全労連第20回大会 総括答弁
| TOP | BACK |


 総括答弁


総括答弁

全労連事務局長 坂内三夫

 3日間の熱心な討論に感謝する。賃金要求のあり方や組織拡大基金の創設に関わって補強や修正を求める意見も出されたが、いずれも修正案としての提案ではなかったので、幹事会の総括答弁を含めて原案通り採決してほしい。

 発言者は74人であった。時間の関係から18人に文章による意見提出に切り替えてもらったが、これも議事録に収録する。

 全労連結成直後の大会などでは、自ら主体的にどう運動を展開するかというよりも、連合や政府や大企業を批判することによって自らの正当性を強調するような発言、傾向もややあったように思うが、12年間のたたかいの歴史を刻んで、相手がどうこうではなしに、自らが運動と組織の主体者として、どうたたかってきたのか、たたかっていくのか、地に足がついた発言、しかも確信に満ちた討論が正々堂々と行われた。

 意見の違いも、基本的な路線の対立ではなく、全労連運動の前進、日本労働運動の発展、国民運動をいかに前進させるのか、そのためにいま何をなすべきなのか、共通の方向性、認識に立った補強意見であると受け止め、今後の全労連方針に誠実に生かしていく。

【賃金闘争】
 21世紀の国民春闘、賃金闘争をどう活性化するのか、賃金闘争のあり方をめぐって24人が発言。これまでの大会以上に深い積極的な討論が行われた。

 承知のように、全労連は99年春闘までは組合員の要求アンケートをもとに、その三分の二ラインなどを基準に、統一要求目標35,000円以上を掲げてきた。

 この三分の二ラインが99年春闘で一挙に29,290円にダウンし、その時初めて大議論になった。アンケートで額が下がったのをふまえて35,000円を30,000円にしたらどうかという問題提起に対して、下がったのは討議が弱いからだ、生活実態や生計費原則などを考えると絶対に下げるべきではないという主張もあった。こうした意見の違いがあって、春闘共闘の場でも要求額についての一致が困難になった経緯がある。三分の二ラインは、今日では21,363円になっている。
 こうした問題をふまえて、要求の主体者はだれか、額を決める場合の一つのルール、基準についてどう考えのか、ぜひ検討してほしい。

 全労連は平均要求の役割を否定しているのではない。賃金闘争を、だれでもどこでもの底上げ要求を柱に、最賃闘争、そして水準の引き上げ要求、さらに非正規労働者の時間給要求、男女格差・中高年格差・能力主義賃金など差別賃金の是正、これらを総合的なたたかうことが重要だということでは基本的な考え方は一致している。したがって、平均要求を否定しているかのような誤解を受けるとすれば、平均要求について全体の合意が得られる方法論があるのであれば、具体的積極的な提案をするよう検討をお願いしたい。
 全労連に設置する賃金専門委員会での検討を含めて、継続的な議論をしていきたいと考えている。

 賃金要求についての意見の違いについて、春闘討論集会や大会の前に調整をとの発言があったが、調整して決着がついていれば大会にまでもちこまない。意見の違いは労働組合にままあることであり、大会でもどこでもそれを正々堂々と論じあうことも大切だと思っている。大会の前に単産・地方組織代表者会議などで意見交換の場を、という意見については検討したい。
 公契約やリビングウェイジ運動で先進的とりくみのあるアメリカへ調査団をという提案は検討してみたい。

【リストラ反対、雇用闘争等】
 この課題ではサービス残業や過労死問題、中小企業や地域金融問題、地域経済問題、労働法制問題を含めて22人の発言があり、これも討論の特徴であった。

 運動方針提案の際にも強調したが、資本主義体制そのものの綻びを象徴するような出来事がいろいろな分野で起きている。リストラ・合理化しかり、金融機関の破綻しかり、地域経済や産業の空洞化しかり、企業のモラルハザードしかりだ。

 大事なことは、目の前の攻撃、現実はたしかに厳しいものがあるが、財界のグローバル戦略、大企業のリストラ競争、生産拠点の海外移転などは、それ自体が資本主義あるいは大企業の存立基盤をも突き崩す根本的な矛盾をもっていることだ。雇用の減少と労働者の生活悪化、中小企業の淘汰を招くリストラ競争は、結局は日本経済の破綻、企業の存続をも危うくする以外の何ものでもない。栄華を誇っていたアメリカ式のニューエコノミーが、エンロンやワールドコムの破綻で一挙に崩壊し始めることも象徴的だ。

