第27回大会以降の主な経過と到達点

はじめに  その中心的な特徴点

(1) 第27回定期大会から丸2年、全労連と加盟組織は、安倍政権の「二つの暴走」(①アメリカと一緒に「戦争する国づくり」と、②働く人々や地域を踏み台に、大企業の利益に全面奉仕する「グローバル競争国家づくり」)がより乱暴に加速されるもとで、「三つの課題」(①かがやけ憲法署名を軸にした「憲法闘争」の推進、安保法制(戦争法)廃止の国民的な共同、②雇用の安定と社会保障拡充を中心にした「憲法をいかし、安全・安心社会をめざす大運動−強権国家ではなく、働く人々と地域社会が元気な日本にかえよう−」(全労連大運動)と、その具体としての「社会的な賃金闘争」と「地域活性化大運動」の発展・飛躍、③「中期計画」の達成など150万全労連への確かな道筋をつける組織拡大運動)を基本に、安倍「暴走」政治STOP!の旗を高く掲げて、世論と共同を大きく前にすすめながら、たたかいを総合的に推進してきた。

(2) この2年間のとりくみの最大の特徴は、安倍政権の「二つの暴走」が強まれば強まるほど、各分野で矛盾や亀裂が深まり、国民的な世論と共同が力強く発展してきたことである。全労連と加盟組織はねばり強い献身的なとりくみで、世論と共同の発展を牽引してきた。そして、いくつかの重要な分野で安倍政権を追い込む新たな状況をつくりだしつつある。

とくに、安保法制(戦争法)廃止のたたかいでは、平和主義・立憲主義などこの国の根幹を揺るがす危機だという意識の高まりのもとで、中央・地方でねばり強くとりくみ、安保闘争以来というべき世論の高揚と総がかりの共同をつくりだした。そうした世論と共同の発展が、参議院選挙で戦争法廃止の「統一候補」を実現する大きな原動力となり、32の参議院選挙一人区のすべてで「統一候補」が実現するという、日本の憲政史上初めての画期的な事態をつくりだした。

参議院選挙の結果は、与党が改選議席の過半数61を上回る70議席を確保し、参議院でも改憲勢力で3分の2を占めるという重大な結果になった。その最大の要因は、安倍政権がアベノミクスの偽りの成果を声高に叫び続け、改憲や戦争法などの争点隠しをはかったなかで、選挙戦全体の構図が見えにくくなったことである。もうひとつは、危機感を深めた安倍自民党と補完勢力が、「暗い低迷した時代」などと旧民主党政権に対するネガティブキャンペーンを強めたことにくわえ、野党共闘に対する“野合”批判や反共分断攻撃をなりふり構わず展開して、「統一候補」や野党に対する支持や期待のひろがりにブレーキをかけたことである。

ただし、「統一候補」の擁立・合意がギリギリになり、十分に浸透しきれなかったなかでも、32の一人区のうち11選挙区で「統一候補」が勝利し、他の一人区の多くでも接戦に持ち込んだことは、市民と野党の共同の大きな可能性を示すものであり、今後につながる重要な一歩になったということができる。全労連と加盟組織は、各県・選挙区の実情を踏まえた「統一候補」への支援を含めて、「安倍政権NO!の選挙権行使を呼びかけ投票率を押し上げる」ために奮闘したが、さまざまな不十分は残しつつも、現職大臣を打ち破った沖縄や福島、また、東北5県をはじめ11の一人区での勝利に貢献し、それ以外でも多くが接戦に持ち込み議席を実際に競りあったなかで、確信が大きくひろがっている。総括論議を深め、要求闘争と政治闘争の結合など、より深めた方針論議が求められている。改憲策動と戦争する国づくりに反対する国民的な共同にくわえて、切実な要求に根ざした結びつきを深化させ、暮らしや雇用をまもる課題でも共同を前進させながら、アベノミクスの新自由主義改革そのものに反対する一致点を太くしていく必要がある。

(3) 暮らしと雇用をまもる課題でも、格差と貧困が加速度的に拡大し、日本経済の低迷が鮮明になるもとで、“地域”を基礎に対話・懇談運動にとりくみ、アベノミクスの転換を求める共同を前進させてきた。先の第190回通常国会では、安倍首相自ら「国家100年の計」と持ち上げ早期批准に執念を見せたTPP承認法案や残業代ゼロ法案(労基法改悪法案)などの成立を断念させ、消費税再増税も、中止ではなく“延期”ではあるが、ふたたび2年半先送りせざるを得ない状況に追い込んだ。安倍首相の「一億総活躍」という新たな打ち出しも、目先を変えてアベノミクスの誤りを覆い隠そうという欺瞞的な手口にほかならないが、曲がりなりにも最低賃金の引き上げや同一労働同一賃金、労働時間の上限規制に言及せざるを得なくなったのは、賃金の底上げや雇用の安定、社会保障拡充を求める世論と運動の前進がうみだした新しい局面でもある。

(4) 以上のように、この2年間のとりくみの前進は安倍政権を追い込み、あと一歩で力関係を大きく変えて、要求実現の新たな展望をつくりだすことが可能な情勢を切り拓きつつあるということができる。

ただし、こうした共同の前進など運動のなかでつくりだした新たな可能性を組織拡大強化に十分につなげきれず、2016年6月現在の組織人員は1,060,118人(前年比−22,781人、現行中期計画の4年間で−77,465人)と、今年度も増勢に転じることはできなかった。新規結成・加盟が129組織1,337人に止まっていることをはじめ、この分野での状況の打開こそが全労連運動の飛躍のカギになっている。

ねばり強いとりくみでつくりだされた端緒的な前進、とりくみの教訓を全体のものとし、①あらためて組織の基礎を見つめ直し、日常活動の活性化と組合員参加型の組織運動を不断に追求するとともに、②共同の前進などの可能性を活かしきり、労働運動への信頼と結びつき、社会的な影響力を各産業・地域から強化しながら、総がかりで新組合の結成・加盟でも飛躍をつくりだすことが強く求められている。

1.世論と共同の前進で改憲と戦争する国づくりを阻止するとりくみ

(1) 安倍政権が集団的自衛権行使容認の7・1閣議決定を強行した直後の開催となった第27回定期大会では、①「かがやけ憲法署名」の推進を中心に据えて、戦争する国づくりを強権的にすすめる安倍「暴走」政治STOP!のたたかいを大きく発展させること、そのため、②2014秋季年末闘争では「かがやけ憲法キャラバン」にとりくむこと、③運動の結節点として、諸団体と共同で11・29国民大集会・大行動を大きく成功させることなどを意思統一した。

14年10〜11月に実施した「かがやけ憲法キャラバン」では、すべての都道府県で多様な行動が展開された。とくに、地方自治体や未加盟労組、諸団体との対話・懇談運動では、自治体首長や保守的な人々からも平和への熱い思いが語られるとともに、地域経済の疲弊が大きな話題になり、地域活性化の課題でも共通理解が深められた。11・29大行動は、安倍政権が突然の解散・総選挙に打って出たため延期したが、大行動の準備のとりくみそのものが、安倍政権を追い込む世論と運動をひろげる重要な契機となった。

(2) 安倍政権が安保法案(戦争法案)の通常国会への提出を明言するもとで、全労連は改組・機能強化した憲法共同センターの事務局団体として、「戦争させない1000人委員会」と「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会」の三者による「総がかり行動実行委員会」の結成に参画した。総がかり行動実行委員は、通常国会開会日の15年1月26日に実施した「STOP!安倍政権の戦争する国づくり 1・26国会前総がかり行動」を皮切りに、戦争法案反対のたたかいのセンターとしての役割を担い、国民的な共同を大きく牽引してきた。

また、全労連が事務局団体として参加する原発をなくす全国連絡会は、首都圏反原発連合とPARC(アジア太平洋資料センター)と共同して、「安倍政権NO!☆0322大行動」を呼びかけ、実行委員会には広範な団体が参加し、当日は延べ1万4千人(野音集会6千人、国会包囲8千人)が結集した。同実行委員会は「安倍政権NO!☆大行動 実行委員会」に発展・改組され、その後も定期的に大規模行動を実施してきた。

(3) 15年5月3日の憲法記念日には、これまで別々に集会をおこなっていた5・3憲法集会実行委員会(憲法会議と市民連絡会など広範な団体で構成)と平和フォーラム(フォーラム平和・人権・環境)が統一した実行委員会をつくり、横浜臨港パークで3万人を集めた大集会を実施した。また、全国各地で例年を上回る憲法集会が開催された。同実行委員会はその後、総がかり行動実行委員会に結集することとなり、総がかり行動のすそ野をさらにひろげた。

しかし、安倍政権は国民的な反対世論を無視して、15年5月14日に戦争法案を閣議決定し、翌15日に国会提出を強行した。総がかり行動実行委員会は5月12日、日比谷野音集会を開催し、戦争法案を廃案に追いこむ本番のたたかいを意思統一し、毎週木曜日の国会前行動をスタートさせるとともに、毎週火曜日の一斉宣伝行動を全国に呼びかけた。6・14国会包囲には2万5千人が結集し、翌15日からは連続座り込み行動を実施した。全労連・春闘共闘は6・24中央行動をおこない、その夜の総がかり行動国会包囲には全体で3万人が大結集した。

全労連はこれらの行動への参加をひろげるとともに、実行委員会形式で「STOP安倍政権!6・13大集会」を実施し、1万6千人が結集した。また、5月を「憲法署名強化推進月間」、6月8〜14日を「戦争法案と労働法制大改悪に反対する集中行動週間」、7月6〜18日を「戦争法案NO!緊急行動旬間」に設定するなどして全国的な連続行動を推進してきた。

