2007国民春闘共闘情報
全労連HP

第 43 号  2007年08月08日

 

 07人勧  1352円、0.35%の官民較差

初任給中心に8年ぶり俸給表を改善

一時金0.05月改善。時短は見送る

写真

 人事院は8日、国家公務員の2007年度給与等の改定について、@官民較差「0.35%、1352円」にもとづき初任給2000円引き上げなど俸給表の部分改善、A子等の扶養手当500円引き上げ、B一時金の0.05カ月増額、C「専門スタッフ職俸給表」を新設するという勧告・報告を行いました。
 2年連続の賃上げなど民間賃金の動向も反映して、07勧告は一部の改善にとどまったものの、月例給では8年ぶりの「プラス勧告」になりました。また、組合側が強く求めていた非常勤職員の給与改善にむけて、人事院として必要な方策を検討していくとの方向性が示され、今後の要求前進につながる足がかりとなりました。
 しかし、所定勤務時間の短縮は、人事院自らが是正の必要性を認めながら今回見送られました。これについて公務労組連絡会は、「断じて認められるものではない。来年の勧告を待つことなく、速やかな措置を強く求めるものである」と表明しています。


「最賃と人勧」結合した運動と、国民世論が反映

 今回の勧告の背景には、この間の構造改革路線によって生み出された「格差と貧困」の拡大が社会問題になり、先の通常国会や参議院選挙でも是正に向けた熱い論争が展開され、格差容認、戦争をする国づくりの与党が大敗を喫したことがあげられます。継続審議となった最賃改正法案でも「生活保護との整合性」が明記され、人事院も最低賃金ギリギリにおかれている初任給を引き上げざるを得なくなったものです。たたかう決意を示してきました。
 この間、公務労組連絡会は公務・民間労組の共同を重視し、官民2000人を結集して「人勧・最賃」の改善、引上げを求める「7・25第2次中央行動」(写真。集会後の銀座デモ)などを取りくみ、人事院への要請行動を展開してきました。地方でも人事院地方事務所に対する「包囲行動」などを展開するとともに、各職場から「賃金改善署名」を取り組み、民間組合との共同を含め25万6000筆を超えて集約するなど、要求の切実さとたたかう決意を示してきました。




 

 

2007年人事院勧告にあたっての幹事会声明

2007年8月08日・公務労組連絡会幹事会

1、人事院は本日、国会と内閣に対して、一般職国家公務員の給与改定などに関する勧告および報告をおこなった。
 その内容は、「0.35%、1,352円」の官民較差にもとづく初任給を中心とした俸給表の部分的改善、子等の扶養手当の引き上げ、一時金の0.05月増額、「専門スタッフ職俸給表」の新設などである。
 昨年に引き続く賃上げなど民間賃金の動向も反映して、今夏勧告は、一部の給与改善にはとどまったが、月例給では、実に8年ぶりの「プラス勧告」となった。
 また、報告では、焦点となっていた非常勤職員の給与改善にむけて、人事院として必要な方策を検討していくとの方向が示され、今後の要求前進につなげる足がかりとなった。
 しかし、公務労組連絡会が強く求めてきた所定勤務時間の短縮は、人事院みずからが是正の必要性を認めながら、今夏勧告での改善を見送ったことは断じて認められるものではない。来年の勧告を待つことなく、所定勤務時間の短縮にむけたすみやかな措置を強く求めるものである。

2、「格差と貧困」の拡大が社会問題となるなか、中央最低賃金審議会では、最低賃金の大幅引き上げにむけた議論が続いている。継続審議となった最低賃金法案でも、全労連などが求めてきた要求を反映し、「生活保護との整合性を考慮した最低賃金」が明記された。
 こうした動きのなかで、人事院も、最低賃金ギリギリにおかれている初任給引き上げを中心に、給与改善の勧告をおこなったものである。
 この結果は、公務労組連絡会が、最低賃金引き上げと公務員賃金改善を一体にしてたたかってきた運動の貴重な到達点である。
 今年も、公務・民間が共同して2000人が参加し、最低賃金引き上げの課題とも一体で取り組んだ「7・25第2次中央行動」を頂点に、中央での人事院前「座り込み行動」や官庁街デモ、地方での人事院地方事務局に対する「包囲行動」などでたたかいを強化した。
 さらに、職場からは、「賃金改善署名」を民間組合とも共同して取り組み、昨年を約4万筆上回る25万6000筆を超えて集約し、「今年こそ賃金改善を、労働時間短縮を」の要求と公務労働者のたたかう決意を人事院に示した。
 厳しい情勢を跳ね返して給与改善勧告を勝ち取り、最低賃金引き上げの課題でも新たな局面を切り開きつつあることは、こうした「人勧・最賃」を一体にした仲間たちのねばり強いたたかいがあったからであり、そのことにあらためて確信を持つ必要がある。

3、「ワークライフバランス」をテーマに今年の「労働経済白書」は、企業がバブル期のピークを超える利益をあげているにもかかわらず、賃金は減り続け、長時間労働や非正規労働者の拡大で、大企業の儲けが労働者に還元されない深刻な事態を指摘している。
 さらに、財界・政府の総人件費削減政策に迎合し、連年の「マイナス勧告」で公務員賃金を引き下げ続けてきたばかりか、その結果、官民の「賃下げの悪循環」を招き、労働者全体の賃金水準引き下げに手を貸してきた人事院の否定的な役割も重大である。
 今夏勧告でも、昨年に引き続いて「企業規模50人以上」を官民比較企業規模として、人事院は、意図的とも言える手法で官民較差を大幅に引き下げ、俸給表改善を部分的にとどめた。
 人事院は、労働基本権制約の「代償措置」としての役割を果たすとともに、人事院勧告の社会的影響力をふまえて、すべての労働者の賃金底上げに積極的な役割を発揮すべきである。

