全労連第26回定期大会 2012年7月29日〜7月31日
全労連議長あいさつ

2012年7月29日
全労連議長 大黒 作治

写真 全労連幹事会を代表して第26回定期大会開会にあたってのご挨拶を申し上げます。大会成功に向けてご参加頂いた大会代議員、傍聴者の皆さん、大変暑い中ご苦労様です。また、お忙しい中、私どもの大会に激励に駆けつけていただいた各団体の皆さんに感謝申し上げます。

 さて、全労連第26回定期大会の任務は、まず第1に、野田内閣の暴走を止めさせるために、全労連がどのような役割を果たすのかの意思統一を図ることであります。民主党政権は、もともと新自由主義的側面を持っており、野田内閣は「構造改革」をいっそう露骨に進める内閣だと規定したとおり、今年に入って「消費税増税に命をかける」と言って「税と社会保障の一体改悪」を強行し、原発再稼働を打ち出し、8月にもTPPへの参加を表明すると言われています。
 参議院でこの一体改悪が審議されていますが、消費税増税が社会保障のためという口実は論拠が崩れ、3党合意が「防災」に名を借りた大型公共事業の復活であり、社会保障を切り下げることがますます明らかになってきたと思います。
 原発再稼働をめぐっては、この間毎週金曜日に首都圏反原発連合有志の首相官邸前抗議行動への参加の呼びかけに、普通の市民が10万人、20万人と集まって「原発再稼働反対」「原発なくせ」と声をあげています。本日は、全労連が事務局を担っている「原発をなくす全国連絡会」も加わって呼びかけている、デモや国会包囲行動が行われます。アラブの春や99%運動など直接民主主義を求め る行動が日本でも高揚し、普通の市民が誰でも参加できるこの行動は、今や各地の電力会社の社前などへと広がっています。今後もこれらの行動は持続的に発展すると思います。
 なぜなら、保安院が原子力安全委員会に提出したストレステストの報告は、北海道泊原発1号機、四国電力伊方原発など22基にも上り、野田内閣は、創設された原子力規制委員会の報告を受けて、すでに起動している大飯原発を除く残り20基の原発再稼働を許可する腹積もりであることは容易に想像でき、多くの参加者が、「再稼働断念まで続ける」とその思いを語っているからです。海外のメディアもこの行動に全労連も関わっていると報道していますが、未来を見つめる国民の本当の怒りが行動となって表れていると思います。
 さらに、野田首相は、TPPへの参加表明を8月末にも行うことが取りざたされています。TPP参加反対の闘いも、JA中央や日本医師会などとの共同が全国各地で広がりを見せ、TPP参加が農業崩壊や食糧主権の問題にとどまらず、医療・保険・金融など国民生活に深くかかわる分野で、アメリカに屈する政府の姿勢が指摘されています。さらには、死亡事故が絶えないオスプレイ配備についても、岩国基地や普天間基地だけでなく7ルートの低空飛行訓練による危険性と爆音被害など自治体ぐるみで配備反対の闘いが広がっています。
 全労連は、これらの国民的な闘いに深くコミットしており、1点共闘や共同の広がりを「多角的重層的な共同」へと発展させるために、行動の統一などを調整するナショナルセンターとしての機能と役割が求められています。これらの行動は野田内閣と3党連合、財界へと怒りが向けられており、すでに「なめたらとんでもないことになる」と危機感を持つ議員の声も紹介されているように、国民的な怒りの広がりと重みを受け止めさせ、国民無視の暴走政治の転換に向けて全力を挙げたいと思います。