(4) 15年6月4日の衆院憲法審査会で3人の憲法学者が「憲法違反」と意見表明したことを契機に世論が一段と強まり、行動のさらなるひろがりにつながった。全国各地で大規模な集会が連鎖的に実施され、弁護士会などが共同の接着剤として重要な役割を果たした。

こうしたなかで、総がかり行動実行委員会は連続的な国会行動を提起し、7・14野音集会には2万人が結集し、7月15〜17日の国会行動は延べ10万人余が結集する大行動となった。7・26国会包囲に2万5千人、7・28野音集会に1万5千人が結集した。また、SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)にくわえ、安保法案に反対する学者の会やママの会なども結成され、SEALDsが呼びかけた7・10国会前行動は1万5千人、衆議院強行採決直後の7・17国会前行動は2万人が大結集した。「女の平和」レッドアクションも6月20日に国会を包囲するなど、共同と行動の幅が大きくひろがった。

(5) 総がかり行動実行委員会は衆院強行採決を受けて、「8・30国会包囲10万人・全国100万人大行動」をはじめ、参院段階のたたかいを呼びかけた。全労連は8・30大行動を一大決起の場として位置づけ、1万人を目標に全国から最大限の結集を呼びかけるとともに、大阪3万人、兵庫1万人など全国各地でおこなわれた行動に結集した。

また、15年9月2日・9日を「戦争法案ゼッタイ廃案!全国統一行動」に設定し、全組合員規模の行動を提起した。JMIUや建交労、全印総連などがストライキ、労使共同行動、組合休暇などの手段を使って行動を展開した。日本医労連は438職場で決議をあげ3万4千人が行動に参加した。各単産で職場集会、地元選出国会議員への要請FAXなどがとりくまれ、地方組織・地域労連でも集会や宣伝行動など多様な行動が展開された。

そして、9月10・11日の国会前行動、9月14〜18日の国会正門前座り込み行動・国会前集会には、連日1万人を超える人が結集し、全国で呼応する連日行動が展開された。国公労連が「戦時下の公務員」を戦争法学習リーフに連載し、全教が「教え子を再び戦場に送らない」などのスローガンを書いたポスターやチラシを作成しするなどさまざまな行動が展開され、地方組織でもさまざまに工夫して、全国各地で総がかり規模の共同行動をさらに発展させていった。

(6) 安倍政権は、こうした運動の発展を無視して、国会会期を大幅延長して15年9月19日未明、戦争法を強行採決した。しかし、世論と共同を無視して憲法違反が明確な戦争法を強行した安倍政権の異常な姿に、立憲主義・民主主義そのものの危機という認識がひろがり、たたかいは止むことなく継続・発展している。総がかり行動実行員会が「戦争法廃止2000万人統一署名」や、「戦争法強行の19日を忘れない」と毎月の19日行動などを提起するとともに、日本共産党が「国民連合政府」構想を呼びかけるなどするなかで、国政選挙を意識して「野党は共闘」という声がいっそう強まっていった。

全労連は、11月を「改憲と戦争する国づくりに反対する総学習・総行動月間」(憲法闘争強化月間)に設定し、「すべての組合が組合員一人10筆」を目標に、戦争法廃止署名を全組合員参加のとりくみとして推進していくことなどを提起し、各地でさまざまな行動が展開された。

(7) 参議院選挙に向けて「統一候補」の実現を求めて、中央・地方で諸団体との懇談を積極的にすすめてきた。こうしたもとで、野党による協議が継続して開始されるとともに、12月20日には「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」(市民連合)が結成され、野党への働きかけがさらに強められた。

野党協議にはさまざまな曲折があったが、2・19党首会談の合意を契機に協議が加速され、当面の焦点とされた参議院選挙の一人区では5月末段階で、32選挙区すべてで「野党の統一候補」が実現した。これは、2000万人統一署名が5月2日段階で1200万筆(うち全労連集約分は223万筆)を超え、5・3憲法集会が5万人で成功したことなど、「戦争法廃止・安倍政権NO!」「野党は共闘」という総がかり行動実行委員会などのとりくみが後押ししたものにほかならない。各県・選挙区では、多くの地方組織が「統一候補」実現のためにさまざまに創意工夫して、大きな役割を発揮した。そして、安倍首相が同日選挙を断念し、7・10参議院選挙が確定したもとで、総がかり行動実行委員会と市民連合の呼びかけで6・4全国行動が展開され、国会周辺には4万人、全国100か所以上で多様な行動が展開された。

なお、2000万人統一署名は大きくひろがり、総がかり行動実行委員会全体では6月末段階で1350万筆を超える集約となった。とくに、憲法共同センターが大きな役割を果たして1135万筆(11,350,746筆。7月15日現在)を集約し、そのうち、全労連集約分は、日本医労連716,799筆、全教175,772筆、自治労連140,000筆、生協労連137,509筆、東京494,411筆、埼玉382,227筆、大阪302,543筆など、全体で360万筆(3,600,450筆。7月15日現在)となっている。すべての加盟組織の奮闘によって組合員一人3.4筆程度と、この間にない大規模集約となったことは貴重な到達点と高く評価できる。同時に、「すべての組合が組合員一人10筆以上」という目標からすれば約3分の1に止まり、全組合員参加のとりくみにまではなりきれなかったことを各組合で総括論議を深め、不断の情勢論議や日常活動の強化などに活かしていく必要がある。

(8) 戦争法に反対するたたかいと一体で、基地強化、戦争する国づくりに反対するとりくみを強めてきた。

とくに、辺野古への米軍新基地建設が焦点となるもとで、沖縄のたたかいへの全国的な支援を強化してきた。14年9月に新聞に掲載した「辺野古新基地阻止・普天間基地撤去」新聞意見広告運動にとりくんだ。14年11月の沖縄県知事選挙については、名護市辺野古沖への米軍新基地建設、安保体制強化に反対する重要なとりくみと位置づけ、支援を強化した。選挙カンパ、最終盤の電話での支持拡大に全国でとりくみ、翁長氏は10万票の大差での勝利に貢献した。続く衆院選挙でも沖縄の小選挙区すべてでオール沖縄の候補が勝利し、自民党は小選挙区の議席を失った。また、署名への協力、5・17県民集会への参加にとりくんだ。

15年9月12日の「辺野古新基地建設反対・沖縄連帯集会」(参加2万2千人)や、11月29日に開催された、止めよう辺野古国会包囲実行委員会と総がかり実行委員会の共催による「辺野古新基地反対集会」(参加4,500人)の成功に向けて奮闘した。

(9) 「原子力空母ロナルド・レーガンは来るな!」と横須賀基地の母港化に反対して15年9月13日、神奈川・横須賀市で開催された「原子力空母永母港化に反対する大集会」(参加8千人)、11月21日に福生市で開催された「オスプレイ横田配備撤回!集会」(参加5千人)などにとりくんだ。日米合同演習への抗議行動など、全国各地で、基地強化や日米共同演習反対の行動にとりくんだ。

16年1月24日投開票の沖縄・宜野湾市長選では、全国から支援行動を展開した。当選には至らなかったが、21,811票を獲得し、善戦した。2月21日には「止めよう辺野古新基地 国会包囲行動」(参加2万8千人)がおこなわれ、はじめて4野党代表が参加した。3月4日には沖縄・辺野古への新基地建設をめぐる代執行訴訟で、県と国の和解が成立した。オール沖縄の共同した行動とそれに連帯する全国の行動が安倍政権を追い込んでいる。

4月23日から3日間、全労連・沖縄連帯辺野古支援ツアーがおこなわれ、11単産・地方から青年を中心に49人が参加した。沖縄戦の悲惨さや基地の現状を学び、沖縄のたたかいに連帯する行動となった。

また、元海兵隊員の米軍族による暴行殺人事件が発生したもとで、海兵隊そのものの撤退を求める世論へと発展して、6万5千人を結集して開催された16年6月19日の県民大集会に結集し、成功に貢献するとともに、東京はじめ全国で連帯する行動を展開した。

2.実質賃金の底上げを実現する総合的なとりくみ

(1) 格差と貧困が加速度的に拡大し、2014年春の消費税率8%への引き上げで物価が上昇して、労働者・国民の暮らしの悪化が明白になるもので、国民春闘共闘委員会と全労連は、14国民春闘ではじまった賃上げ・ベアの流れを本格化させるためにとりくみの強化を呼びかけた。最低賃金の引き上げを重視し、社会的なたたかいの強化を提起した。そのため、14秋季年末闘争では、15国民春闘の出足早い準備を呼びかけるとともに、14年10月10日に「公契約適正化運動交流集会」(参加58人)を、11月14日には「最賃運動交流集会」(参加172人)を開催し、全国一律最賃制への挑戦を軸に最賃闘争を再構築していくことを提起した。同集会には米国ファストフード労働者も参加し、その組織化のとりくみが大きな感銘を与えた。

また、14人事院勧告が7年ぶりの引き上げを勧告した一方で、「給与制度の総合的見直し」勧告を強行したもとで、全国各地で官民一体のとりくみを前進させ、京都などでは市民的な運動に発展させ、多くの自治体で人勧通りには見直しを実施させず、また、遅らせてきた。

(2) 15国民春闘に向けては、春闘60年・終戦70年の節目の年にふさわしい攻勢的なたたかいを展開し、成果を実感できる春闘にしていくことを呼びかけた。具体的には、①消費税再増税を阻止し、実質賃金を改善する大幅賃上げを勝ちとること、②憲法をまもりいかす共同の前進で、安倍「暴走」政治をストップさせること、③職場の隅々に労働運動の風を吹かせ、仲間を増やし全組合員参加でとりくむこと、④持続可能な地域社会をつくるとりくみの推進の四点を掲げた。とりわけ、実質賃金の低下に歯止めをかけるために、要求額を引き上げ(月額2万円・時間額150円以上)、とりくみを強化してきた。

