全労連第26回定期大会 2012年7月29日〜7月31日
【第1号議案】
2012〜2013年度 運動方針(案)
第1章 激しいせめぎあいが続く 2010年代前半の全労連のたたかい
1、 経済危機の犠牲を労働者に押しつける社会からの転換をめざす
リーマンショックに端を発した世界同時不況は、ヨーロッパ諸国の財政危機に連鎖し、再度の世界同時不況が懸念される状況にある。カジノ資本主義による危機が続いている。
金融・経済危機で困難に陥った金融機関や大企業を救済するために、国が多額の公債を発行して財政が危機に陥る。財政危機を乗り切るとの口実で、増税と社会保障切り下げ、行政改革が行われ、所得再配分機能が低下して新たな経済危機、財政危機が発生する。この悪循環が短い周期で繰り返され、世界中に連鎖している。
日本でも、90年代前半のバブル経済崩壊以降、同様の悪循環が繰り返され、労働者・国民の暮らしを危機の淵に追い込んでいる。「新時代の『日本的経営』」(1995年・日経連報告)以降の連続した労働法制改悪も、そのような悪循環を加速させた。
それらの点に目を向け、貧困と格差を拡大し続ける社会からの転換をめざして全労連の責任と役割を発揮する。そのためにも全労連組織の拡大・強化の必要性を確認する。
2、 「3.11大震災」からの早期復興に労働組合としての取り組みを進める
2011年3月11日に発生した東日本大震災と原発事故は、経済成長を最優先し、効率優先で地方に危険を押しつけ、公務公共サービスを切り刻んできた新自由主義「構造改革」の失敗を表面化させた。
大震災から1年余り、事故原因の解明もないままの原発再稼働のごり押しや長引く避難生活への対策不足、被災地での雇用、生業などの復興の遅れなどで矛盾はさらに深まり、国民生活と世論軽視の政治への不信が高まっている。被災者おきざりで、大企業のもうけの場として復興事業を位置づける「創造的復興」の強行が被災者を苦しめている。
同時に、「3.11前には戻れない」との国民意識が高まり、災害に強い持続可能な社会への転換、経済効率重視の社会からの転換を求め、「核と人類は共存できない」としてエネルギー大量消費社会の見直しを求める国民運動が全国に広がっている。
大震災以降広がっているこれらの国民運動との連帯と共同を強め、大震災からの早期復興と災害に強い持続可能な社会をめざし、労働組合としての取り組みを進める。
3、 「構造改革」回帰に反対する国民共同の前進をめざす
国民意識の変化に危機感を抱く政府、財界は、3.11大震災後の経済環境を「危機の中の危機」と宣言し、社会保障を切り刻んで自己責任と庶民増税を国民に迫り、競争社会を一段と進める公務公共業務の民営化と規制緩和による「構造改革」強行の姿勢を強めている。
「構造改革」強行の当面の課題が、「社会保障・税一体改革」の名による消費税増税と社会保障改悪であり、安全対策抜きでの原発再稼働であり、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)参加を前提とする規制緩和や郵政民営化の強行にある。
このような「構造改革」強行の動きへの国民共同が広がり、反撃も強まっている。
「構造改革」反対の立場を明確にし、安全・安心社会の実現を求める広範な国民との対話を強め、一致点での共同を重層的に発展させ、「構造改革」からの転換をめざす。
4、 憲法をいかし「雇用と社会保障を中心におく日本」をめざす運動を広げる
経済・財政危機が雇用や暮らしを壊し、格差を拡大し、失業者を増やし、貧困層を大量に生みだしている。大震災からの復旧・復興より「構造改革」強行を重視する政治が、被災者と被災地を苦しめ、労働者から雇用・仕事を奪っている。被害者は、「働きがいのある人間らしい仕事(ディーセントワーク)」と社会保障を奪われる労働者である。
その一方で、一部の大企業・大金持ち優遇の仕組みは温存、強化され続け、濡れ手に粟のぼろもうけによる富の集中が強まっている。「社会保障・税一体改革」法案の修正協議を通じた民主・自民・公明3党の「密室談合」で、「自立を家族相互、国民相互の助け合いの仕組みを通じて支援」することを「社会保障制度改革推進法案」に盛り込み、自己責任原則がより強調されたことも、そのような流れを反映している。
この状況への反撃を労働者のたたかいとして組織し、国民的な運動に発展させることはナショナルセンター・全労連の役割である。
そのことをふまえ、安定した良質な雇用が保障される社会、働く貧困も過労死もない社会をめざし、経済危機のもとで壊され続けてきた雇用と働くルール、社会保障の再生・拡充や、地域経済と公共サービスの回復を求めるたたかいを憲法に依拠して進める。
資本からの独立、政党からの独立を堅持して、一致する要求での共同を発展させ、「雇用と社会保障を中心におく日本」をめざした運動と共同の拡大に奮闘する。
第2章 2年間の特徴的な取り組みと教訓
1、 「3.11大震災」からの復旧、復興の取り組みなどで前進した共同
(1) 大震災からの復旧、復興をめざす共同に取り組んだ
2011年3月11日に発生した大地震と大津波は、死者1万5,857名、行方不明者3,057名(いずれも2012年4月25日時点)、被害総額16兆円から25兆円(政府発表)という甚大な被害をもたらした。このような大規模災害に対する備えの希薄さは、被災者支援の初動や復旧の遅れ、都市部での帰宅難民の大量な発生などからも明らかになった。
また、90年代後半からの労働者保護法制や社会保障制度の後退が、災害発生時のセーフティネットをも後退させていたこと、被災者の生活再建への支援策の不十分さも露呈した。その点で、東日本大震災は、「この国のかたち」を根本から問い直す契機となった。
全労連は、災害発生直後から、MIC、純中立労組懇と共同した「東日本大震災労働者対策本部」を立ち上げるとともに、民主団体とも共同して物資支援、支援カンパ、ボランティア派遣などを行った。また、被災者や被災地の実際をふまえた政策提言や政府要請などを行い特例措置に反映させるなど、被災者に連帯した取り組みを強めた。
このような災害発生直後の取り組みが労働組合間の共同を前進させる契機ともなった。

