全労連第27回定期大会 2014年7月27日〜7月29日
【第1号議案】
2014〜2015年度運動方針(案)
はじめに

 (1)2014年11月21日、全労連は結成25周年を迎える。
 東京・日比谷公会堂で「希望に輝く未来のために、いまともにたたかおう」のスローガンを掲げ、日本の労働組合運動の積極的なたたかいの伝統を継承発展させ、働くものの利益・権利擁護、平和と民主主義、社会進歩のためのたたかいの先頭に立つことを決意した結成大会からの25年は、厳しいたたかいの連続であった。
 結成の1989年は、「昭和」という時代が終わり、ベルリンの壁が崩壊した年であった。否応なしに時代の変化、節目を感じさせ、資本主義の勝利が高々と宣言されて市場主義万能論が強まり、新自由主義構造改革の嵐が吹き始めていた。
 翌年には湾岸戦争が勃発し、日本に軍事的貢献を迫るアメリカの圧力が高まった。「55年体制」と言われた政治的枠組みが崩れ始め、保守二大政党制を賛美する国内政治の状況もこの頃から強まった。
 全労連がめざす「すべての働くものの人間らしい生活を実現」(結成宣言)するたたかいへの逆風が吹くなかでのスタートであった。

 (2)いま、状況は大きく変化した。
 多国籍大企業が我が物顔で世界を徘徊し、労働者の貧困と格差が深まった2008年秋に「リーマンショック」が発生した。すべてを市場に任せる経済社会のゆがみと限界が露呈した。金融危機、恐慌を避けるために多くの国々が多額の税金を企業に投入し、その結果いくつかの国が深刻な財政危機に陥った。先進国の多くで財政再建を口実にした社会保障制度改悪と労働者の権利侵害が強まり、社会保障と完全雇用を基盤とする欧州型の福祉国家は深刻な危機に直面している。多国籍企業や富裕層に富が集中する一方で、労働者の貧困化が進行し、耐え難い格差が生じている。企業中心の経済社会と、労働者・国民のくらしとの矛盾は25年前よりも明白になった。
 2003年3月、アメリカを中心に開始されたイラク戦争は、「正義なき戦争」であることが明らかになり、中東地域に混乱を残したまま2011年12月にアメリカ軍が撤退して終了した。「世界の警察官」としてのアメリカの権威は失墜し、経済でも軍事でもアメリカが中心の時代が変化し始めている。
 2011年3月11日に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所での過酷事故は、一部大企業のもうけの源泉が地域へのリスクの押しつけであることを明らかにし、集中と選択の経済政策、経済優先でくらしを軽視する社会の脆弱さを明らかにし、変化を求める声が高まった。
 軍事力を背景に一部の国や多国籍企業が勝手気ままにふるまい、労働者の人権を侵すまでの不安定な労働、過密な労働を強いる社会には持続可能性がないことに、多くの人々が気づき始めている。

 (3)全労連はこの間、もっとも困難な状況に追い込まれた労働者、攻撃の矢面に立たされている労働者に寄り添い、ともにたたかってきた。
 大企業に富を偏在させるさまざまな仕組みである税制をはじめとする企業優遇制度、多重下請け構造、差別と分断による職場支配、非正規雇用への一方的置き換えなどの是正を求め、たたかいを積み上げてきた。
 企業の横暴なリストラ「合理化」とたたかう労働者を支援し、あらゆる争議の解決に努力してきた。
 大企業の内部留保の実態を告発して社会的還元を求め、最低賃金引き上げを中心におく賃金底上げのたたかいを重視し、非正規切りや名ばかり管理者、ただ働き残業の強要などに苦しむ労働者とともにたたかい続けてきた。
 2008年年末の年越し派遣村やブラック企業を告発する「若者にまともな雇用」キャンペーンなどは社会的な共感を広げ、政治の変革や制度改善に結びつけてきた。2014年5月に、35カ国で取り組まれたファストフードに働く労働者に公正な賃金を求める国際連帯に呼応し、全労連の存在を国際的にもアピールし、認知させてきた。
 各国の労働組合との連帯、交流も前進し、アジア・オセアニア、ヨーロッパ、南北アメリカの国々の労働組合との二国間関係を強め、共通する課題での共同を深め続けている。
 さまざまな逆風や攻撃、全労連排除とも言える政府、財界の対応にも屈することなく、「すべての働くものの人間らしい生活を実現」することを追求し続けてきた全労連の運動は、いま、多くの期待が寄せられると同時に、その真価が問われる状況に直面している。

 (4)安倍政権の暴走政治に対抗した全労連運動の飛躍的な強化が求められている。
 リーマンショックも福島原発事故もなかったかのように、「世界で一番企業が活動しやすい国」、アメリカといっしょに「戦争する国」に日本を変えていこうとする安倍政権の大暴走が強まっている。この暴走とのたたかいが、労働者の安定した良質な雇用、くらしの改善の展望を切り開くことは明らかである。
 安倍政権の政策決定の特徴は、集団的自衛権行使や集団的安全保障への日本の参加を憲法違反ではないとする報告書をとりまとめた「安保法制懇」や、労働者代表の参加を排除した産業競争力会議などの諮問機関で経済政策として労働者保護制度を扱う状況に端的に示されている。
 安倍首相個人がめざす「戦後レジームからの脱却」や「成長戦略」を強行するため、自らの主張に同調するメンバーのみで論議し、その結果を「国民的論議」だと言い換え、トップダウンで政策具体化を行政に迫るファッショ的手法をくり返している。民主主義や立憲主義を蹂躙し、右翼的主張で国民を扇動する政治手法もきわめて危険である。
 安倍政権の暴走政治を批判し、歯止めを打つためには、国民的な運動をいっそう強固にする以外に方法はない。さまざまな課題での「一点共闘」の広がりは、その点に多くの人々の関心が寄せられていることを如実に物語っている。

 (5)全労連第27回定期大会は、労働者、国民の期待が寄せられるなかで開催する。
 次の大会までに国政選挙が想定されない状況下で、平和と民主主義を守り発展させ、労働者の雇用とくらし、権利を守るため、自らのたたかいを強めると同時に、広範な労働者、国民との「一致点での共同」前進を次の2年間の運動の中心におくことが求められている。 
 たたかいを全国で強めるため、単産と地方組織が全労連の統一闘争を軸に、地域から力を寄せあうことが何よりも重要である。それは、この25年間の全労連運動の教訓でもある。
 大会では、2010年代初頭の激動の2年間に全労連が果たした役割を確認し、総括の上に、労働者のいのち、くらし、権利を守るたたかいの発展方向、全労連組織の強化・拡大の取り組みの強化、すべての労働者とともにたたかう決意を再確認する。

第1章 2年間の取り組みの特徴的な到達点

1、政治、経済などあらゆる分野での激動が続くもと、第26回大会方針にもとづくたたかいを進めた
 (1)第26回定期大会では、「憲法をいかし つくろう“安全・安心社会” すすめよう 対話と共同、組織拡大」をスローガンに、激しいせめぎあいが続く2010年代前半のたたかいを攻勢的に進めることを確認する方針を確立した。
 第一に、憲法をいかす「雇用と社会保障を中心におく日本」をめざして運動を進めることとした。その中心の取り組みに「安全・安心社会をめざす大運動」((1)大企業中心、経済効率重視の日本社会からの転換をめざす国民共同のたたかいでの積極的な役割発揮と、(2)働いて人間らしくくらせる社会をめざす制度改善など「四つの挑戦」)をおくこととした。
 第二に、大会で確認した組織拡大中期計画にもとづき、組織減少に歯止めをかけ増勢に転ずる組織強化・拡大運動を具体化することとした。
 第三に、改憲策動を許さず憲法をくらしと職場にいかす取り組みの強化を確認した。

 (2)このような構えでの運動提起が、(1)要求の一致点での「一点共闘」の発展、前進に積極的な役割を全国各地で発揮したこと、(2)労働法制改悪反対の課題や、JAL不当解雇撤回のたたかいなどを通じ労働団体間の共同を前進させ、ブラック企業の告発など「まともな働き方」を求める世論と運動を高めたこと、(3)「賃上げが内需拡大の要」との世論を高め、賃上げの必要性や大企業の内部留保の社会的還元・労働者還元を社会的世論、政治的世論に押し上げたこと、などにつながった。