1月を「大幅賃上げは当たり前キャンペーン月間」、2月を「地域総行動月間」、また、3月を「大幅賃上げ獲得月間」に設定した。15年3月4日の中央行動には3千人超が結集し、大幅賃上げと安倍「暴走」政治ストップを大きくアピールした。最大の山場に位置づけた3月12〜13日の統一行動(50万人総行動)には、ストライキや集会、地域デモ、いっせい宣伝行動など多様な行動が展開され、3・12統一行動には単産集計で約12万8千人、地域集会や宣伝行動など地方集計分もあわせれば20万人強が決起し、重税反対行動を含む3月12〜13日全体では35万人強が結集した。公務単産もそれぞれ関係省庁との交渉を実施し、民間のスト集会等への支援を強めた。3月13日には初の試みとして、公務部会と民間部会の共同宣伝行動が実施された。

(3) 国民春闘共闘委員会と全労連は第一次回答を受けて、「つかみ取るべき二つの教訓」(①中小企業をとりまく環境の厳しさのもとでも、生計費原則にもとづく職場討議やスト配置を含む統一闘争への結集を強化するなかで、少なくない組合が昨年を上回る前進回答、ベア回答を引き出していること、②職場を基礎にした統一闘争への結集強化にくわえ、最賃・公契約・公務賃金改善、中小企業支援の強化など、すべての働く人々の賃金の底上げをはかる「社会的な賃金闘争」の飛躍によって持続可能な地域経済に変えていくとりくみの特段の強化が重要だということ)を明らかにし、春闘後段のとりくみ強化を呼びかけ、3月19日には単産・地方組織代表者会議を開催した。

そして、ねばり強くとりくみを継続したが、15国民春闘の賃金闘争の到達点は、単純平均で5,698円・2.07%(前年実績比−41円・+0.05?)、加重平均で6,170円・2.08%(同−4円・−0.01?)と、ほぼ前年並みの低額回答に止まった。回答引き出し率は67.5%(前年実績63.7%)、上積み回答の獲得は20.7%(同21.5%)であり、先進的な組合の経験を活かして上積み回答を勝ちとっていく大きな流れをつくりだすことできなかった。一方で、非正規雇用労働者の時間額の回答や労働時間など制度要求では、例年以上に前進回答が数多く引き出された。すべての労働者の賃上げなど底上げを重視してとりくんできたことの反映であると同時に、深刻化する労働力不足などの影響を示すものとなった。

(4) 職場のたたかいと結合しながら、最賃・公契約・公務員賃金改善など「社会的な賃金闘争」を重視して15国民春闘をたたかった。公契約条例の獲得では、15年3月議会で四つの条例が制定された。最低賃金のとりくみでも、新たに全国一律最賃制度の実現を求める法改正署名を開始するなどしてきた。「目安制度のあり方に関する全員協議会」に対して意見書を提出するなど、貧困を解消し人間らしい生活を保障すべきことや地域間格差の是正が必要なことを明らかにし、中央・地方で審議会委員の改選に定数枠を意識した候補者を攻勢的に立ててとりくんだ。不当にも一人の委員も獲得できなかったが、大阪で面接を実施させるなどの変化をつくりだし、北海道と東北ははじめて一緒にキャラバン行動にとりくんだ。

また、中央行動や最賃デーなどを強化してきた。その結果、15年の目安答申はAランク19円、Bランク18円、Cランク16円、Dランク16円と、これまでを上回る加重平均18円の引き上げとなった。しかし、非正規雇用労働者等の実態改善には程遠い内容であり、800円以上は7都府県に止まり、600円台が16県も残された。最低額693円、最高額907円と、格差がさらにひろがり214円となるなど、現行制度の制度的な限界がいっそう鮮明になった。地方最低賃金審議会宛の個人署名は、埼玉が53,529筆、東京25,644筆、愛知21,005筆、長野20,280筆、大阪14,148筆など、全国30地方からの集計で191,601筆となり、地方・産別によってとりくみに温度差がある状況を克服できなかった。

最賃闘争と結合して、官民一体のたたかいで公務員賃金の改善、給与制度の総合的見直しを跳ね返すたたかいを強化してきた。人事院は15年8月6日、15年度の勧告をおこない、月例給で0.36%(1,469円)、一時金で0.10月下回っているとして、昨年に引き続き俸給表の水準と一時金の引き上げを勧告した。24年ぶりとなる2年連続引き上げは、公務・民間が一体となったねばり強いたたかいの貴重な到達点だが、不十分な低額勧告といわざるを得ない。また、14年勧告によって「給与制度の総合的見直し」が強行されたもとで、実際には経過措置中の多くの公務労働者が引き上げの対象にならず、地域間格差の拡大の前倒し実施も打ち出された。労働基本権制約の代償機関としての人事院の役割発揮を迫り、官民一体のたたかいを強化していく必要がある。

(5) 15年7月に開催された第52回評議員会は、「世界で一番企業が活動しやすい国」を掲げた安倍政権の「暴走」が乱暴に加速され、格差と貧困の加速度的な拡大や日本経済の深刻な行き詰まりが明らかになりつつあるなかで、国民春闘への期待がかつてなく高まり、賃上げの新たな可能性がつくりだされていることを明らかにした。そして、①すべての働く人々の賃金の底上げ、人間らしく暮らせる賃金を求めて、法改正署名を通年化するなど、全国一律最賃制の実現めざす運動を本格化させることを軸に、「社会的な賃金闘争」を総合的に推進し、最賃協定の改善、地域から時給1,000円未満の労働者をなくす地域運動を“広義の最賃闘争”というイメージで展開していくこと、②あらためて生計費原則にもとづくとりくみを強化し、16国民春闘に向けた準備を出足早く開始するため、春闘アンケートの大規模集約などを提起し、③10月8〜9日には初めて2日間の日程で「賃金闘争交流集会」(参加102人)を開催し、具体化論議を深めた。

(6) こうしたもとで迎えた16国民春闘は、アベノミクスの誤りがますます鮮明になり、日本経済の危機が進行するもとで、その転換を求める世論と共同が新たな前進を開始したなかでのたたかいとなった。安倍首相もついに国会答弁で、消費税増税の影響が予想以上に深刻だったことを認めざるを得なくなり、賃上げ・最低賃金の引き上げにくわえ、同一労働同一賃金の実現にまで言及せざるを得なくなったという変化のなかで、2月の地域総行動月間などで「賃上げで景気回復を」の宣伝を強化し、また、諸団体との対話・懇談運動を推進してきた。

3月9日には、すべての働く人々の実質賃金を改善する大幅賃上げ・底上げと、戦争法廃止・残業代ゼロ法案廃案など安倍「暴走」政治ストップを掲げて、2,000人強の参加で3・9中央行動を成功させた。ライドシェアという新たな規制緩和攻撃が仕掛けられているもとで、自交総連は労戦再編以来はじめて、全自交や私鉄総連など8団体共同の決起集会を2,500人の参加で成功させ、業界代表も連帯あいさつし、マスコミでも大きく報道された。

16国民春闘の最大の結節点と位置づけた3・17統一行動は、目標を下回ったが約25万人が結集した。92組合がストで決起した日本医労連をはじめ、建交労やJMITU、生協労連、全印総連などでストが実施され、職場集会やワッペン闘争、マスク配布などが、また、ブロック別の集会やデモを実施した東京や総行動を展開した大阪をはじめ、地域においても集会やデモ、署名宣伝行動、スト支援など、多様な行動が終日展開され、大幅賃上げを強くアピールした。

(7) しかしながら、16国民春闘の到達点(7月6日現在の最終集計)は、単純平均で5,363円・2.00%(前年同期比−335円・−0.07ポイント)、加重平均で5,823円・2.03%(同−347円・−0.05ポイント)と、前年実績さえ下回る低額回答に止まった。その最大の要因は、大企業が短期的な利益の最大化に固執してベアを低額に抑え込み、また、大企業労組も経済の先行き不安を口実に賃上げ要求を引き下げ、春闘相場を押し下げたことにある。

しかし、同時に、もうひとつの大きな要因が、私たちの側にあることも率直に受け止める必要がある。すなわち、大企業等の動きが事前に予測されたもとで、組合員と地域の切実な要求に立脚した職場討議を深め、ストライキをはじめ実力をかけた全組合員参加のたたかい、「社会的な賃金闘争」の推進や世論喚起など、社会的なたたかいの強化において実践が不十分だったということである。国民春闘の進捗状況調査(16年7月6日現在の最終集計)でも、要求提出は65.1%(前年63.8%)、スト権確立は50.6%(同49.2%)、要求提出した組合のうち、回答を引き出した組合は79.6%(同67.5%)、スト実施組合も8.8%(同9.7%)など、前年を若干上回りはしたものの同程度の到達に止まっている。大規模集約をめざしてとりくみの強化を特別に呼びかけた春闘アンケートについても16年6月21日現在で、24単産・38地方から262,911筆(前年最終256,295筆)の集約に止まった。

(8) 同時に、そのようななかでも、少なくない組合のねばり強いとりくみによって、全体では前年比微減で踏み止まったといえる。あらためて、職場と地域の切実な要求に深く立脚した議論をすすめ、全組合員参加型のとりくみをつくりだす努力と統一闘争への結集を一段と強めていく必要がある。また、人手不足の深刻化を反映して、中小企業経営者のなかにも変化がうまれている。「人手確保のためには賃金の底上げが必要だ」と正面から迫った組合では積極的な回答が引き出されており、とくに非正規雇用労働者の待遇改善では前進回答が多かった。