 したがって、NTT闘争をはじめリストラ・合理化反対闘争は、中長期的には必ず国民世論を結集して勝利する。その道を一日でも一歩でも早くし、たしかなものとするために労働組合の統一闘争と支援闘争が必要だ。大企業組合の多くがリストラ・合理化とのたたかいを放棄しているもとで、全労連の真価をかけたたたかいとしていっそう強化していきたい。

 働くルール確立署名について、単年度で1千万集約する気構えでとりくめという発言があった。気構えは賛成だが、実績は1年半で200万弱であり、決めたことは必ず最大限やりぬくということも必要だ。積極的とりくみを展開したい。

 メンタルヘルス、いのちと健康を守るたたかいについて、すべての都道府県でいのけんセンター設置を追求していくことを補強する。

 最賃と地域経済活性化での自治体決議運動の提起があった。最賃については大事な運動になるので補強する。地域経済の振興・活性化は決議がよいのか、提言し共同を広げる運動課題としてとらえるのかなどさらに検討していきたい。

 公務員制度改革や特殊法人の合理化、国鉄闘争、労働委員会をめぐる諸闘争についても多くの発言があった。市町村合併や自治体リストラがねらう本質を今日情勢に的確に合致する情勢論や運動論の補強をとの指摘については、積極的に受け止めて補強したい。

 純中立懇を代表した今井さんは、来賓挨拶で、国民統一ストライキの成功と中労委委員の獲得は全労連に対する未加盟労働組合の信頼をいっそう高めることになると強調された。10月の中労委労働者委員の任命について、民間担当の今井さんと国営企業等担当の藤田さんの任命を何としても勝ちとるために全力でたたかうことを改めて表明しておきたい。

 さらに今後、80数種類あると言われる政府の各種審議会について、単産・地方組織、0Bの皆さんの協力もえて全労連推薦名簿を作成して、政策活動とともにとりくみを強めていきたい。

 国鉄闘争について、建交労からは独自の闘争体制強化を含めてたたかいぬくという決意表明があった。心から歓迎する。

 労働法制改悪反対連絡会はいま約半数にあるが、全都道府県に設置をとの意見については補強したい。

【国民諸要求実現のたたかい】
 医療や年金、保育や介護などの問題、あるいは環境、防災、ゴミ問題などを含めて多くの発言があった。

 日本医労連が医療改悪反対の国会闘争で、公明党を除く123人の紹介議員の確保したという経験は、日本で唯一の医療産別の真価を発揮したたたかいとして敬意を表する。

 また、指摘されたように、7月23日に政府の総合規制改革会議が小泉首相に提出した中間とりまとめは、規制改革特区構想など財界が強く要求している規制緩和の特急便とも言うべき内容や、医療や福祉への株式会社の全面参入をねらう内容となっており、これに対する全労連の方針を早急に具体化していきたい。

 最低保障年金の確立にむけた運動を補強せよの意見があった。リストラによる失職で厚生年金加入者は48万人減、国民年金は12万人増。厚生年金の平均月額は17万6千円だが国民年金は約5万円、3万円以下の人も10人に1人いる。また、国民年金保険料の未納者が264万人、未加入者99万人、免除者が443万人とまさに年金の空洞化が起きている。財源がないのかと言えば、厚生年金は3兆5千億円、国民年金は5千億円の単年度収支残があり、他の年金を含む積立金は193兆円にのぼる。最低保障年金、基礎年金の国庫負担を二分の一になど年金政策と方針の補強をしたい。

 既存の組合を定年でリタイアした場合に自動的に年金者組合に入るシステムをとの意見については、そういう方向で単産や地方組織に努力してもらうという補強にしたい。

【平和と民主主義】
 有事法制反対のたたかい、平和と民主主義、政治革新、教育の課題での実践的発言があり感銘を受けた。有事法制反対の先頭に立った全教をはじめ、皆さんの奮闘に敬意を表したい。秋の臨時国家にむけていっそう共同の輪を広げて、戦争反対、有事法制の息の根を止めるたたかいに全力をあげたい。

 9月1日投票の長野県知事選挙については、長野県労連と相談し必要な全国的対応をはかりたい。

 教育基本法の見直し・改悪に反対するたたかいへの全労働者参加が強調された。方針も全労働者の課題にすることを提案しており、応えてとりくみたい。

【組織の拡大・強化】
 総対話と共同、組織拡大、地域労連の結成と活動等についても多くの発言があった。
 決して十分でない体制のなかでしっかりとした学習・討論を土台に、すべての労働者・住民を視野に入れた対話と共同にとりくみ、全国の教訓にもなる運動を創り出してきた奮闘に敬意を表したい。

