全労連第27回定期大会 2014年7月27日〜7月29日
【第1号議案・付属文書】
取り組みの経過と到達点(案)
はじめに

 前回大会以降の前半1年間の取り組み経過は、第49回評議員会(2013年7月31日〜8月1日)で論議、確認している。そのことから、2012年度の取り組みの経過は必要最小限の範囲にとどめ、2013年度の取り組みを中心に記述した。
 また、総括的には本議案の第1章「2年間の取り組みの特徴的な到達点」でふれているところであり、ここでは課題別の取り組み経過について記述することとした。

I 主要課題での取り組み

1、解雇、失業に反対し、安定した雇用の実現をめざす取り組み
 (1)安倍政権の経済政策である「アベノミクス」の中心課題とされた成長戦略(日本再興戦略、2013年6月14日)の主要課題に「雇用制度改革・人材力の強化」が位置づけられ、労働移動支援型政策が雇用政策の柱とされた。このことから、雇用流動化を促進する施策が強引に進められた。
 その一つは、労働者派遣法「再改正」など安倍雇用改革具体化の動きである。
 2013年8月20日の「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」報告を受け、厚生労働省・労働政策審議会での「法改正」論議が8月末に開始された。
 報告は、派遣労働を雇用政策の柱に位置づけ、26業務規制の廃止とあわせ派遣制限期間を3年に延長し、期間制限についても業務から個人に切り替えることを求めた。その内容は、常用雇用を代替する派遣労働を認め、生涯派遣の労働者をつくりだすものであった。
 政府の産業競争力会議や規制改革会議などからの圧力も強まるなか、12月12日には、労働政策審議会・労働力需給制度部会の公益委員が、労使の意見の隔たりが大きいことを理由に、「労働者派遣制度の改正について(報告書骨子案)」を一方的に示した。その内容は、前述の研究会報告を基本的に踏襲したものであった。

 (2)2014年1月29日の労働政策審議会は、同日、「報告書骨子案」をもとに労働力需給制度部会がまとめた労働者派遣制度改正の最終報告を厚生労働大臣に建議した。
 この建議に全労連は、「使い捨て労働を一般化する労働者派遣法大改悪の撤回を強く求め、広範な労働組合や市民との共同をさらに強め、大きな反撃をつくっていく決意」を表明した。連合は、「派遣労働者の雇用安定や処遇改善に向け、派遣期間制限の実効性確保や『均等』待遇原則の導入に近づけるべく国会審議での修正を求めるなど、必要な対応を引き続き強力に行」う、との事務局長談話をだした。
 日本弁護士連合会(日弁連)は、「建議に従った方向性での労働者派遣法改正に反対するとともに、派遣労働者の雇用安定を確保し、常用代替防止を維持するための労働者派遣法改正を行うよう求める」との会長声明をだした。
 労働団体が法改悪反対で足並みをそろえ、法曹界からも強い反対の声があがるなか、厚生労働省は3月11日に「改正」法案を閣議決定し、国会に提出した。

 (3)全労連などの反対の取り組みに加え、国会に提出された労働者派遣法改正案の罰則規定に「重大なミス」が見つかったこともあり、同法案については審議に入れないまま6月22日の国会会期末を迎え、審議未了廃案となった。
 なお、通常国会には、短時間勤務の労働者について、「正社員」との均等待遇を義務づける要件から「無期要件」を削除することを内容とする「パート労働法」改正法案、労働契約法第18条(無期労働契約への転換)の特例を定める「専門的知識を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法案」が国会に提出されていた。
 このうち、前者については年度末に予算関連法案と同時に審議され短時間で成立し、4月に公布された。後者については、衆議院は通過したが参議院での審議には入れず、継続審議となった。

 (4)全労連は、2013年秋の「ディーセントワークデー」(10月7〜13日)など節目を設けながら、労働法制改悪反対の宣伝行動や署名行動などに繰り返し取り組んだ。
 安倍雇用改革に反対する請願署名は、第186通常国会中の国会行動などを通じ約9万筆提出した。また、パート労働法の抜本改正を求める署名は、約6万3,000筆(第184臨時国会以降では約9万1,000筆)を提出した。
 2013年10月23日には、全労協、MICなどとともに、「安倍政権の雇用破壊に反対する共同アクション」を結成し、労働者派遣法大改悪反対などを一致点に、審議会での論議段階から繰り返しの行動に共同して取り組んだ。
 このようななかで、厚生労働省前の宣伝、激励行動を連合と雇用共同アクションが連続して取り組む「時間差共同」を実施し、日弁連主催の集会にすべての労働団体が席を並べる状況を2013年年末12月を皮切りに国会段階も含め3回実現した。
 同様の状況は、神奈川など地方段階にも広がり、長野県労連は連合長野と共同した新春宣伝行動を実施した。
 このような共同の変化、前進、発展が国会に反映し、先にふれた労働者派遣法の廃案などの結果につながったことには確信をもつ必要がある。

 (5)第二に、2013年秋の第185回臨時国会で、企業実証特例制度や企業再編の促進をめざす産業競争力強化法、有期雇用の特例など規制改革を加速する国家戦略特別区域法など、安倍政権の成長戦略の基盤となる法律が相次いで成立した。
 これらの法律は、市場万能論にもとづく新自由主義構造改革(規制改革)を中央集権的にすべての分野で進めるためのものであった。また、すべての政策を動員して大企業のもうけの場を広げ、富の配分を集中させることをねらう産業競争力会議や、「一国二制度」の国家戦略特区を突破口に規制緩和を推し進めようとする国家戦略特別区域諮問会議、さらには規制改革会議が互いに規制改革を競いあう状況が、法成立も契機に強まった。
 これらの会議での規制改革の焦点は、雇用(労働法制)、社会保障(医療、介護、福祉など)、農業にあてられた。

 (6)雇用分野では、2013年秋の臨時国会で、大学、独立行政法人の研究者などを対象に有期雇用から無期雇用への転換の期間を10年に延長する「研究開発強化法」改正法が強行成立させられた。
 また、国家戦略特区ワーキンググループの論議も受け、有期雇用契約にかかわって、5年超過時点の無期転換の放棄や「雇止めルール」を明確化できるなどの「特例事項」の検討が求められ、先述した労働契約法改正法案がわずかな論議で提出される動きとなった。
 また、12月には、規制改革会議(5日)、産業競争力会議(10日)が相次いで「残業代ゼロ法案」の検討を求める意見を表明した。

 (7)これらの動きは、「成長戦略」(日本再興戦略)の改訂、「骨太方針」の作成が本格化した2014年4月に入りより強まった。
 4月1日には、国家戦略特区に進出する企業を対象に、解雇規制にかかわる「雇用指針」を閣議決定した。4月4日の経済財政諮問会議では、建設、農業、介護分野での労働力不足に対応するとして、外国人実習制度での受け入れ緩和策の検討が打ちだされた。
 さらに、4月22日の経済財政諮問会議、産業競争力会議合同会議で安倍首相は、「時間ではなく成果で評価される働き方にふさわしい、新たな労働時間制度の仕組み」と「労働紛争の解決を促す客観的で透明性の高い仕組み」について検討を指示する事態に至った。一部マスコミが報道したように、この動きは産業政策を雇用政策に優先させる財界等の思惑が反映したものであった。
 労働者代表を排除し、官邸主導を装いながら、企業が求める労働法制に一気に変えようとする動きに対してもすべての労働団体が強く反発し、日弁連も強い懸念を表明した。

 (8)6月24日の臨時閣議で、「骨太の方針」、「成長戦略」が閣議決定された。そのなかでは、労働団体の反対の声を押し切り、(1)労働力不足を口実に、女性労働力の活用を掲げ、雇用の流動化や配偶者控除の廃止など税制・社会保障制度改革を「女性の活動促進策」として位置づけること、(2)企業の雇用維持の義務を軽減する目的で、多様な正社員制度の普及やフレックスタイム制の見直しに加え、時間ではなく成果で評価される働き方に相応しい労働時間制度を創設すること、(3)投資促進を口実に予見可能性の高い紛争解決システム(=解雇の金銭解決制度)を検討すること、(4)建設業や介護労働、家事労働への外国人労働者受け入れを拡大すること、などが盛り込まれた。
 この成長戦略等の決定を受け、7月から労働政策審議会・労働条件分科会で「新たな労働時間制度」の検討が開始された。また、外国人労働者受け入れの要件等の見直しを法務省が開始した。
 この成長戦略等の決定に対し、全労連は「企業にとって都合のいい働かせ方を労働者に強いるもの」と非難し、連合は「働く者の犠牲の上に、投資家や企業が世界で一番稼ぎやすい国づくりをめざすもの」と批判した。
 なお、政府が労働時間法制の原則を切り崩す動きを強めるもとで、第186回通常国会では、議員立法で提出された「過労死等防止対策推進法」が成立した。全労連は、「いの健センター」にも結集し、法案成立を支援する取り組みを進めた。