(2) 「原発ゼロ」をめざす運動では広範な団体、市民との共同がかつてなく前進した
  地震と大津波によって発生した東京電力福島第一原子力発電所での原発事故は、原発「安全神話」の虚構を打ち砕き、安全基準や事故対策、賠償制度の不十分さなどを露呈した。
全労連は事故から1カ月後に、「福島原発事故の早期収束と全面賠償」要求を掲げた中央行動に取り組んだ。原発ゼロをめざすことを明確にした政策提言を明らかにし、政府と東電の責任追及とあわせて原発ゼロを求める署名行動などに取り組んだ。
また、民主団体などと共同して「原発ゼロ」の世論を高めるための集会を2011年7月に開催した。この集会の成功は、インターネットも活用して草の根から広がっていた市民レベルの運動とも呼応して全国の取り組みに広がり、原発に依存しない社会をめざす共同行動での全労連への期待を高めた。
共同の取り組みは、2011年9月19日の「さようなら原発集会」や10月30日の「なくせ原発福島集会」などでさらに前進し、震災から1年目の2012年3月11日を中心に、全国47都道府県・150カ所以上で10数万人が行動を起こすところまで到達した。「原発なくせ」の一点で、あらゆる系統の市民、団体が結集した行動が各地で取り組まれ、これまでにない共同の広がりをつくりだす一翼を担ってきた。 そのような世論の力が原発に依存する勢力を追い詰め、原発再稼働阻止の運動を前進させ、2012年5月5日には稼働原発がゼロになるという変化と、社会運動の新たな峰をつくりだしてきた。
2、 民主党政権の「構造改革」強化、日米安保体制強化に反対する共同が前進
(1) 前回大会から2年の間に、悪政推進に暴走する民主党政権への怒りが広がった
  「構造改革」からの転換を求める国民の選択で誕生した民主党政権は、大企業の国際競争力強化施策の継続を迫る財界・大企業や、台頭する中国に目を向けた日米安保体制強化を求めるアメリカの圧力に屈し、公約を次々に投げすてた。
そのような変質に対する批判が、2010年7月参議院選挙での民主党惨敗につながった。
しかし、政権に固執する民主党は後退姿勢を改めず、TPP参加や「社会保障・税一体改革」など、財界が求める成長戦略具体化の路線に突き進んだ。また、沖縄名護市・辺野古沖の米軍基地建設への固執、武器輸出三原則の緩和、在日米軍と自衛隊の一体運用の深化など、日米安保体制強化にも踏み込んだ。
このような民主党の公約破りの後退姿勢には、国民の怒りが集中し政治不信が高まった。
また、政権党を支えることに腐心する労働運動は、労働者・国民要求との矛盾を深め、労働組合の「特定政党支持」の弊害を実証することとなった。

(2) 国民世論を無視した民主党政権の暴走に反対する国民共同を前進させた
  東日本大震災後に発足した民主党野田政権は、自民党などとの「密室談合による増税大連立」に突き進み、国民世論との対立をより激化させた。
民主党政権の国民世論無視の暴走政治に対し、TPP参加反対や消費税増税反対の国民的共同が大きく前進した。とりわけTPP参加反対の共同では、2012年4月26日の集会などでは、政党や農業団体、医療関係団体と労働組合、市民団体との共同にまで前進した。
全労連は、労働者・国民生活をさらに困難にする大増税や、大企業の経済活動と投資の自由をアメリカ並みに保障するための自由貿易拡大への反対を明確にして運動に取り組み、地域からの共同前進に奮闘して社会的信頼を高めてきた。

(3) 日米安保条約60年、沖縄返還40年も節目に米軍基地撤去のたたかいを強めた
  普天間基地の県外移設を求める沖縄県民のたたかいと連帯し、新基地建設反対や基地撤去を求める取り組みを2010年秋の沖縄県知事選挙などの首長選挙とも連携しながら強めた。
全労連は、二度の新聞意見広告(2010年11月、2012年5月)の成功に尽力した。これらの取り組みも反映し、県外撤去を求める沖縄県民の世論はより強固なものとなり、米国議会が海兵隊移転費用予算を否決するという事態にも至った。
3、 労働者の生活悪化、貧困と格差の広がりを食い止めるたたかいに奮闘
(1) 「安定した良質な雇用と社会保障拡充による安心社会」をめざす運動論議を進めた
  1) 2011年11月に全労連は、「全国集会2011」を開催した。この集会は、「年越し派遣村」や東日本大震災で明らかになった新自由主義「構造改革」の失敗と矛盾に目を向けた要求政策と、その実現をめざす運動の基本方向を論議し、運動を進める全労連組織の強化、拡大方策を論議することを目的に開催した。集会は、「雇用と社会保障による『福祉国家』をめざす」とした第25回定期大会方針を具体化するものであった。
集会には、1.労働者の状態を直視し可視化すること、2.雇用の安定が保障されず、劣悪な雇用を強制されやすい非正規労働者の状況の改善に焦点をおくこと、3.働くことを希望するすべての人に「働けば人間らしく暮らせる最低限の基準が保障される社会」をめざすこと、4.全労連の要求政策への支持、世論を広げ、広範な労働者・国民との総対話と共同をつくりだし、全労連組織の強化・拡大につなげること、の「四つの挑戦」を全労連運動の基本方向として打ち出した。
そして、その「四つの挑戦」の実践とかかわって、全労連の基本政策文書「目標と展望」の改定に向けた雇用、社会保障の制度改善課題と、新組織拡大中期計画の「柱」を提起して論議した。

2) 折しも、政府が消費税増税と社会保障改悪を内容とする「社会保障・税一体改革」強行の姿勢を強め、労働者派遣法「改正」法案での製造業派遣、登録型派遣の原則禁止条項を棚上げにする「骨抜き修正」に民主、自民、公明3党が合意するなど、財界の意向を受けた政治の逆流が強まるなかでの開催となった。このことも含め、時宜にかなった集会開催ではあったが、基本政策文書改定に向けた論議を深めるまでには至らず、論議を継続することとした。新たな組織拡大中期計画案につ いては、2012年1月の第47回評議員会に予備提案し、組織拡大特別会費とあわせ本大会での決定 を予定している。