例えば、JMITUでは、生計費原則にもとづく討議とともにリレーストなど産別統一闘争をいっそう強めてたたかった東京東部地協や、執行部が若返り職場集会で意思統一を深めるため職場リレーストを実施したリオン支部、また、青年が組合に入ってきて前進をつくりだした川本製作所支部などの教訓的な経験が報告されている。建交労では首都圏運輸の集団交渉が実施され、ストを背景にした粘り強い交渉で上積み回答を引き出し、6組合が前年実績以上、5組合が前年同額・同率と、全組合が前年実績を確保した。医労連全医労では院内保育所で、保育士の人員確保を労使合意し、そのために全国平均2万3千円の賃上げを実現し、時給1,000円未満の人をなくした。また、建交労では学童保育のいくつもの支部で、運動のなかで実現した処遇改善の補助金を活用して5ケタ回答が勝ちとられ、最高は35,000円となっている。出版労連ではあらためて出版最賃のたたかいを強化し、9組合で最賃協定の改訂を勝ちとった。また、民放労連では構内労働者組織化プロジェクトを引き続き前進させており、15春闘で派遣スタッフの委託料を改善し最低保障30万円を実現したテレビ朝日労組では、今年は構内労働者4,000人全員を対象にクオカード2万円を支給させるなどしている。

(9) 「社会的な賃金闘争」を強化してきたもとで、16年の目安改定をめぐっては、16年6月14日に中央最低賃金審議会に対する諮問がおこなわれ、塩崎大臣は「ニッポン一億総活躍プラン」が3%程度の引き上げを打ち出したことに配慮した答申を要請した。全労連は同日、「最低生計費試算調査」の中間集計を記者発表し、時給1,500円程度が本来必要なことを明らかにするなどして、「今すぐ最賃1,000円以上」を求めるとりくみを強化している。6月17日の最賃デーでは、全国で「今すぐ最賃1,000円以上」の宣伝行動や座り込みにとりくみ、中央行動には350人以上が参加して、厚労省前での座り込みや厚労省・人事院前決起集会、銀座デモにとりくみ、また、最賃課題と同一労働同一問題のふたつの厚労省交渉などを実施した。とくに東京で、6月1〜17日をゾーンに宣伝行動(22地域26か所)や学習会等が集中的に展開されたことは教訓的であり、全国的にひろげていく必要がある。

「地域活性化大運動」の対話・懇談運動のなかでも、賃金の底上げと最低賃金の引き上げ、中小企業支援の抜本的な強化に多くの共感が寄せられ、一致点が拡大している。「社会的な賃金闘争」と「地域活性化大運動」をセットでいっそう強化していく必要がある。

とくに、安倍政権も最低賃金の引き上げなどをいっそう強くいわねばならなくなっているもとで、最賃闘争での飛躍をつくりだすことが重要なカギになっている。しかし、運動の中心課題に位置づけた全国一律最賃制の実現をめざす法改正署名は約26万筆の到達に止まった。この署名を賃金底上げの戦略的課題として、全国一律最賃制のとりくみを強化していく必要がある。

「最低生計費試算調査」については、北海道と東北、埼玉、新潟、静岡、愛知、広島でとりくまれ、春闘交渉に活用しようと2月末までに単身者の結果等を新潟、愛知、広島の3県が発表し、マスコミ等でも注目を集めた。残る北海道と東北、埼玉、静岡でも集約作業がすすめられ、最賃審議会への結果反映を求めて、中賃に諮問された6月14日に、中間集計結果を記者発表した。最賃引き上げ、全国一律最賃制の実現を求めるとりくみの貴重な資料として活用するとともに、こうした実態告発のとりくみを組織全体でさらに強め、当事者が主役の運動へと質的な強化をはかっていく必要がある。

(10) 公契約条例の獲得でも、ねばり強いとりくみで前進がつくりだされている。2年前の第27回定期大会時は、賃金下限設定のある公契約条例が11区市、理念条例7県区市、要綱に基づく指針が8区市だったが、この2年間で本条例が7区市、理念条例が9県市、要綱に基づく指針が3区市増え、合計44自治体で実施されるようになった。ただし、この1年間では理念条例が増えており、公契約条例の要が賃金下限設定だという合意をひろげ、それを勝ちとるための方針上の発展ととりくみの強化が急がれる。また、高知市のように理念条例を本条例に改正した経験もうまれている。条例を育てる運動の方針化を強めていく必要がある。

公契約条例をめざす自治体は格段に増えており、福島県郡山市、徳島県三好市、三重県伊賀市などでも具体的な動きになっている。地方議会レベルでは、この1年間で200を超える地方議会で公契約条例の制定を求める質疑が行われ、民進・共産・社民・市民ネット・無所属などの党の議員が活発に質疑をおこなう状況となっている。

3.時短・働くルール確立と安倍「雇用改革」阻止のとりくみ

(1) 第27回定期大会以降、労働法制の課題でも、全労連と加盟組織は重要な局面をたたかい抜いてきた。2015年の第189回通常国会では、残業代ゼロ・定額働かせ放題の労基法改悪法案は継続審議へと追い込んだ。労働者派遣法大改悪法案についても、間接雇用を一般化・典型労働化することが可能となる大改悪への反対がひろがり、ギリギリまで追い込んだが、国会最終盤に強行され、15年9月30日に施行された。

全労連は、雇用共同アクション規模の共同を軸に、国会行動、傍聴行動、議員要請にとりくむとともに、労働法制中央連絡会とともに宣伝行動、労働実態の交流集会、電話相談にとりくみ、派遣労働者である当事者がたたかいに参加する状況をつくりだし、当初の施行日予定日を超えてなお法案審議が続く状況をつくった。そして、原案よりわずかながらも労働者の要求前進やたたかいの手がかりとなる改善点を盛り込ませることには成功した。

全労連は、法案施行後も労働法制中央連絡会と連携して、改悪派遣法対応マニュアルを1万5千部発行し、学習会の開催やマニュアルの活用を呼びかけ、職場に悪法を持ち込ませないとりくみを開始した。

(2) 16年の第190回通常国会では、継続審議となった残業代ゼロ・定額働かせ放題の労基法改悪法案が最大の対決法案となり、塩崎厚労相は「速やかな法案成立」を求めたが、審議入りを阻止し、継続審議止まりとさせた。シルバー人材センターの派遣事業・職業紹介拡大についても、たたかいの発展のなかで、審議入りをさせなかった。運動の成果として確認できる。

また、事業の規制緩和(「雇用保険法等改正法案」の中の高年齢者雇用安定法の改悪)や、ハローワークの地方移管(職業安定法改悪)については、問題点は多々あるものの、育児・介護休業にかかわる改善法案との一括法案とされたことから、野党も反対するに至らず、成立した。全労連と労働法制中央連絡会は、2・18高年齢者雇用と失業対策を考える院内集会を通して、雇用保険と問題点を周知させる活動にとりくんだ。また、井上事務局長が衆院厚生労働委員会に参考人として招集され、雇用保険制度と高齢者雇用の問題点について意見を開陳した。

前国会からの継続審議であった外国人技能実習生法・入国管理法の規制緩和法案についても成立を阻止し、継続審議とさせた。技能実習生の過酷な就労実態について、愛労連などの支援活動を通じた情報が国会にインパクトを与えた。

(3) 職場のとりくみでは、とりわけ、労働時間の規制緩和攻撃に対する構えを強めることを念頭におき、15秋季年末闘争、16国民春闘において、①職場における働き方の実態チェック活動、②労働時間法制改悪法案の学習と請願署名の推進、③長時間労働改善のための労使交渉強化・協約締結、④長時間過重労働の実態告発(産別運動での活用、全労連にも情報提供)などのとりくみを提起した。具体的なとりくみでは、端緒的ではあるが、16国民春闘の労使交渉においても、人手不足も反映して増員などの一定の前進が築かれた。

(4) 安倍首相は自らを“規制破壊のドリル”になぞらえ、労働法制を破壊すべき既得権益の岩盤よばわりして、雇用・解雇法制や労働時間、労働市場の需給調整に関わる労働行政機能の根幹を揺るがす法制度改悪の数々を、同時並行でおしすすめてきた。

この間成立した労働関連の改悪法は、有期労働契約特別措置法(労働契約法の無期転換ルールの例外づくり、14年12月)、職業能力開発促進法(ジョブカードの改悪等、15年9月)、労働者派遣法(派遣自由化、15年9月)、国家戦略特区法(外国人家事労働合法化、15年7月)、高齢者雇用安定法(シルバー人材派遣の規制緩和、16年4月)、国家戦略特区法(白タク合法化、16年5月)、職業安定法(ハローワーク地方移管・民間委託化、16年5月)などである。

安倍政権の「非民主的」政治手法は、労働法制課題でも猛威をふるった。労働政策審議会を軽視し、法案上程あたっては複数の法案を一括法案として短期日で押しとおすことも度々おこなわれた。一方で安倍政権は、アベノミクスによる「成長戦略」が、国民経済と働く人々を犠牲にして、大企業と金融資産家を優遇する歪んだ政策であることを隠蔽するため、「女性が輝く社会」「若者の活躍促進」「生涯現役社会」などの階層別対策を打ちだし、法制度の改悪の方向性とは真逆の「長時間労働抑制・過労死防止」や「正社員化促進」「賃上げ・最賃引き上げ」などを打ち出すなど、支持率をにらんだ偽装工作で、世論誘導する作戦を展開している。