 (9)第三に、労働者使いすての風潮への批判が広がり、新たな争議も発生するなかでもねばり強いたたかいで前進的な成果を勝ちとったたたかいも少なくない。
 大量に労働者を採用し、長時間過密労働・ただ働き残業やパワハラ・セクハラを伴う人権無視の人事管理などで早期離職に労働者を追い込み、企業利益を確保する「ブラック企業」が社会問題化した。全労連も「若者雇用アクション」や労働相談などを通じ、「ブラック企業」の実態を告発し、根絶を求めてきた。
 このようななか、2013年9月には、「若者の『使い捨て』が疑われる企業」を対象とする特別調査を厚生労働省が実施し、対象の82%で何らかの労働基準法違反があることを明らかにした。また、2013年10月には、日本共産党が「ブラック企業根絶法案」を国会に提出した。
 国際的にも、バングラディッシュで発生した縫製工場ビル崩壊事故を契機に、産業別国際労働組織・インダストリオールなどが衣料メーカーに「安全協定」への署名を呼びかけ、日本企業でもユニクロが署名する動きも生まれた。

 (10)2013年10月1日に、31年の長期争議となっていたネスレ日本案件が、OECDの多国籍企業行動指針も活用した取り組みで、和解合意が交わされた。
 10月24日に、社会保険庁分限解雇事件に関し、人事院は新たに8人の解雇を取り消した。2013年末までに判定がだされた71人中、国公労連・全厚生組合員10人を含む25人の処分が取り消され、政府・厚生労働省の分限解雇回避義務の不履行が厳しく問われる結果となった。この結果もふまえ11月に、社会保険庁分限解雇事件をILOに報告し、受理された。また、人事院判定の不十分さの乗り越えをめざした裁判提訴も行われた。
 JAL不当解雇事件に関し、ILOが2013年10月にも、改めて解雇が結社の自由を侵す不当なものであることを指摘した直後に東京高裁での裁判が結審した。
 東京高裁の判決は6月3日(客室乗務員)、6月5日(乗員)に相次いでだされたが、いずれも原告の主張を全面的に否定し、会社更生法による更生計画の実施を労働者雇用の上におく不当な判決内容であった。そのことから、両事件とも最高裁判所に上告され、勝利をめざす集会が6月26日に開催された。
 春と秋の争議総行動を東京地評と共同して取り組み続け、JMIU・IBM支部へのロックアウト解雇などすべての争議解決をめざした。

 (11)大阪市での組合事務所強制撤去、思想調査などに反撃するたたかいを全国課題に位置づけ、署名などの取り組みを進めた。2014年2月には、大阪府労働委員会が、組合事務所からの退去を求めた大阪市の対応を不当労働行為と認定したが、市はこれを不服として中央労働委員会に再審査を申し立てた。
 また、6月には中央労働委員会が、大阪市が行った「思想調査アンケート」が不当労働行為にあたるとする大阪府労委の判断を支持する認定を行った。
 5月30日に、全国労働委員会対策会議総会を開催し、第33期中央労働委員会委員候補として安部昌男氏(民放労連)、岸田重信氏(全医労)を擁立し、公正任命を求めてたたかうことを確認した。

 (12)公務員労働者の労働基本権回復を棚上げにしたまま、国家公務員幹部職員の人事管理一元化とともに、労働条件関連事項についても内閣に権限を集中させる国家公務員法改正法案が2013年秋の臨時国会に提出され、2014年4月に強行成立させられた。これにより、労働基本権の代償措置とされてきた人事院の権限が内閣人事局に相当程度移管されることとなった。
 また、民主党政権時に提出された国家公務員法改正法案では盛り込まれていた「自律的労使関係制度」は、「合意形成に努める」との付帯決議で先送りされることとなった。2000年1月から本格化し、公務員労働者の労働基本権回復が最大の争点になってきた公務員制度改革は一つの大きな区切りを迎え、基本要求を堅持した引き続くたたかいが求められる段階に至った。
 2013年11月には、国家公務員労働者へ一方的な賃下げとそれに対するたたかいの状況などをILOに報告した。これに応えてILOは、2014年6月に、労働基本権回復を遅滞なく行うよう求める9回目の結社の自由委員会勧告を承認した。
 なお、第186通常国会には、能力実績主義にもとづく人事管理の徹底を求める地方公務員法改正法案や、独立行政法人への国の関与強化などを内容とする独立行政法通則法改正法案が提出され、短時間の審議で強行成立させられた。

2、賃金、労働時間改善など良質な雇用の実現をめざす取り組み
 (1)2013年の地域最低賃金改定は、8月6日に中央最低賃金審議会の目安小員会が、Aランク19円、Bランク12円、C・Dランク各10円の引上げを妥当とする目安をとりまとめた。
 目安答申を受け、翌7日以降、各都道府県で最低賃金審議会が開催され、9月10日の島根県最低賃金審議会の結審を最後に、47都道府県の地域最低賃金が決定された。
 引き上げ額は、愛知県の22円をトップに11円から22円の幅となり、目安を上回る地域最低賃金の改定で加重平均額は15円となった。
 改定後の最低賃金額は、島根、鳥取など9県の664円から東京の869円まで205円もの格差に拡大し、全国平均額は764円となった。地域間格差がさらに拡大したことも含め、要求からほど遠い改定結果となった。
 2013年の最低賃金闘争では、「全国一律時給1,000円」の実現を支持する有識者アピールや、中央、地方での審議会に対する各単産からの意見書提出や陳述、審議会傍聴、自治体要請、最賃体験の取り組みなど旺盛な取り組みが展開された。このこともあり、中央最低賃金審議会への目安諮問の際には厚生労働大臣が出席し、引き上げ改定を求める動きもつくりだした。

 (2)経団連は、2014年版経営労働政策委員会報告で法定最低賃金が連年改訂されてきたことへの不満をあからさまに述べ、目安を上回る地域最低賃金の改定状況や全会一致での地域最低賃金の改定が行われていないことを批判し、目安制度や審議会方式の抜本的な見直しを求めた。
 一方で、大企業を中心に賃金改善が一定進み始めた2014年春闘前段の状況や円安による原材料高騰や消費税増税の痛みが、とりわけ低賃金・不安定雇用労働者のくらしを直撃していることにも目を向け、早い段階からの最賃闘争強化を呼びかけた。
 地方協議会(ブロック)規模での「最賃キャラバン」を東北、東海、四国などが実施し、4月段階からの全国的な宣伝行動や中央段階での行動、要請などを強めた。
 6月24日に政府が決定した「骨太の方針」などでも、前年同様に「中小企業・小規模事業者への支援を図りつつ最低賃金の引き上げに努める」との一文が盛り込まれた。
 このような状況下で、7月1日に、中央最低賃金審議会への目安諮問が行われた。

 (3)公契約条例制定の取り組みも着実に前進させてきた。
 学習会、自治体アンケート、自治体要請行動、業界団体要請など、状況に応じた取り組みが自治体レベルでも取り組まれてきた。
 また、公契約職場で働く労働者との対話活動やアンケート、労働者や事業者(施設長)との懇談など多様な取り組みが行われてきた。これらも反映して、日弁連も政策要求として掲げるようになってきた。
 「賃金下限規制」を含む条例は、千葉県野田市(2009年9月)を皮切りに、首都圏での制定が先行してきた。2013年にも、東京都足立区(2013年9月)で公契約が制定され、12月には福岡県直方市で、2014年3月には東京都千代田区と兵庫県三木市で制定され、11自治体となり、西日本の自治体にも広がり始めた。
 なお、条例でなく入札要綱による適正化も、埼玉県富士見市(2014年2月)で設けられ、3自治体に広がった。
 さらに、「賃金下限設定」条項をもたない「基本条例」などの制定も、群馬県前橋市(2013年10月)、奈良県奈良市(2014年6月)で行われ、秋田市(2014年4月施行)は発注者側の自己申告による賃金下限額を評価項目として活用する方式となった。

 (4)2013年11月15日の閣議で政府は、国家公務員の給与削減の特例措置を2013年度でとりやめることを決定した。その一方で、地方自治体に対し、国に準じた給与減額措置をとっていない自治体が26%あることを強調し、2013年度内での給与削減の実施を迫り続ける姿勢を示し、交付税制度を改悪してまで圧力を強めた。
 しかし、地方自治への不当な介入に反発する自治体当局や住民とも一体となった自治労連、全教などのたたかいがその圧力をはね返す動きとなり、約3割が国の要請に応じた給与削減措置を見送るなど、たたかいへの確信は確実に広がった。
 なお、全教では、臨時的任用教職員が年度末もしくは年度当初に1日だけ雇用が中断される「空白の1日」によって被っている社会保険や諸手当での不利益扱いを問題視し改善の取り組みを強め、多くの県での改善を勝ちとった。