2、国政でも地方政治でも、大きな変化が起きた
 (1)大会後の2012年末総選挙で民主党が大敗し、自公連立の第2次安倍内閣が誕生し、橋下大阪市長、石原元東京都知事を共同代表とする日本維新の会が躍進した。このこともあって政治の右傾化が一気に進み、憲法第96条改正などの改憲策動も急速に強まった。
 政権発足当初、安倍政権は、2013年7月の参議院選挙勝利のため経済政策(アベノミクス)を先行させた。しかし、参議院でも安定多数を獲得した以降、日米軍事同盟の強化、「戦争する国」づくりに向けた改憲暴走を開始した。
 特定秘密保護法、国家安全保障会議設置や武器輸出の「原則自由化」など、「戦争国家」に向けた動きを一気に進めた。また、「普天間基地撤去、辺野古沖への基地建設阻止」の沖縄県民の総意をふみにじり、辺野古沖埋め立てに強引に着手した。

 (2)同時に、労働法制の基本原理を大本から突き崩す規制緩和を「成長戦略」の中心課題に位置づけ、「世界で企業が一番活動しやすい国」づくりにも暴走し始めた。
 民主党政権の「置き土産」となった「税と社会保障一体改革」(消費税増税と社会保障解体)は引き継いで国民に負担増を迫る一方で、法人税減税の前倒し実施など大企業優遇の政治をいっそう強めた。
 与党が衆参両院で多数を占め、「アベノミクス」への期待もあって政権への支持がある状況で、民意を無視した暴走政治はきわまった。暴走政治との対決が、労働者の切実な要求を前進させ、状態悪化をくいとめる最大の「運動課題」となり、たたかいを集中させた。

 (3)2013年参議院選挙直前の東京都議会選挙で日本共産党が17人を当選させ、民主党を上回る第三党となった。このことにも示されるように、自民、民主の二大政党制は地方段階でも崩れつつあり、対米従属、大企業奉仕の自民党型政治と対決する政治勢力への期待が高まった。このことは、2014年1月に行われた沖縄名護市長選挙で、辺野古沖への米軍基地建設が争点となり、基地建設に反対する稲嶺市長が誕生したことにも示されている。
 また、原発ゼロを主張する候補が善戦した東京都知事選挙や、「大阪都構想」への賛否が争点となった大阪堺市長選挙、岸和田市長選挙では、政党の枠組みを越えて政治共闘が前進するという新たな状況も生まれた。
 国政段階でも、野党が乱立し、政権から陥落した民主党が再生の方向を明確にしえない状況で政治が流動化している。「数あわせ」の論理が先行する再編論議には国民的な批判は強い。その一方で、労働者・国民のくらし優先、憲法擁護を一貫して主張し、運動の先頭に立つ政治勢力と、安倍政権の暴走政治とのせめぎあいが明白になった2年間でもあった。

3、政治の激動のもと、くらし、平和守れの「一点共闘」前進に奮闘した
 (1)原発ゼロの日本をめざす運動では、全労連も参加する原発をなくす全国連絡会とさようなら原発1000万人アクション、首都圏反原発連合が共同して取り組む「NO NUKUES DAY」が、2013年6月以降のたたかいの節目ごとに取り組まれ、共闘を強めた。
 また、原発立地地域などで大規模な集会が繰り返し取り組まれ、大規模な署名活動が広範な市民、団体との共同で展開された。全国一斉行動の呼びかけに応えた「原発ゼロ」の集会も47都道府県で一斉に取り組まれる状況に発展した。
 安倍政権は、2014年4月、国民世論に挑戦するかのように、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけるエネルギー基本計画を決定し、原発輸出のためのトップセールスを繰り返した。
 国民の世論、運動と原発再稼働をめざす政府・原発利益共同体のせめぎあいが強まるなか、5月21日に、福井地方裁判所は原発の危険性は国民の基本的人権を侵害するとの理由で、関西電力大飯原発3号機、4号機の稼働差し止めを認める画期的な判決を出した。福島原発事故を経た国民的な運動の高まりが、司法にも影響したことを伺わせた。

 (2)安倍首相はTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)に前のめりの対応を強め、2013年7月に正式参加するともに、農産物関税などに関する選挙公約を次々に反故にし、交渉妥結を急いだ。このような動きに対し、北海道や東北各県などで地域段階の農協組織との「一点共闘」が前進し、各地方組織が重要な役割を発揮した。
 消費税増税や社会保障改悪などのくらし破壊に反対するたたかいでは、2014年4月1日からの消費税税率引き上げを前に、春闘山場のたたかいとも連携させた「国民総行動」を3月13日に、全商連、新日本婦人の会など6団体で呼びかけ、共同の取り組みを前進させた。
 また、年金者組合が2013年10月からの年金給付引き下げに対して取り組んだ不服審査請求運動では、組織人員を超える12万人超が申し立てを行う取り組みとなった。
 2014年4月24日に取り組まれた医療・介護制度の改悪に反対する「ヒューマンチェーン」では、5,000人が国会を包囲する取り組みとして成功するなど、くらし守れ、いのち守れの共同も前進し始めた。
 このような運動の広がりが安倍政権の暴走政治に一定のブレーキをかけ、思い通りに進めせない状況をつくりだすと同時に、声をあげ、行動を起こす市民、団体を広げる状況になっている。

 (3)安倍政権は、2013年秋の臨時国会に特定秘密保護法など「戦争する国」づくり法案を提出した。日米安保体制の強化を目的とするこれらの法案は、同様の目的をもつ沖縄名護市・辺野古沖への米軍基地建設や自衛隊装備の強化とも結びつき、集団的自衛権行使を可能にする改憲策動とも一体のものであった。
 「戦争する国」づくりの一環である特定秘密保護法の廃案のたたかいは、法案提出後から一気に盛り上がり、臨時国会最終盤には中央、地方で大規模な宣伝やデモ行進などが集中的に取り組まれた。たたかいの高揚は成立後の撤廃のたたかいに引き継がれ、さらには集団的自衛権行使容認の解釈改憲反対の共闘、解釈、立法、明文改憲を許さず憲法がいきる社会をめざす共同へと発展した。
 2014年5月30日には、憲法改悪反対共同センターを発展・改組する「戦争する国づくりストップ! 憲法を守り・いかす共同センター」(略称:憲法共同センター)の結成総会が開催され、たたかいの中軸を担う体制整備も進んだ。

4、「賃上げで内需拡大」の世論を高め成果を勝ちとり始めた
 (1)安倍政権は、経済政策重視の姿勢を国民的にアピールする意味もあって2013年春闘時に、財界に対し「従業員の報酬引き上げ」を要望した。
 また、最低賃金についても、2013年7月の中央最低賃金審議会への諮問の際、厚生労働大臣が「持続的な経済成長に向けてすべての所得層で成長の好循環を実現するという趣旨にそった引き上げ」を要請した。
 なお、2013年5月17日には国連の委員会(経済的、社会的及び文化的権利に関する委員会)は、同一労働同一賃金原則の徹底などとともに最低賃金についても「労働者およびその家族が人間にふさわしい生活をおくれることを確保する目的で、最低賃金水準を決定する際に考慮される要素を見直す」よう求める勧告を行った。
 政府は、2013年3月と2014年2月に、建設工事発注時の設計労務単価を引き上げた。

 (2)2014年春闘は、このような流れの上に、政府がデフレ不況克服の課題として「賃上げ」を位置づけ、「政労使協議」などの場で大企業に「ベア」実施を繰り返し迫るもとでのたたかいとなった。
 このこともあり、大企業労組がベア要求を掲げ、経団連も「ベア」容認姿勢を示す状況となった。このような変化に加え、2014年4月には消費税増税が予定され、円安による物価上昇が顕在化するなど、2014年は「インフレ下での春闘」の側面も強まった。
 2014年春闘の到達点はたたかいの総括で詳述するが、財界が否定し続けてきた「賃金水準の社会横断化」をめざす春闘の意義が再確認できる結果となったと言える。経済産業省の調査では大企業927社のうち46.7%がベースアップを実施し、そのうちの7割が「6年以上ぶり」にベースアップを実施したことを明らかにしている。
 労働組合のたたかいが集中する春闘でも変化が生じ始めており、政府がインフレ政策を強めていることもふまえ、公務員賃金改善も含めてこの流れを加速させ、「ベースアップとすべての労働者の賃金底上げは当たり前」の状況をつくりだし、財界・大企業の賃上げ攻撃に反撃するたたかい強化が求められる状況となった。