(2) 労働者の暮らし、労働実態をもとに大企業の社会的責任を追及し続けた
  90年代後半から強まった財界の非正規労働者へのおき換えと、賃金引き下げなどの総人件費抑制(コストカット)攻撃が、労働者の生活を悪化させ、貧困と格差を拡大し、地域経済を疲弊させ、日本経済が深刻なデフレから抜けだせない要因になっている。
その一方で、優遇税制や補助金なども含め、富をためこむ仕組みを最大限利用して内部留保を蓄積させている大企業に焦点をあて、その社会的責任追及に継続して取り組んだ。
2011年度末で主要企業5,000社がためこむ260兆円もの巨額な内部留保が、労働者の賃金や大企業の税・社会保障負担、下請け企業への適正単価の支払い、国内での設備投資に回っていないことを告発し、春闘期などを中心に「内需拡大で景気回復を」の世論喚起に努めた。民間シンクタンクからも、内需拡大のための賃上げの有効性が主張されはじめた。
また、深刻な若者の雇用状況もあって、労働者派遣法改正や有期雇用規制をはじめ、非正規労働者の雇用安定と処遇改善に向けた政府の研究会などの動きも顕在化し、連続した地域最低賃金引き上げや公契約条例制定の動きを広げてきた。
そのような変化には、「99%のための社会」運動など世界でも広がった大企業中心社会への抗議の運動と連帯した全労連のさまざまな取り組みが反映した。

(3) 労働者に対する政府・財界一体となった攻撃への反撃強化が求められている
  東日本大震災直後のたたかいとなった2011年春闘は、大震災の負の影響を最小限にとどめる取り組みとならざるを得なかった。2012年春闘では、大震災と原発事故も契機に生産拠点の海外進出や総人件費抑制攻撃を強める財界の賃下げ攻撃とのたたかいとなった。
また、そのような春闘状況を反映し、最低賃金改定への財界の攻撃も強まってきた。
さらに、先にふれた民主党政権の変質もあって、労働者派遣法改正法案の骨向き修正が国会で行われ、有期雇用規制についてきわめて不十分な内容での法案が提出されるなど、労働法制改善要求の前進が阻まれはじめた。
加えて、震災復興財源確保を口実に、国家公務員賃金を平均7.8%引き下げる法律が議員立法で成立し、政府が独立行政法人の労使自治に介入するという異常な事態も生まれた。
このようななかで、それぞれの攻撃への反撃は組織されているものの、財界・政府の攻撃を突破するたたかいと共同にまでは前進せず、政府・財界一体となった攻撃を押しかえせていない。この2年間、労働者全体の賃金低下や非正規労働者増などの状態悪化に歯止めを打てていないことも含め、統一闘争強化による反撃が課題となっている。

(4) 庶民増税と社会保障改悪反対のたたかいが前進すると同時に課題も明らかになった
  高校授業料無償化や子ども手当の新設などを先行させるとした民主党政権の政策は大きく後退し、消費税増税と社会保障の全面改悪に突き進んだ。その一方で、法人税減税の先行と景気対策のための国債発行を繰り返すという逆立ちの財政運営を強めてきた。
このような逆立ち政治を批判し、消費税増税、社会保障全面改悪反対のたたかいを重視してきた。その結果、各種の世論調査で消費税増税反対が半数を超えるなどの世論の変化をつくりだしてきた。 また、年金給付額の引き下げ反対や子ども・子育て新システム反対の共同など、社会保障改悪反対の個別課題分野では、運動も一定前進させてきた。
さらには、東日本大震災被災者の深刻な実態が、90年代から連続した社会保障改悪の影響を強く受けたものであるとの認識を広げ、震災復興のためにも「消費税増税によらない社会保障拡充を」の世論と運動を広げてきた。
しかし、増税と社会保障改悪を国民に押しつける緊縮財政路線への反撃は緒に就いたばかりで、 個別課題ごとの反撃を重層的なたたかいに発展させることは引き続く課題である。
4、 組織の拡大強化の取り組みを重視
(1) 組織の強化拡大の取り組みを重視した
  秋と春に組織拡大月間を設定して集中的な取り組みをはかるとともに、労働相談活動の強化などを通じ通年的に取り組みを強めた。
結果的には、2年間で、20単産・45地方組織で延べ380組合(1万4,098名)の新規結成・加盟があり、既存組織や地域労組への加盟も含め13万1,537名以上の拡大が行われている(2010年7月から2011年12月。2012年6月までの状況は大会時に報告)。
また、5,000人未満地方組織を対象に、単産やブロック組織の協力も得た「総がかり作戦」に取り組み、このことも影響した単産と地方組織の組織拡大での協力関係が進み始めた。

(2) 新たな組織拡大中期計画論議を進めた
  厚生労働省「労働組合基礎調査」では、2011年6月時点で、全労連傘下組織の組合員数は86万人と把握され、前年から8千人減少している。連続した減少傾向に歯止めがかかっていない。政府、財界の攻撃のもとで、企業や事業所そのものがなくなり、人員減の影響を受けている実態や、政府の調査方法などの問題もある。しかし、組織減少が運動の活力にも影響し、活動家育成の困難さにつながっていることも事実である。
このような組織状況のもとで2011年11月に開催した「全国集会2011」では、1.既存組織での組織拡大は進んでいるが、新たな組合結成は停滞気味、2.非正規労働者の組織化の加速度がついていない、3.地方組織と単産の連携による組織拡大は端緒的、4.戦略的・計画的な組織拡大を全組織で、などの課題を確認し、新たな中期計画に向けた議論を行った。
第3章 国内外の労働者をとりまく情勢の特徴点
1、 世界各地に広がる新たな社会運動
(1) 2010年11月から2011年2月にかけて、中東諸国に広がった民主化運動(「アラブの春」)は、独裁政権下での富の偏在への民衆の怒りが表面化したものであった。一部には、軍事力で民主化要求を弾圧し続ける状況も残ってはいるが、ミャンマーでの民主化の進展にみられるように、自由と民主主義を前進させ、平等な社会を求めるたたかいは、世界中で前進している。
2011年9月に、ニューヨーク・ウォール街で始まった「オキュパイ(占拠)」運動は、経済危機のもとでも1%の富裕層が富と政治を独占する社会に異議を唱え、「99%のための社会」への転換を求めるものであった。この取り組みは、またたく間に世界各地に広がり、ヨーロッパではEUやIMFが押しつける緊縮財政路線への抵抗運動として、ギリシャ、イタリア、スペインなど各地に広がった。