(5) 全労連は労働法制中央連絡会や雇用共同アクションと連携し、安倍政権による労働法制改悪の本質を暴きつつ、悪法阻止のたたかいを展開した。週2日の衆議院・参議院の厚生労働委員会の傍聴、週1回の昼の国会前抗議行動、厚生労働委員を中心とした議員要請やFAX要請、各地の街頭宣伝を実施したほか、自由法曹団と共催した派遣労働110番による当事者の声の収集や、労働弁護団等の呼びかけにより幅広い労働団体が結集した日比谷野外音楽堂集会・デモをはじめ、緊急院内集会を何度もおこない、労働組合や派遣で働く当事者の声を与野党に伝えた。そうした共同の前進のなかで、16年のメーデーでは、労線再編以来はじめて、日比谷メーデーとの連帯あいさつの交換が実現した。

雇用共同アクションと共同でとりくんだ「労働時間と解雇の規制強化を求める国会請願署名」の集約数が、全労連単独では約8万6千筆に止まったことなど、この2年間の労働法制のとりくみは、戦争法反対の共同のひろがりに比べると、職場の仲間の関心や参加という点で不十分であった。しかし、国会での法案審議の場面では、戦争法廃止と労働法制改悪阻止のたたかいの双方が、政府を追い込む力となり、労働基準法(労働時間法制の規制緩和)や外国人技能実習法・入管法(外国人労働者の低賃金での活用)は、二度にわたって成立を阻止し、継続審議とさせた。

また、労働者要求を掲げた運動は、安倍政権に一定の影響を与え、労働者派遣法・省令・指針について一定の修正をおこなわせたほか、女性の活躍推進法、改正育児・介護休業法、青少年雇用促進法(ブラック企業対策)、男女雇用機会均等法(マタハラ防止策)については、部分的ながらも改正を実現させた。

さらに、参議院選挙を前にした16国民春闘期には、政府がこれまで明確に否定してきた「労働時間の上限規制の導入・インターバル規制」や「同一労働同一賃金の確立に向けた法改正」などを安倍首相に言及させるなど、譲歩も勝ちとった。野党4党が「長時間労働規制法案」を共同提出したことも、戦争法廃止の野党共同を求める運動と労働者要求を掲げた労働法制闘争の複合的な成果といえる。

(6) もちろん、安倍政権が世論に訴えるキャンペーンと実際の政策には大きなかい離がある。労働時間規制に致命的な穴を穿つ「裁量労働制の拡大と高度プロフェッショナル制度」を導入する労働基準法改悪法案の成立に依然として執念を持っているほか、解雇自由化をねらう「解雇の金銭解決制度」の検討も止めていない。安倍政権との密な関係が指摘される人材ビジネスの規制緩和策では、職業安定行政を解体しつつ、利益の源泉を助成金付きで拡大し、求職者・労働者への支配力を高めていく、雇用仲介事業の規制緩和が着々とすすめられている。

今後、安倍政権が検討している改悪を撤回させるたたかいと同時に、すでに施行されている改悪派遣法等の職場への悪影響を阻止するとりくみ、さらには、労働時間の抜本的な規制強化や労働基準行政・職業安定行政の拡充を勝ちとるべく、たたかいを強化していく必要がある。

4.社会保障拡充、安全・安心社会をめざすとりくみ

一体改悪と社会保障解体攻撃を許さず、拡充を求めるとりくみ

(1) 医療、介護、年金、福祉など社会保障解体攻撃が強まるもとで、「安全・安心の医療・介護大運動」として、中央社保協や民医連などとともに、3か年計画で医療・介護の大運動にとりくんできた。社会保障総改悪、医療「改革」と国民皆保険体制解体を策す安倍政権のねらいや医療・介護総改悪の現状と課題について学習し、運動をつくっていこうととりくんできた。

医療・介護署名の推進を軸にとりくみを強化し、医療・介護総合法をはじめ社会保障改革プログラム法などにもとづく医療・介護の制度改悪を審議する厚生労働委員会に向け、国会傍聴や議員要請などのとりくみを積極的に展開した。

(2) 「医療・介護大運動」の2年目となった2015年度には、総改悪の現状と課題について学習し、地域・職場からの社会保障拡充運動の構築と世論の拡大をめざす全国1,000人学習運動にとりくんだ。全国8ブロックで学習会を開催し、とりくみの結節点に位置づけた第43回中央社保学校(横浜)は460人以上の参加で大きく成功した。

学習とあわせて、中心課題に位置づけた署名活動は、街頭宣伝などが全国で積極的にとりくまれ、対話や署名がひろがっている。職場・地域から医療・介護要求をあらためて掘り起し、改悪を許さない地域段階からのとりくみの再構築が求められている。

(3) 「子どもの貧困」や「老後破綻」など、世代を超えて格差と貧困が深刻化するなか、15年10月28日には、生活保護の連続改悪に反対する「10・28生活保護アクションin日比谷〜25条大集会」にとりくんだ。老齢加算の廃止の違憲性を問う生存権裁判にくわえ、支給額の引き下げに反対する新たな違憲訴訟が全国で提訴されるなか、全生連や社保協、障害者団体など幅広い共同で開催し、約4,000人が結集する大集会となった。また、年金者組合は、年金引き下げに反対する年金裁判を提起し、全国33都道府県で約3,400人が原告となるなど、「社会保障・社会福祉は権利」だと当事者が声を上げて立ち上がった。

「保育園落ちた」と訴える母親のブログをきっかけに待機児問題に母親が大きな声を上げるなど、当事者の運動が大きくひろがった。そんななか、安倍政権の社会保障・社会福祉切り捨てに反対する関係団体が集まり、「社会保障・社会福祉は国の責任で!憲法25条を守る5・12共同集会」が開催され、3,500人が結集して成功した。社保協を中心に、全保連、きょうされん、障全協、福祉の経営者団体、全生連、生存権裁判全国連など、これまでになく幅ひろい共同の実行委員会となり、「25条を空洞化する社会保障・社会福祉全体の危機だ」と大きく訴えた。

(4) 2016年4月からの介護報酬改定で「処遇改善加算に効果があったか」について調査をおこなった。その結果、介護現場で働く人の80.8%が「処遇改善加算」の効果を実感していないことが明らかになり、記者会見や厚労省交渉などをおこなってきた。安倍首相が「一億総活躍社会の実現」として、(1)全産業の生産性革命の実現(第一の矢:希望を生み出す強い経済)、(2)希望出生率1.8の実現(第二の矢:夢をつむぐ子育て支援)、(3)介護離職ゼロや生涯現役社会の実現(第三の矢:安心につながる社会保障)の「新3本の矢」を打ちだしたもとで、その欺瞞性を明らかにするとともに、介護施設職員や保育所職員の待遇改善を求めて厚労省交渉などをすすめてきた。

震災復興支援、原発ゼロ、核兵器廃絶のとりくみ

(5) 全国災対連は14年11月14〜15日に、全国交流集会を福島市内で開催し、全国各地から180人が参加した。また、解散・総選挙で延期していた「被災者支援行動」を15年2月13日に実施し、被災3県をはじめ400人が参加して、国会前行動をはじめ院内集会や各省交渉をおこなった。これに先立って、災対連第16回総会が国会内で開催された。15年3月1日には陸前高田市で「東日本大震災津波4年のつどい」(主催:復興岩手県民会議)がおこなわれた。

関東・東北豪雨災害から1か月となる15年10月10日、全国災対連は鬼怒川の堤防決壊で甚大な被害を受けた常総市の現地調査をおこなった。調査では農業・住宅・工場などの被害状況の聞き取りや常総市への激励・要請を実施し、全労連として災害救援カンパとボランティア支援を呼びかけた。

全国災対連は15年11月20〜21日、宮城・松島町で「災害対策全国交流集会in宮城」をおこない、全国から200人が参加した。16年2月12日には、国会内で全国災対連第17回総会が開催された。今後のとりくみとして、被災者生活再建支援制度の抜本的拡充を求める署名の推進を強調した。総会に先立って2016年度予算案について復興庁レクチャをおこなわれ、岩手・宮城・福島の被災3県代表など20人が参加した。

熊本・大分を襲った熊本大地震での被災者救援にむけて、4月28日に「全労連対策本部」を設置し、県労連や九州ブロックと連携して、現地体制の確立をすすめてきた。5月14日、民主団体と共同による「『熊本地震』被災者支援共同センター」を発足させ、九州ブロックを中心に救援ボランティアの受け入れをすすめている。

16年5月11日、全国災対連は「熊本地震の被災地救援・被災者を切り捨てるな! 国の責任で復興を5・11国会行動」を展開し、全国から150人が参加した。国会前行動をはじめ各省庁に対して被災者生活再建支援制度の拡充、被災地の医療費補助継続等を求めた。行動では4万6千余の署名を提出した。なお、野党4党は5月13日、住宅再建などに対する支援金の上限を300万円から500万円に引き上げる「被災者生活再建支援法改正案」を衆議院に共同提出した。

(6) 全労連は、原発なくす全国連絡会の参加団体として、原発再稼働に反対し、原発ゼロの日本の実現をめざして、共同のとりくみを推進するとともに、全国各地でイレブンアクション等を実施し、ふくしま復興共同センターが呼びかけた「100万署名」にとりくんできた。また、全労連原発対策委員会を開催し、立地県のとりくみを交流して当面する再稼働阻止のとりくみを意思統一してきた。

再稼働の動きが加速するもとで、全労連は福井、愛媛、九州などでの大集会成功のために奮闘した。16年3月には、「震災復興・原発ゼロ集中行動ゾーン」(3月7〜13日)のとりくみを全国40地方で展開し、その結節点として、3月26日には「原発のない未来へ3・26全国大集会」が開催され、全体では3万5千人が参加した。