 第2は、働く者への重大な権利侵害と雇用破壊に対して、労働運動としての役割発揮を中央・地方でどの様に追求するかであります。財界・大企業の横暴はここへきて際立っており、規制緩和と構造改革路線を一層露骨に推し進める仕組みを作り上げようとしています。今年3月に、労働者派遣法が3党合意によって、骨抜きにされ改悪されました。また、直近では、労働契約法が衆議院で可決され、5年有期から無期雇用へ転換される保証は全くなく、直前の雇止めやク―リングで免れる仕組みの法案です。さらに、7月11日の国家戦略会議では、「雇用は『有期を基本』に」との分科会報告が確認され、野田内閣は「雇用は正社員を基本とする」立場を投げ捨て、今後この取り扱いの具体化を進行させようとしています。非正規雇用で働く仲間が1800万人を超え、「ワーキングプア」が1100万人を超えている中で「貧困と格差」の広がりはますます深刻であり、政府・財界が言う「有期の雇用契約を通じた労働移転の円滑化」とは真逆の、生活できる賃金と人権が保障され「雇用の基本は正社員」という当たり前の状態を確実に広げなければなりません。
 この間、いすゞや日産など大企業の「派遣切り」と闘ってきた裁判やJALの不当解雇に対して不当判決が相次いでいます。旧社保庁職員の分限解雇も審査のヤマ場に差し掛かっており、法廷闘争を重視しつつ、原告団に対して全国的な支援と連帯を強めることが必要です。「定年まで正規で働く」ことが原則のある雇用形態から有期雇用への大転換を狙う政府、経団連の後ろ盾があることを明らかにしながら、すべての争議解決に向けて、支援を大きく広げていきたいと思います。国家公務員の賃下げに対しても国公労連の皆さんが損害賠償で提訴し、神奈川では最賃裁判を起こしています。私達は、あらゆる機会を通じて生活できない最賃、不当な賃下げや解雇は、国民全体を低賃金と無権利状態に落とし込む露払いであることを告発し続けるとともに、春闘の広がりに力を注ぎ、賃上げや最賃引き上げ、均等待遇などの実現に向けた闘いを強めていきます。
 25日、中央最賃審議会は、全国平均7円増額して744円とする極めて不十分な「目安」を出しました。今後各地方で大幅な引き上げを求める闘いを強めなければなりませんが、2年前に政労使で合意された「出来るだけ早期に平均1000円」を実現させるために、世論を広げることが求められています。
 また、この間、野田市から首都圏に広がってきた公契約適正化運動と最賃引き上げを結んで、全国的に地域の仕事起こし、経済再生、まともに暮らせる賃金・権利の確保に向けて拡充することが重要です。もう一つのナショナルセンターである「連合」は、「税と社会保障の一体改革」推進を掲げ、「原発再稼働」も政府方針を容認するなど企業内主義から生じる弱点が一層顕著になり、労働者の生活防衛や労働条件の改善のために力が発揮できていないと指摘される一因ともなっています。
 私達は、様々な困難な中でも、「安全・安心社会をめざす大運動」を二つの側面から追求します。一つは、国民的な課題での市民運動のかつてない高揚と連帯してたたかい、二つは、労働運動の発展に向けて、「貧困と格差」の解消、雇用破壊や権利侵害をはじめとした不条理と闘い、賃上げをはじめとした諸要求前進に向けて力を合わせることです。

 第3は、この大運動を確実に発展させるには、全労連組織の拡大・強化、次の世代の成長と学習運動の強化が不可欠であり、そのことを視野に入れた新しい中期計画(案)と特別会費の徴収を提案します。
全労連の現勢は、114万人余です。今年も団塊の世代の退職時期と重なって、2万名弱の組合員が減ってはいますが、この1年間では、各産別・地方の皆さんの奮闘によって過去最高の10万人以上の組合員の拡大につなげています。この勢いをさらに発展させ、1日も早く増勢へと転じ、中期計画にある150万全労連の目標達成に努力したいと思います。
 では、その条件と可能性はどこにあるのか、昨年秋の「2011全国集会」では、四つの挑戦を明らかにしました。労働者・国民の中にある「貧困と格差」の実態の告発、もっとも困難な状態にある労働者に目を向けた賃上げや最賃の大幅引き上げ、公契約の全国展開など目に見える成果を勝ち取る、雇用創出と雇用の安定など働いて人間らしく暮らせる制度を政府に求め、広範な労働者との総対話と共同を地域から積み上げることを確認してきました。
 高まる社会的運動との連帯を強め、春闘や「働くルール」の確立に向けた闘いのなかで、組織の拡大・強化を位置付け、次世代の成長に援助を惜しまないことだと思います。
 3.11大震災と福島原発事故が引き金となって、社会のあり方が大きく問われ、多くの労働者・国民が直接行動に立ち上がるという大きな変化の中にあって、暮らしの向上と平和を求めて国民的共同を追求する全労連の役割は一層重要となっています。大いにやりがいを持って奮闘しようではありませんか。
 最後に、来年にかけて、総選挙と参議院選挙があります。そして、2年後は統一地方選挙の年でもあります。民主・自民・公明の3党連合、新しい政党や維新の会などにメディアが騒いでも、増税と社会保障の改悪、原発再稼働、TPP参加、オスプレイの配備など、財界とアメリカ言いなりの政治から脱却しない限り、暮らしと平和を守り、安全・安心な社会への確かな道筋は描けません。憲法をいかし、「働くルール」の確立と「雇用と社会保障を中心におく日本」をめざした運動と共同の拡大に向けて奮闘したいと思います。「希望に輝く未来のために」と誕生した全労連の原点に立って、大会代議員の皆さんの活発な討論と新しい役員体制の確立をお願いして挨拶といたします。