(2) そのような運動の影響を受けて、アメリカではオバマ政権が富裕税導入を提案し、フランスでは緊縮財政路線を継続するとした政権が選挙で敗北する事態となった。
このような社会運動の広がりを受け、2012年5月に開催されたG8では、「成長と雇用」が強調される状況に回帰した。また、2012年のILO総会では、ナショナルミニマムの確立を各国で追求することなどを内容とする勧告(社会的保護の床(Social Protection Floor)に関する勧告)が採択された。
経済のグローバル化が進行し、一部の多国籍大企業が富を寡占する状況下で、失業と貧困、格差はいずれの国でも深刻な社会問題となっている。この状態の改善を政府に迫り、大企業の利益を最大化する新自由主義、自由貿易体制に対する労働者のたたかいは全世界共通の課題となっている
2、 「核と人類は共存できない」の世論が大きなうねりに
(1) 福島原発事故を受けて、2011年6月6日にはドイツ政府が2022年までの原発廃止を決定し、6月14日にはイタリアで原発建設凍結の国民投票が成立した。このような世界の動きは、「核と人類は共存できない」とする国際世論がいっそう高まっていることの表れである。日本でも、国民運動の高まりのなかで「原発稼働ゼロ」の状態をつくりだし、世界の運動も励ましている。 
事故直後には、原発の「増設・現状維持」が過半数に達していた国民世論は、1年たって「脱原発」に「賛成」44%、「どちらかと言えば賛成」36%と大きく変化した。

(2) 兵器としての核利用への批判をかわす目的もあって開発された原発は、とりわけ日本では「核の傘」論や「核抑止力」論、日米安保条約とも密接にかかわっていることが、福島原発事故を契機に改めて確認された。
また、「原子力ムラ」(原子力発電に関係する政官財と学の共同体)が、巨額な開発費や補助金などに群がる利権集団であり、軍需産業とも重なりあい、福島原発事故後も政策決定などに深く関与していることが明らかになった。
加えて、民主党野田政権が、福島原発事故の原因究明をおろそかにし、事故をふまえた安全基準、対策も講じないまま、電力不足の経済への影響にのみ目を向けて、再稼働に前のめりの対応を行ったことが、国民世論との対立をより深めている。

(3) 核兵器と原発の核被害を受けた日本で、「核と人類は共存できない」との立場での運動を前進させ、「原発ゼロ」の日本、核兵器即時全面禁止の政治決断を迫る運動を一体的に前進させることが求められている。
3、 国民の批判が高まる大企業中心、アメリカ追従の政治
(1) 選挙公約を完全に投げすてた民主党への批判が高まり、政治は混迷している。
日本経団連など財界は、東日本大震災からの復興を大企業のもうけの場とし、農業、医療などの分野での規制緩和や公務民営化による企業参入の場の拡大を求め、法人税減税や研究開発促進税など企業活動への政府の支援を迫り続けている。その一方で、社会保障解体と消費税増税などを求めている。政府が政策の立案から実施まで大企業の要望に全面的に応える状況も強まっている。
一方で政府は、増加し続ける生活保護の抑制策を一部の不正受給を口実に強めようとするなど社会保障費抑制には躍起になり、障害者自立支援法廃止の公約までも投げすてた。
民主党は2008年総選挙で、沖縄普天間基地の県外移設を「公約」したが、それを反故にしたばかりか、日米安保体制強化を口実に新基地建設を求めるアメリカの圧力に屈して沖縄県民の怒りをかっている。
このような自民党政権以上に大企業中心、アメリカ追従の政治姿勢を強める民主党への支持は急速に低下し、直近の世論調査では1割を切る結果まで出始めている。しかし、同時に、変質した民主党との政策の違いを打ち出せず、「談合政治」に突き進む自民党に支持が寄せられているわけではない。その点で、労働者要求の前進ともかかわって、政治状況は混迷状態にある。

(2) 大企業中心社会からの転換をめざす動きがさまざまな分野で広がっている。
行き詰まりがはっきりしている大企業中心、アメリカ追従の政治の転換を模索する国民の政治志向はより強まっている。このような状況は、日本経団連とは一線を画す企業の団体として「国民生活産業・消費者団体連合会(生団連)」が2011年12月に結成され、消費税増税反対を主張していることにも反映した。また、「脱原発をめざす首長会議」の設立や、国の出先機関の存続要望を全国約120の自治体首長が表明するなどの動きも起きている。
4、 強まる強権政治、重要になる自由と民主主義擁護のたたかい
(1) 二大政党制の行きづまり打破を反動的に進める動きも強まっている。
  経済危機のもとで暮らしの危機に直面する国民が怒りを高め、東日本大震災も契機に大企業中心社会への批判が広がるなかで、翼賛的な体制や民主主義軽視の政治状況が強まり、明文改憲の動きも強まってきた。
民主党政権になって、国家戦略会議など政策決定の枢要な場に連合が参加し、「社会保障・税一体改革」や成長戦略推進の立場を明確にしてきている。また、民主党、自民党の二大政党体制づくりの行きづまりのもとで、保守大連立を模索する動きや、国民世論を無視した「談合政治」があからさまになってきた。

(2) 明文改憲の動きも改めて強まっている。
  このような政治状況も反映して、少数政党を国政の場から排除する衆議院比例定数削減が政治課題となり、その動きと対をなして、憲法改正の要件緩和をめざす動きが活発化してきた。日本国憲法施行から65年目を迎えた2012年5月3日を前に、自民党などが憲法改正草案を明らかにするなど、改憲策動も改めて強まっている。
加えて、国民の国政への不満と不信を集める形で、橋下・大阪維新の会の公務員バッシングを利用した憲法軽視の強権的な行政運営をマスコミが「決定する民主主義」ともちあげるなど、民主主義の危機も進行し続けている。
5、 貧困と格差の拡大のもとで、暮らし雇用を守る労働組合への期待は高い
(1) 労働者の貧困化には歯止めがかかっていない。
  国連児童基金・ユニセフの研究機関は、日本では305万人14.9%の子どもが貧困ライン以下で暮らし、先進国のなかで9番目に高いと指摘した。OECD調査でも2010年の日本の相対的貧困率(年間所得112万円未満)は16%で、2007年より0.3ポイント悪化している。
とくに、一人親世帯の貧困率は50%を超えており、若年層での非正規雇用の増加や女性の賃金の低さ、子どもへの社会保障配分の低さなど、従来から指摘される矛盾がまったく解消されていないことを明らかにしている。