 (3)「賃下げ特例法」にもとづき強行されていた国家公務員労働者の賃金カットは、2014年3月末の法の期限切れをもって撤廃された。
 2012年4月に強行実施され、政府が同様の措置を地方自治体や政府関連団体に繰り返し迫る状況は2013年度も続いていた。また、政府は、消費税増税への国民批判をそらす目的で、2014年4月以降の賃下げ継続の姿勢を見せていた。
 このようななか、地方段階では、道理のない賃下げ圧力に対する反発や地域経済への悪影響への懸念も住民の間に広がり、約4割の自治体が国準拠の賃下げ実施を見送る事態となった。
 また、国公労連などが労働基本権侵害の賃下げ強行の不当性を追及して提訴し、あるいはILOへの申し立てなどを行った。
 さらに、政府が民間企業に賃上げを迫る一方で、公務員労働者の賃下げを継続、強制することの不当性の追及を公務単産が強めてきた。
 そのようななかで、2013年11月に政府が「賃下げ措置の撤廃」を決定した。引き続き、人事院が給与制度改悪の動きを強めるなど、公務員賃金に対する攻撃は弱まってはいないが、公務労働者を中心に地域を巻き込んだたたかいで築いた到達点であることは確認する必要がある。

5、労働法制改悪反対の課題などで労働団体間の共同を前進させた
 (1)アベノミクスの中心課題とされた成長戦略は、「企業が世界で一番活動しやすい国」をめざす新自由主義構造改革であることが、いよいよ明白になってきた。
 とりわけ、8時間労働時間原則や正規雇用原則、合理的理由なき解雇の規制などの労働者保護制度を「岩盤規制」とし、この規制緩和に攻撃が集中した。
 民主党政権時に一定規制強化の方向に向かった労働者派遣法や有期雇用の無期転換など非正規労働者の雇用ルールの「見直し」が真っ先に標的にされた。派遣労働は一時的・臨時的な業務に限定するという原則を転換し常用雇用代替策として労働者供給事業、派遣労働を位置づける大改悪法案を2014年通常国会に提出されている。また、有期雇用の無期雇用への転換権行使の期間を専門職種では延長する労働契約法「改正」法案も提出した。
 2014年6月には「残業代ゼロ」(労働時間管理をしない労働者を拡大する労働時間制の改悪)制度や解雇の金銭解決制度の導入、限定正社員制度の普及、外国人労働者受け入れ拡大などを「成長戦略」の中心課題とする内容に、日本再興戦略を改定した。

 (2)これらの動きは、雇用政策を産業政策と位置づけ、最低労働条件を国が定めて安定、良質な雇用を確保、労働者のくらしを保障するという人権上の権利を企業のもうけの自由より低く位置づけるというイデオロギー攻撃も伴っている。
 見すごせないのは、ただ働き残業の強要やパワハラなどで労働者を酷使し、短期間で離職に追い込むブラック企業が蔓延し、過労死が後を絶たず、非正規労働者の増加が貧困と格差を拡大し続けていることへの政策対応を真剣におこなわないまま、労働者保護制度の改悪だけを政府が進みていることである。
 このような状況に危機感を高め、2014年10月には全労協、MICなどとともに、「雇用共同アクション」を立ち上げ、共同した行動と交渉に取り組んできた。労働者派遣法の大改悪に一方のナショナルセンター・連合も反対の姿勢を明確にしたこともあり、日弁連が呼びかけた集会にすべての労働団体が結集し、厚生労働省前の行動を「時間差」で行い、地方段階でも同様の取り組みが行われるなど、労働団体間の「共同」を前進させてきた。

 (3)労働者使いすての「ブラック企業」が社会的問題となり、人手不足や人材確保の背景に、非正規労働者の「正規化」や賃上げや労働条件改善に手をつける企業が出始めるなどの変化も起きだした。
 しかし、安倍政権は、労働者保護破壊の攻撃の手を緩めようとはせず、国際的な常識となっている政労使三者の協議による労働法制整備の仕組みすら投げすて、産業競争力会議など偏った構成の審議会で「上からの改悪」を押しつける動きをさらに強めている。これに対抗し、系列を越えた労働者、労働組合のさらなる共同の前進が課題となっている。

6、未組織、未加入労働者への接近を強め、組織の強化、拡大に力を注いだ
 (1)秋と春に、単産、地方組織が取り組みを集中させる「組織拡大月間」を設定し、地域や対象業種を特定した「総がかり作戦」に取り組んできた。また、全労連共済も活用した拡大運動でも一定の前進を達成してきた。
 介護・ヘルパー分野での「総がかり作戦」が26地方で具体化され、いわて労連で全労連共済を活用した組織拡大に成功するという典型例も作り出してきた。既存組織での拡大運動も強められてきている。2012年度には8万8,000人を、2013年度それをさらに上回る組織拡大を達成した。しかし、拡大を上回る退職者やリストラ「合理化」などによる人員減があり、残念ながら純増に転ずることはできなかった。

 (2)先述した「一点共闘」の前進、発展があり多くの教訓は生まれているものの、それを組合員拡大に結びつける「要求運動と組織拡大運動の一体的前進」を達成するには、なお課題を残している。
 全労連運動を継承する活動家が減少し、「当たり前の組合活動」さえ困難な職場が増えている現状にも目を向ければ、組織拡大と既存組織の強化の取り組みは待ったなしの状況にある。
 全労連運動を継承し、既存組織での拡大運動をさらに強めるとともに、2013年10月に開催した「地域の運動と組織の強化をめざす全国交流集会」の到達点もいかして、地方を主戦場に、単産と地方組織が力をあわせて要求闘争と組織拡大運動を一体的に取り組む状況をさらに前進させることが求められている。

第2章 とくに重視する情勢等

1、世界では、一握りの大企業が富を独占する経済への批判が広がり、規制強化の方向に向いている時、日本は逆の政策を強めている
 (1)リーマンショック後の金融危機が財政危機に連鎖し、国民生活に激しい痛みを押しつける状況が世界に広がり、内需中心の循環型経済を求める声と運動は政界に広がっている。
 ILOが、2014年総会に向けて出した討議文書(持続的な回復と発展のための雇用政策)では、2011年以降、EUでの公的債務危機とその後の財政再建策及びその影響を受けた新興国の停滞などで、世界経済は減速状況にあるとしている。そして、他国の富をとりこむ外需依存をやめ、内需主導の経済運用を求め、雇用の確保をその最大課題だと指摘した。
 ヨーロッパ各国では、多くの労働者が社会保障改悪など国民に痛みを強制する政策に抗議し、たたかいに継続的に立ちあがっている。

 (2)多国籍企業の活動規制を求める動きは強まっている。
 世界の人口の20%弱にあたる12億人が1日・1.25ドル以下でくらす貧困状態にあること、リーマンショック後の3年間でそれ以前の12年間を超す勢いで格差が拡大し、富の偏在が強まったことを世界銀行やOECDの調査が明らかにしている。このような貧困と格差の拡大が、アフリカや中東、東欧などの地域紛争の要因であるとの認識が共有され始めた。
 ローマ法王が「市場と金融の暴走に対し人間の暮らしを守る立場からの規制強化を求める『使徒的勧告』」(2013年11月)を行うという事態も起きた。G20の場では、法人税引き下げ競争の中止や、タックスヘイブンを利用した企業の課税逃れに対する措置が検討され始めている。
 低賃金労働を求め「最適地生産」に血道をあげる多国籍企業が、労働者の権利や安全に無関心なことに対する批判が高まり、ユニクロなど世界の衣料品メーカーが法的拘束力をもつ「バングラディッシュでの防災、安全協定」に調印する動きとなった。
 ネッスル日本での争議解決の大きな契機となったOECDの「多国籍企業行動指針」の活用例も世界に広がっている。

 (3)広がる貧困と格差の拡大をくい止めるため、政府が直接的な施策を実施する国も増えている。
 アメリカのオバマ政権は、最低賃金の引き上げ(時間当たり10.10ドル)を当面の重点政策目標に掲げた。
 インドネシア、マレーシアなどの東南アジア各国でも最低賃金の引き上げを求める労働者のたたかいが前進し続けている。
 社会体制の異なる中国でも2015年までの最低賃金引き上げが決定され、ベトナムでも格差是正のために最低賃金の引き上げが行われた。
 法定最低賃金制度をもたなかったドイツでも2015年の制度導入が決定された。イギリスでは、2014年10月からの最低賃金引き上げをインフレ率以上で実施して実質賃金の水準確保がめざされている。
 これらの動きも、多国籍企業による富の収奪を規制する動きの一つに他ならない。

