。
(3) 当面する要望は、(直後の)厚生労働省交渉で当局に伝えていく。



 厚労省交渉  「見直して推進」に、各代表が猛反発

 交流会終了後、参加者の中から要請団を編成して厚生労働省に移動。保険局に要請書(別紙)を提出し、交渉しました。
 冒頭、伊藤圭一常任幹事が、春闘共闘による「財政運営に関する調査」結果について、後期・前期医療制度への支援金・納付金などが保険料収入の44.5%に及ぶこと、このため9割の組合が今年度予算で赤字に転落していることや、制度導入が福田内閣の支持率低下に直結しているなどを紹介して、後期高齢者医療制度の廃止と、当面する軽減策を求めました。
 対応した保険局・高齢者医療制度の担当官は、概要つぎのように回答しました。

(1) 後期高齢者医療制度について、高齢化に伴う医療費増が見込まれる中、高齢者の医療費を若い人が支える、わかりやすい制度として発足させた。低所得者の負担増などに対処するため、所得割の5割軽減などキメ細かな対応をして制度の定着を図りたい。
(2) 国保保険料は、5倍もの地方格差があったが、今回の制度では2倍にまで縮まった。国民のご意見を受け、反省すべきは反省して改善していく。
(3) 現役からの支援金・納付金が増えたが、保険料率に特化した公平化は考えていない。老人保健拠出金の激変緩和措置へ助成してきたが、今回も激変緩和措置(総額120億円)を考えている。その条件は、新制度導入の前後で保険料率の引き上げ幅の平均値(4.66‰)の1.5倍(7‰)くらいを考えている。
(4) メタボ健診結果による支援金の増減は、リスクが重なっていくと病気を発症しやすいし、メタボが減れば老人になった時に病気も少なくなるので連動することになった。加算・減算は平成25年度から。実態や意見を踏まえて具体化したい。

 後期高齢者医療制度を与党と同一歩調で推進しようとする回答に対して、参加者から怒りの声があがり、「どこを反省するというのか」「与党の見直し案は国民の気持ちとはまったく違う」「高齢化社会になったら医療費が増えるのは当たり前だ。そのツケを当事者に押し付けるのはダメ。撤回すべきだ」と迫りました。また、支援金や激変緩和措置をめぐって、「民間の健保でも厚労省共済でも保険料収入の50%以上を支援金などに持って行かれるのは異常だ」「足りないなら余力のある大企業から徴収すべき」「激変緩和措置は前後の保険料率だけでなく、給付減などの内部努力を加味しないと不公平だ」と指摘しました。メタボ特定健診についても、「今の時代はメタボより精神疾患に多くの費用が掛かっている。基準局とも連携した改善策を」と求めました。



 
後期高齢者医療制度の廃止と

国民医療の改善を求める要請書

 日頃から、国民のくらしと健康を守るために、日夜ご尽力いただいていることに心より敬意を表します。
 私たち国民春闘共闘委員会は、春闘を軸に、賃金の引き上げと底上げ、最賃制の確立・改善、時短・雇用確保、年金・医療・社会保障制度の拡充など労働者・国民の切実な要求実現をめざすために、共同行動をすすめています。共闘に参加する労働組合は、官民31単産で、民間(約4500組合)の多くは中小企業が占めています。
 いま、08春闘をたたかっていますが、回答状況の到達点は単純平均5110円、2.04%というきびしいものです。ところが、この間の生活関連物価の値上がりで4人世帯平均4795円の負担増、5月のガソリン代の値上げで1586円の負担増となり、すでに賃上げ額を上回る負担になっています。
 加えて、前期・後期の高齢者医療制度とメタボリック健診の発足にともない、現役労働者が所属する健保・共済組合にも支援金、納付金が要請され、その負担増(総額4300億円)のために約9割(1334組合)の財政が赤字に転落し、組合解散や保険料の値上げを余儀なくされています。一部老舗の健保組合では積立金を取り崩したり、資産売却で当面は値上げを回避できるものの、来年、再来年には値上げが必要だと言われています。
 後期高齢者医療制度につきましては、保険料負担や差別医療などの問題点が噴出し、貴職にも高齢者団体や地方自治体から「中止・撤回」「見直し」を求める意見、要望が集中しているとおりで、福田内閣の支持率(「朝日」19%)にも多大な影響を及ぼしています。
 こうした状況を打開し、労働者が「人間らしく働き、生きられる」ために、下記事項の早期実現を要請するものです。

1.後期高齢者医療制度は、高齢者の保険料や窓口負担を半年ないし1年間凍結するなどという方策でなく、全面的に中止・撤回すること。
2.当面、健保組合の一般保険料が82‰以上の高い料率で運営しているところについては支援金、納付金等の特定保険料負担を軽減し、安い保険料で運営している健保組合との公平負担に努めること。
3.また、高齢者医療の保険料は、地域間格差をなくし、すべての都道府県一律に設定すること。
4.メタボリック特定健診については国民全体の課題であり、高齢者医療制度への支援金、納付金等の負担にあたり健保組合ごとに保険料増減などの連動はやめること。
5.その他、各健保・国保・共済組合が抱えている新たな困難、諸問題について、実態の掌握につとめ、国民医療の改善に努めること。


(以 上)




 
 なくせ貧困、ストップ改憲! つくろう平和で公正な社会

 




国民春闘共闘情報