T 労働組合の新たな試練と飛躍への可能性
1.全労連結成の歴史的意義
(1)1989年11月21日、激動する世界情勢、日本の政界と労働戦線再編成のなかで、二つのナショナルセンターが結成された。「労資協調」「反自民・非共産」「国際自由労連加盟」の三つを加盟の前提条件とする連合と、「資本からの独立」「政党からの独立」「一致する要求での行動の統一」を三原則にかかげた全労連である。全労連の結成は、労働組合の右翼的「統一」に期待を寄せた政府・財界にとっても、階級的ナショナルセンターの誕生を待ち望んだ労働者・国民にとっても、わが国の戦後史に一頁を記す選択となった。
(2)全労連は、その存在と活動を社会的に封殺しようとする政府・財界の攻撃をのりこえて、わが国の階級的ナショナルセンターとして初めて、16年以上にわたり運動と組織を前進させてきた。大企業の横暴と巨大な内部留保を社会的に告発し、職場・産別・地域のたたかいを結合して展開してきた国民春闘やリストラ反対闘争、権利闘争、広範な国民・団体とともに全国に運動を広げてきた社会保障闘争や平和運動など、「もし全労連なかりせば」を考えた時、全労連結成の歴史的意義は誰も否定することはできない。
(3)組織的には、経済グローバル化のもとにおける国際競争力の強化を口実に、「三種の神器」の崩壊、大企業のリストラ「合理化」のもと生産拠点の海外移転などで、公称800万人で発足した連合は大幅な組織減を余儀なくされた。全労連は、中小企業経営をめぐる未曾有の危機のなかでも結成時の組織人員をほぼ維持してきた。政府や財界、マスメディアなどによる差別と選別、全労連「シフト」を、単産と地方・地域の統一した運動を前進させながらかちとってきた貴重な到達点である。
2.破壊される雇用、生活、権利
(1)全労連結成の歴史的意義は明らかだが、同時に労働戦線再編後の労働者をとりまく環境が著しく悪化している事実も直視しなければならない。あいつぐ労働諸法制の改悪ともあいまって、徹底したコスト削減、正規労働者の人減らし、低賃金・無権利の非正規雇用への置き換えが強行されてきた。その結果、依然として300万人をこえる完全失業者、7年連続して低下する賃金水準、過労死やサービス残業を生みだすルールなき資本主義、社会保障制度の解体が進行している。大企業は、史上最高利益を謳歌しながらリストラ・「合理化」を激化させる一方、どんなに利益をあげてもいっさい賃上げしない。
(2)こうしたもとで、格差の拡大と貧困化の新たな社会状況がつくりだされている。この10年間に正規労働者は395万人減少し、非正規労働者が593万人増加したが、非正規労働者の8割近くが年収150万円以下という最低限の生計費も保障されない異常な事態が進行している。このことが、正規をふくむ全労働者と国民の状態悪化につながっているばかりか、年金、医療など社会保障制度の支え手を減少させるとともに、少子化の加速など日本社会と経済の発展を阻害する深刻な事態をもたらしている。
(3)また、労働組合の組織率は労働戦線再編成後も下がり続け、2005年にはついに18.5%にまで低下した。この経過のなかで、2003年9月12日に中坊公平弁護士など7氏からなる「連合評価委員会」が出した最終報告は、日本の労働組合の現状を的確に指摘した。その内容は、『連合は大企業で働く男性正社員の利益のみを代弁し、労使協調路線にどっぷり浸かっている』『労働運動の理念・思想を原点にたちもどって再構築せよ』『社会の不条理に対してたたかう姿勢を持ち行動せよ』などというものであった。もちろん、全労連は「大企業の男性正社員中心」の「労資協調路線にどっぷり浸かった」組合ではない。企業・産業を超えて総対話と共同を追求し、社会の不条理に対してたたかう姿勢を貫いてきた。
(4)しかし、その全労連の主張とたたかう姿はまだ多くの労働者・国民の眼に届いていない。政府や財界が、日本を「戦争する国」につくりかえようと、憲法と教育基本法の改悪、米軍基地の再編強化、日米軍事同盟の地球規模への拡大をたくらんでいる重大な情勢のもとで、労働者の生活と権利、日本の平和と民主主義の前進をめざして結成された全労連の役割発揮が、今こそ求められている。