 (5)2013年年末一時金は、同年夏の一時金の回答状況が対前年比微増の傾向を示し、政労使協議などを通じて賃上げの合意が形成されつつあるもと、2014年春闘の前段のたたかいとして取り組んだ。
 その到達点は、金額回答のあった324組合の単純平均額(1組合あたりの平均)が64万3,976円で前年同期を4,194円下回り、加重平均(組合員1人あたりの平均)は68万2,832円で、前年同期を1万6,034円下回ったが、月数回答のあった574組合の単純平均月数は2.01カ月で、前年同期・前年実績と同月数であった。
 同一組合での対比が可能な305組合の単純平均額の結果を前年実績と比べると、今期は65万1,485円で、前年を8,913円上回っている。
 全体としては夏季一時金と同様、前年並みの水準にとどまり、政府の「賃上げ要請」の風が中小企業、地方にはほとんど届かず、逆に2014年4月の消費税引き上げを前に賃金抑制を強める姿勢にあること、産業別のばらつきが大きいことを明らかにする結果となった。

 (6)2013年春闘期から、「賃上げこそデフレ克服のカギ」、「賃上げで内需拡大を」などの世論が高まり、安倍政権が企業に賃上げを迫る状況が強まった。そのことや、秋闘の状況も見つつ2014年春闘準備を進めた。
 2013年10月25日の国民春闘共闘委員会総会では、「ベア要求」を掲げ「ベア獲得」にこだわったたたかいの構築が呼びかけられ、11月下旬の春闘討論集会ではベア要求・獲得にこだわる春闘、「50万人総行動」など地域からのたたかい強化の意思統一を深めた。
 2014年1月23〜24日に第50回評議員会を開催し、「たたかいとろう 大幅賃上げ、くいとめよう 憲法改悪、許すな 雇用・くらし破壊の暴走政治」をスローガンに、「時間額120円(率換算では12%)以上、月額1万6,000円(同5%)以上」を統一要求に、すべての労働者の賃上げ、ベア要求にこだわるなどの方針を確認した。

 (7)多くの単産が1月中に機関会議を行い、賃金改善要求を確認するとともに、ベアにこだわり、すべての労働者の賃上げにこだわる職場闘争強化を確認した。
 また、「賃上げこそ内需拡大のカギ」の世論を広げることを目的においた「地域総行動」が北海道、秋田、埼玉、東京、京都、愛媛などで取り組まれた。
 1月10日に全労連、民医連、新婦人、農民連、全商連、保団連の「6団体アピール」をだし、3月13日に消費税増税反対、賃金改善、年金引き下げ反対など、くらし守れの課題での「総行動」の実施を全国に呼びかけた。これを受け、各地方組織でも民主団体との共同の取り組みが追求され、単産では「イエローアクション」に応えたワッペン、シールなどの職場の取り組みの具体化が追求された。

 (8)職場段階では、賃金要求アンケートが集約され賃金要求の組織が進められるとともに、消費税増税などによる生活悪化をくいとめて実質賃金の改善をめざし「追い風を成果に結びつける」回答引き出しをめざした取り組みが強められた。
 春闘アンケートの集約結果は、全体で21万6,396人分(一般分・16万8,223人、パート分・4万3,628人)で、前年最終集計より4万7,578人減少した。前年集約数を上回った単産は3単産にとどまり、前年比で半減した単産もある。
 また、春闘共闘が実施した進捗状況調査によれば、6月3日時点で要求提出が確認できた組合は2,421組合で、調査回答組合の65.3%である。要求提出率100%を達成しているのは4単産で、2単産が9割台、8割台が6単産、7割台が2単産、6割台が4単産という状況にある。
 前年同期(2013年6月5日時点:22単産・2,568組合・69.7%)と比べ、要求提出組合数は147組合、要求提出率では4.4ポイント、それぞれ下回っている。要求提出率が前年同期を上回っているのは5単産で、12単産が前年同期を下回る状況にある。
 さらに、調査対象組合のうち、ストライキ権を確立したのは1,275組合・44.6%で、前年同期(1,371組合・51%)を96組合・6.4ポイント下回った。
 職場闘争の強化をめざし、労働運動の原点に立ち返り、全交渉単位での要求提出と闘争体制の確立を呼びかけたが、結果には十分に結びつかなかった。

 (9)たたかいの意思統一をはかるために取り組んだ3月6日の中央行動には、全国から4,000人が参加し、各省庁交渉や国会議員要請、決起集会などの取り組みを終日展開した。
 この行動には、雇用共同アクションを代表して全労協事務局長が連帯の挨拶を厚生労働省前で行い、日比谷野外音楽堂の決起集会には全国港湾、MIC、航空労組連絡会の代表が連帯の挨拶を行うという共同の前進があった。春闘山場前の中央行動を1回に集中させたことで、参加者数も増加した。
 3月13日の統一行動には、8単産がストライキなどの実力行使体制を確立して250カ所以上でストライキに立ち上がり、約22万人が職場、地域の行動に参加した。
 また、消費税率引き上げ中止、社会保障改悪反対などの要求を確認して呼びかけられた「雇用、くらし、営業守れの国民大行動」には、消費税増税中止・重税反対の行動に20万人が参加した。
 あわせて、全国で延べ42万人がさまざまな形態の行動を起こし、低額回答を打ち破るたたかいと安倍政権の暴走ストップの国民共同の前進に力を寄せあう決意を固めた。
 国民春闘活性化のためにも、労働者課題と国民的課題を結合した春闘期の全国行動は不可欠であり、春闘課題や闘争日程の配置にあたって「6団体アピール」のような共同の取り組みと、「イエローアクション」のような春闘山場の行動の工夫は引き続きの論議課題であることが確認できる到達点となった。

 (10)第1次集中回答日や3月段階の回答状況もふまえ、「ベアにこだわり、すべての労働者の賃金改善にこだわるたたかい」の再強化を、4月2日に単産代表者会議を開催して確認した
 4月9日を第2次統一回答日に設定し、翌10日には中央行動を配置してたたかいを交流し、制度課題での政府追及を実施(700人が参加)するとともに、全国では最低賃金課題も含めたすべての労働者の賃上げの必要性を訴える宣伝行動を実施した。
 5月15日には、「国際連帯行動」としてファストフード産業を対象に「最低賃金の底上げ」と「労働者の団結権行使」を呼びかける行動に24県・29カ所で取り組み、世界35カ国の運動と連帯した。
 5月22日には、最低賃金引き上げ、公務員賃金改悪阻止など夏季闘争につなぐ課題も掲げた中央行動(1,000人が参加)を実施した。
 4月以降の中央行動の配置は、国会動向ともかかわる労働者、国民的課題の位置づけが求められる状況にあった。2014年春闘は、4月24日に社会保障改悪反対の「ヒューマンチェーン」が呼びかけられ、主要な単産が10日の中央行動への結集が事実上困難になるという経過をたどった。また、5月段階の中央行動では、労働法制改悪反対の課題の位置づけでの取り組みとしては、参加状況も含め課題を残した。

(11)賃金回答の回答引き出し状況は、5月29日時点(第7回集計)で、全労連・国民春闘共闘の集計登録組合中・58.4%(499組合)が回答を引き出し、329組合が妥結している(回答引き出しに対する妥結率65.9%)。
 要求前進にねばり強く取り組む組合の増加がうかがわれる集計の経過で、妥結組合が例年より少ない状況が続いたが、5月末になり春闘を収束する組合が増加した。
 有額回答を引き出した24単産・部会での単純平均(1組合あたりの平均)は、5,780円・2.01%、加重平均(組合員1人あたりの平均)は6,215円・2.09%である。前年同期比では、単純平均で368円・0.08ポイント、加重平均で242円・0.06ポイント上回った。なお、第1回集計からの回答状況を時系列で見ると、第2回集計時を除き右肩上がりの状況となったのが、2014年春闘の特徴であった。
 単産の取り組み報告でも、JMIUの組合が6次回答を引き出したのをはじめ、499組合のうち、114組合(22.9%)が数次にわたる回答を引き出した。これは前年(92組合・19.5%)を22組合・3.4ポイント増と大きく上回っている。
 月額1万円以上の賃金引き上げを獲得した組合は、対前年同期比9組合増の29組合で、2.5%以上の賃金引き上げ率となった組合も55組合となった。
 単産・部会別に見ると、単純平均額で前年同期と比較可能な23単産・部会のうち、18単産・部会が対前年同期比プラス、5単産・部会がマイナスである。
 なお、前年実績との対比が可能な332組合での単純平均額は5,809円で、前年実績比416円増で、うち66.6%あたる221組合が前年実績額以上の回答を引き出した。