 (4)このような世界の動きと対比しても、世界からの投機を呼び込むためだとして雇用規制や労働時間規制の緩和を進め、法人税率引き下げを公言する安倍政権の成長戦略は異質である。
 大企業に「ベア実施」を強く迫った安倍政権だが、最低賃金改定には積極的な動きを示していない。それどころか、「労働時間を反映させる賃金から成果業績反映の賃金」への変更を加速させる労働法制の検討を指示するなど、「すべての労働者の賃金改善」を政策課題に位置づけようとはしていない。破綻している「トリクルダウン」論を喧伝し、株価頼みの「アベノミクス」への期待を煽り続けている。
 消費税率引き上げの直後に、法人税率の大幅引き下げを決定する動きを強め、「アジアの成長をとりこむ」という経済面での膨張主義に立ってTPP交渉早期妥結の旗を振り、武器輸出を解禁する閣議決定を行い、原発輸出のトップセールスを繰り返すなど、なりふりかまわぬ姿勢で財界・大企業の要望を具体化する施策を強行し続けている。
 「アベノミクス」が世界の動きとは異質であることを徹底して暴露し、広がった「賃上げこそ内需拡大のカギ」の世論にも依拠し、「大企業(供給サイド)優先の政策から労働者・国民(需給サイド)のくらし優先の政策」への転換を求めるたたかいを大きな柱に、貧困と格差の是正を求める国民的運動の先頭に労働組合が立つことが強く求められている。

2、 外交努力による紛争解決への期待を高める世界の動きと安倍政権の異質さは明白である
 (1)国際社会の批判が高まるなか、ロシアがウクライナ・クリミアを併合したことや、ベトナムと中国の南シナ海の西沙諸島の領有をめぐる紛争が激化するなど、局地的には軍事力を背景にした衝突は絶えていない。
 また、シリアなどの中東や中央アフリカなどで、宗教的対立も背景とする内戦も多発している。核兵器開発に固執し「瀬戸際外交」を繰り返す北朝鮮の存在が、東北アジアの緊張を高めている。
 しかし、このような状況のもとでも同時に、紛争を局地的なものに留め、大国が全面的に対立する事態を避け、対話による解決をめざす動きが強まっているのが世界動きである。

 (2)2013年秋に、アメリカなどが行おうとしたシリアへの軍事介入が国際世論によって阻止され、国連の外交的解決を求める決議が全会一致で採択されるという画期的な事態が起きた。
 アジア地域でも、東南アジア友好協力条約(TAC)、ASEAN地域フォーラム(ARF)、東南アジアサミット(EAS)、東南アジア非核地帯条約、南シナ海行動宣言(DOC)など平和と安全保障にかかわる枠組みが重層的に作り上げられている。インド・太平洋友好条約を提案しているインドネシア・ユドヨノ大統領の動きなど、さらなる平和協力を模索する動きも強まっている。

 (3)2015年NPT再検討会議も視野に、核兵器の速やかな廃棄を求める世論と運動も強まってきた。
 2013年の国連総会では、核兵器を禁止し廃絶するための包括的な条約についての交渉開始が決議された。また10月には、「いかなる状況の下でも」核兵器の使用に反対し、廃絶を求める「声明」が125カ国の連名で発表された。被爆者を先頭に、繰り返しのアピール署名などを通じて日本の核兵器廃絶運動が訴え続けてきた立場が国際的なものとなり、「核兵器のない世界」に向けて着実に動き出していることを示す動きである。

 (4)このようななかで、日米軍事同盟の強化や「武力による安全保障」に固執し続け、歴史問題で近隣国との緊張を高め続けている日本の安倍政権の異質さは際立っている。
 5月15日には、自らの主張に賛同する学者などを集めた私的諮問機関(「安保法制懇」)の報告を受け、集団的自衛権行使を口実に、日本が直接攻撃を受けていない場合でも他国で武力を行使する「事例」検討を打ち出し、「紛争解決のための武力行使」は行わないと宣言する憲法を解釈変更で蹂躙する姿勢を露骨に示した。
 このような安倍首相の姿勢は、過去の侵略戦争への反省を欠くだけでなく、対話と外交努力で紛争を未然に防止し、国家による武力行使の回避に努力する戦後の国際秩序にも反している。ナショナリズムを煽る政治の危険性告発とあわせ、平和を求め戦争反対の声をあげる世界の流れに呼応したたたかいが求められている。

3、対米従属・大企業奉仕の政治と国民との矛盾はいっそう激化している
 (1)安倍政権の「二つの暴走(戦争ができる国づくりと異常なまでの大企業中心社会への暴走)」が、日本社会のさまざまな矛盾を拡大する一方で、「暴走政治ストップ」の国民共同を前進させる条件を高めている。
 日米安保体制強化を口実に、集団的自衛権行使容認を憲法解釈変更で行おうとしているだけでなく、大企業のもうけのためなら手段を選ばない「利益至上、経済至上」の政治をさらに強めている。
 重視されている教育再生も、「愛国心教育」や「教育勅語」の賛美にも見られるように国家主義的な背景をもち、「戦争する国民」、「企業のための人材育成」の色合いを強くもって進められている。
 (2)安倍政権が、憲法改正のための国民投票法の改正強行、改憲政党のとりこみ、自民党改憲草案「説明会」の全国開催など、現行憲法の全面改定に突き進む動きも同時に強めていることも見逃せない。
 日米安保体制強化と権益確保も目的にした日本の軍事大国化という「二つのねらい」をもって安倍政権の改憲策動を強めていることが、国内外の矛盾をいっそう深刻にしている。
 安倍首相など閣僚の相次ぐ靖国参拝や専守防衛を逸脱する自衛隊装備の強化を打ち出した新防衛大綱、慰安婦問題にかかわる「河野談話」や侵略戦争への謝罪を明確に述べた「村山談話」の見直しなど、表面化する極右的、国家主義的な動きは「軍国主義の復活」、「富国強兵政策」との批判を内外に広げている。
 安倍首相の政治姿勢もあって、ヘイト・スピーチの強まりや「ネット右翼」と言われる動きがさらに顕在化し、青年に一定の影響を与えていることも軽視できない。
 しかし、そのような極右的な動きに反対する国民世論と運動の根強さもあることから、ここに依拠して、憲法と民主主義を守るため取り組みを強めることの重要性は高まっている。

 (3)大企業優遇の一方での庶民切りすての政治への批判と運動も広がっている。
 大企業の巨額な内部留保の蓄積には、政治からも取り崩しを求める声が上がり始めている。
 生活保護改悪や年金給付引き下げに対する激しい批判や、労働者保護法制の改悪に反対する労働組合間の共同前進などにも示されるように、貧困と格差の拡大に反対し、憲法にもとづく国の責任履行を求める運動として前進する状況にある。
 福島原発事故が収束する目途も立たないなかで、目先の経済コストにこだわり、原発利益共同体の利益確保にあからさまな姿勢を示す動きに対し、原発ゼロの日本をめざす国民運動が草の根で広がり続けている。福島県内の大多数の自治体が「県内の全原発廃炉」を求め、原発事故の早期収束と全面賠償を国と東電に迫っている。
 3年を経過してもなお避難生活者が25万人(2014年5月末)を超え、被災地の復興が遅々としている。にもかかわらす、大型公共事業をばらまく国土強靭化政策やオリンピック開催のための投資を東京に集中させて景気浮揚をはかろうとする安倍政権の政策が復興の足かせとなる状況も生まれ始め、批判と運動が高まっている。
 TPP参加反対など、アメリカ型の経済ルールの押しつけに反対する国民共同の広がりのなかで、明確な反対姿勢を貫く全労連・県労連への期待が地域から高まっている。
 政府が執拗にねらう法人税率引き下げについて、消費税増税などで国民には負担を迫り、外形票重課税の強化で中小零細企業に負担を押しつける一方で、「アベノミクス」の効果を最大限享受している大企業が、優遇税制を温存したまま減税の恩恵を受けることへの批判は日増しに強まり、消費税率引き上げの撤回を求める運動もねばり強く取り組まれている。
 貧困と格差を放置したまま、生涯派遣労働・正社員ゼロ法案を国会に提出し、残業代ゼロ法案の準備を進める政権に対し、すべての労働団体が反対の運動を強め、学者、法曹界からの非難の声は日増しに高まっている。
 これらのことにも明らかなように、「世界で一番企業が活動しやすい国」づくりを進める「成長戦略」に反対し、政策変更を求める国民運動の条件が高まってきた。

 (4)無党派層の広がりにも象徴されるように、利権と公共投資のばらまきで諸矛盾を覆い隠し、業界団体への利益供与と締めつけで政治的安定を維持しようとする旧来の自民党型政治が限界に達しつつある。
 このこともあって安倍政権は、過激な右翼的主張を繰り返す「靖国派」の支持を背景にした政治を行わざるを得ない状況にある。そのことがさらに国民との矛盾を高め、保守層の離反を招くという状況が繰り返されており、これまで以上の共同の条件が生まれている。
 国民世論の反撃と諸階層との矛盾の激化を安倍政権は、大型公共事業のばらまきや日銀の金融緩和政策などの「アベノミクス」によって目先の経済指標を「改善」し、政治献金の再開を表明した経団連など財界の支持を得ることで乗り切ろうとしている。
 しかし、「アベノミクス」は国家財政のさらなる悪化、破たんやバブル経済の再来などの危険性を内在している。