3.求められる労働組合の改革
(1)21世紀の初頭、日本の労働組合は新たな試練に立たされている。全労連の結成と16年間の運動で、組織の中軸を担って奮闘してきたのは、いわゆる「団塊世代」の組合員であったが、いまその仲間が50歳代の半ばを過ぎ、まもなく定年を迎える年代に達している。その量は、おそらく毎年数万人規模にのぼるものと推測される。こうしたなかで、全労連運動と組織をいかにして次世代に引き継ぎ、さらなる飛躍につなげていくのか、まさに重大な試練に直面していると言わなければならない。
(2)また、16年にわたる全労連運動を振り返った時、全労連の組合といえども、①根強い企業内意識が残されていないか、②男性中心の役員構成になっていないか、③正規労働者を対象とした活動にとどまっていないか、④幹部請負ではなく全員参加の運動に成功しているか、⑤機械的な抵抗・対立型の闘争から脱却しているか、などについて率直な自己点検が求められる。日本の労働組合運動がかかえている共通の問題点との視点から、求められる改革の道を探求していかなければならない。
(3)さらに、全労連運動は組織力量の限界から発生する困難にしばしば直面してきた。政府や財界は全労連がどんな要求政策を提起しようがまともな交渉に応ぜず、マスコミはどんな行動を展開しようとまともに報道しない。その背景には、全労連が日本の全雇用労働者の2.4%、組織労働者の12.7%にとどまっている組織人員の問題があることを認めざるを得ない。また、全労連の多くの単産では全都道府県に組織を確立しておらず、産業に対する影響力に「限界性」をもっている。
4.労働組合運動の新たな前進への可能性
(1)21世紀の初頭、職場ではこれからもリストラ「合理化」の嵐が吹き荒れ、企業は利益をあげても賃上げをいっさいせず、業績主義賃金などによって労働者を差別・分断する資本の攻撃がいっそう強められてくることを覚悟しなければならない。政治的にも、「保守二大政党論」がはびこるなかで、戦後労働組合運動の「拠り所」であった憲法の改悪策動が本格化し、さらに社会保障制度の全面的な解体や消費税の増税など、徹底した国民収奪が強まることも予測される。まさに労働組合の真価が問われている時代が続くだろう。
(2)しかし、全労連の運動・組織の飛躍の展望は、まさにその時代認識のなかにこそある。人間らしくあたりまえに働き生きる権利さえ奪い去ろうとする資本の攻撃が強まるもとで、「もうガマンできない」「労働組合に結集し団結してたたかおう」と立ち上がる労働者の行動が、全国のあちこちの職場・地域で芽生えている。ここに、日本労働組合運動の再生の土台があるし、結成16年のたたかいを通じて着実に高めてきた社会的役割ともあいまって、全労連の運動と組織の飛躍への可能性が秘められている。
(3)労働組合運動には、これからも幾多の困難が待ちうけているだろう。財界・大企業と国家機能が結びついた系統的で全面的な支配体制を打破することは容易な事業ではない。同時に、その攻撃は彼らの統治形態をも急速に突き崩しつつあり、すべての加盟組織と組合員が団結してたたかうならば、かつて経験したことのない飛躍をかちとることができることに特徴がある。労働者と国民が直面している雇用、生活、権利の破壊、平和と民主主義の危機を直視するなら、組織の拡大・強化と改革は決して後戻りの許されない歴史的任務であり、不退転の決意をもって挑戦することが求められる。
U 組織的飛躍にむけた「4大目標」と戦略
(1)全労連は、2000年7月に開催した第19回定期大会において、2010年までに到達すべき中期目標として「21世紀初頭の目標と展望」を提起し、このなかで日本労働組合運動の壮大な統一を追求していく姿勢を明確に打ち出した。そして、その展望を切り拓くためにも労働戦線「統一の母体」として全労連の主体的力量強化をはかることが決定的に重要であることを強調した。ここに提案する組織建設の目標は、「21世紀初頭の目標と展望」にそって、2010年までに達成をめざすものである。