 (12)パート、アルバイトなど非正規雇用で働く仲間の賃上げは、13単産・1地方の175組合で282件での成果獲得となっている。前回調査(5月14日時点:11単産・143組合・240件)から32組合・42件増え、前年同期(2013年5月30日時点:255件)を27件上回っている。
 時間額の引き上げ額回答の報告があった163件の単純平均額は26円で、前回調査(28.2円)から2.2円下がったが、前年同期(24.9円)からは1.1円上回っている。
日額での引き上げ額は、16組合平均155.2円(前回調査比3.7円減・前年同期比80.7円増)、月額では39件、平均2,804円(前回調査比8円増、前年同期比855円減)である。
 また、企業内最低賃金協約の締結・改定は、7単産・1地方の128組合から報告が寄せられた。前年同期(2013年5月30日時点:10単産・72組合)を56組合上回った。この点でも、すべての労働者の賃上げが重視された状況がうかがえる。

 (13)以上のような状況をとりまとめれば、次のような到達点が確認できる。
 1) 2014年春闘の回答引き出し状況は、先行する組合の妥結状況も見つつ、4月1日の消費税増税などによるくらし悪化の是正を使用者に迫るたたかいがねばり強く取り組まれた経過とたたかいの反映がうかがえる。
 この点では、財界が主張した「横並びで賃上げをめざすという春闘」の終焉論は事実として否定されたと言える。
 ベアにこだわる春闘に継続して取り組んできたことも反映し、2014年春闘が「ベアは論外」という職場の雰囲気を払拭する転機になり、春闘への確信を深めた職場の広がりが確認できる。
 2) 春闘当初から、パートの仲間の時給引き上げを求める労組の増加がうかがえ、「すべての労働者賃上げ」にこだわる組合の増加が確認できる到達点となっている。
 3) 賃金交渉では、消費税増税の悪影響等を懸念し、賃金抑制の姿勢を強める経営側とのせめぎあいとなった。態勢を固め、繰り返しの行動と交渉を積み重ね、労働者の生活悪化をくいとめる実質賃金維持は使用者の責任であることを追及した労働組合がある一方で、経営者側の厳しい姿勢を打ち破れず定昇程度にとどまった労働組合があることも報告されている。
 消費税増税や物価上昇、公租公課負担増などによる生活水準の低下についての実証的な資料など、職場交渉に活用できるデータの充実などが求められている。
 4) 類似業種や全国的な賃金回答状況と同時に、異業種も含めた地域の相場や労働組合のたたかいの状況が、春闘期の各交渉単位での回答に反映することが従来よりも強まった、と報告されている。
 その点では、春闘準備の段階と同時に、春闘山場をすぎた段階でも、地域での春闘交流の場の必要性が確認できる状況にある。
 5) 非正規労働者の要求を積極的に掲げ、当時者も先頭に、「セパ共同」のたたかいが職場段階でも強まったことが多くの単産から報告されている。
 また、職場のたたかいと地域最低賃金改善のたたかいを一体的に進める単産も増えてきていることも確認できる。

 (14)賃金以外の労働条件課題でも、切実な要求実現を勝ちとった職場は少なくない。
 正規雇用で働く仲間の諸要求改善については、18単産・4地方の441組織から832件の制度改善報告が寄せられている。前年同期(2013年6月11日時点:435組織・762件)を6組織・70件上回る状況にある。
 その内容は、休日休暇・残業関係・育児・介護休業など労働時間短縮に関する事項では115組織で144件の報告があり、休日休暇関係での要求前進がもっとも多くなっている。残業関係では、「時間外不払いの実態調査を実施」などが報告されている。
 年齢や職種による最低保障賃金の協定化や最低年収保障での要求前進は、7組織・12件で勝ちとられ、「フルタイム労働者の年収300万円以上の確保」の報告もある。また、初任給改善などは、33組織・36件の報告が寄せられた。
 労災補償の上積み獲得、メンタルヘルスケア関係、ハラスメント対策に関する前進報告、人員増要求や定年・雇用延長関係でも12組織・12件の成果が報告された。
 その他、通勤手当、住宅手当、扶養手当、夜勤手当などの上積みの報告が、198組織から286件寄せられた。

 (15)パート・再雇用者など非正規雇用で働く仲間の諸要求改善では、14単産・3地方の218組織から405件の制度改善報告が寄せられた。
 忌引き休暇の新設・改善、有給による病気休暇制度の創設、結婚休暇や誕生日休暇など「休日休暇関係」などで22組織・24件の成果獲得となっている。育児休業・休暇関係で、「月給制契約社員の育児休暇を有給化」などの成果も報告されている。
 可処分所得にかかわる要求での成果獲得では、期末一時金・奨励金の獲得、通勤手当の増額など「各種手当の改善」が148組織243件ともっとも多く、前年同期(108組織137件)から40組織・106件増と大きく前進した。
 均等待遇とかかわって、「パート職員の賃金体系表の提示(新設)」、「食堂無料開放3日間」など17組織から18件の成果獲得の報告も寄せられた。
 再雇用・継続雇用で働く仲間の諸要求では、リフレッシュ休暇や忌引き休暇増、夏季休暇新設、有給による誕生日休暇、「再雇用給与の格付け引上げ」などもあるが、多くは一時金支給・激励金支給など「諸手当の上積み・改善」で27組織・34件の成果獲得が報告されている。

 (16)このような到達点について、次のような点での論議が求められている。

 1) 職場の制度要求と法制度要求との関係は、よりふみこんだ論議が求められている。たとえば、労働時間関係で、方針では残業規制の強化を強調したが、裁量労働制やホワイトカラーエグゼンプションなど、「残業代ゼロ」制度の攻撃が強まっているもとで、対抗する職場からの取り組み強化が必要との問題意識が前提にあったが、その点での改善報告は行われていない。
 一部の単産では、労働時間延長の攻撃が強まっていることに反撃し、労働時間短縮闘争をたたかいの柱に据え始めている。
 2) 方針で提起した「法令遵守度チェック」の取り組みを進め、非正規労働者の均等待遇の要求、所定外労働やサービス残業になっている会議や業務の見直し要求など多様な要求が確認され、前進させた単産もある。
 3) 2013年の労働契約法改正をふまえた有期雇用契約の無期化や、均等待遇実現の要求は一定前進している。制度活用の取り組みの前進は確認できる状況にはある。

 (17)労働組合のたたかいが集中する春闘の取り組みと到達点を中間的に総括すれば、引き続き次のような点で論議を深めていくことが求められている。
 2013年、2014年春闘を通じて前進させてきた「賃上げこそ景気回復のカギ」、「デフレ不況克服のカギ」という世論をさらに大きくし、すべての労働者の賃金引き上げの成果につなげるため、職場、地域のたたかいを継続し、発展させることを意識した学習や意思統一を大会論議等で深めていく必要がある。
 とくに、「横並びの賃金改善」を実現するという春闘の意義を再確認し、統一闘争の強化、地域での単産・地方組織一体の賃金闘争の前進、強化について、組合員段階までの意思統一を深めることや、政府のインフレ政策がさらに強まり、物価上昇が続くもとで、「賃上げは当然」、「実質賃金維持はすべて労働者の課題」とする労働者の声を高めるためのキャンペーンを強め、要求実現のために実力行使も背景に労働組合が先頭に立ってたたかう体制を固めていくことなどが重要になっている。
 一部の産業、業種で、人材確保の困難さ、人手不足が深刻化し、賃金改善や処遇改善が全体として進み始めている状況が、4月以降表面化してきた。雇用状況の変化にも起因するこのような変化を、「賃下げ競争」や安価な労働力確保で収益をあげるという場当たり的な対応を行う企業への批判を集中させることで、安定した良質な雇用(ディーセントワーク)実現の攻勢的なたたかいに発展をさせることが求められる。
 要求提出状況やストライキ権確立状況などからは、職場段階の運動活性化が喫緊の課題であることを示している。要求アンケート論議の段階から職場の取り組み強化を意識し、論議をより活性化するなど、「当たり前の労働運動」の再強化に力を集中する必要がある。
 また、「6団体アピール」もふまえた3.13国民総行動のような取り組みを継続、発展させ、国民春闘の状況をつくりだしていくことも検討課題である。

 (18)2104年夏季一時金の回答状況は、6月20日に第2回集計を行っている。
 春闘期に、一定の組合が回答を引き出していることもあり、登録組合765組合中416組合(54.37%)が回答を引き出し、回答引き出し組合の50%にあたる208組合が妥結している。大きな傾向としては、6月中の決着がめざされる状況にあることがうかがえる。
 回答引き出し組合のうち56%(233組合)が金額回答、94%(392組合)が月数回答となっている(38.2%・159組合が月数回答のみと推計される)。
 回答を引き出している組合の平均(単純平均)は、1.94月(前年比プラス0.04月)・65万3,228円となっている。加重平均(組合員平均額)は70万7,105円で、前年を1,416円上回っている。また、前年との比較が可能な212組合で見ると、単純平均額が66万6,195円で前年を2.2%、1万4,322円上回っている。月数比較可能な374組合の単純平均は1.93月で前年を0.03月上回っている。
 月数比較で、6単産が前年からマイナス、9単産がプラスの報告となっており、月例給以上に二極化が顕著な中間的な集約状況にある。