 (5)消費税増税や社会保障大改悪など、これまでの政権ができなかった国民いじめの悪政を「数の力」で押し通そうとする「強権政治」への反撃の運動が急がれている。
 消費税率が8%に引き上げられた4月の全国消費者物価が前年同月比で約3.4%も上昇したことにも示されるように、「アベノミクスの毒」も表面化し始めている。それを覆い隠すために安倍政権は、年金積立金による株価維持策や2014年度の国事業の前半期前倒し発注、国家戦略特区も利用した都市部への投資促進など、矢継ぎ早に経済対策を繰り出している。このこともあって、安倍内閣の支持率が大きく低下する状況には至っていない。
 「アベノミクス」の失敗と国民いじめの実態を明らかにし、高まっている「成長戦略」への批判を総結集し、世論と運動が政治を変える要にあることを徹底して訴え、反撃のたたかいを組織して国民的な運動に発展させることは、次の2年間の重要な運動課題である。

 (6)全労連はこれまでも、巨額な内部留保蓄積状況や優遇税制の存在など、大企業の横暴とそれを支える政治のゆがみを追及し続けてきた。国民生活より大企業の経済活動を重視する政治に矛盾を追及し続けたことがこの数年間の国民的な運動、共同の前進に寄与している。大企業の富の異常な蓄積は、いまの日本社会の中心的な矛盾でもある。
 また、新自由主義構造改革の矛盾が地域に集中していることは、現在の政策が続けば、2040年には全国で896の自治体が子どもを産む年齢層の女性が5割を切る「消滅可能性都市」であるとの民間シンクタンクの推計でも明らかになっている。地域からの新自由主義構造改革への反撃は、たたかいを大きく前進させるうえでの中心の位置にある。
 地域を主舞台に、単産と地方組織、職場と地域が力をあわせ、労働者・国民課題での運動の全国化に責任を発揮するという全労連運動の特性発揮への期待は、いよいよ高まっている。

4、 悪化する労働者の状態に歯止めを打ち、追い打ちをかける「安倍雇用改革」への反撃が急がれる
 (1)政府の統計などから明らかになる労働者の雇用、くらしは、改善の方向には向かわず厳しさが増している。
 2013年も労働者の平均賃金が低下し続けた。毎月勤労統計調査によれば、2013年度の所定内賃金は前年度比マイナス0.5%で、2008年から6年度連続のマイナスとなった。産業的にも人材不足が指摘される運輸や不動産などを除き軒並みマイナスとなっている。
 2014年4月の全国消費者物価は、3月に比べて2.1%、前年同月比で3.4%もの上昇となった。消費税増税による影響で、1%にも満たない賃金改善が消し飛ぶ内容である。
 物価が上昇するが賃金改善がそれに追いつかない状態が生活をさらに厳しくしている。
 なお、総実労働時間は、前年度比で0.2%の減少にとどまり労働時間短縮は進んでいない。

 (2)2013年2月以降、16カ月間連続して就業者は増加している。その一方で、完全失業者の減は続いており、2014年4月の完全失業者数は254万人(3.6%)となった。
 雇用は増えているが、その内容は正規労働者が減少し、非正規労働者が増加する状況は続いている。2014年4月時点では、対前年同月に比べて正規労働者は40万人減少し、非正規労働者は57万人増加した。パート、アルバイト、派遣労働者、契約社員のいずれもが増加している。2013年4月から高年齢者雇用安定法が改正施行され、定年後の継続雇用が義務化されたことの影響もあるが、雇用の流動化を「成長戦略」に位置づける「アベノミクス」がより強く影響している。
 女性や高齢者を「安価な労働力」と位置づけ、労働市場に引き出す政策が強められるなかでも、均等待遇実現や家族的責任と仕事との両立をはかる制度整備はほとんど進んでおらず、矛盾をさらに激化させている。

 (3)2013年9月に厚生労働省が行った「ブラック企業調査」では、違法が疑われた5,111社のうち82%に相当する4,189社で違法行為が横行し、低賃金でただ働きを強制し、労働者を使いすてる企業が「一般化」している実態が明らかにされた。
 OECDが発表した対日経済審査報告書では、日本は相対的貧困率が「OECD加盟国中第2位になった」ことを明らかにした。中間層が解体され、「1億総中流社会」と言われた日本の状況は、貧困と格差が蔓延する社会に変貌している。
 貯蓄など金融資産を保有していない世帯が大幅に増加し、2012年には調査世帯の31.0%が無資産世帯となったことが明らかにされた。前年と比較して5.0%も大幅に増加した。

 (4)安倍政権の施策は、以上のような労働者、国民の状態悪化や地域経済の疲弊状況といった現実に対応したものとはなっていない。
 政府が進める成長戦略では、大企業や資産家、大都市向けの施策を集中させることで、事態をさらに悪化させる危険性が高い。
 とくに、日本を「世界で一番企業が活動しやすい国」にすることをめざす「成長戦略」で、労働法制の大改悪が中心に位置づけられ、急速に進められていることは大きな問題である。
 産業競争力会議や規制改革会議などで、労働者代表を排除して労働者保護法制の改悪を論議し、厚生労働省などにその具体化を押しつける進め方も含め、手法も内容も民主主義を否定するものとなっている。
 また、国家戦略特区を活用した雇用特区などは、全国一律の最低労働基準を法制度で定めるとした憲法第27条に抵触するものである。
 以上のような労働法制改悪のなかで強調される労使自治原則は、憲法第28条の基本的人権としての労働基本権を前提にしたものではなく、「契約自由の原則」に根をおくものであり、個別の労使関係のみを重視する雇用関係への動きをさらに加速させるものである。

 (5)このような全面的な攻撃が強まっているにもかかわらず、労働組合間の共同は前進せず、組織率の改善も進まず、反撃のたたかいを十分に組織し得ない弱点が露呈していることとは、率直に向きあわなければならない。
 これを克服するためにも、(1)労働運動の潮流を越えた労働組合間の共同の追求、(2)労働者使いすて状況、労働者の貧困化を放置し続ける状況を可視化する取り組み、(3)市民運動や学者、法律家などとの連携をさらに模索し、安倍政権による労働法制改悪反対の国民運動を組織していくことは、次の2年間の大きな課題となっている。

5、国内の経済状況は構造的に悪化し続けている
 (1)2012年、2013年と日本のGDP(国内総生産)は改善しているが、それは2011年東日本大震災前の水準に回復した段階で、リーマンショック以前の水準には回復していない。GDP改善の主要因は公共投資の増加にあり、民間需要、外需とも好転しないなかで財政頼みの状況となっている。
 2011年以降、日本の貿易収支は赤字構造となっており、2013年は13.7兆円の赤字となった。政府の施策で円安誘導が行われた以降も輸出数量は増加せず、逆に通信機器や電化製品、原材料、燃料などの輸入価格が高騰し赤字幅を広げている。一方で、海外子会社や証券投資からの配当・利子収入は横ばいであり、「モノづくりより投資」という企業行動が日本の経常収支を悪化させる状況になってきた。
 民間シンクタンクの調査では、2012年7月時点で、日本企業の海外現地法人数は2万5,000社を超え、そこでの従業員数は523万人にのぼっている。内閣府の調査では、日本のメーカーの生産額に占める海外比率は2012年度で20.6%に達し、年々増加している。
 このような構造変化が、たとえば2001年から2012年の間に国内の製造業の事業所が67万カ所も減少するなどのリストラを加速させているだけでなく、貿易赤字の要因ともなっていることが次第に明らかになってきた。

 (2)異次元の金融緩和の影響もあって、2013年には株価の上昇が続いたが、2014年に入り漸減状態で推移している。政府は、年金積立金の株式市場での運用を増やすことで「官邸発の株価維持」を行うなど、なりふりかまわぬ対応を行っている。
 リーマンショック以降、金融危機回避や景気対策のために、政府は国債発行額を急増させている。安倍政権は、国土強靭化なども口実に40兆円規模の国債発行を継続し続けている。財政悪化の原因を社会保障費の増加に転嫁しつつ、法人税減税などによる税収減を「借金」でまかない、それを日銀に買いとらせるという危険な財政運営が続いている。2014年5月には、国債や短期借入金など「国の借金」の合計は1,024兆円を突破している。
 地方財政の悪化も続いており、財政赤字が国民生活に重くのしかかり始めている。
 2000年代に入り、低賃金・不安定雇用が拡大し、税・社会保障改悪による国民への負担転嫁がいっそう強まるもとで、家計の貯蓄率、資産の低下も続いている。
経常収支、財政、家計の「三つ子の赤字」が懸念される日本経済状況に対し、安倍政権の経済政策は常軌を逸している。
 以上のような経済、財政状況の構造的な問題点の解決は、雇用を守り、地域経済の疲弊に歯止めを打ち、内需主導の循環型経済をめざす上での中心的課題であり、その点に確信をもったたたかいをさらに強めることが重要になっている。