(2)その量的目標は「500万全労連」を基本目標に据えつつ、当面2010年までに「200万全労連」を実現することである。これは日本の雇用労働者5,416万人の3.7%にあたる。組織拡大推進基金とも結合して全労連と単産、地方・地域が一体となって達成をめざす。
1.「大産別」も視野に単産の拡大・強化の追求
(1)全労連は、日本のナショナルセンターとしては初めて、単産と地方組織を対等平等の加盟単位として結成された。しかし、現実的に組織体制や財政の中軸を担っているのは単産である。その単産が、全国すべての地方で組織を確立できていないことは、ナショナルセンターの最大の組織的課題となっている。
(2)①現行の単産組織人員(94万1,358人)を2010年までに140万人(50%増)に到達させること、②すべての都道府県に単産の地方本部を確立すること、③すべての組織が職場での多数派形成をめざすこと、④中立・友好単産の加入を促進することを目標とする。同時に、産業構造がダイナミックに変化し、ボーダレス化が進行するもとで、その変化に対応できる組織的対応が求められており、「大産別」を視野に入れ全労連がイニシアティブを発揮して2010年を目標に類似産業の単産統合を追求する。
(3)非正規労働者や委託労働者も組織化の視野に入れ、すべての単産が2010年までに産別規約の見直しや「個人加盟」労組の確立をはかる。また、基幹産業における主要企業の社会支配力が強まるなか、たたかう労働組合の拠点を築くことが重要になっており、それに対応できる組織形態を検討する。大企業内で奮闘している少数組合に対する支援を強め、現実に立脚した政策の優位性で「要求での多数派」形成を重視した運動を推進する。
2.地方・地域に密着した組織づくりと拡大運動の推進
(1)政府は全労連結成から10年間にわたって、組織人員を100万人未満で発表してきた。これは、政府がナショナルセンター組織人員を中央単産のみによって集計し、地方・地域組織を通してナショナルセンターに加盟している組合員を意図的に除外してきたからである。2000年からこれが改善され、地方組織単独加盟の組合員もカウントされるようになったことから、全労連が100万人をこえて発表され、ILO労働者代表の選出や労働審判員の任命などにつながってきた。
(2)したがって、地域の膨大な未組織労働者の組織化、未加盟・中立組合の加盟を推進することは地域からの運動前進にとって重要であるばかりか、ローカルセンターの社会的地位を向上させるうえでも不可欠の課題となっている。2005年6月現在35万6,181人である地方・地域組織単独加盟の組合員を2010年までに60万人に到達させることを目標とする。
(3)①人口20万人以上の地域には必ず地域労連を確立し、専従者配置を追求する。②すべての地方組織で、地方・地域労連に未加入の全労連傘下労組の計画的結集をはかる。③非正規労働者を含む未組織労働者の加入計画を確立する、④組織化の受け皿となる常設労働相談センター、ローカルユニオン、地方共済会を確立する。以上を基準にして組織拡大計画を立案する。
3.非正規労働者などの本格的な組織化の推進
(1)政府や財界が、グローバル経済下における国際競争力の強化を口実に、日本の労働者の賃金を「アジア水準」まで切り下げることをたくらみ、その手段として正規から非正規雇用への置き換えを大規模に促進しているなかで、パート、臨時、フリーター、派遣、請負などの形態で働く労働者はすでに全雇用労働者の3分の1以上になっている。しかし、非正規労働者の労働組合への組織率は3.3%にすぎず決定的に立ち遅れている。