3、国民的要求課題での取り組み
 (1)3年以上を経過しても東日本大震災からの復興が遅々として進まず、震災関連死が1都9県で3,089人(2014年3月末)を超えるなど被災者の困難が増すなか、10月13日に「被災者本位の復旧・復興をめざす全国交流集会inいわて」が岩手県・花巻市で開催され、全国の運動が交流された。被災後に開催した交流集会では過去最高の参加者となった。
 岩手では11月2日から「いわて復興一揆大行進」が実施され、2014年3月2日には震災から「3年目の集い」が大槌町で開催された。
 宮城県労連は、宮城県災対連・東日本震災共同支援センターとともに、ほぼ毎月の仮設住宅訪問・「炊き出し&何でも相談」を実施し、2014年7月で30回目の取り組みとなった。
 福島県労連は、福島復興共同センターで中心的役割を担い、早期復興と原発被害の全面賠償、福島県内原発の全炉廃炉など県民要求実現の先頭に立ち、2013年11月2日には「なくせ原発11・2福島大集会」を成功させた。
 このようななか、2013年12月には、被災3県を中心に約250人の上京団で国会総行動が取り組まれ、政府交渉や議員要請行動などが展開された。この運動のなかで、被災3県が要求してきた国による医療窓口負担について、政府は宮城に負担することを表明した。
 また、岩手県民復興会議は、2014年6月18日に、JR山田線・大船渡線の早期復旧を求めて国土交通大臣要請などを行った。

 (2)2013年9月15日に関西電力大飯原発4号機が定期点検入りし、稼働原発ゼロの状況が再び実現したもと、政府、電力会社、財界など原発利益共同体が原発輸出、原発再稼働の動きを強めたことへの反撃を国民的共同の一翼を担って取り組んだ。
 しかし、政府は、9月7日に安倍首相がIOC総会の場で行った「放射能のブロック」発言にも見られるように、深刻な状況にある福島原発事故の状況をことさら小さくとらえ、原子力規制委員会が7月に示した「新規制基準」を「世界最高の安全基準」だと喧伝し、東京電力・柏崎刈羽原発6、7号機を含む9電力・16基の原発の再稼働申請や、トルコの原発建設受注など、国民世論に逆行する動きを強めた。
 「原発ゼロ」の政治決断を求める新聞意見広告運動に「原発をなくす全国連絡会」と「ふくしま復興共同センター」が共同して取り組み、2012年11月、2013年5月に、全国紙などに掲載し大きな反響を得た。
 3月を中心に、原発をなくす全国連絡会が呼びかけた「震災早期復興、原発ゼロの日本実現」をめざす全国行動に呼応した取り組みが、47都道府県すべてで取り組まれる状況となった。また、政府が原発再稼働の動きを強めたことから、原発立地各県での「再稼働反対」の集会が、市民団体や系列を越えた団体の結集で大きな規模で開催され続け、これらの成功に役割を発揮してきた。

 (3)2013年6月に、原発をなくす全国連絡会、さようなら原発1000万人アクション、首都圏反原発連合三者が共同する「NO NUKUSE DAY」が開催され、その後、2013年10月、2014年4月、6月と共同の取り組みを積み上げ、一点共闘を前進させてきた。
 毎月11日の行動として提起した「イレブンアクション」は、30都道府県以上で定期的に取り組まれてきた。
 2011年秋から取り組んでいる「原発署名(3項目署名)」は、現在までに30万筆余りを集約し、国会行動を通じて提出してきた。
 また、2013年秋以降、福島復興共同センターが開始をした「福島100万署名」への全国的な支援を呼びかけ、4月に28万筆の署名を提出した。
 全国運動を推進していくために、原発立地県、ブロック、単産、地方組織でとくに参加を希望する者を対象に設置した原発対策会議はおおむね四半期に1回程度開催し、とりくみの到達点、直面する情勢の共有化と取り組みの意思統一を行い、全国的な運動継続をはかってきた。2014年5月には、原発事故による居住制限区域などの視察も行った。

 (4)社会保障制度改革推進法にもとづく税と社会保障一体改革の強行に反対し、中央社保協に結集して取り組みを進めてきた。
 社会保障制度改革国民会議は2013年8月5日に報告書をとりまとめ政府に提出した。消費税増税を前提に、医療、介護、年金、保育の全分野について、給付削減と自己負担増を迫る改悪一辺倒の内容であった。
 政府はこの報告書をもとに、制度改悪の「行程」(社会保障改革プログラム法案)を秋の臨時国会に提出し、会期末の12月5日に成立を強行した。
 この社会保障改革プログラムを先取りする形で、2013年10月1日から年金給付額の引き下げが強行された。同日、消費税率を2014年4月1日に8%に引き上げることを安倍首相が決断し、国民的な非難が高まるもとで実施が強行された。
 政府は、庶民増税を先行させる一方で、第186回通常国会に社会保障改悪プログラム法を実施する「医療・介護総合法案」を提出した。「地域における医療、介護の総合的な確保を推進する」との口実で、介護施設からの利用者追いだし、介護保険制度適用範囲の縮小など、介護分野での自己責任の徹底等をはかる内容であった。
 このような医療・介護制度破壊の法案の成立に反対し、また、2014年1月31日には、年金給付額引き下げへの怒りを結集した「不服審査請求」を約12万人分提出し、怒りを組織する運動が待たれていることを示した。
 4月24日には有識者の呼びかけで、「輝けいのち・4.24ヒューマンチェーン国会大包囲」が取り組まれた。この取り組みも契機に、国会行動が強められた。法案作成の前提となっていた利用者負担可能額算定の根拠が崩れ法案の杜撰さが明らかになるなど政府を追い詰めたが、会期末を前に、与党の数の横暴で強行成立させられた。
 取り組んだ「医療介護署名」は、通常国会を通じ31万5,140筆提出し、年金削減反対署名は7万3,682筆提出した。

 (5)2013年秋の第183回通常国会で、生活保護申請時に資産状況などの書類提出義務付けと、親族の扶養義務履行を生活保護の前提条件とする生活保護法改悪法案が成立した。生活保護申請そのものを規制し、受給者減をねらうこの法律には、学者、法曹関係者などから厳しい批判があがり、国会審議の中で厚生労働省は、法成立前後で生活保護申請時の取り扱いに変更のないことを答弁し、法案も一部修正された。
 法成立後の政省令公布の段階で厚生労働省は、その国会答弁に反し、扶養義務者への問い合わせなどを申請時に行うことなど、いわゆる「水際作戦」強化の省令を策定しようとした。これに対し、パブリックコメントなどで批判が集中し、省令修正に追い込んだ。全労連も、このパブリックコメントで意見を述べるなどの対応を行った。
 2014年4月時点で、生活保護受給者が約216万人に達する貧困化の状況に、財政事情を優先して支給要件の厳格化などで対応しようとする政府の動きが続いており、引き続きの取り組みが求められる課題である。

 (6)消費税率引き上げに反対し、国民共同の前進をめざした。
 2013年10月にも安倍首相が増税表明するという動きに対し、9月27日の全国集会の成功に尽力した。この全国集会は、増税反対の一致点でこれまでの共同をさらに拡大させるものとなった。
 2014年4月の増税を前に、全国で多様な共同行動が展開された。中央では、「朝日新聞」への意見広告運動に取り組み、3月5日に掲載し、「反対運動をしているところがあると初めて知った」「趣旨に大賛成」などとの声が多数寄せられた。
 第45回3・13重税反対全国統一行動実行委員会は、消費税増税を強行する直前となり、「くらし守れの総行動」の取り組みとも連携した集会・デモに20万人が参加し、春闘山場の行動ともあわせ44万人が終日の行動に決起した。
 全労連は、第183回国会に「消費税増税中止を求める請願署名」25万2,177筆を提出したのに続いて、第186回通常国会までに、49万3,000筆を上積み集約して国会に提出した。

 (7)TPP交渉からの離脱を求める取り組みを共同して進めた。
 2013年3月に安倍首相が、TPP協定参加と2国間協議を受け入れて以来、前のめりの姿勢はいっそう明らかになってきた。加えて日豪FTA協議で関税の引き下げが進められ、衆議院選挙、参議院選挙での自民党の公約を破りすて、食糧主権や国民の健康を大企業のもうけのためにさしだす動きを強めた。
 このような動きに対して、日本国内では、全国各地でTPP参加反対の多様な運動が発展した。
 中央段階では「TPP参加反対」の一点で大学教員の会、弁護士ネットワーク、主婦連や生協などとの共同が前進し、「これでいいのかTPP?!12・8大行動」や「もうやめよう!TPP交渉3・30大行動」が取り組まれ、全労連も成功に貢献した。
 全国各地でも、全国食健連のグリーンウエーブとも結んだJAや医師会などとの対話が前進し、酪農家や消費者など幅広い個人・団体が参加する集会・デモが各地で展開され、地方組織が積極的な役割を発揮した。これらの取り組みが、世論を動かしていることは、マスコミ等の世論調査からも明らかである。
 取り組んできた「TPP交渉からの撤退を求める」請願署名は、2012年からの合計で20万4,032筆を国会に提出した。