また、15年3月には、原発をなくす全国連絡会と首都圏反原発連合、PARC(アジア太平洋資料センター)の三者が呼びかけ、広範な市民団体で構成する実行委員会が「安倍政権NO!☆0322大行動」を実施し、延べ1万4千人が参加した。安倍「暴走」政治が露骨に加速されるもとで、一点共闘から政治のあり方そのものの転換を求める運動へと発展したものである。なお、同実行委員会は「安倍政権NO!☆大行動 実行委員会」に発展・改組され、大規模行動を継続的に展開している。

(7) 15年4月末から開始されたNPT(核拡散防止条約)再検討会議に、全労連関係から青年組合員を中心に200人を超える代表団を送り、被爆国の代表として核兵器廃絶をアピールし、各国の労働組合代表との交流を深めた。核兵器廃絶署名を全労連として約63万筆(日本原水協として633万筆)提出した。

NPT再検討会議は、核保有国等の抵抗により核兵器禁止条約の交渉開始を決定できなかったものの、核兵器の使用が人道に反するとの共同声明への賛同がNPT締結国の8割にひろがるなど、核兵器禁止の流れを確認する会議となった。

2015年原水爆禁止世界大会は、被爆70年の大会として、海外20か国代表をふくめ全国から1万人が参加し、大きく成功した。参加構成では青年や初参加者が多く、次世代へ運動を継承する場となった。「戦争法案反対」の全国的な運動が高揚するもとで、各地のたたかいを結集し、核兵器を廃絶して紛争の平和的解決を求める世界の流れに逆行する「戦争法案」を必ず廃案に追い込もうと確認する大会となった。

16年3月の「3・1ビキニデー集会」では、被爆者が呼びかける新たな国際署名にとりくむことが提起された。新たな署名をひろげながら、16年の国民平和大行進がすすめられている。

5.持続可能な地域社会への転換を求めるとりくみ

(1) アベノミクスの誤りが鮮明になり、各分野で矛盾や亀裂が深まるもとで、15年7月の第52回評議員会では、アベノミクスの新自由主義改革の矛盾が集中する“地域”を基礎に、暮らしをまもる課題でも国民的な共同を構築していくことを提起した。そして、15秋季年末闘争方針では、「地域活性化大運動」と銘打って、持続可能な地域循環型の経済・社会をめざしていくこと、その当面する中心課題に賃金の底上げと中小企業支援の強化を据えて、1万団体を目標に全労連大運動の具体としての対話・懇談運動を系統的に強化していくことを確認し、手引きや諸団体との懇談用のリーフレット(5万部)などを作成した。

提起を受け、各県段階で、中立組合や経済団体、地域の諸団体との対話・懇談運動が具体化されていったが、全労連に報告されている諸団体との対話・懇談数は877団体に止まっている。集約のやり方を改善し、地域や産業別のとりくみを掌握することが大切になっている。

懇談を実施したところでは、①日本経済のためにも賃金の底上げ・格差是正が必要であり、最賃1,000円程度は当然という一致点が大きくひろがるとともに、②労働組合が中小企業支援の強化に真剣にとりくんでいることが新鮮に受け止められ、地域活性化の話が弾んでいる。この到達点を大切にして今後、系統的・戦略的なとりくみに発展させ、県段階から地域段階へ、また、各産業分野でのとりくみへと幅をひろげ、雇用・社会保障の拡充や住民本位の公務公共サービスの拡充などへつなげていく必要がある。

15年7月12日には、81人の参加で「中小企業を元気に!」シンポジウムを、11月8日には96人の参加で「憲法をいかす地域再生を考えるシンポジウム」を、16年2月28日には第2回中小企業シンポジウムを開催し、131人が参加した。7月のシンポには中同協から4人の参加があり、16年2月5日は懇談の場も設定した。

(2) TPP阻止、農業まもる課題でも、食健連や市民アクションなどと協力してとりくみを発展させてきた。14年9月には、食健連や農民連、全農協労連など7団体の参加で「安倍『農政改革』に反対し、食料・農業・地域を守る大運動アピール」を発表し、大運動推進の連絡会議を設置した。政府の交付金削減による米価暴落が深刻化するもとで、14年10月22日を皮切りに「米作って、メシ食えねえ」緊急国会パレードなどにとりくんできた。また、農協法改悪法案が国会に上程され、農協解体攻撃が強められるもとで、国会請願署名にとりくみ、院内集会やデモなどを強めてきた。

(3) 2015年度にはいってTPP交渉をめぐる動きがいっそう緊迫するもとで、市民アクションをはじめ、国際的にも連携をはかりながら、情報収集を強め、交渉妥結に反対するとりくみを強化してきた。TPP交渉が妥結され、16年2月4日には調印され、安倍首相が施政方針演説で「国家100年の計」と持ち上げ、早期批准を公言する緊迫した情勢のもとで、諸団体と協力して、抗議宣伝行動やTPP協定の分析報告会などにとりくんだ。また、TPP承認法案の審議入り後も街頭宣伝や議員会館前連続座り込み行動や大抗議行動(4・20、4・27、5・11)などにとりくんだ。その結果、安倍政権は世論の高まりと参院選への影響を懸念し、今国会での成立を断念させ、継続審議とさせた。

(4) 16年6月1日、安倍首相は17年4月に予定していた消費税率10%への引上げを2年半延期すると表明した。これは、アベノミクスと消費税大増税路線の破綻を示すものにほかならない。全労連はこの間、消費税廃止各会連絡会に結集し、全国で毎月1回の宣伝行動に参加してきた。また、消費税10%増税中止署名は各界連規模では1000万筆に迫ろうとしており、このような世論喚起のとりくみが安倍政権を追い込み、再延期につながったといえる。日本が必要としている経済政策は、税による所得再分配の見直しや社会保障の充実、内需の拡大であり、今後の運動で消費税10%は「延期ではなくキッパリ中止」させることが求められている。

16年3月13日の重税反対全国統一行動には全国596か所12万人が参加した。全体の参加人数は減ったものの、各地の実行委員会には2,884団体(前年2,499団体)が参加し、行動への参加は2,950団体(同2,818団体)、デモ行進は485か所(同474か所)と増加した。参議院選挙を視野に、消費税大増税への反撃としての統一行動の意義を徹底し、14都府県で参加者を増加させ、多彩な一点共闘を全国で発展させた。

(5) マイナンバー制度が大きな問題になるなかで、全労連は東京地評や東京土建、全商連など諸団体と協力して、「マイナンバー制度反対連絡会」を結成し、とりくみを強化してきた。法案が参議院で一部修正ののち、衆議院に再送付されたのを受けて、15年9月16日には院内集会を開催し、60人が参加した。法成立後も、新宿アルタ前などでの宣伝行動やマイナンバー学習会などにとりくみ、その問題点を明らかにしてきた。そして、12月12日には、マイナンバー制度反対連絡会、マイナンバー違憲訴訟東京弁護団、共通番号いらないネットの三者で「マイナンバー制度の廃止を求める12・12集会」を実施し、280人が参加した。また、「マイナンバースタートから半年を検証する5・29集会」には220人が参加した。

「マイナンバー制度の中止・廃止と利用拡大のとりやめを求める請願署名」は連絡会で約12万筆を集約し、その後も毎月の宣伝行動等を実施している。

6.政治の民主的な転換をめざすとりくみと国際連帯

(1) 中央・地方で政治の民主的な転換をめざすとりくみを推進してきた。

15年春のいっせい地方選挙のとりくみでは、安倍「暴走」政治に反対して積極的な選挙権行使を呼びかけるなどしてきた。こうしたもとで、県知事選挙で、北海道や福岡などでは共同した運動のなかから候補者がうまれるなどの変化もはじまった。

大阪都構想に対するとりくみでは、道州制を先取りした地域破壊の動きであり、安倍政権と一体となった憲法改悪の国民投票の予行練習という位置づけであることから、全労連として特別の体制をとり、延べ2,500人が支援行動に参加した。その結果、1万票差で「大阪市の廃止・分割」は否決された。また、「オール大阪」として大阪府知事・市長ダブル選挙にとりくんだ。

沖縄をはじめ、都道府県や政令市を中心に重要な選挙で、革新統一候補の勝利のために、全国な支援をひろげてきた。

(2) 戦争法強行を受けて、広範な市民団体・有志との共同を強めながら、「野党は共闘」の声をひろげ、戦争法廃止・立憲主義擁護を掲げる「統一候補」の実現を後押し、32の参院選一人区のすべてで「統一候補」を実現した。全労連として、参議院選挙闘争方針を前倒しで決定し、「戦争法廃止・安倍政権NO!の選挙権行使」を大きく呼びかけてきた。

16年7月10日に投開票された参議院選挙の結果は、与党が改選議席の過半数61を上回る70議席を確保し、参議院でも改憲勢力が3分の2を占めるという重大な結果になった。その最大の要因は、安倍政権がアベノミクスの偽りの成果を声高に叫び続け、改憲や戦争法などの争点隠しをはかったなかで、選挙戦全体の構図が見えにくくなったことである。もうひとつは、危機感を抱いた安倍自民党と補完勢力が、「暗い低迷した時代」などと旧民主党政権に対するネガティブキャンペーンを強めただけでなく、野党共闘に対する“野合”批判や反共分断攻撃をなりふり構わず展開して、「統一候補」や野党に対する支持や期待のひろがりに水を差したことである。