(2)したがって、非正規労働者の本格的な組織化が日本労働組合運動の焦眉の課題となっている。全労連は、2010年までに、非正規労働者35万人の組織化をめざす。「補助組織」として「非正規労働者等部会」を立ち上げ、①パート臨時労組連絡会、②ヘルパーネット、③派遣・請負労働者連絡会等を設置し、担当の配置や一般会計による財政措置を検討する。単産は、「パート・臨時部会」などを設置して対応するとともに、可能な地方組織から「パート・臨時労組連絡会」「ヘルパーネット」を結成し、全国的な体制を整備していく。さらに、移住労働者などの組織化については、「外国人労働者連絡会」をつくり、全国的な移住労働者の組織化についての交流・指導・援助を行う。
(3)単産の下部組織やローカルユニオンに地域の非正規労働者の結集をはかる。派遣・請負・委託などの間接雇用労働者については、地域や業種に応じた横断的組織づくり、交流、要求集約をはかる。非正規労働者の団結、組織への結集を強化するためにも地域を軸とする職種別のスキルアップを目的とした専門教育や労働学校(塾)の開催、共済や福利厚生事業の充実に力を入れる。
4.青年、高齢労働者の組織化重視
(1)青年労働者の4人に1人以上がフリーター、派遣、パートなどの非正規労働者となり、低賃金で劣悪な労働条件におかれている。正規労働者も長時間過密労働など、厳しい競争と過酷な労働条件を強いられている。このような未組織の青年労働者の要求を実現し、労働組合に結集させることが全労連の焦眉の課題である。単産および地方・地域組織は、深刻な青年労働者の要求実現のため、他の青年団体などとの共同やローカル・ユニオンの拡大・強化などと連動して、青年労働者によるいわゆる「青年ユニオン」を作る。
(2)学生、青年対策を強化する。産業や職場、組合に応じたやり方で、働きがいや仕事のやりがいなどを語り、労働組合や労働者の権利を青年に知らせる活動に積極的に取り組む。青年組合員の加入促進、育成も労働組合自身の重大な課題である。2010年までにすべての単産・地方組織で青年組織を確立し、青年自らが青年労働者の組織化と要求実現運動を推進する体制を強化する。すべての労働組合が方針・予算・体制で青年対策の強化をはかる。
(3)高齢者雇用安定法の定年延長や年金支給年齢の引き上げにあわせて、職場での定年延長、雇用継続のたたかいを強化する。再雇用の場合でも、共済の継続や引き続き企業内の労組員としての資格を有することが出来るよう規約等の整備をはかる。
(4)定年期を迎える「団塊の世代」は700万人以上といわれる。年金者組合や、各単産の退職者組織(OB会や退職者の会)の拡大強化に全力をあげる。同時に各単産は経験豊かな役員が単産や地域などの組織化に引き続き関わっていけるような措置を講ずる。
V チャレンジ5大改革−ナショナルセンター機能の強化
1.未来を担う人づくり
(1)教育大綱と「研修センター」の確立
古今より「組織は人」と言われてきた。21世紀を担う人材養成にむけた労働者教育が焦眉の課題となっている。ナショナルセンター論を中心とした「全労連教育大綱」を確立し、大綱にもとづいた労働者教育のテキストの作成、講師団の整備を行ない、全労連「組合員教科書」を積極的に活用して系統的な教育学習講座を開催する。人材育成に関する当面の課題として、青年層と単産・地方組織の「専従者研修」に力を注ぐ。また、組織拡大を専門にとりくむ「オルグ研修」を独自に実施する。教育学習活動を推進する拠点として、「全労連研修センター」を設立するとともに、「全労連幹部セミナー」を主催し、次世代のあたらしい労働運動の担い手を育成する。
(2)機関紙・宣伝活動の抜本的改革
ホームページや機関紙・誌は全労連の「顔」であり、広範な労働者と全労連をつなぐパイプである。「紙」による宣伝媒体と同時に、ビデオなどの視聴覚媒体による教育宣伝、ホームページの充実などインターネットを活用した教育宣伝システムの充実を急ぐ。機関紙は定期購読を増やすとともに、時には全組織・全組合員を対象とした発行も視野に入れて、発行体制の改善を図る。内容についても、全労連の政策が誰にもわかり、労働者に勇気を与える内容に改善する。幹部活動家向けの「月刊全労連」の拡大と充実をはかる。
(3)青年・女性の組合幹部への登用