第3章 2年間の運動の基本方向

1、「三つの課題」、「三つの取り組み」を柱にたたかいを進める
 日本社会を戦前の状態に引き戻しかねない「戦争する国」への暴走、「世界で一番企業が活動しやすい国」への暴走、この二つの暴走政治と対決するたたかいを前進させることなくして、切実な要求実現の展望は切り開かれないことが明白になっている。同時に、この暴走を許せば、次の世代にも多大な悪影響を及ぼすことにもなりかねない。
 この情勢認識のもと、(1)直面する闘争課題である労働法制改悪反対、社会保障改悪反対闘争と結んだ「全労連大運動」の継続、(2)「かがやけ憲法署名」を軸とする憲法闘争の強化と国民共同の追求、(3)要求闘争と一体で、組織拡大「中期計画」の目標達成(150万全労連)へのたしかな道筋をつける組織拡大運動、の3点を次の2年間の基本の運動課題に位置づける。
 取り組みでは、この間のたたかいの到達点、教訓を引き継ぎ、(1)安倍内閣の改憲暴走とのたたかいでの国民共闘、(2)労働者保護制度の改悪に反対する労働者の共同と国民運動の発展、(3)労働者の国際連帯、国連機関などでの対話を重視し、多国籍企業の行動規制強化を求める国際的な運動とも連携した国内運動、の3点を重視し具体化を進める。

2、「全労連大運動」の中心課題として労働者保護法制の大改悪、社会保障制度解体攻撃に反対する署名や宣伝行動、議会要請や団体要請行動などを統一行動として具体化する
 第26回大会で提起した「安全・安心社会をめざす大運動(全労連大運動)は、労働者・国民のくらしを危機に追い込んでいる大企業中心、経済効率重視の日本社会から、働いて人間らしくくらせる社会への転換をめざすものである。
 2年間の取り組みでは、「安倍雇用改革」や「税と社会保障一体改革」に反対する国民的運動を大きく広げ、憲法と国際労働基準に依拠した「安定した良質な雇用と社会保障を中心におく日本」をめざす世論を高めていくことを重視する。
 そのことから、「全労連大運動」の2年間の名称を「憲法をいかし、安全・安心社会をめざす大運動(サブタイトル:強権国家ではなく、働く人々と地域社会が元気な日本にかえよう)」とし、秋闘、春闘期の取り組み重点課題を明らかにし、運動の具体化と継続をはかる。
 労働組合や民主団体、事業者団体、経済団体、自治体などとの「対話と懇談」を中心的な取り組みに位置づけ、「安全・安心社会をめざす懇談・対話」運動を進める。
 単産、地方組織、全労連、それぞれが「懇談・対話」の目標を設定し、繰り返しの取り組みを通じて、雇用の安定と社会保障の充実を進める共同の前進、強化につなげる。2014年度の取り組みでは、各組織で積極的な目標を確認し、全体で1万団体以上との「懇談・対話」をめざす。
 署名や行動を通じ、青年・非正規労働者など困難な状態に追いやられている労働者との「対話と懇談」を運動の中心的課題におき、労働組合への参加を呼びかける接点を作り出す。
 また、制度改悪を職場にもちこませないたたかいを強めるためにも、「対話と懇談」への組合員の参加組織を重視する。

3、憲法闘争の強化では、初年度の署名到達状況の上に、2016年7月の第28回大会までに500万筆(組合員1人5筆)の達成をめざす
 解釈、立法、明文改憲の動きが急速に強まり、立憲主義を蹂躙する強引な手法での憲法空洞化の攻撃も激しくなっている。攻撃が全面的であると同時に、「この国のかたち」を大本から変える「クーデター的暴挙」であることの意思統一を深め、憲法を守りいかす取り組みが、労働者・国民の権利侵害、攻撃をくいとめるたたかいであることを繰り返し意思統一する。
 すべての組合員が行動に参加する状況を作り出すことを目標に取り組みを進める。

 2015年の評議員会を目途に、組合員と家族の署名を完全集約し、全労連未加盟の労働組合や団体訪問を通じて「戦争する国」づくり反対の一点共闘を広げ、署名への協力を要請し、300万筆の署名集約をめざす。
 「憲法共同センター」(戦争する国づくりストップ! 憲法を守り・いかす共同センター)での共同を強めて地域訪問や街頭署名活動を継続し、2016年7月大会までに500万筆を達成する。
 「憲法学習」を職場、地域の段階で具体化し、たたかいの重要性についての意思統一をはかる。
 毎月9日を、「かがやけ憲法署名」全国一斉行動日とし、全国すべての職場、地域での行動の具体化をめざす。
 全国的に行動を強めることも目的に、団体、自治体要請行動を中心におく「かがやけ憲法キャラバン2014」を2014年10月中旬から12月初旬にかけ、ブロック毎の行動を全国連鎖の取り組みとしてつなぐ方式で具体化する。
 以上のような取り組みを効果的に進めるための「闘争本部」を設置する。

4、「組織拡大中期計画」を補強し、150万全労連へのたしかな道筋を切り拓く2年間の取り組みを進める
 組織拡大運動を運動の中心課題に位置づける組織が増え、成果も出始めてはいるが、なお減少をくいとめるまでには至っていない。そのことをふまえ、増勢に転じる目的をもって、2年間の取り組みを進める。
 組織拡大のための特別会費などを活用し、業種、地域を特定し単産、地方組織が一体で取り組む「総がかり作戦」で組織拡大運動の典型づくりを進める。
 労働相談活動からの組織化を加速させるため、オルグ養成講座などでの実践例の交流を強める。
 「地域の運動と組織の交流集会」(2013年10月)の成果をいかし、地域の組織運動での単産と地方組織の共同の取り組みをさらに強める。
 通信教育制度と集合教育を組みあわせた「全労連・初級教育制度」を2015年4月からスタートさせる。最初の年の受講生目標を2,000名に設定し、すべての単産、地方組織が参加する組合員教育制度としての発展、定着をめざす。
 全労連共済を活用した組織拡大運動の実践、典型づくりを進める。

第4章 統一して取り組む重点課題と運動

1、解雇、失業に反対し、雇用の安定をめざす
 (1)労働者の使いすて状態が貧困と格差を深刻化させ、社会不安を高めているにもかかわらず、安倍政権のもとで労働者保護法制の全面的な改悪が行われようとしている。
 大企業の多国籍化が進むもとでより事態が深刻化し、企業の攻撃が乱暴になっていることを強く意識し、「大企業のもうけより労働者の雇用とくらしの安定」という世論作りの重要性を再確認してたたかいを進める。

 (2)具体的には、「全労連大運動」を軸に、「雇用共同アクション」での共同を深化させつつ、「安倍雇用改革阻止」の一大国民運動への発展めざし、統一闘争を強める。
 「期間の定めのない直接雇用が当たり前」、「8時間労働制を壊すな」、「解雇自由社会は許さない」などの世論形成のためのキャンペーン運動を強める。
 ブラック企業の実態告発、雇用劣化の実態や労働者の貧困化の可視化に取り組む。
 政府が労働法制改悪を強行しようとするなどの重要な時期には、全国的に大規模な統一行動が組織できるよう学習、教育を強化する。
 東日本大震災被災地での雇用創出、雇用安定の取り組みを全国課題に位置づけ、「総がかりの取り組み」の具体化を検討する。
 青年層への不安定雇用の広がり、就職難の状況などをふまえ「若者にまともな雇用を」運動(アクション)に取り組む。
 非正規労働者の正規化、不安定雇用の解消を求め、制度改善と制度活用の取り組みを強める。

 (3)大規模事業所撤退時の雇用対策策定などの規制強化、ファンド規制強化などを「地域経済守れ」の運動課題に位置づけ、政策提起や先行事例での取り組み、自治体要請などを強める。
 大企業による一方的な単価引き下げや、仕事のとりあげなどの下請けいじめを許さない世論喚起の取り組みを進め、中小零細企業事業者との一致点での共同を模索する。
 中小企業憲章や中小企業振興条例の制定をめざす取り組みへの支援・共同を強める。