(2) 労働者の状態悪化も進行し続けている。
  国税庁の調査では、2010年の給与所得者の年間賃金は、男性507万円、女性269万円で全体平均は412万円である。1998年に比較して全体平均賃金は約50万円減少している。
雇用者に占める非正規労働者の割合は、2011年には35.4%となり、1998年比で12ポイントも増加している。
正規労働者の長時間過密労働は解消せず、コストカットをギリギリまで迫る企業経営や成果主義がはびこるもとで、パワハラなど職場の荒廃が一方で深刻化している。

(3) 雇用と暮らしを守る労働組合への期待は高い
  労働総研が2012年3月に公表した「大学生の労働組合観に関するアンケート調査」(第5回調査)では、「必要だ」「役に立つ」などの項目ではプラス・イメージが5〜7割を占め、加入 の意向を3割が有し、3割は就職後の職場状況によって考えるとしている。
労働組合の認知度は9割以上で決して低くなく、「派遣村」などの取り組みで寄せられた労働組合への期待はいささかも変化していない。働きやすい職場環境づくりなどの職場活動の強化と、すべての労働者の雇用と暮らしの安定のための取り組みを社会的な運動として両輪で進める労働組合運動への期待は高い。
個別企業のメンバーシップを重視した労働組合主義の行きすぎも、「特定政党支持」の押しつけに象徴される誤った政治主義も排除し、雇用と暮らしを守る要求の一致点で共同の運動を職場と地域の双方で組織する労働組合が求められている。
第4章 2年間の運動の基本方向
1、 「安全・安心社会をめざす大運動」(全労連大運動)に取り組む
(1) 労働者・国民をとりまく状況、この2年間の運動と2011年11月に開催した「全国集会2011」論議の到達点をふまえ、「安全・安心社会をめざす大運動」(全労連大運動)を次の2年間を通して提起し、「二つの取り組み」を柱に進める。
「全労連大運動」の第1の取り組みとして、労働者・国民の暮らしを危機に追い込んでいる大企業中心、経済効率重視の日本社会からの転換をめざす国民共同の課題でのたたかいでの、労働組合としての積極的な役割発揮を位置づける。
第2の取り組みとして、「全国集会2011」で論議した「四つの挑戦」(1.労働者・国民の暮らしの実態などの「可視化」、2.もっとも困難な状況にある労働者の実態改善、3.働いて人間らしく暮らせる社会をめざす制度改善、4.広範な労働者・国民との総対話と共同)の実践を積み重ねる。
また、全労連の基本政策文書「目標と展望」の改訂作業を次期大会で成案を得る工程で進めることとし、検討PTなどを設置する。

(2) 全労連大運動の第1の取り組みでは、当面、「原発ゼロの日本」をめざす共同の取り組み前進に奮闘する。原発をなくす全国連絡会などへの結集を強め、引き続き全国運動としての前進に積極的な役割をはたすとともに、職場、地域での「原発学習」運動を旺盛に展開する。
自動車、電機などの製造業大企業をはじめとする大企業の社会的責任追及の取り組みを強める。TPP参加反対の取り組みともあわせ大企業の民主的規制強化や生産拠点の移転、リストラ「合理化」に反対する地域からの共同に奮闘する。
消費税増税など庶民増税に反対し、大企業・大金持ちに応分負担を迫る税金闘争での共同前進に奮闘する。その際、大企業の内部留保蓄積とその構造を追及し、社会、国民への還元を求める運動を重視し、「はきだせ大企業の内部留保キャンペーン」の通年的な展開、中小零細企業やその団体、農民団体や市民団体との間での大企業に対する共同を重視する。
多国籍大企業の横暴規制強化をめざす世界的取り組みに連帯し、企業の活動監視と実態調査などでの他国労組との共同を強める。

(3) 全労連大運動の第2の取り組みとして、「四つの挑戦」を次のように具体化し、要求運動と組織拡大強化の運動を統一的な展開で、労働者課題の運動前進をめざす。 第一の挑戦(労働者・国民の暮らしの実態などの「可視化」)では、東日本大震災被災地の雇用状況や被災者の生活実態と、新規学卒者の就業状況をはじめ青年層の雇用の実態の可視化を当面の課題に位置づける。
第二の挑戦(もっとも困難な状況にある労働者の実態改善)では、すべての労働者の賃金底上げとなる「最低賃金・全国一律1,000円以上」の実現と公契約条例制定運動の全国展開、非正規労働者の雇用安定と均等待遇の実現を求める取り組み、すべての争議解決と労働者権利の侵害に対する反撃のたたかいを位置づける。
第三の挑戦(働いて人間らしく暮らせる社会をめざす制度改善)では、雇用安定策と雇用の場の創出を政府に求め、社会保障拡充や子どもの貧困に目を向けた教育費負担の軽減などの積極要求を対峙した制度闘争、長時間過密労働是正の取り組みを重視する。
また、安全・安心な社会を壊し続けている規制緩和と公務・公共サービスの民営化に反対し、規制再強化などを求める運動を全体課題として取り組む。
第四の挑戦(広範な労働者・国民との総対話と共同)では、あらゆる運動で地域からの共同積み上げと世論喚起の運動(宣伝、キャンペーンなど)を重視する。
要求前進をめざした共同を徹底して追求し、必要な時には「20万人規模の行動」が全国で組織できる力量と条件整備を進める。
2、 全労連組織の拡大・強化に向けて「新中期計画」を実践する
(1) 全労連結成の原点にも立ち返り、「すべての労働者を結集しうる母体」への発展をめざし、社会的影響力のある組織づくりに挑戦する。
大会に提案する新「組織拡大強化中期計画」にもとづき、「150万全労連」への目標達成の取り組みを開始する。2013年度までの前半戦は、単産・地方組織一体で組織の減少から増勢に転じる2年間と位置づけ、前倒しの目標達成に奮闘する。

(2) すべての組織での純増達成を確認し、全労連と単産・地方組織で、数値目標を掲げた組織拡大強化計画にもとづき、年次ごとの取り組みを本格化させる。
すべての組織が、10%以上の純増目標の達成、10万人を超える既存組織内での拡大、4年間で20万人を超える労働組合の新たな加入、結成の全体目標を確認した計画を策定する。  地域を結節点に、単産・地方組織が連携し、「安全・安心社会をめざす大運動」(全労連大運動)とも結合し、非正規、青年、女性など困難な実態におかれている労働者への働きかけを強め、組織拡大につなげる。