未来をになう青年の多数が労働組合運動に主体的に参加していくことは、団塊世代の組合員が退職期を迎えることを考慮すれば、喫緊の課題である。社会的不条理、不正義にたちむかう青年労働者集団を育成するための「幹部づくり」政策、多様な教育・学習プログラムを早急に具体化しなければならない。
また女性労働者が、すくなくとも全組合員中に占める女性の割合に比例して、組合役員として活躍できる社会的・組織的条件整備をいそぐ。各組織が年次計画をふくむアクションプログラムを設定し特別な体制をつくって推進する。
2.強大な財政基盤の確立
(1)ナショナルセンター機能拡充にむけた財政確立を
グローバル化と新自由主義が跋扈する中、労働者の切実な要求実現も個別企業や産別組織だけでは難しくなってきている。政府の悪政や独占資本の横暴とたたかい、労働者の希望に輝く未来をつくるために、ナショナルセンターの果たす役割はいっそう重要となっており、ナショナルセンター機能の拡充強化を保障する財政基盤の確立は、最重要の課題である。800億円とも言われる全労連組合員の組合費の有効な活用について、ナショナルセンター、単産・地方組織、職場組織が、真剣に検討する時期に来ている。当面、全労連結成時の「会費納入人員の基準は、組織人員の80%とし、厚生労働省・労働組合基礎調査報告を参考とする」という確認事項の徹底を図る。
(2)組織拡大に特別な財政措置を
組織拡大こそ要求実現の最大の保障であり、労働組合の命である。全労連は組織拡大基金の創設で全予算の20%を組織拡大にあてているが、引き続き同水準の財政措置を維持する。単産や地方・地域組織に至るまで、全予算の20%程度を組織拡大予算に計上する方向を追求する。
現在、取り組まれている組織拡大推進基金は予定通り2007年で打ち切る。しかし、組織拡大の重要性に鑑み、全労連・単産・地方組織が一体となった組織拡大のための新たな財政措置を検討する。
(3)共済制度・福祉事業の拡充
働くものの助け合い共済は、労働組合の原点である。全労連結成と結合して、産別共済と労働共済の設立・拡充をはかってきた結果、加入者は約80万に達した。2010年までに100万人加入を目標に、各組織における共済活動の抜本的強化にとりくむ。特に、未組織 労働者や中立・単独労組の加入を視野に、2007年7月末までに全地方組織に地方共済会を確立する。ナョナルセンターとしての労働者福祉事業のあり方についても早期に検討に着手する。
(4)「国際交流基金」の創設
グローバル化が進む中で、アジアをはじめ諸外国の労働組合との交流連帯を深めるために国際交流基金の創設を図る。
3.求心力ある政策提起と社会的地位の向上
(1)全労連の政策活動の強化
政策作成・活動は、ナショナルセンターの存在意義にかかわる重要な機能である。道理ある政策提起が、ナショナルセンターの求心力と社会的立場を高め、組織拡大にも波及効果を及ぼす。矢継ぎ早に繰り出される政府・財界の国民生活破壊政策への政策批判や対案作成など基本的な対応を行ってきたが、今日の情勢に対応するには体制的にも不十分さを抱えている。「21世紀初頭の目標と展望」を実現する「働くルール」「最低保障」など、全労働者にかかわる社会制度の確立・充実にむけて、攻勢的・提案型政策づくりを強化する。そのために幹事会の下に恒常的な政策委員会を設置するなどの抜本的な体制強化をはかる。また、政策目標にもとづく労働実態の調査・分析、情報収集作業を定番化・サイクル化し、その集大成を適時、政策集などで発行する。
(2)グローバル化に対応した政策活動
グローバル経済の進行はさまざまな犠牲と歪みとなって労働者・国民に襲いかかってきている。富めるものと貧しいものの格差が拡大し、無原則な規制緩和が雇用を破壊している。世界市場を舞台に利益の最大化を追求する資本のこれらの攻撃に対置した政策提起が求められている。新しい国際経済秩序の確立にむけ、多国籍大企業の民主的規制、IMFなど国際金融機関に対する政策、自由貿易協定問題(FTA)に対する政策を確立する。
