2007国民春闘共闘情報
全労連HP

第 4 号  2006年11月22日

 

 改正高齢法の実効求め国会内で厚労省交渉

選別基準・不誠実団交で「不採用」が続出

(厚労省回答)指導と働きかけを行う

 60歳以上の雇用延長をすべての事業主に義務付ける改正高年齢者雇用安定法が施行され7カ月が経過し、法改正の趣旨に反する制度を採用する企業が後を断たないことから20日、全労連と国民春闘共闘は国会内で厚生労働省に要請し交渉しました。JMIU、通信労組、建交労鉄道本部、映演労連、全東映労組、出版労連の代表が参加、日本共産党の高橋千鶴子衆議院議員が同席し、指導の強化を要請しました。対応した厚労省高齢者雇用対策課の森下興課長補佐は、「違法や望ましくない状態があれば、指導、働きかけをする」などと回答しました。


実効ある雇用確保の要請に対する回答

 1.雇用確保措置の導入が遅れている企業等への周知徹底、指導・助言、勧告の強化について
 (回答)@「6月1日」報告にもとづき実施状況を調査し、10月に発表した。実施は大企業で92%、中小企業では84%となり、中小企業が遅れている。いずれも年内を目途に個別指導を要請している。1月1日の発表時点では未実施は皆無にしたい。
  A指導は法律に基づいて行っている。半年を経ても実施していないところは法律に基づいて行うように指示をした。

2.「希望者全員の雇用」を確保するため、ひきつづき周知徹底と改善指導の強化について
 (回答)前回(2/16)の要請で「希望者全員の雇用が大切だ」という意見を受け、これに基づき指導している。今年度も「希望者全員の雇用」を強調した指導文書を再度出している。さらに、6/22付『朝日』『日経』、6/28付『読売』や9/19付『エコノミスト』『日経ビジネス』などに広告を出し、「希望者全員の雇用」を強調した。

3.賃金水準のあり方について提示できるよう、高年齢者雇用の支援制度や各種社会保障制度等を参考に、関係各局と連携のうえ検討すること。
 (回答)賃金水準のあり方をどう定めるかをめぐって議論になっている。大幅に引き下げられている実態もある。各労使で経営環境、実態を真摯に話し合ってほしい。最賃法をクリアするのであれば法的には問題ないが…。

個別企業での違法・脱法事例への回答

 [JMIU]今回の回答と現場指導の乖離。三條機械の不当な選別基準、不誠実団交とハローワークの曖昧な指導法。TOTOの「会社が必要とする業務がある場合」という再雇用条件の違法性。
(回答)
(1) 「形だけの指導」と言われるが、これで十分だとは考えていない。導入したところについては、より良い制度づくり、制度の充実に努めていきたい。
(2) 希望者全員の雇用については「原則」と「例外」をしっかり見極めるよう徹底している。説明会でも、いきなり選定基準を説明することのないよう希望者全員の雇用、労使協議を尽くすことなどを徹底している。
(3) 三條機械について、労使協議が形式的で、協議も形ばかりでは困る。真摯に対応するのが基本だ。

[通信労組]NTTの労使協議拒否、50歳定年制・賃金30%カットし子会社が採用・60歳以降は時給875円、東・西会社には雇用延長制度なし。
(回答)
(1) 施行1週間前に提示し、労使で協議しないのは法律の趣旨に即していない。
(2) 50歳定年制はその後の判断に委ねられる。労働条件はあくまで労使の話し合いによる。何歳までが合法かは総合的に判断せざるを得ない。
(3) 時給875円について、賃金の決め方は労使で話し合ってほしい。
(4) 東・西会社に残った人に対する対応について、判断の条件が変化したなら、再度従業員に聞く機会を与えるべきだ。法律の変更によって、労働者の考え方は様々だから…。

[建交労鉄道本部]JR東日本本社に残れる雇用延長制度なし。子会社・別会社が行う2回の採用試験は難しく06年度64名、07年度42名が不採用。厚労省の指導が曖昧。
(回答)
我々は必要に応じて調査し、指導もしている。
(約束の時間が近づき、回答も短絡的になってきた)

[映演労連全東映労組]再雇用の労働条件が「会社希望」と「本人希望」で違う。退職金500〜600万円カットの強行。ハローワーク・労基署の合法判断、就業規則の一方的変更を届出・受理。
(実情は掌握したが、具体的な回答なし)

[出版労連]ある出版社。該当者の現職場での再雇用を拒否、他の職場で申請したら産業医の健診結果を理由に拒否、主治医は就労OK。普及パンフの「産業医」は撤回すべき。
(実情は掌握したが、具体的な回答なし)
(総括的回答)違法や望ましくない状態があれば、指導、働きかけをします。

[中島全労連賃金対策部長]未実施企業へ年内実施の指導強化にあたり、労使協議を継続しているところについて「何でも良いから」というような拙速な催促はしないでほしい。
(了解)

[高橋千鶴子衆議院議員]採用拒否など問題が噴出している。名だたる大企業がこうした悪い制度を実施している。これが一般化したら大変なことになる。是正の指導を実りあるものにすべきです。指導・勧告結果の報告を要請します。
(了解)

<交渉総括> 活用法と今後の取り組み

(1) 不当な選別基準の押しつけなどについて、ハローワーク、労基署に申告した場合、会社は「法律の説明を受けただけ」「法律違反だから是正しろとは言われていない」などと言って助言や指導に従わず、犠牲者が続出している。また、労使協議を一方的に打ち切って就業規則変更届を出すと、労基署が簡単に受理してしまう…。このような実態と、厚生労働行政に対する不信感が広がっていることについて、高齢者雇用対策課のトップに実態を知らせることができた。

(2) この間、各単産の厚労省交渉では、対応した担当者が「指導、助言、勧告をやると言っても強制力がなく、実効性がないからやらないようにしている」「『望ましい基準』(具体性、客観性)に合致していないからといって違反とはいえない。即指導できない」などと回答し、責任回避している実態についても、上司に実情を認識させ、改善の回答を得ることができた。

(3) 交渉団の追及もあって「(6月1日報告の実施状況)これで十分だとは考えていない。導入したところについてはより良い制度づくりを要請し、制度の充実に努めていきたい」「希望者全員が原則であり、労使協議も形ばかりでは困る。真摯に対応するのが基本」として、我々の要請事項に応えたこと。また、「違法や望ましくない状態があれば、指導、働きかけをする」とした総括的回答は個別企業での交渉、ハローワーク・労基署要請に活用できる。

(4) 選任基準や賃金水準をめぐって、なお交渉を継続している企業について、未実施だからといって拙速な届出の催促をしないことに積極的に同意した。該当する労組はその旨を企業側に伝えておくこと。

(5) 今後の取り組みとして、衆議院(又は参議院)での委員会質問、会期末での大臣宛質問趣意書の提出、春闘共闘・全労連レベルでの悪質企業対策などを検討することになった。



 


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