(3) 「組織拡大推進特別会計」を活用し、大震災被災地の地域組織再建、単産と地方組織の連携による産業と業種、地域を重点とした「総がかり作戦」、全労連運動を引き継ぐ活動家の育成を重点課題に設定し、取り組みを具体化する。
3、 憲法擁護、安保条約破棄の運動を再強化する
(1) 強まっている改憲策動を許さず、憲法を暮らしと職場にいかす取り組みを強める。
「憲法が輝く日本を署名(仮称)」の具体化を検討し、憲法共同センターの取り組みの活性化をめざす。

(2) 日米の「核密約」廃棄を求める国内での取り組み、普天間基地の無条件撤去、辺野古沖、徳之島での基地建設反対をはじめ、在日米軍基地・施設撤去、基地機能の分散・拡充反対の運動への結集を強める。

(3) 「核兵器のない世界」をめざす日本国内での運動強化と、労働組合間での国内外の共同を強める。
「核の傘」、「抑止力」論に依拠した核依存体制への反撃の取り組みを強める。
第5章 職場、地域から統一して取り組む 重点課題と運動
1、 解雇、失業に反対し、雇用の安定をめざす
(1) 労働者の使いすて状態が貧困と格差を深刻化させ、賃金低下などのデフレ要因となっている。大企業の多国籍化が進むもとでより事態が深刻化し、企業の攻撃が乱暴になっていることを強く意識し、解雇、失業に反対し、雇用の安定をめざす取り組みを強化する。

(2) 具体的には、「期間の定めのない雇用が当たり前」の世論形成、職場段階での正社員化運動の強化による実績づくり、制度改善(有期雇用規制、派遣労働規制強化、パート労働法抜本改正など)による雇用改善と、解雇争議の全面解決などの取り組みを重点にたたかいを進める。また、労働者保護の後退を是認する司法の後退に抗議し、是正を迫るたたかいを位置づける。
東日本大震災被災地での雇用創出、雇用安定の取り組みを全国課題に位置づけ、「総がかりの取り組み」の具体化を検討する。
青年層への不安定雇用の広がり、就職難の状況などをふまえ「若者にまともな雇用を」運動(アクション)を具体化する。
「差別・選別なき雇用と年金の連携」を明確にした高齢者雇用安定法改正をはじめ、高齢者の雇用・所得確保の取り組みを強める。
「解雇、雇止めとたたかう権利10カ条」の改訂、配布など、労働者への働きかけを強化する。

(3) 大規模事業所撤退時の跡地利用計画、雇用対策策定などの規制強化、ファンド規制強化などを「地域経済守れ」の運動課題に位置づけ、政策提起や先行課題での闘争具体化をはかる。
大企業による一方的な単価引き下げや、仕事のとりあげなどの下請けいじめを許さない世論喚起の取り組みを進め、中小零細企業事業者との一致点での共同を模索する。中小企業憲章や中小企業振興条例の制定をめざす取り組みへの支援・共同を強め、「下請けいじめ告発110番(仮称)」実施を検討する。

(4) 取り組みを進めている「ディーセントワーク実現署名」の2012年内の目標達成をめざす。

(5) 失業時の「セーフティネット」再生・強化、反失業・職よこせ運動の具体化をめざす。 要求政策づくりと政府交渉を強める。
署名やハローワーク前アンケート活動などに取り組む。失業者・生活困窮者支援の「ネットワーク」づくりや「労働者なんでも相談センター(仮称)」の具体化を検討する。
地域での雇用の場づくりの運動との連携を模索する。
(6) 公務員労働者の労働基本権確立をはじめ、働くものの「労働権」確立に向けた取り組みを強める。大阪市での公務員攻撃への反撃を全国課題に位置づけて取り組む。
リストラ「合理化」による権利侵害を許さず、すべての解雇争議の勝利解決をめざす。  外国人労働者の雇用の安定、権利擁護の取り組みを強化する。
労働委員会民主化の取り組みを強める。また、最低賃金審議会をはじめとする「三者構成審議会」などでの労働者代表の公正任命を求めて取り組む。
2、 賃金、労働時間改善など良質な雇用の実現をめざす
(1) 賃金低下に歯止めをかけるたたかいを重視する。
  「ベアにこだわった賃金交渉、改善にこだわった賃金交渉」の強化を呼びかけ、地域段階での相互支援の再強化を呼びかける。
「横並びの賃金改善」をめざし春闘の統一闘争を強化し、回答水準の引き上げをめざす。要求組織では、改めて要求アンケート活動を位置づけ、取り組みを強める。不当な公務員賃金引き下げを許さず、反撃のたたかいを強める。
同一労働同一賃金原則を確立する制度実現、男女や雇用形態などによる賃金格差の解消、非正規労働者の賃金底上げでの単産、地域での取り組みを強化する。
最低生計費調査も活用し、めざす賃金・所得について、要求政策の整理・とりまとめを単産の協力を得て検討を進める。成果主義賃金や能力給の導入、強化に反対して取り組む。

(2) 「全国一律最低賃金・時給1,000円実現の運動」を強める。
  最低賃金引き上げの取り組みと一体で、中小企業への助成金実現や下請け2法の厳正執行による大企業の下請けいじめ防止の取り組みを本格化させる。中小企業訪問活動を全国運動として位置づけて具体化する。
農産物の価格保障、農家への補償実現の運動と最低賃金闘争との連携を重視する。

(3) 公契約運動を全組織の力を結集して発展させる。
  全労連としての「公契約法案」、「公契約条例案」を確認して、その実現をめざす対政府・自治体への取り組みを進める。単産、地方組織とも協議のうえ、「要求実現重点自治体」を設定するなど、運動の全国化をはかる。

(4) 労働時間短縮の取り組みを強める。
  雇用拡大やエネルギー大量消費型の社会と決別するためにも労働時間短縮は重要である。社会的合意の形成をめざす「さよなら24時間型社会キャンペーン」を具体化する。
労働時間短縮に向けた課題(次の労働開始までの休憩時間、日・週・月・年単位の残業上限規制、休暇計画取得など)の整理のうえに各組織での協約締結闘争の強化に取り組む。
家族的責任を負う労働者の労働時間短縮、休暇・休業制度の整備などに取り組む。
「いの健センター」との連携を強化し、労働環境の改善、メンタルヘルス・パワハラ問題など労働安全衛生課題の取り組みを進める。
「過労死防止基本法」制定運動、じん肺、アスベスト被害の解決を求めるたたかいへの支援を強める。

