2000年〜2001年度運動方針(案)

【第1章】今大会をめぐる情勢の特徴

1.経済グローバル化と財界の21世紀戦略

 (1)21世紀は、はげしいグローバリゼーション(経済の地球規模化)のなかではじまる。7月2日に閉幕した国連特別総会は多国籍企業の社会的責任に言及し、「現在約6万の企業が世界の輸出の3分の1を占め、1998年にはトップ5社が最も貧しい国の国内総生産(GDP)全体の倍以上の年間利益を得た」と指摘。グローバリゼーションが繁栄と同時に、貧富の格差や失業の増大、財政危機など深刻な課題をひろげていることを明らかにした。そして21世紀には、多国籍企業の行動にたいする力強い影響力(政府による規制、消費者の圧力、市民社会の行動)が必要であることを強調している。
 (2)「IT(情報技術)革命」という言葉が、新聞紙上やテレビなどでさかんに取り上げられ、日本政府も「IT革命が経済再生のカギ」だと強調している。インターネットの急速な普及は、世界中に猛威をふるった「I LOVE YOU」ウィルスやハッカーによる官公庁のホームページの破壊、個人情報やプライバシーの侵害などの問題をもひきおこしている。「IT革命」の先頭をはしるアメリカは、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの英語圏5カ国によって通信傍受・情報収集システム機関(暗号名エシュロン)を編成、これによってすべての情報を盗聴・中継・操作し、各国政府や企業の交わす軍事情報、外交情報、ビジネス情報を掌握しているといわれている。
 (3)こうしたもとで、国境をこえた地球上のあらゆる地域にアメリカを中心とする多国籍企業が進出し、さらなる利潤を追求するための賃金破壊、雇用破壊の横暴をくりかえしている。しかし、「IT革命」に支えられたアメリカの「好景気」・バブル経済はいずれ破綻し、世界と日本経済に深刻なリアクションをおよぼすことが必至である。また、経済グローバル化のもとでは貧富の格差の拡大、地球環境の破壊が避けられず、すでに大量の失業問題が世界中で深刻化している。そのことが社会不安と紛争を拡大している。
 (4)日本では財界の「21世紀戦略」にもとづいて、「市場万能論」によるあらゆる分野の規制緩和がすすめられ、労働者と国民の生活を根底から破壊している。職場では、終身雇用制や年功序列賃金制の崩壊とともに労働者の個別的解雇、正規職員の臨時・パート・派遣など不安定雇用労働者への置き換え、賃金の切り下げが進行している。また、企業合併・会社分割・子会社化などによって、日本の上場企業3289社の従業員数は4年間で46万人も減少した。こうした大企業のリストラ・「合理化」が、労働法制の改悪、産業再生法・会社分割法など政府の全面支援のもとで強行されているのが特徴である。
 (5)財界・大企業の21世紀戦略は、日本農業と中小企業を根底から破壊している。中小企業は従業員数では労働者全体の約8割、経済活動の規模でも約6割を占め、日本経済の主役といえる比重をもっている。ところが、歴代の自民党政府は大企業には財政・金融の力を総動員して支援してきた一方で、中小・下請け企業にたいしては大企業の下支えの役割をおしつけるだけで何の対策もとっていない。日本農業は、穀物、野菜、果実、肉などのほとんどを外国農産物に明け渡し、100%の自給率を誇ってきた米もウルグアイラウンド合意によるミニマムアクセスの受け入れ・関税化で危機にさらされ、食料自給率は1960年の79%から41%にまで低下している。