 (4)失業時の「セーフティネット」再生・強化、反失業・職よこせ運動の具体化をめざし、要求政策づくりを強める。
 署名やハローワーク前アンケート活動などに取り組み、地域での雇用の場づくりの運動との連携を模索する。

 (5)公務員労働者の労働基本権確立をはじめ、働くものの「労働権」確立に向けた取り組みを強める。労働組合を敵視した不当労働行為を煽動する「ユニオンバスター」とのたたかいを全体課題に位置づけ、取り組みを強める。
 リストラ「合理化」による権利侵害を許さず、すべての解雇争議の勝利解決をめざす。
 安価な労働力としての外国人労働者の活用を許さず、雇用の安定、権利擁護の取り組みを強化する。
 労働委員会民主化の取り組みを強める。また、最低賃金審議会をはじめとする「三者構成審議会」などでの労働者代表の公正任命を求めて取り組む。

2、賃金、労働時間改善など良質な雇用の実現をめざす
 (1)「すべての労働者の賃金改善こそ内需拡大」の世論づくりをさらに継続し、横並びの賃金改善の場としての春闘の活性化をめざす。
 「ベアにこだわった賃金交渉、すべての労働者の賃金底上げにこだわった賃金交渉」の強化、地域段階での相互支援の再強化を呼びかける。
 春闘の統一闘争を強化し、回答水準の引き上げをめざす。要求組織では、改めて要求アンケート活動を位置づけ、取り組みを強める。
 公務員賃金への不当な攻撃を許さず、反撃のたたかいを共同して進める。
 ジェンダー平等に立脚した同一労働同一賃金原則を確立する制度実現、男女や雇用形態などによる賃金格差の解消、非正規労働者の賃金底上げでの単産、地方・地域での取り組みを強化する。
 最低生計費調査も活用し、めざす賃金・所得について、要求政策の整理・とりまとめを単産の協力を得て進める。
 成果主義賃金や能力給の導入、強化に反対する取り組みを強める。

 (2)「全国一律最低賃金・時給1,000円実現の運動」を強める。
 地域間の賃金格差の縮小、是正の取り組みの中心課題として地域最低賃金の底上げ、格差是正を位置づけて取り組みを強める。
 最低賃金引き上げの取り組みと一体で、中小企業への助成金実現や下請け2法の厳正執行による大企業の下請けいじめ防止の取り組みを本格化させる。中小企業訪問活動を全国運動として位置づけて具体化する。
 農産物の価格保障、農家への補償実現の運動と最低賃金闘争との連携を重視する。
 最低賃金闘争の全国的な強化をめざす運動交流会などを開催する。

 (3)公契約運動を全組織の力を結集して発展させる。
 法・条例の実現をめざす対政府・自治体への取り組みを進める。単産、地方組織とも協議のうえ、「要求実現重点自治体」を設定するなど、運動の全国化をはかる。
 公契約法制定の取り組みの具体化を検討する。

 (4)労働時間短縮の取り組みを強める。
 労働時間規制の緩和に断固反対し、「8時間労働原則」の堅持、ただ働き残業根絶のキャンペーン運動に取り組む。
 労働時間短縮に向けた課題(次の労働開始までの休憩時間、日・週・月・年単位の残業上限規制、休暇計画取得など)での協約締結闘争の強化に取り組む。
家族的責任を負う労働者の労働時間短縮、休暇・休業制度の整備などに取り組む。
 「いの健センター」との連携を強化し、労働環境の改善、過労死根絶、メンタルヘルス・パワハラ問題など労働安全衛生課題の取り組みを進める。
 「過労死等防止対策推進法」の活用、じん肺、アスベスト被害の解決を求めるたたかいなど労災根絶の取り組み支援を強める。

 (5)障害者、難病患者など就労上のハンディを背負う労働者の働き続ける権利の実現をめざす。

3、「社会保障・税一体改革」に反対し、くらしの基盤としての社会保障の拡充をめざす
 (1)「社会保障改革推進法」、「社会保障改革プログラム法」の強行実施、社会保障解体に反対し、全労連大運動の中心課題の一つに位置づけて反撃を強める。
 中央社会保障推進協議会規模での共同を軸に、社会保障制度解体に反対する国民共同の前進をめざす。引き続き社会保障闘争本部を設けて取り組みを進める。
 医療、介護制度の後退に反対し、国民皆保険制度の維持、国の責任による必要な医療・介護サービスの提供体制の整備を求めて取り組む。
 最低保障年金制度の確立、無年金者・低額年金者の解消など年金制度の抜本改善運動を進める。年金給付の引き下げ、支給開始年齢の引き上げ、マクロ経済スライドの強行実施などに反対する取り組みを強化する。
 「自己負担原則」の押しつけによる貧困と格差の深刻な実態を告発する取り組みを強める。とりわけ、「子どもの貧困と格差」の深刻さを重視し、すべての子どもへの教育を受ける権利の保障などの対策強化を求めて取り組む。

 (2)庶民増税、大企業優遇税制を温存したままの法人税減税に反対するなど不公正税制の是正を求める取り組みを強化する。
 巨額な国債発行が経済危機の際の金融資本や製造業大企業支援の結果であることを告発し、応能負担原則にもとづき大企業に応分の負担を求める「公正な税制」の実現の運動に取り組む。
 大企業優遇税制を温存し、中小企業への負担増と引き換えに進められる法人税率引き下げに反対して取り組む。
 2015年10月の消費税率10%への引き上げに反対し、消費税増税撤廃を求める取り組みを強める。
 生活費非課税の原則に立ち、低所得者の税負担軽減を求める立場から、課税限度額の引き上げと累進課税強化などを求めて取り組む。

4、改憲策動を許さず、核兵器廃絶、安保破棄をめざす取り組み
 (1)集団的自衛権行使容認の閣議決定を行う動きが強まり、改憲手続法改正によって明文改憲の危険性も高まるなど戦後最大の危機に直面している憲法を守りいかす取り組みを強める。
 「かがやけ憲法署名」の取り組みを軸に、すべての課題と結んで、憲法がいきる職場と地域の実現をめざす取り組みを展開する。
 「戦争する国」づくりに反対する人々、立憲主義擁護の立場で解釈改憲に反対する人々との広範な共同づくりに積極的な役割を発揮する。
 「戦争準備法」や「戦争する国」の人づくりを進める教育の反動化に反対し、取り組みを進める。
 「憲法改悪に反対」の一点での労働組合間の共同拡大を追求する。

 (2)「憲法共同センター」での共同を強め、全国的な統一闘争前進に役割を発揮する。
 職場、地域、分野から「九条の会」のアピールに応えた幅広い共同を広げる。
 全自治体をカバーする「憲法共同センター」の確立を追求する。節目ごとの学習会や宣伝行動を呼びかけるなど継続的な運動を進める。

 (3)在日米軍基地の再編と自衛隊の機能強化、「ガイドライン」再改定に反対する取り組みを強める。
 普天間基地無条件撤去を求め、辺野古沖基地建設に反対する沖縄県民のたたかいに連帯し、全国的なたたかいへの発展をめざす。
 日米安保条約破棄、在日米軍基地撤去の取り組みを強める。

 (4)2015年の核不拡散条約(NPT)再検討会議に向け、核のない世界をめざす国内・外の運動との連携をさらに強める。「核兵器廃絶署名」の目標(300万筆)達成をめざす。
 「6・9行動」や原水爆禁止世界大会、国民平和大行進、3・1ビキニデーなどの発展、継続に尽力する。
 海外の労働組合との交流や世界の労働組合に向けた非核兵器地帯条約の促進を訴えるアピールの発出、単産・地方組織の協力も得た「被爆写真集送付運動」などに取り組む。

5、国民諸階層との共同を強め、諸要求の実現をめざす
 (1)東日本大震災からの早期復興をめざし引き続き取り組みを強める。
 被災地訪問、支援活動を継続するととともに、早期復興に向けた国の施策などを求める被災地の要求に連帯した取り組みを全国課題に位置づけて取り組む。被災者生活支援法の改正を求め、署名活動などを全国課題に位置づけて取り組む。
 東京オリンピックや国土強靭化の名による大規模公共事業によって被災地の復興に影響を生じさせないよう、政府への要請行動を強める。

 (2)「原発ゼロ」をめざし、取り組みをさらに強化する。
 福島原発事故の原因の徹底究明と被害の全面補償、被ばく者対策の強化に取り組む。
 要求一致点での共同をさらに前進させる。原発再稼働を許さず、エネルギー政策を含め「原発ゼロの日本」の決断を政府に迫る国民運動と連帯する。
 福島原発事故に対する国と東京電力の責任追及を、被害者と連帯して強める。
 原発の再稼働に反対し、原発ゼロの決断を求める新たな署名行動に取り組む。