 単組の力量引き上げが大事と指摘され、また職場の労使関係を新しい発展方向に導く活動のあり方についての感銘深い発言があった。京都の合同繊維労組と全労連繊維の組織合同についての報告、熊本で近く私教連の加盟を実現するとの表明、国公関連一般労組構想などの報告がされた。

 労働組合が常に自己改革、脱皮することに勇気をもって挑戦しながら、情勢の求める、そして労働者の期待する組織力量を強化していくことは、今日の労働運動に課せられた最大課題だ。指摘された系統的な教育・学習体系の確立とあわせていっそう努力したい。

 女性部から、男女共同参画問題について、労働組合自体の具体的計画策定と実践の重要性が訴えられた。かけ声だけではなく、具体的な計画を立てて、2005年までに女性の役員を全体の30%に高めていく目標にむかってお互いに努力したい。

 また、青年活動家の育成はまさに緊急課題だ。青年たちが頑張って活動していることにも敬意を表したい。議案で青年のことが5行しかないということについては、青年部は全労連規約30条にもとづく補助組織であり、青年部の自主性を尊重しているものだ。オルグに青年を配置ということも強めたい。

 ILO問題、国際活動については、今日のグローバル化のもとで国際連帯活動が重要なことは言うまでもない。国際活動には語学力が不可欠であり、そうした対策を含めていっそうとりくみを強めたい。

【組織拡大推進基金】
 20人以上の集中討論がされた。積極的な討論に感謝する。慎重論もたくさん出されたが、その多くも基金創設に基本的に賛成の立場から、その討議と決定のプロセス、具体的内容についての補強やさらなる検討を求めるものであった。

 言うまでもないが、この基金創設は、全労連のために単産・地方組織が金を出す、全労連が自らの自己目的のために財政負担をお願いするというような狭い関係、話ではない。この基金によって楽になる組織はないし、楽になる活動家は一人もいない。

 膨大な未組織労働者のために、パート、臨時、不安定雇用労働者のために、374万人を数える失業者のために、自ら自己犠牲を払って連帯の手を差し伸べようではないかという、単産も地方組織も全労連も、さらなる苦労が求められる活動への挑戦だ。それが日本労働運動の未来を切り開く道であるし、日本社会の未来、政治の民主的転換にむけても、唯一と言っていいかも知れない、われわれの選択すべき道であると確信する。そういう視点と決意で提案している。

 同時に、財政や組織に関わる提案であるので組織間の合意を前提にしなければ、いくら崇高な理想を並べても実行に移せないことも事実だ。その点で、提案のプロセスが十分であったかと言えば、昨年8月から1年間で具体的な提起になっていることを含めて、保留や慎重論が出るのもある意味では納得できる。急がば回れということわざもあるように、組織間の十分な合意が必要であることは当然だ。

 しかし一方で、目の前で進行している今日の事態は、この基金の創設が一刻も猶予できないような情勢にあることも現実の姿だ。

 発言があったように、まず組織拡大推進基金という制度の発足を確認する、そして、走りながらその具体的内容を知恵を出しあってよりよいものにしていく、そういう観点に立つことが必要だと考える。

 そこで、本大会では、基金を創設すること、「組織拡大推進基金は、(1)全労連の一般会計からの繰入金、(2)『組織拡大推進1億円カンパ』によって確立する。(3)あわせて、『基金』の恒常的な財源確保のために単産と地方組織からの『特別会費』などを検討する」ことを決定し、「その具体化については、大会後に基金設立準備会(単産、地方組織および幹事会代表によって構成)を設置して検討し、2003年1月に開催する第32回評議員会に予備提案する」と、議案を修正提案して採決に付したい。

 本大会は、国会情勢が緊迫しているもとで開催された。全労連運動にはまだまだ不十分さも弱点も多々ある。しかし、この12年間のたたかいでわれわれは、もし全労連なかりせば、という陣地を築いてきたこともたしかだ。重ねて、全単産・地方組織の大同団結と同志的連帯、本大会で提案した21世紀初頭の目標と展望にむかっての着実な到達点を築くこと、あらゆる社会勢力との国民的対話を進めること、ナショナルセンターの機能強化をはかること、この方向にむかって全労連のいっそうの前進に奮闘いただくこと、議案への賛意をお願いし総括答弁とする。

2002年7月26日          
全国労働組合総連合第20回定期大会




| TOP | BACK |