(3)各種審議会委員の獲得
政府は、政労使で構成する国内のすべての審議会と中央労働委員会の労働者委員任命などから全労連を排除している。政府のこの姿勢が、地方にも大きく影響している。公正任命の実現を求める活動を強化し、当面、「最低賃金」「労働基準」などの審議会、中央労働委員会の労働者委員の獲得を実現する。また、労働審判員制度の発足にともない、厚労省「労働組合基礎調査報告(労組法適用)」に基づく労働審判員の任命を実現したが、引き続き審判員の養成をはかり、持続的・継続的な任命をめざす。
4.全労連ネットワークの確立
(1)情報通信網の確立
2007年を目途に全労連、単産、地方・地域組織をつなぐネットワークを完成する。このネットワークを活用した情報収集、開示、伝達、共有化を進めるとともに組織拡大にも結びつける。
(2)全労連応援団の拡充
全労連は政策の策定、教育宣伝、争議指導など、多くの面で労働総研を中心とする学者グループ、弁護団などの援助を受けてきている。これらの輪をいっそう拡大強化するため、産業別に活動している研究所などを含め、系統的・目的意識的な連携・拡充を追求する。同時に社会保障・憲法・平和など国民的課題で協力共同している民主勢力との関係も大胆な強化をはかり、政府・財界の攻撃に真正面からたたかうことのできる戦線の再構築をはかる。
5.新しい労働組合運動のあり方を求めて
(1)企業主義の克服
日本の労働組合運動が、産別・全国的で大規模な運動に発展しきれないできた最大の要因は、「企業内主義」的な弱点にあると指摘されてきた。いまや職場や企業内だけでは解決できない課題が山積してきている。個別企業における要求闘争と結合して、制度・政策闘争に職場からとりくみ、地域・産別統一行動への結集と運動づくり、ナショナルセンター規模での統一闘争へ発展させる活動を系統的・意識的に追求する。
(2)すべての労働者を視野においた運動
雇用労働者の3分の1に達し、さらに激増を続ける非正規労働者の存在は、パート・臨時をはじめ派遣、請負・委託など、労働者構成をいっそう複雑にしながら、職場内でますます重要な役割を果たしてきている。しかし、その要求は長く放置されてきた。正規労働者との賃金・労働条件などの格差も著しく、「均等待遇」のたたかいが喫緊の課題となっている。正規労働者とパートなど非正規労働者が一体となってたたかうことが求められる。そのためにも、「すべての労働者を視野においた運動」づくりや組合運営を進める。当面、パート・派遣など多様な雇用形態に対応した労働組合づくりを進める。
(3)男女共同参画型の追求
女性労働者が全雇用労働者の4割を占める実態にある。こうした実態をふまえて、男性中心型から男女共同参画型へ運動やスタイルの転換が求められており、世界の趨勢となりつつある。また「男女共同参画型」の組合活動推進を通じて、「労働組合」の社会的領域拡大にもプラス効果を与えるものである。こうしたもとで全労連は、組織の各級機関への女性の参加、女性役員数の増加などを目標に、単産・地方組織で「ポジティブ・アクションプログラム」を作成し、実践する。
(4)「全組合員参加」型の運営と運動
組合民主主義を軽視する組合運営、上部団体の「指令待ち」の活動スタイルが少なくない組織に残っており、運動の硬直化や青年の組合ばなれに結びついている。改めて「全組合員参加型」の運営を徹底し、組合員を主人公として、多種多様な労働者の意識・要求に対応できる組合機能を充実させる。同時に幹部請負を改め、全組合員参加の活動を追求する。
(5)「政策重視型」労働組合へ
「資本と対決する」という労働組合の戦闘性を堅持する。同時に「職場と雇用を守る」ために労働組合の政策を積極的に対置してたたかうことが求められている。また、一致する要求・政策に基づいて政府・財界の横暴に苦しむ中小企業・地方自治体・医療福祉団体等との、広範な共同を追求する。
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