 (8)公害根絶、再生可能エネルギーへの転換を求める取り組み
 史上最悪の公害事故となった福島原発事故の全面賠償を求める取り組みをはじめ、全国各地の公害訴訟などへの支援の取り組みを強めた。
 公害地球懇が呼びかけた実行委員会で「再生可能エネルギー普及・全国フォーラム2013in大町」を11月16〜17日、長野県・大町市で開催し18都道府県から153人が参加した。
 第39回公害被害者総行動が6月4〜5日に実施され、成功に尽力した。
 この1年間で、(1)四大公害裁判初の富山イタイイタイ病の全面解決協定の締結、(2)泉南アスベストの画期的な二陣大阪高裁の勝利判決、(3)有明の開門確定判決の間接強制を認める判決など、貴重な前進がはかられた。

4、改憲策動を許さず核兵器廃絶、日米安保廃棄をめざす取り組み
 (1)「戦争をする国」づくりへの暴走政治が続くもと、スタートさせた「かがやけ憲法署名」に取り組み、全国各地に広がる共同の取り組みでの役割を積極的に果たしてきた。
 2013年8月の幹事会を経て、憲法闘争を「憲法を守り、戦争をする日本にしないでください」「憲法をいかし、格差と貧困の解消、雇用とくらしを改善してください」の「2項目署名(かがやけ憲法署名)」を軸に推進していく方針を決定した。
 これらのとりくみの推進の意思統一を行うため、10月16日に「かがやけ憲法署名」スタート集会を開催した。

 2013年秋の憲法闘争では、10年ぶりとなる「かがやけ憲法 全労連全国縦断キャラバン」に取り組んだ。10月29日に出発し、全国4コースと沖縄コースをつなぎ、12月6日に集結した。その間、28道府県、149自治体、11労働局や各種団体に要請を行い、194カ所での宣伝行動、秘密保護法反対集会・デモ等への参加など、延べ9,500人を超える仲間が参加する行動となった。
 10月25日に特定秘密保護法案が上程されたこともあり、とりわけ行動の後半は特定秘密保護法廃案に向けた取り組みと一体でのキャラバン行動となった。国会最終盤に向けた世論喚起の一翼を担い、法案成立直後から開始された特定秘密保護法廃止運動につながる取り組みとなった。

 (2)通常国会の冒頭から安倍首相は、「(政府の)最高責任者は私だ。政府の答弁に私が責任をもって、そのうえで選挙での審判を受ける」などと述べ、安保法制懇の報告を受けて憲法解釈の変更を閣議決定で行う姿勢を明確にした。
 これに対し、海外での武力行使に反対して憲法9条守れと主張する国民からだけでなく、改憲勢力のなかからも憲法改正によらない集団的自衛権行使反対の声や、立憲主義蹂躙への激しい批判がわき起こった。また、中国、韓国などの近隣諸国だけでなく、アメリカ政府のなかからも軍事力強化による緊張状態がつくりだされることへの懸念が表明される状況となった。
 また、通常国会開会日(1月24日)に、特定秘密保護法廃止、解釈改憲阻止の要求で国会行動が取り組まれるという異例の事態となった。
 このたたかいも反映し、通常国会の会期末・6月16日には、日本共産党や社民党などが共同で、「特定秘密法廃止法案」を参議院に提出した。

 (3)安倍首相は、解釈改憲の閣議決定にかたくなまでに固執し、5月15日に「安保法制懇」報告を受け、5月27日には「安全保障法制整備に関する与党協議会」に憲法解釈変更を「正当化」する15例を示した。
 政府と自公与党のわずか一月の密室協議後の6月17日に、日本が直接攻撃されていないにもかかわらず、同盟関係にある国への攻撃が日本国民の平和的生存権を侵す場合に政府の判断で他国での武力行使(=戦争)を行うことは憲法に違反しないとの「新3要件」が提示された。
 この「新3要件」にも国民的な非難が高まり、閣議決定前日には官邸前に数万人が集まって抗議の声をあげるなか、7月1日に集団的自衛権行使を容認する閣議決定を強行した。
 改憲をめぐる急激な動きのなかで、5月30日には、「戦争する国づくりストップ! 憲法を守り・いかす共同センター」(略称 憲法共同センター)が発展的に結成され、7月5日には結成10年を迎えた「九条の会」が、9条改憲反対の一大国民運動を呼びかけた。また、全国各地でもさまざまな形態の共同で、デモや宣伝行動などが旺盛に展開され続けた。

 (4)緊迫し激動する情勢のもとで、「かがやけ憲法署名推進のための単産・地方代表者会議」を4月11日に開催し、この間のとりくみや今後のたたかいについて意思統一を行った。
 署名目標を設定している組織は8単産、16地方組織で、その目標合計は、136万7,800人と積極的な目標が掲げられている。初年度目標である第27回大会までに100万筆を達成させることを再確認し、5月、6月の取り組みを進めた。しかし、現時点での到達点は36万6,430筆で、初年度目標の半数にも達していない。
 特定秘密保護法や解釈改憲の閣議決定など個別的な動きへの関心は高いものの、政府の動きに対するもっとも固い対抗軸である「憲法を守りいかす」立場での取り組みに昇華させていくことでの職場段階までの意思統一は遅れている。
 情勢の応じた宣伝行動や集会に機動的に取り組むことと一体で、「戦争する国づくり」反対や立憲主義守れの国民世論にも働きかける武器としての「かがやけ憲法署名」の力の改めての確認と、職場学習の強化が重要になっている。

 (5)2015年5月に開催されるNPT(核拡散防止条約)再検討会議に向けた「核兵器廃絶署名」の取り組み強化や、原水爆禁止世界大会など継続的な取り組みの成功に尽力してきた。
 2013年8月3日から9日まで、2013年原水爆禁止世界大会が広島、長崎で開催された。国際会議には約200人、広島集会には約2,000人、長崎大会には約7,000人が参加した。参加者の6割が初参加という広がりのなかで、「核兵器のない平和で公正な世界」をめざす運動の重要性を改めて確認するものとなった。
 11月28日には、2015年5月に開催されるNPT再検討会議に向けた「核廃絶署名」強化のため、単産・地方代表者会議を開催し、目標300万筆の達成を確認しあった。
 「3.1ビキニデー」、「2014年原水爆禁止国民平和大行進」に積極的に結集し、役割を果たしてきた。

 (6)日米安保条約廃棄をめざし、米軍基地撤去などの取り組みを強めた。
 2013年1月27日、沖縄の41市町村長を先頭に市議会代表、県議、団体代表などが上京し、日比谷野外音楽堂で4,000人参加の集会を開くとともに、安倍首相に米軍基地撤去を求める「建白書」を提出し、オール沖縄の声を政府に突きつけた。
 辺野古の新基地建設に向けて政府は、3月に公有水面の埋め立て申請を行い、沖縄県は承認申請についての公示・縦覧を7月18日に終了し、12月27日には沖縄県知事が県民世論をふみにじって申請を承認した。
 全労連は、安保破棄中央実行委員会に結集し、「辺野古沖埋め立てを許さないための100万ハガキ運動」などに取り組み、沖縄のたたかいに連帯した。
 2014年1月に行われた名護市長選挙は、沖縄県の埋め立て承認に抗議し、名護市民の新基地建設を許さない意思を表明する重要な取り組みとなった。このことから、2回の統一行動ゾーンを設定し、全国からカンパと人的支援を呼びかけ、辺野古沖埋め立て・新基地建設反対派市長の勝利に貢献した。
 名護市議会選挙(9月)、沖縄県知事選挙(11月)が予定されるなか、「辺野古新基地阻止・普天間基地撤去」新聞意見広告運動(9月掲載)の取り組みを開始した。
 オスプレイ配備や在日米軍基地強化の動きが強まるもと、岩国(山口)、厚木、横須賀(神奈川)、横田(東京)などでの基地強化に反対する取り組みが強められ、大規模な集会が開催された。このような運動も反映し、2014年5月21日には、横浜地方裁判所で、自衛隊機に限ったとはいえ夜間飛行訓練を差し止める判決が言い渡された。