(5) 障害者、難病患者など就労上のハンディを背負う労働者の働き続ける権利の実現をめざす。
  働く権利を保障する障害者雇用政策の確立などの要求政策確立と実現に向けた運動を進める。
3、 「社会保障・税一体改革」やTPP参加に反対し、社会保障の拡充、ルールある経済社会をめざす
(1) 「原発ゼロ」をめざし、取り組みをさらに強化する。
  福島原発事故の原因の徹底究明と被害の全面補償、被ばく者対策の強化に取り組む。
要求一致点での共同をさらに前進させる。原発再稼働を許さず、エネルギー政策を含め「原発ゼロの日本」の決断を政府に迫る国民運動と連帯する。
福島原発事故に対する国と東京電力の責任追及を、被害者と連帯して強める。
原発ゼロをめざす全労連の提言(案)や、再生可能エネルギーへの転換についての提言(第1次案)をもとにした対話と共同を広げ、「原子力ムラ」包囲の国民世論を高める。
「原発ゼロをめざす学習会(仮称)」をすべての組織で系統的に実施する。

(2) 「社会保障・税一体改革」をはじめ、庶民増税と社会保障解体に反対し、反撃の取り組みを強める。
  巨額な国債発行が経済危機の際の金融資本や製造業大企業支援の結果であることを告発し、応能負担原則にもとづく「公正な税制」の実現を求める運動に取り組む。
「構造改革」のもとで水平配分原則に切り替えられた税制の垂直配分原則への回帰を求め、大企業、大金もち優遇税制の廃止やキャピタルゲイン課税強化の税制改革などの積極要求を対置した運動を展開する。
生活費非課税の原則に立ち、低所得者の税負担軽減を求める立場から、課税限度額の引き上げと累進課税強化などを求める課題を含めた「なくせ貧困・税金署名(仮称)」を具体化する。

(3) 社会保障の連続した改悪と「自己負担原則」の押しつけによる深刻な実態を告発し、社会保障拡充運動を強める。また、すべての子どもへの教育をうける権利の保障を求めて取り組む。
  後期高齢者医療制度の即時廃止、医療費本人負担無料化や高すぎる保険料の引き下げ、地域における医療・介護体制の整備、子ども・子育て新システム導入反対などの個別要求課題での運動強化をはかる。待機児童解消など公的保育の充実と教育費無償化を求める運動を強める。
最低保障年金制度の確立、無年金者・低額年金者の解消など年金制度の抜本改善運動を進める。

(4) TPP参加に反対し、自由貿易拡大の口実で進められる投資や安全基準緩和、公務公共サービスの民営化を許さない取り組みを進める。
  医療・介護分野をはじめとする外国人労働者受け入れや、労働者保護制度の規制緩和に反対する。
TPPにもかかわってアメリカが要求している食の安全を危険にさらす動きへの反対運動を強化する。関税自由化などによる農業、地域産業つぶしを許さず、食料主権を守り自給率向上を求めてたたかいを進める。

(5) 公害、地球温暖化対策と再生可能エネルギーへの転換を求め、諸団体との連携と共同を強める。
  温暖化ガス削減を求める運動を強め、公害裁判早期解決の運動を支援する。
産業界の巻き返しで後退させられたCO2の25%削減の要求実現に向けた国内の運動を継続して進める。「原発に依存せず、自然エネルギーへの転換」を求め、広がっている自然再生可能エネルギーの普及と活性化をめざして取り組みを強める。
水俣病の全員救済を求める取り組みや、イレッサ薬害など公害闘争に連帯する。

(6) 災害被災者救援と生活再建に向けた支援制度の拡充を求める取り組みを進める。
  東日本大震災被災者の救援と復興に向け、東日本大震災労働者対策本部での共同を重視し、全国災対連の運動とも連帯して取り組みを進める。
支援制度の拡充と人間の復興の立場で復興闘争を推進する。
4、 改憲策動を許さず、核兵器廃絶、安保破棄をめざす取り組み
(1) 改憲手続法が施行され国会法改悪など解釈改憲の条件整備も進められるもとで、改憲反対にねばり強く取り組む。
  すべての課題と結んで、憲法がいきる職場と地域の実現をめざす取り組みを展開する。
「戦争をする国」の人づくりを進める教育の反動化に反対して、国民運動に結集する。
「秘密保全法」、「マイナンバー法案」など、基本的人権を侵害し、監視社会強化の策動に反対する。

(2) 共同センターでの地域共同などを重視する。
  職場、地域、分野から「九条の会」のアピールに応えた幅広い共同を広げる。
全自治体をカバーする共同センターの確立を引き続き追求する。節目ごとの学習会や宣伝行動を呼びかけるなど継続的な運動を進める。
「憲法が輝く日本を署名(仮称)」の具体化を検討する。
「憲法改悪に反対」の一点での労働組合間の共同拡大を追求する。

(3) 在日米軍基地の再編と自衛隊の機能強化に反対する取り組みを強める。
  「普天間基地無条件撤去を求める連帯行動」の全国的なたたかいへの発展をめざす。
安保破棄、在日米軍基地撤去を課題にした集会、学習会を全国連鎖で開催する。

(4) 核不拡散条約(NPT)再検討会議の成果をふまえ、核のない世界をめざす国内・外の運動との連携をさらに強める。
  「6・9行動」や原水爆禁止世界大会、国民平和大行進、3・1ビキニデーなどの発展、継続に尽力する。
外国労働組合との交流や、世界の労働組合に向けた非核兵器地帯条約の促進を訴えるアピールの発出、単産・地方組織の協力も得た「被爆写真集送付運動」などに取り組む。
5、 政治の民主的転換をめざす取り組み
(1) 一致する要求での共同を広範に追求しつつ、国民本位の政治経済と非核・非同盟・中立・民主の日本を実現する統一戦線樹立をめざすとした全労連綱領にそった取り組みを強める。
原発、TPP課題などでの「一点共闘」を大切にしつつ、政治革新をめざす共闘への発展を労働組合の立場で模索する。
地方自治体の首長選挙などでは、住民の暮らしと福祉を守る民主的な自治体建設をめざしたたたかいを積極的に展開する。
全国革新懇への結集を強めるとともに、各組織でも積極的な位置づけを行い、職場・地域から革新懇運動を広げ、政治の民主的転換を求める世論喚起の取り組みを強める。