 (3)TPP参加に反対し、自由貿易拡大の口実で進められる投資や安全基準の緩和、医療や農業などの営利化に反対する取り組みを進める。
 医療・介護分野をはじめとする外国人労働者受け入れや、労働者保護制度の規制緩和に反対し、ILO基準によるディーセントワーク実現を関係国のナショナルセンターと連携して進める。
 TPPにもかかわってアメリカが要求している食の安全を危険にさらす動きへの反対運動を強化する。関税自由化などによる農業、地域産業つぶしを許さず、食料主権を守り自給率向上を求めてたたかいを進める。
 協同組合つぶしや保険法再改悪、混合診療の拡大など、大企業のもうけのために国民のくらしや安全をさしだす「規制改革」に反対する取り組みを強める。

 (4)公務・公共サービスのリストラ、民営化に反対する取り組みを強める。
 労働者派遣法改悪なども契機に強まることが想定される公務の外部委託などに反対する地域運動の強化をめざす。国民の安全・安心にかかわる業務での公務員の増員を求める取り組みを進める。
 地方分権改革や大都市構想など、中央集権、国民サービス切りすての統治機構改革に反対する共同の取り組みを広げる。

 (5)公害、地球温暖化対策と再生可能エネルギーへの転換を求め、諸団体との連携と共同を強める。
 2015年に開催が予定されるCOP21も視野に、地球温暖化ガスの削減を求める運動を強める。公害裁判早期解決の運動を支援する。
 水俣病の全員救済を求める取り組みやイレッサ薬害、アスベスト被害救済など公害闘争に連帯する。

6、政治の民主的転換をめざす取り組み
 (1)国民本位の政治経済と非核・非同盟・中立・民主の日本を実現する統一戦線樹立をめざすとした全労連綱領にそった取り組みを強める。
 原発、TPP課題などでの「一点共闘」を大切にしつつ、政治革新をめざす共闘への発展を労働組合の立場で模索する。
 地方自治体の首長選挙などでは、住民のくらしと福祉を守る民主的な自治体建設をめざしたたたかいと結び、政治革新のため積極的な役割をはたす。
 全国革新懇への結集を強めるとともに、各組織でも積極的な位置づけを行い、職場・地域から革新懇運動を広げ、政治の民主的転換を求める世論喚起の取り組みを強める。

 (2)「雇用と社会保障を中心におく日本」をめざす労働者要求の実現の立場に立ち、政治の転換、国政革新、地方政治革新をめざし、総選挙、参議院選挙をはじめ労働組合としての選挙活動をさらに強める。
 特定政党支持の押しつけや組織ぐるみの選挙に反対する。企業・団体献金の禁止を求めて取り組みを強める。
 国民主権を侵害する議員定数削減などに反対する。
 公務員の政治的自由の回復を求める。

7、世界の労働組合との連携、共同の取り組み
 (1)核兵器廃絶、対話による平和の実現を求める取り組みと多国籍企業の横暴規制強化の取り組みの二つを軸に、二国間組織の共同を引き続き進める。
 政府・財界のアジア戦略ともかかわって、とりわけアジア各国のナショナルセンター、産業別組合などとの共同と連帯を追求する。

 (2)ITUC(国際労働組合総連合)が呼びかける国際連帯の行動にも留意した国内運動を組織する。
 WFTU(世界労働組合連盟)の産別組織と関係のある国内産別の取り組みに必要な援助を行う。

 (3)戦後70年目も節目に、経済のグローバル化が進むもとでの各国の労働組合の運動交流を目的にした「国際シンポジウム」を2015年中に開催することで準備を進める。

第5章 全労連組織の強化拡大をめざす

1、「新中期計画」を補強し、すべての組織が拡大強化の計画を具体化する
 (1)すべての組織で、拡大運動を飛躍的に前進させる。
 2014年中に、単産、地方組織はもとよりその構成組織の段階まで組織拡大目標と拡大計画を策定し、拡大月間などを設けて全組織をあげた拡大運動に取り組む。

 (2)「全労連大運動」や憲法闘争などを通じ、全労連未加盟組織への働きかけを継続的に強める。
 各組織は友好関係にある組合の結集や空白県における加盟組織の立ち上げ、関連する業種の未組織労働者の組織化対策、などに留意した計画を策定して取り組む。
 最低賃金全国一律1,000円の早期実現やブラック企業根絶の要求闘争を通じ、非正規労働者の組織化を前進させる。

 (3)労働者との対話を組織拡大運動の中心にすえて取り組む。
 組織拡大のための「対話運動」を全組合員参加の運動とすることを、すべての組織で追求する。
 拡大対象者を明確にした「拡大のための対話」運動を具体化する。雇用形態などにかかわらず、すべての労働者を対象とする取り組みとしての前進を追求する。
 地域段階では、対象職種や対象地域を明確にした取り組みの具体化をめざす。
 労働相談体制の拡充強化、労働相談を通じた組織化前進のため、「組織拡大ハンドブック」の改訂、オルグ養成講座の内容強化を進める。

 (4)単産と地方組織が力を寄せあう「総がかり作戦」に取り組む。
 「組織拡大推進特別会計」を活用した「総がかり作戦」などを具体化する。5,000人未満の地方組織について、単産との連携を促進するなど取り組みを強める。
 単産と地方組織の拡大目標、計画を調整し、地域、業種・職種などを特定した「総がかり作戦」を全国で具体化する。
 介護・ヘルパー分野を最重点業種と位置づけ、介護労働者の専門性に相応しい処遇の実現を求める運動とも結合した組織拡大運動を全国展開する。2014年度は、そのためのモデル例づくりに全力をあげる。

2、次を担う活動家の育成に本気になって取り組む
 (1)非正規・青年・女性労働者の組合運営への参加をすべての組織で重視する。
 非正規労働者の要求実現と組織化を推進する「非正規雇用労働者全国センター(非正規センター)」の機能強化と、各組織における対応組織づくりを検討する。
 単産、地方組織での青年部、女性部の結成、活動強化の呼びかけを強める。

 (2)全労連・初級教育制度を2015年4月以降にスタートさせる。
 スタート時の受講者目標を2,000名に設定し、全単産での受講者組織と全地方組織での「労働学校」の具体化をめざす。

 (3)規約にもとづく全労連大会や評議員会、諸会議への女性参加比率の向上、単産・地方組織の女性役員比率の向上を追求する。

 (4)要求闘争、組織拡大運動での拠点づくり、典型づくりを意識的に追求し、たたかいの経験交流を強め、単産、地方組織の若手活動家のネットワークづくりを引き続き検討する。

3、全労連共済の拡大、活用した組織拡大に取り組む
 (1)組織拡大と連携した共済加入者の拡大の取り組みを進める。そのためにも、地方共済会の基盤確立を重視して取り組む。
 共済未加盟単産への加入働きかけ、全労連共済の単産共済での活用などを呼びかける。共済学校を地方共済単位で実施する。
 組織共済加入者の個人加入の目標も確認して促進する。

 (2)非正規労働者向けの組織共済制度の整備・充実、個人共済制度の改善、単産共済との共通制度の検討など、全労連共済のスケールメリットをいかす取り組みを進める。

 (3)全労連共済の学習活動を単産共済との連携も含めて強化する。単産共済との相互交流を深め、制度研究などの取り組みを強める。
 「共済の今日と未来を考える懇話会」との連携を強め、共済制度に対する攻撃とのたたかいを強める。

 (4)労働金庫の活用など、労働者福祉事業を活用した組織強化の交流を促進する。

4、全労連のナショナルセンター機能の強化に取り組む
 (1)集中的、機動的な組織拡大運動をサポートし、重点課題での集中した取り組みを効率的に進めるため、全労連事務局運営の機動性を高める。
 統一闘争強化の立場から、行動点検などの取り組みを強める。

 (2)全労連の政策・要求を充実させるために、単産・地方組織、労働総研、研究者などの協力を得て課題別の「政策委員会」を適時具体化する。

 (3)定期刊行物、宣伝資材などの改善に努力するとともに、情報サービスの迅速化、連絡(通達)の効率化をはかる。全労連新聞、月刊全労連の充実を追求し、普及を促進する。
 動画配信など、インターネットを活用した組合員への情報の伝達、労働者への全労連情報発信のあり方を充実、強化する。

 (4)全労連、単産、地方組織それぞれで中期的な見通しをもった財政基盤の確立などが必要となっていることから、組織・財政検討委員会を設置して、次期大会に向けた検討を進める。

以 上