4、過日の参議院選挙では、自民・公明両党の歴史的敗北という結果となり、「戦後レジームからの脱却」をさけび、「三本の矢」などと称して公務員バッシングで国民の支持を得ようとした安倍内閣には、国民の厳しい審判が下された。
 選挙結果は、また、ワーキングプアやネットカフェ難民を生み出す弱肉強食の社会、公共サービスの切り捨て、地方切り捨てで国民に犠牲を押しつけてきた「構造改革」への怒りが爆発したものである。
 公務労組連絡会は、新しい政治状況のなかで、国民本位の公務・公共サービスの実現に全力をあげる決意を新たにする。
 むかえる秋のたたかいは、人事院勧告をふまえた給与改善の早期実施とともに、国以上に厳しさを増す地方自治体や独立行政法人職員の賃金改善が焦点となってくる。
 「公務員制度改革」では、臨時国会で「地方公務員法改正法案」が審議され、来年の通常国会へ「公務員制度改革基本法案」が準備されようとしている。労働基本権回復を求めるたたかいも、この秋には、政府の専門調査会の結論が出される重要局面をむかえる。
 公務労組連絡会は、国民のいのちと暮らし、平和と憲法を守るたたかいと一体で、公務労働者の生活改善、労働基本権回復など民主的公務員制度実現をめざして、引き続き奮闘する決意である。

 (以 上)  





 2007年勧告の主な内容

◎ 本年の給与勧告のポイント
@民間給与との較差(0.35%)を埋めるため、初任給を中心に若年層に限定した俸給月額の引上げ(中高齢層は据置き)、子等に係る扶養手当の引上げ、19年度の地域手当支給割合のさかのぼり改定
A期末・勤勉手当(ボーナス)の引上げ(0.05月分)
B給与構造改革の一環としての専門スタッフ職俸給表の新設

◎ 公務員給与の改革への取組
 平成17年の勧告時の報告において、地域間配分の適正化、職務給の徹底、成績主義の推進を図るため、給与制度の抜本的な改革を行うことを表明。この給与構造改革は、平成18年度から俸給表水準の引下げ(4.8%)を実施しつつ、逐次手当の新設等を行い平成22年度までの5年間で実現
 また、民間企業の給与水準をより適正に公務の給与水準に反映させるため、平成18年勧告の基礎となる民間給与との比較方法について、比較対象企業規模をそれまでの100人以上から50人以上に改めるなど抜本的に見直し
 本院としては、公務員給与の改革を進めることにより、国民の支持の得られる適正な公務員給与の確保に向けて全力で取り組む所存


T 給与勧告の基本的考え方

〈給与勧告の意義と役割〉
 勧告は、労働基本権制約の代償措置として、職員に対し適正な給与を確保する機能を有するものであり、能率的な行政運営を維持する上での基盤
〈民間準拠の考え方>
 国家公務員の給与は、市場原理による決定が困難であることから、労使交渉等によって経済・雇用情勢等を反映して決定される民間の給与に準拠して定めることが最も合理的


U 民間給与との較差に基づく給与改定

1 民間給与との比較

 約10,200民間事業所の約43万人の個人別給与を実地調査(完了率89.4%)

   〈月例給〉  公務と民間の4月分給与を調査し、主な給与決定要素である役職段階、年齢、学歴、勤務地域の同じ者同士を比較
   ○民間給与との較差  1,352円0.35%〔行政職(一)…現行給与383,541円平均年齢40・7歳〕
俸給   387円     扶養手当 350円 
地域手当 560円    はね返り分 55円
   〈ボーナス〉  昨年冬と本年夏の1年間の民間の支給実績(支給割合)と公務の年間支給月数を比較
   ○民間の支給割合  4.51月(公務の支給月数4.45月)


2 給与改定の内容と考え方
   〈月例給〉 
(1)俸給表  初任給を中心に若年層に限定した改定(中高齢層は据置き)
 @行政職俸給表(一) 
改定率 1級1.1%、2級0.6%、3級0.0%。4級以上は改定なし
初任給 T種181,200円(現行179,200円)、U種172,200円(現行170,200円)
      V種140,100円(現行138,400円)
 Aその他の俸給表 
行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定(指定職俸給表等を除く)

(2)扶養手当 民間の支給状況等を考慮するとともに、少子化対策の推進にも配慮
         子等に係る支給月額を500円引上げ(6,000円→6,500円)
(3)地域手当 給与構造改革である地域間給与配分の見直しの着実な実施
地域手当の級地の支給割合と平成18年3月31日における調整手当支給割合との差が6%以上の地域の地域手当支給割合について、今後の改定分の一部を繰り上げて改定(本年度分として0.5%の引上げを追加)
   [実施時期] 平成19年4月1日 
   〈期末・勤勉手当等(ボーナス)〉 民間の支給割合に見合うよう引上げ4.45月分→4.5月分
   (一般の職員の場合の支給月数)

  6月期 12月期
19年度 期末手当 1.4月 (支給済み) 1.6月 (改定なし)
  勤勉手当 0.725月 (支給済み) 0.775月 (現行0.725月)
20年度 期末手当 1.4月   1.6月  
以降 勤勉手当 0.75月   0.75月  

   [実施時期] 公布日
   〈その他の課題〉 
(1)住居手当
     自宅に係る住居手当の廃止も含め見直しに着手
(2)非常勤職員の給与
 給与の実態把握に努めるとともに、職務の実態に合った適切な給与が支給されるよう、必要な方策について検討
なお、非常勤職員の問題は、その位置付け等も含めた検討が必要


 
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