ただし、「統一候補」の擁立・合意がギリギリになり、十分に浸透しきれなかったなかでも、32の一人区のうち11選挙区で「統一候補」が勝利し、他の一人区の多くでも接戦を演じたことは、市民と野党の共同の大きな可能性を示すものであり、今後につながる重要な第一歩になったということができる。改憲と戦争する国づくりに反対する国民的な共同にくわえて、切実な要求に根ざした結びつきを深化させ、暮らしや雇用をまもる課題でも共同を前進させながら、アベノミクスの新自由主義改革そのものに反対する一致点を深めていく必要がある。

(3) 15年11月13〜15日には、全労連として15年ぶりとなる国際シンポジウムを開催した。オーストラリアACTU、フランスCGT、インドNTUI、インドネシアKSBSI、韓国・民主労総、米国SEIUとニューヨーク市立大学教授の海外6カ国7人、国内180人が参加した。これまでの全労連シンポジウムのなかでも最多の参加となり、21世紀にはいって急速に進展した経済のグローバル化の現状、労働組合運動の国際連帯活動の発展を踏まえ、その教訓や今後の課題、強化方向などについて議論を深める場となった。

ファーストフード・グローバルアクションに呼応したとりくみを積極的に実施するとともに、アジアや欧州を中心に、二国間での交流を推進してきた。また、ブラジルCUTの定期大会に代表を派遣するなど、南米の組織との交流を深めてきた。

核兵器のない世界の実現にむけて、引き続き、原水爆禁止世界大会に海外労組の代表を招待するとともに、米国SEIU、UEなどの協力を得て、NPT再検討会議ニューヨーク行動にとりくみ、核兵器廃絶を世界にアピールするなどしてきた。

7.組織拡大強化で新たな前進を切り拓くとりくみ

(1) 組織拡大強化中期計画にもとづいて純増達成に全力をあげ、秋・春には組織拡大強化月間を設定してとりくみをすすめた。また、中期計画を単産・地方組織の総力をあげてとりくむために、すべての加盟組織で組織拡大の推進が日常の活動となるよう機関会議で位置づけ、推進態勢の確立を呼びかけた。月ごとの組織拡大の到達を把握して、組織拡大のとりくみと到達点の全国的な共有化をすすめた。その結果、月次単位での組織拡大報告は、中期計画初年度では、12単産、23地方組織に止まってが、16単産・35地方組織へと前進した。

2014年度は、単産・地方組織の合計で101,781人と、年間10万人を上回る組織拡大を実現した。既存組織内の組織拡大数は98,933人(単産45,821人、地方組織53,112人)、新規結成・加盟は160組織(単産92組合、地方組織68組合)・2,848人(単産1,038人、地方組織1,810人)となった。2014年度で純増となった組織は、単産では医労連、年金者組合の2単産に止まったが、地方組織では宮城、山形、福島、群馬、石川、福井、みえ、兵庫、しまね、広島、徳島、香川、熊本、大分、鹿児島の15県になった。しかし、全労連全体では−16,487人と減少傾向に歯止めをかけられなかった。

2015年度は、単産・地方組織の合計で99,102人と、10万人に迫る拡大を実現している。既存組織内の組織拡大数は97,765人(単産44,595人、地方組織53,170人)、新規結成・加盟は129組織(単産82組合、地方組織47組合)・1,337人(単産958人、地方組織339人)となった。2015年度に増員となった組織は、7単産・13地方組織であり、久しぶりの増勢となった単産が現れた。

また、前回大会以降の2年間で実増になった組織は、日本医労連、年金者組合、映演労連の3単産と、福島、群馬、石川、福井、みえ、徳島、香川、大分、宮崎の9地方組織であった。

その結果、2016年6月現在の組織人員は、さまざまな奮闘や前進の芽をつくりだしはしたものの、1,060,118人(前年比−22,781人)と、依然として増勢に転じるには至っていない。

(2) 単産と地方組織の連携による「総がかり作戦」は、介護分野を中心に37地方でとりくまれた。北海道、愛知、三重で複数の介護施設での組合結成・加盟を実現し、福島、埼玉、神奈川、長野、滋賀、京都でも相次いで介護職場の組合結成・加盟を実現するまで前進している。各地で、ローカルユニオンや単産の個人加盟組織への加入も相次いでいる。介護分野の総がかり作戦では、滋賀県労連、愛媛労連、福岡県労連の三地方を特定地方として位置づけて典型事例づくりをすすめ、全国での経験と成果を踏まえて「介護労働者の組織化の手引き」を発行した。

北海道では、多くの若者が戦争法反対や最賃引き上げの運動に参加する状況がつくられ、青年ユニオンが結成された。みえ労連では、松坂ユニオンを結成した。1月には、JMIUと通信労組が組織統一してJMITUを結成した。また、1月の評議員会では、組織人員の減少から映産労の脱退を確認したが、東京労連加盟組織として引き続き残ることとなった。

被災三県の地方労連の組織的支援の重点対策をはかり、岩手では、沿岸部の労働相談活動、介護・ヘルパー分野の「総がかり作戦」にとりくみはじめた。宮城では、労働相談からの組織化が連続的にすすみ、みやぎ一般、青年ユニオン、医労連、自治労連で新たな組織の結成・加入を実現した。また、自治労連や医労連、福祉保育労が連携した介護総がかり作戦を継続的に行っている。福島では、原発や除染作業労働者からの相談活動を継続的におこない、その解決とあわせて組織化に足を踏み出している。全労連共済も武器にして、複数の障碍者施設での組合結成にとりくんでいる。

5,000人未満の地方労連の底上げに向けて「総がかり作戦」を中心に継続的な支援をおこなってきた。佐賀県労連が介護総がかり作戦をおこない、400を超える介護労働者からアンケートを回収し、佐賀新聞で大きく報じられた。福井県労連では、新たに化学一般の組合の結成・加盟を実現している。また、「組織拡大ハンドブック」の改訂版を発行した。

(3) 2015年に全国の労働相談センターに寄せられた新規の相談件数は、7地方組織が未集約だが、16,128件となっている。相談内容では、「解雇・雇い止め」と「退職強要・勧奨」が合わせて15.3%、「賃金・残業代未払い」14.0%、「セクハラ・パワハラ・いじめ」14.0%の順になっている。「セクハラ・パワハラ・いじめ」は、2014年度から項目を設けた「メンタル不全」3.2%と合わせると17.2%となり、年々増加している。また、「辞めたいのに辞めさせてもらえない」という相談が増えている。「ブラック企業」問題の世論化がうかがえ、「労働組合に入りたい」「労働組合をつくりたい」という契機となっており、組織化につなぐオルグ体制づくりが重要な課題となっている。

(4) 2015年6月に開始した初級労働者教育制度「わくわく講座」は、単産・地方組織の奮闘によって全国で2,853人が受講した。各地方組織で実施した「わくわく講座」の開講式と修了式には合わせて2千人近い参加があった。受講者へのサポートシステムとして、Webサイト「wakuwaku=Z」を開設し運用をすすめた。11月以降、地方労連の修了式が開催され、修了者は1,500人を超えた。次世代の活動家づくりの大きな成果と評価できるが、継続的なとりくみとして定着させるために、2016年度の受講をいっそう促進することが重要になっている。

「オルグ養成講座」を全ブロックで開催し、ほぼ全単産で「組織拡大交流会」が開催されている。さらに、全国的にも地方組織単位での組織拡大交流会の開催がひろがり、労働相談と組織化の課題、地域組織の取り組みなどについて実践交流している。15年7月には、8単産16地方組織50人の参加で「幹部セミナー」を開催した。

(5) すべての労働争議の解決をめざして、15年12月3日と16年5月27日に東京地評と共同で「争議支援総行動」をおこなった。また、12月18日には、最高裁段階にあるすべての争議が参加して、最高裁包囲行動をおこなった。10月7日には、自由法曹団・国民救援会とともに、司法総行動をおこなった。4月10〜11日に、第26回裁判闘争勝利をめざす全国交流集会が開催され、労働事件21事件の当事者と支援者が参加して交流した。

15年11月11日に、東京高裁でDNPファイン重層偽装請負争議が不当判決を受け、最高裁に上告した。最高裁段階にある非正規争議は、JMIUいすゞ期間工・派遣切り争議、JMIU日産派遣切り争議と合わせて3つになった。そうした厳しいたたかいが続くなか、東京高裁と都労委でたたかわれていた資生堂・アンフィニ派遣切り争議は1月25日に勝利和解を実現した。

JAL解雇争議は、日本航空本社要請行動・座り込み、国土交通省前座り込み、厚労省前座り込み行動など、解決をめざした波状的な行動を連続的におこない、15年6月に不当労働行為を認定した高裁判決を引き出し、日本航空が上告して最高裁で争われている。社保庁不当解雇撤回裁判は、全国5つの地裁と大阪高裁で争っており、16年3月30日には、高松地裁で愛媛事案の不当判決があった。また、ILO結社の自由委員会において、社会保険庁事件(3051号)への第一次勧告、JAL解雇事件(2844号)への第三次勧告が、11月の第325期理事会で確認されたことを受け、その活用を当該単産・原告団とすすめている。

3月28日には、IBMロックアウト解雇第1次・2次事件の判決が東京地裁であり、原告5人の解雇を無効とする完全勝利判決を勝ちとった。IBMの賃金減額裁判では11月25日に会社が原告の主張を100%認める「認諾」をおこない、裁判終結となった。

大阪高裁の不当判決を受けて、最高裁でたたかわれている大阪市労組連・大阪市労組の組合事務所不許可事件では対策会議をおこなって、最高裁要請、はがき・署名運動などを強めている。9月30日には72人、4月15日には200人が参加して学習決起集会をおこなった。11月26日には不当労働行為を認定する中労委命令が出された。事務所不許可事件は、鎌倉市職労などでも起きており、12月13日には市民も数多く参加する形で支援共闘が結成された。