5、政治の民主的転換をめざす取り組み
 2012年12月の衆議院選挙、2013年7月の参議院選挙を通じ、労働組合としての選挙闘争強化の立場で、選挙期間中も含めた要求にもとづく政策選択の訴え強化や、要求実現にかかわる政治変革の重要性を組合員に訴えることなどを改めて強化してきた。
 また、原発、憲法、消費税などの課題での「一点共闘」を革新統一戦線に発展させる立場から、都道府県知事選挙など国政に影響を与える自治体首長選挙について、当該地方組織の決定を前提に全国的な支援を呼びかけてきた。
 このようななかで、前述した沖縄・名護市長選挙や東京都知事選挙などで、政治的変化を実感できる取り組みも行った。
 安倍政権の暴走政治があらゆる場面で強まっていることもふまえ、政治革新をめざす共闘の前進により積極的な対応が求められる状況にあることが明らかになった。

6、世界の労働組合との連携、共同の取り組み
 二国間交流を中心に、各国のナショナルセンターなどとの国際連帯の取り組みを活性化させてきた。
 2013年8月以降でも、ブラジル労働センター(CTB)第3回大会、アメリカ電気・無線・機械労働組合(UE)第73回大会に参加し、この機会を利用したブラジル中央統一労働組合(CUT)との交流も実施した。
 また、「新労働組合イニシアティブ」(NTUI)の第3回大会や、「グローバル化と労働組合の権利・南からのイニシアティブ」(SIGTUR)の第10回大会に正式に招待されて参加した。
 アメリカ・イリノイ州シカゴで行われたレーバーノーツ2014年大会に参加するとともに、UE、CGTなどと共同開催をめざしている非正規問題でのワークショップ具体化の打ちあわせを行った。
 さらに、フランス労働総同盟に福島県労連から派遣し、福島原発事故の現状を訴えるとともに、原発ゼロをめざす全労連の運動を紹介した。
 加えて、ポルトガル労働総同盟(CGTP-IN)を訪問し、公務関連組織との交流を行い、スペイン労働者委員会総連合(CCOO)を訪問し教育労働者課題を中心に交流を行った。
 ILOとの対応も、公務員制度改革等にかかわる情報提供と要請(2013年11月)、夜勤労働規制やJAL争議での情報提供(2014年5月)などに取り組むとともに、第103回ILO総会(5月27日から6月13日)に代表を派遣し、国際労働運動をめぐる情報交流などを行った。

II 全労連組織の強化拡大の取り組み

1、組織拡大運動の到達点
 (1)全国で組織拡大強化中期計画の実践に全力をあげ、秋・春の組織拡大・強化月間を設定して取り組みを進めた。
 中期計画初年度の2012年度は、単産・地方組織合計で8万8,541人を拡大した。既存組織内の組織拡大数は、単産3万8,017人、地方組織4万3,370人、単純合計で8万1,387人。新規結成・加盟は、185組織(単産126組合、地方組織59組合)7,154人(単産4,670人、地方2,484人)が加入した。
 2013年度は、単産・地方組織合計で○○人を拡大した。既存組織内の組織拡大数は、単産○○人、地方組織○○人、単純合計で○○人。新規結成・加盟は、○○組織(単産○○組合、地方組織○○組合)、○○人(単産○○人、地方組織○○人)が加入した。
 2年間で組織実増できた組織は、○月○日現在、○単産、○○地方組織であった。
 その結果、組織人数は、単産○○万○○人(2年前○○万○○人)、地方○○万○○人(同○○万○○人)となっている。

 (2)中期計画を単産・地方組織の総力をあげて取り組むために、すべての組織で組織拡大の推進が日常の活動となるよう機関会議で位置づけての推進態勢確立を呼びかけた。月ごとの組織拡大の到達を把握して、組織拡大の取り組みと到達点の全国的な共有化を進めた。
 その結果、○○単産○○地方組織で月次段階での組織拡大の取り組み報告が提出されるまで前進した。2014年春の月間は、新採の拡大に全力をあげるなど、全国で意欲的な拡大が進んでいる。
 自治労連では「1人が10人に声をかける」「1人に10回声をかける」と、「職場が近い、年齢が近い、趣味が近い」という「3つの『近い』」を合言葉に、拡大する人を増やす取り組みに力を入れている。全教では、共済加入とよい教育をしたいという要求を柱にすえて、新採者に声かけを進めている。医労連では、単産として職場単位までの組織実態が把握できるように集約・点検体制を確立し、正規・非正規の組織率や拡大の進捗状況が見えるような体制を確立し組織拡大を地域戦略として展望できるようになってきた。
 埼玉、神奈川、静岡、岐阜、京都、大阪などの地方で組織拡大ニュースが発行され、加盟単産や地域の取り組みが全体の力になるような運動が始まった。他の地方組織でも、定例の幹事会で組織拡大を中心課題として位置づけて、早い時間帯に集中して議論するようになっている。

 (3)単産と地方・地域組織が連携して取り組む「総がかり作戦」は、各地方が積極的に方針を受けとめて全国的な取り組みとなってきた。先行的に取り組んでいる介護・ヘルパー分野の「総がかり作戦」は27地方で実施され、北海道、埼玉、愛知、三重などで新規組合の結成・加盟を実現している。各地の「総がかり作戦」の前進をつくりながら、滋賀県労連、愛媛労連、福岡県労連の3地方を特定地方として位置づけて典型事例づくりを進めている。
 介護・ヘルパー分野だけでなく、北海道・岩手での自交総連との連携、新潟・島根・佐賀での建交労との連携、東京・香川での医労連との連携、三重・島根での自治労連との連携、大阪での金融労連との連携など、多彩な「総がかり作戦」が行われている。
 岩手、宮城、福島の被災3県で特別な体制を強化し、復旧・復興の取り組みと結合した組織化の取り組み支援を行っている。岩手では沿岸部の労働相談活動・ローカルユニオンの組織拡大・強化、宮城では介護・ヘルパー分野の「総がかり作戦」の連続的な展開、福島では原発や除染作業従事者に呼びかけて、相談の受付から組織化に足をふみだした。宮城に続いて、岩手・福島でも介護・ヘルパー分野の「総がかり作戦」を計画している。

 (4)2013年1月から12月に全国の労働相談センターに寄せられた新規の相談件数は1万9,696件で、前年より431件少なかった(ただし、新潟、山形、東京の一部が未報告)。継続の相談件数3,548件とあわせると2万3,244件となり、前年比で199件増加した。
 今年春の全国労働相談ホットラインでは「賃金・残業手当未払い」が21.8%ともっとも多く、次いで「労働時間・休暇」12.6%、「解雇・雇止め」9.9%となった。労働者を使いすてる「ブラック企業」問題が世論化していることがうかがえ、正社員からの相談が増えている。相対的に非正規からの相談が減少していることもあり、「解雇・雇止め」は9.9ポイント減少した。正社員からの相談の増加は「労働組合に入りたい」、「労働組合をつくりたい」という契機となっており、労働相談から組織化につなぐオルグの体制づくりが課題となっている。
 この2年間で目立った組織化は、食品関係、遊戯器具製造、ホテルなどの企業の再編・分社化、経営者の交代や企業買収による労働条件の変更に対する不安などからの相談が労組結成に結びつく事例が続いていることだ。
 しかし、労組結成に対する攻撃もかつてなく強まっていて、新規に結成した組織が短期間に消滅させられるケースが後をたたない。結成までの支援と公然化後のていねいなサポートがますます必要になっている。

 (5)「オルグ養成講座」・「組織拡大交流会」を全ブロックで開催し、ほぼ全単産で「組織拡大交流会」が開催されている。さらに、全国的にも地方組織単位での組織拡大交流会の開催が広がり、労働相談と組織化の課題、地域組織の取り組みなどについて実践交流している。
 新たな労働組合活動家づくりに向けて、全労連教科書を活用したブロック単位での初級労働学校は、昨年5月の九州ブロックでの開催を皮切りに、秋までに全ブロックで開催された。2014年は、地方組織段階での「労働学校」開催を追求し、7月20日までに18地方組織で実施され、他の地方組織でも秋の開催がめざされている。

 各地方組織単位での初級労働学校の開催と連動して、通信制を組み込んだ職場組合員を対象とする初級労働者教育の具体化に向け、テキスト、体制づくりなどの具体化を進めた。

 (6)2013年10月27〜28日、「地域の運動と組織の強化をめざす全国交流会」を開催し、14単産40地方組織(63地域、22ローカルユニオン)から289人が参加した。集会では、地域労連の4つの役割((1)地域での単産、単組の相互支援と共闘の組織、(2)最賃、公契約など地域でなければできない労働者要求での運動の組織、(3)他の民主団体とも共同した地域での住民運動への労働者参加の組織、(4)全労連の全国統一行動の具体化)を発揮し、現在ある460地域労連の水準を可能な限り維持していくことを提起した。
 多くの地域労連が組織的、財政的、人的な困難に直面し、その克服をめざしてさまざまな努力が行われている。単産と地方・地域が連携して、次世代対策、ローカルユニオンの発展、全労連共済と組織化の結合、労働相談から組織拡大に取り組むことなどが論議された。