(2) 「雇用と社会保障を中心におく日本」をめざした労働者要求の実現の立場に立ち、政治の転換、国政革新、地方政治革新をめざし、総選挙、参議院選挙をはじめ労働組合としての選挙活動を強める。
特定政党支持の押しつけや組織ぐるみの選挙に反対する。企業・団体献金の禁止を求めて取り組みを強める。
国民主権を侵害する議員定数削減に反対する。公務員の政治的自由の回復を求める。
6、 世界の労働組合との連携、共同の取り組み
(1) 核兵器廃絶を求める取り組みと多国籍企業の横暴規制強化の取り組みの二つを軸に、二国間組織の共同を引き続き進める。
政府・財界のアジア戦略ともかかわって、とりわけアジア各国のナショナルセンター、産業別組合などとの共同と連帯を追求する。

(2) ITUC(国際労働組合総連合)が呼びかける国際連帯の行動にも留意した国内運動を組織する。
WFTU(世界労働組合連盟)の産別組織と関係のある国内産別の取り組みに必要な援助を行う。
第6章 統一闘争、総対話と共同を柱に全労連組織の強化拡大をめざす
1、 「新中期計画」をもとに、すべての組織が拡大強化の計画を具体化
(1) 単産・地方組織のすべてで、4年間で10%以上の純増を実現する目標と計画をもって取り組みを開始し、すべての組織が増勢を実現する

(2) 組織拡大推進特別会計」を活用した「総がかり作戦」などを具体化する。
単産と地方組織の連携による「総がかり作戦」は、2012年度を準備期間とし、2013年度から本格的に実施する。
5,000人未満の地方組織について、単産との連携を促進し、「総がかり作戦」など統一行動を進める。

(3) 各単産は、1.職場組織の過半数以上の組織化、2.友好関係にある組合の結集、3.空白県における加盟組織の立ち上げ、4.関連する業種の未組織労働者の組織化対策、などを基本においた計画を策定して取り組む。

(4) 地方組織は、1.地方・地域労連に未加盟の全労連傘下労組の計画的結集、2.非正規労働者を含む未組織労働者の加入促進、3.組織化の受け皿となる常設労働相談センター、ローカルユニオン、地方共済会の確立・強化などを基本に、各地方での目標と計画を確認して取り組みを進める。
地方ブロック単位での組織拡大交流会(オルグ養成講座)などを開催し、単産と連携した組織拡大運動の推進をはかる。

(5) 正規労働者とパート・臨時・派遣などの非正規労働者、あらゆる階層の未組織労働者を対象にした旺盛な「総対話」運動に取り組む。
春闘時に、「アンケート」や要求実現署名などを活用して、職場内外の未組織労働者との「100万人総対話運動」に挑戦する。

(6) 組合員拡大と結合した加入者拡大、組織共済加入者の個人共済加入促進、未加盟の単産と地方組織への働きかけなど、全労連共済の基盤拡充の取り組みを進める。
単産共済との共通制度の検討など積極的な制度改善を検討する。

(7) 友好・中立組織との要求にもとづく「共同」と「連帯」を大きく広げる。重点課題での取り組みでは、友好・中立組織訪問活動を具体化して共同の前進をめざす。
国民春闘共闘委員会や労働者課題での共同を重視し、東京地評、純中立労組懇との連携、MICなどとの共同をいっそう発展させる。

(8) 春闘、秋闘などの闘争期間を中心に、単産間共闘、単産と地方組織間の共闘を重視し、統一闘争などの前進をめざす。
経済のグローバル化ともかかわって労働組合への攻撃が強まっていることから、単産、地方組織、弁護士等の協力を得て、「労働組合の権利委員会(仮称)」を設ける。
2、 次を担う活動家の育成に本気になって取り組む
(1) 未来の労働組合の担い手となる次世代の育成が急務となっている。
非正規・青年・女性労働者の組合運営への参加をすべての組織で重視する。
全国的な規模で開催していた初級講座を発展させ、「組織拡大推進特別会計」を活用して、次を担う活動家の育成に焦点をおき、地方ブロック単位を基本に「労働学校(仮称)」を開催し、地方組織 単位での開催につなげる。
「労働学校(仮称)」では、全労連教科書の活用と労働者教育協会との連携を深化させ、体系的な組合員教育の実践をめざす。

(2) 全国的な労働相談体制の日常的な充実をはかり、単産での非正規労働者の受け皿づくりや地方組織におけるローカルユニオンなどの確立・強化を進める。
地方組織でのパート・臨時労組連の確立、単産での非正規部会等の確立を進める。

(3) 全労連と単産・地方組織一体で、男女共同参画の目的意識的な追求と条件整備を進めるために、「男女共同参画推進委員会」を設置する。
規約にもとづく全労連大会や評議員会、諸会議への女性参加比率の向上、単産・地方組織の女性役員比率の向上を追求する。
単産、地方組織の若手活動家のネットワークづくりを検討する。
3、 全労連のナショナルセンター機能の強化に取り組む
(1) 中的、機動的な組織拡大運動をサポートし、重点課題での集中した取り組みを効率的に進めるため、全労連運営の機動性を高める。統一闘争強化の立場から、行動点検などの取り組みを強める。

(2) 全労連の政策・要求を充実させるために、単産・地方組織、労働総研、研究者などの協力を得て課題別の「政策委員会」を具体化する。

(3) 定期刊行物、宣伝資材などの改善に努力するとともに、情報サービスの迅速化、連絡(通達)の効率化をはかる。全労連新聞、月刊全労連の充実を追求し、普及を促進する。

(4) 組合員への情報の伝達、労働者への全労連情報発信のあり方などについて見直し検討を進める。

(5) 非正規労働者の要求実現と組織化を推進する「非正規雇用労働者全国センター(非正規センター)」の機能強化に取り組む。

(6) 中期計画の重点課題のうち、「特定事業」を推進する全労連財政は、単産・地方組織の拠出による「特別会費」と全労連一般会計からの繰りだしによる「組織拡大推進特別会計」でまかなう。
組織拡大と体制強化を進めていくうえで全労連、単産、地方組織それぞれで中期的な見通しをもった財政基盤の確立計画が必要であり、単産、地方組織の協力を得て検討委員会を設置する。

  以 上