11月6日に厚労省が、緊急雇用創出事業に係るDIOジャパン関連子会社への一連の調査について最終報告を発表した。最終報告に対し、全労連と労働者を組織している宮城県労連、三重県労連、福島県労連、いわき市民の会の連名で声明を発表した。

(6) 11月27日に中央・地方の労働委員会委員の参加で交流会を開催した。交流会では、労働者委員の交流とともに、大阪市労組の事務所不許可処分事件、IBMのロックアウト解雇事件での労働委員会命令を中心に弁護士からの報告を受けた。

4月25日には79人の参加で、労働委員会対策会議総会を開催した。純中立労組懇とMICととともに、来年2月に任命される第34期の中労委労働者委員の選任に向けて運動をすすめることを確認し、翌26日には、中央・地方の労働者委員の交流会を開催した。

(7) 青年部があるのは、10単産21地方組織となっている。つながりや交流を求め、各地で青年部活動がすすめられ、単産青年部の交流企画を参考に、多くのブロックで青年交流会が開催されている。青年交流会などを通じて、青年部のなかった地方組織で青年準備会が発足している。

全労連青年部は、2015年9月に開催した定期大会では労働運動の継承をおこなう学習が必要とし、各組織の学習企画の情報を取り寄せ、叡智の結集と共有化を図ろうと「学習企画コンテスト」にとりくんだ。「なぜこの企画を実施したのか」「実施した結果どうなったのか」など、工夫した点や苦労した点、成果や反省なども知りたいという声があったことから、組織拡大・強化につながる企画を共有しようという趣旨である。

また、若者のメーデー当日の参加を促進するとともに、全国がひとつになって取り組む企画をやろうと、『若者の要求アピール大作戦inメーデー』をおこなった。Facebookで共有しようというこの企画は3年目となり、16年は48枚の写真が寄せられた。その他、切実な要求の組織化、対話と共同を推進する先頭に立って青年の声をひろげることを呼びかけてきた。

青年の共闘のとりくみでは、民青同盟や農民連・全商連・平和委員会など多くの団体とともにといくんでいる。

(8) 全労連女性部は、憲法改悪反対、戦争法廃案をめざして、国会行動への結集、2000万統一署名推進のとりくみを女性部組織に呼びかけて運動を強化した。女性部独自に2015連続宣伝行動を呼びかけ、各地で宣伝行動をひろげた。また、女性の共同をひろげ、銀座パレード、国会を取り囲む女性のレッドアクションを3次にわたって繰りひろげ、「レッドアクション」は全国の女性にひろがった。15年5月に開催されたNPT再検討会議にむけて日本原水協が主催したニューヨーク行動に全労連女性部代表を派遣した。辺野古新基地建設に反対する沖縄県民に連帯する黄色のメッセージバンダナのとりくみを提起し、全国から連帯の思いを沖縄に届けた。

女性の活躍推進法の成立にあたって、厚生労働省要請、国会議員要請にとりくみ、長時間労働の実態、非正規雇用労働者の課題が女性の活躍を阻んでいると告発した。女性部の要請は国会の議論にいかされ修正がおこなわれた。女性の活躍推進法を職場で活用するためのリーフレットを作成した。各県女性組織での均等室要請にいかされている。

国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)における日本政府報告審査にあたりJNNC・婦団連に結集し、NGOレポートを作成し、審議に代表を派遣し、日本の女性労働者の実情をCEDAWに届けた。同一価値同一労働賃金原則の実施、十分な保育施設の確保、ハラスメント抑止のための適切な制裁の法令化などの勧告を出させた。15年夏には、「女性労働者の労働実態及び男女平等・健康実態調査」(10,738人分)と「妊娠出産育児に関する実態調査」(2,909人分)を集約した。また、組織ごとの集計もおこない、各女性部組織が独自に調査結果を活用している。調査から見えてきたのは、人員不足・長時間過密労働が、女性の仕事と健康を奪っている過酷な職場実態である。介護・看護休暇を取りたくても「人手不足や職場の状況からとらない」と回答した人が正規労働者では43.6%にのぼっている。また、時間外労働については、正規労働者も非正規労働者も増加傾向であり、子育てにあたっても時間外労働が免除されている人は2割を切っている。この結果、4人に1人が異常出産を経験しているという深刻な結果となった。結果のマスコミ発表をおこない、育児介護休業法改正法案が審議される国会で、議員要請などで結果配布し、育児介護休業法の実効ある改正を求めた。

労働時間規制の在り方が見直される中で「女性の活躍言うのなら……」一言メッセージ行動にとりくみ、国会議員要請などで活用した。育児介護休業法の改正論議にあたって、署名をとりくみ、厚生労働省要請、国会議員要請などにとりくんだ。介護休業の取得要件の緩和、介護のための所定外労働免除などの前進を勝ちとった。

すべての女性の争議の勝利解決を求めてとりくみをすすめてきた。全労連・全国一般資生堂アンフィニ分会の勝利和解を勝ちとった。JAL不当解雇撤回闘争では、婦団連・CCUなどとともに女性の行動を展開し支援を強めてきた。JAL・CAマタハラ裁判では支援要請にこたえて、裁判所前行動に結集、東京地裁宛て署名のとりくみをすすめている。

また、香川県労連に女性部が結成された。

(9) 非正規センターは15年6月13〜14日、大阪で第23回非正規で働くなかまの全国交流集会を開催し、13日全体会506人、14日分科会390人が参加した。15年10月24日には非正規センター第8回総会を開催し、7単産17地方組織などから61人が参加した。非正規労働者の組織と運動の強化を展望して非正規センターのあり方の議論をすすめました

15年10月27日には、パート臨時労組連絡会の第15回総会が開催され、7単産22人、18地方組織31人など合計60人が参加した。全労連が提起する最賃デーなどの行動に結集し、16年3月9日の中央行動では、パート労働法の改正を求めて厚生労働省要請をおこなった。各県段階のパート・非正規組織は最賃の大幅引き上げ、全国一律最低賃金制度の確立をめざして、ハンスト・時給調査・政党要請、ハンガースト、PRデーなど工夫を凝らして宣伝・行動をひろげた。

3月のパート臨時労組連幹事会の後には、非正規のなかまに労働組合に入ろうと呼びかける宣伝行動をおこなった。また、4月の幹事会後に最低賃金の大幅引き上げ・全国一律最賃制度の確立を求める宣伝行動をおこなった。

介護・ヘルパーネットは、15年秋に「介護報酬改訂定・処遇改善加算による介護労働者の賃金・処遇状況アンケート」にとりくみ、6単産39地方組織から3,950人分を回収し、16年2月26日に発表した。アンケートは、「全産業平均と比べて月額8万円も低い介護労働者の賃金」、「処遇改善は5人に1人に止まっている」ことを明らかにし、多くのマスコミが報道した。15年11月7日に130人の参加で「介護学習決起集会」を開催し、11月11日の「いい介護の日」には、社保協と認知症の人と家族の会の共同で、「介護・認知症なんでも無料電話相談」が全国16県でとりくみ、全国で252件の相談が寄せられた。

11月を介護分野での組織化推進のための「介護アクション月間」として、全国で目に見える宣伝行動、事業所訪問・懇談活動、マスコミなどを利用した世論化、研修会や講演会、介護集会などが22地方でとりくまれた。とりくみを通して複数の事業所での組合結成に向けた動きがうまれている。あわせて、行動の様子をフェイスブックやツィッターなどで知らせ、処遇改善と人材確保の必要性の世論化をはかった。5月を「介護組織化アクション月間」としてとりくんだ。

また、16年6月4〜5日には北海道・札幌で、第24回非正規で働くなかまの全国交流集会を開催し、過去最高の613人(両日で延べ979人)が集まり、最低賃金の引き上げや均等待遇、雇用の安定の実現、非正規雇用労働者の組織化の推進などを意思統一した。

(10) 全労連共済においては、東日本大震災で被災した加入者への給付は、5年目を迎えた2016年3月で終了したものの、共済事業部会と各単産共済会を合わせると約6,000件19億円の給付となり、熊本大地震についても被害実態の把握をすすめながら、給付をはじめている。なお、2016年1月時点の異常危険準備金は、分担金管理部会で8億5千万円、共済事業部会2億6千万円と、多発する自然災害等への備えも着実に整えている。

全労連共済を活用した組織拡大の実践、典型づくりをすすめてきた。福島では、全労連共済を活用し、3つの障害者施設で組合結成をすすめた。いわきでは、障害者施設を再開させるとともに、全労連共済への加入も呼びかけ、組合を再結成した。また、火災共済と自動車共済を重点に拡大にとりくんだ。火災共済1万人拡大キャンペーン、家財100万円保障(掛金10口分)1年間プレゼントのとりくみでは、2,162人の加入者を増やした。自動車共済では13年度より代理所設置に向けて14道県を重点県としてとりくみ、9道県で代理所が設置され、10月に新たに2県で設置される。契約台数は、13年5月の6,199台から16年1月には6,656台まで増やした。

14年5月の「全労連共済のあり方検討委員会」の提言を受けて、地方組織・地方共済会を強化するため、全労連共済のスケールメリットいかすとりくみをすすめてきた。加入者によりよい自動車共済に提供するとともに、地方労連・地方共済会を強化するため、自動車共済協同組合と提携する共済会と自動車共済の統合に向けた協議を始めた。また、全労連共済の自転車保険を新たに活用する医労連の方針を受けて、全ての地方共済会に取扱いを呼びかけ、推進している。また、全労連共済は、17年1月実施に向けて生命・医療共済の制度改定にとりくみ、若年層には低い掛金を設定するなどしている。

以 上