2、部会等の取り組み
 (1)全労連女性部の取り組み
 2012年秋から、厚生労働省・労働政策審議会雇用均等分科会において、男女雇用機会均等法の見直し議論が始まった。女性部は、間接差別の実効ある是正、ポジティブアクションの実効性を担保する法改正を求め、間接差別の実態を具体的に明らかにするなどして取り組みを進めた。
 2013年9月27日、労働政策審議会は法改正を見送り、省令・指針の一部改正にとどめる「今後の男女雇用機会均等対策について」と題する報告書を確認した。間接差別の事例として、転勤を理由とする差別が広義に拡大されたことは運動の成果である。しかし、女性労働者がおかれている差別状況を改善する実効性が薄く、限定的なものであることは否めず、「緊急アピール・男女雇用機会均等法を男女平等法に!」への賛同を組織し、129団体の賛同を得て、厚生労働省に申し入れを行った。
 安倍雇用改革の動きが強まるなかで、安価で使い勝手のよい労働力として女性を位置づける動きも強まった。このことから、「雇用の分野の規制緩和を許さず、真に男女ともに仕事と生活の両立を実現する施策の拡充を求める」女性部常任委員会声明(4月)、「まやかしの『女性の活躍』推進ではなく、真に男女平等にはたらくための労働法制の抜本的な改正を求める」女性部常任委員会声明(7月)を発表し、労働法制の規制緩和に対しての反撃を呼びかけた。
 2014年6月10日に婦人団体連合会とともに、森まさこ男女共同参画、少子化対策内閣府特命担当大臣に「『成長戦略』に異議あり! ―私たちは、女性が真に輝くための政策を求めます」とした要望書を提出した。また「慰安婦は必要」との橋下発言に対して、暴言を許さないとの日本政府の立場を明確にすることを求めて要請し、懇談を行った。
 憲法闘争では、2013年、2014年の宣伝強化期間での活用のために宣伝物を作成し運動の強化をはかった。また、署名推進のために、ピースメッセンジャー運動を提起し推進している。
 2013年末の秘密保護法案提出の状況下で、秘密保護法に反対する女性の共同が広がり、有楽町・国会前での宣伝行動、2次にわたる銀座パレードに取り組んだ。また、集団的自衛権行使容認に反対し、2014年6月、新たに女性たちが結集し、銀座パレードを取り組んだ。

 (2)全労連青年部の取り組み
全労連各加盟組織で青年部を組織しているのは、9単産・19地方組織(2013年青年部実態調査まとめ)となっている。また近年、各ブロックで開催している交流会を契機に、青年部を結成や再建しようといった動きが始まっている。
 しかし一方で、職場の多忙化や成果主義の急速な普及や過大なノルマを課せられ労働者自身が対立・孤立し青年部活動そのものが困難となっている状況も報告されている。
 困難な現状下でも、青年が団体交渉に参加するなどすべての青年労働者の賃上げを求めるたたかいや、悪政との対決のなかで学ぶこと・権利を知ることの重要性を確認し、青年がくらし・生活を守る先頭に、職場・地域から憲法を守りいかす運動に積極的に参加する事例も報告されている。
 次世代育成の課題では、「春闘討論集会で新組合員向けに組合用語の学習、要求シミュレーションに取り組んだ」「大学や街頭で宣伝・アンケート行動を行った」「青年が集まることで10年後20年後の職場、組合活動につなげていきたい」などの取り組みが報告されている。
 全労連青年部は、「『参加してみたい』学習企画」、「つながりをいかした組織拡大・強化」の取り組みを進め、「働き続けられる労働条件を求めて声を上げよう」、「平和と憲法、震災復興・原発ゼロをめざそう」の運動を柱に取り組みを進めた。
 5月31日〜6月1日に学習交流企画「ユニオンユースアカデミー」を福島県いわき市で開催した。全国の原発をなくすためには、最初に福島で原発をなくさなければ実現できないとの共通の認識を深めた。
 共闘の取り組みでは、民青同盟や農民連・全商連・平和委員会など多くの団体とともに取り組みを進め、2013年10月には全国青年大集会、2014年6月には若者憲法集会に取り組んだ。

 (3)非正規センターの取り組み
 非正規労働者が2,000万人を超え4割に近づき、その劣悪な待遇を改善していく取り組みが社会的課題になるもと、賃金や諸手当の改善、雇用の安定など職場での取り組みを強めるとともに、最賃体験、シール投票、審議委員への立候補など最低賃金引き上げの取り組み、労働者派遣法をはじめとする労働法制の改悪を阻止し改善を求める取り組み、派遣切り非正規切り裁判闘争支援の取り組みなどを強めてきた。
 職場・地域での取り組みを交流し発展させるため「第22回 パート派遣など非正規ではたらくなかまの全国集会」を2014年6月に福岡市で開催し、15単産37地方組織から延べ780人の参加で成功させた。
 実効性に欠けるパート労働法の改正にかかわる労働政策審議会「建議」(12年6月)は、8条「パートであることを理由とする差別的取り扱いの禁止」の対象要件を緩和するものの、「人材活用の仕組み」の差異を賃金に反映することを引き続き容認する不十分なものだった。
 実効ある改正めざし、学習資料やリーフを活用した学習や宣伝を地域から行い、13年通常国会に向けて「実効ある改正求める国会請願署名」(10万3,260筆)を集約したが、法案が14年通常国会に先送りされたため、再度、署名に取り組む(9万1,103筆を集約)とともに、学習と宣伝、厚労省交渉、院内集会、議員要請等に取り組んだ。
 法案は4月に成立したが、国会審議でも不十分な点の指摘が相次ぎ、均等待遇の範囲の拡大などを求める附帯決議が採択された。職場から法律を活用した取り組みを強めるとともに、均等待遇の実現めざす法改正の取り組みを強めている。
 改正労働契約法(12年8月成立)は18条で、通算契約期間が5年を超える場合に無期契約に転換できるとするが、通算契約期間は13年4月以降からのカウントとしている。すでに長期に働いている労働者については5年を待たずに直ちに無期雇用に転換させるべきであり、春闘では多くの労働組合が「直ちに無期化すること」「雇用上限制を撤廃すること」などを要求した。生協労連の25単組で無期化に向けた前進回答を引き出したのをはじめJMIU、日本医労連、全印総連、福祉保育労、全農協労連、建交労、全国一般等の各単組で正規化を含む前進回答を引き出した。
 また、各単産・単組では、労働契約法20条を活用し合理的理由のない待遇格差を是正させる取り組みを強め、各種の手当や忌引き休暇制度などで前進を勝ちとっている。
 郵政産業労働者ユニオンは14年5月、20条を根拠に正規社員との格差是正を求める裁判闘争を開始した。すべての非正規労働者の待遇に大きな影響をもたらす裁判闘争と位置づけ、支援を強めている。

3、全労連共済の取り組み
 (1)発足から4年を経過し、全労連共済の活動は着実に前進している。
 東日本大震災で被災した加入者への給付は、被災後丸3年経った2014年3月現在で、共済事業部会と各単産共済会をあわせ5,861件、18億9,150万円を給付し、被災者支援に貢献してきた。大震災発生後4年目を迎えているが、各単産共済会では火災共済の見舞金を中心に給付申請を受け付け支援を続けている。

 (2)全労連共済事業部会の自動車共済拡大では、4重点県(宮城、福島、千葉、三重)の県労連で集中的な取り組みを進め、福島と三重で倍化目標を達成するなどの成果と教訓をつくった。2月の共済拡大全国交流集会では、火災共済1万人拡大・家財10口(100万円補償)プレゼントキャンペーンを提起し、6月から取り組みを開始した。
 2015年1月実施に向けた制度改定の検討を進めた。2013年10月には、火災共済の自然災害給付の改善と組合事務所対象の火災共済を発足させ、交通災害共済と労働組合活動事故見舞共済の改定、共済生命共済、医療共済の改定作業を行ってきた。

 (3)2013年11月に埼労連が加盟し、すべての都道府県に地方労連支部共済会が確立された。2013年2月、慶弔火災型(約6,000人)を導入したかながわ生協労組と市民生協やまなし労組に続き、建交労東京や検数労連、東京・江東区労連などが全労連共済導入の検討を進めるなど、引き続き加入者拡大が進んでいる。

 (4)こうした到達点に立って、全労連共済理事会は「あり方検討委員会」を設置して、2013年2月以降9回の委員会を開催し、全労連共済の今後のあり方、発展方向について検討を進め、2014年6月開催の第6回理事会に報告した。この「まとめ」にも留意した取り組みの具体化を進めることとしている。
 自動車共済の料率制度改悪と関東自動車共済の代理所手数料引き下げについて対策会議や相談会をもって組織としての要求実現に努力するなど、単産共済との連携も深めてきた。

以 上