2.歴史の歯車を逆回転させる「日本改造」計画

 (1)「日本は天皇中心の神の国」といい、戦前の軍国主義に何ら反省のない森首相の態度は、世界のマスコミからも「第二次世界大戦の亡霊(ロサンゼルスタイムズ)」「戦前の不愉快なイデオロギー(ルモンド)」などときびしく批判されている。この森首相をかばいだてする「自公保」連立与党は、彼らが戦争法を制定させ、日の丸・君が代法制化や盗聴法を強行し、憲法調査会の設置によって憲法の改悪をたくらんでいることでも明らかなように、日本を「戦争をしない国」からふたたび「戦争する国」へ地ならしをしようとする反動的な勢力であり、歴史の歯車を逆回転させる危険な政権である。
 (2)自公保政権は、行きづまった支配体制を打開しようとリストラ推進、農業破壊、消費税の大増税、学校への競争原理の導入、社会保障の改悪、中央省庁・自治体再編などの「日本改造計画」をおしすすめている。こうした反動的な政策が、政・官・財ゆ着と道徳的堕落をともなって進行しており、「利潤第一主義のどこが悪い」「貧富の格差は当然だ」「国際競争力をつけるためにもっと人員整理すべきだ」「他国を攻撃できる軍隊をもつのは当たり前」などの言動を英雄気取りでおこなっている。公約違反や二枚舌は朝飯前、贈収賄、横領、脱税、選挙違反、セクハラなどの犯罪が明らかになっても責任をとろうともせず、私腹を肥やし大企業の利益を増やすことだけに血道をあげている。
 (3)こうしたもとでおこなわれた6月25日投票の総選挙で、政権与党は自民党が38、公明党が11、保守党が11、改革クラブが5、あわせて65議席を後退させた。民意を反映しない小選挙区制度によって辛うじて国会の過半数を維持したが、自公保政権と自民党政治への国民のきびしい審判が下されたことを示すものである。野党では、民主党が躍進し自由党、社民党も議席を伸ばしたが、日本共産党は政権与党による未曾有の反共謀略宣伝が全国的に展開されるきびしい条件のもとで後退した。

3.国民生活を破壊する社会保障、行財政、教育などの改悪

 (1)戦後の労働者のたたかいによって築いてきた年金、医療、福祉、失業給付などの社会保障が大幅に削りとられている。政府は、憲法25条に定められた国の責任を放棄し、社会保障に「自助・共助」の理念をもちこみ、国庫負担を大幅に削減してきた。健保本人10割給付の解体、老人医療費の有料化、年金給付の削減などの一方で、社会保険料の引き上げ、消費税の導入など国民の負担をあいついで増大させている。さらに政府は、「社会保障構造改革」にそって医療・年金などの総改悪を準備し、財界は4兆円市場である医療・福祉分野への進出をねらい、政府にいっそうの規制緩和を求めている。
 (2)政府は、財政危機を口実に社会保障を切りすてている。確かに日本社会は、少子化や雇用破壊による医療・年金の加入者減が社会保険制度の根幹をゆるがし、国と地方をあわせて650兆円におよぶ借金をかかえている。しかし、その原因は「公共事業50兆円、社会保障費20兆円」の逆立ちした財政構造にある。大企業・大銀行にはリストラ支援の税制措置、公的資金の投入を繰り返し、国民には消費税の引き上げ、社会保障の切りすてで負担を強要する悪政が、不況をいっそう深刻化させ税収の落ち込みを加速させている。財政構造の根本的転換こそが生活再建と財政再建を両立させる道である。
 (3)自公保政権は、省庁再編・独立行政法人化などによって国家公務員を大幅に削減し、本来公的部門が担うべき行政サービスを切りすて、国家行政の役割を外交、防衛などに集中しようとしている。その一方で、公務員の削減対象から26万人の自衛隊員を除外する軍事優先の国づくりをすすめるとともに、国と地方で650兆円にもおよぶ財政赤字があるにもかかわらず、「苫小牧東部開発」「長良川河口堰」など目的を失っても建設を強行し、利用されないのに増設工事をおこなうムダな公共事業を続けている。
 (4)政府・財界は、「教育が日本の将来を決める」としながら、「教師・学校間に競争原理を導入し創意工夫と競いあう環境づくり」を強調、管理と競争で子どもをがんじがらめに縛りつける教育政策を推進している。文部省が2002年度から実施する新学習指導要領は、子どもの差別と選別の強化、日の丸・君が代法制化、「新国家主義」教育の強化など、財界の利益にそった教育の方向を露骨にうちだしている。また、森内閣は「教育改革国民会議」の設置、教育基本法の改悪、教職員への人事考課制度の導入など、教育にたいする国家統制を強化する反動的「教育改革」を推進している。

4.労働者・国民のたたかいの前進と共同の発展

 (1)戦後最悪の雇用・生活破壊の進行の一方で、労働組合のたたかいが前進していることも情勢の重要な特徴である。人権侵害と賃金差別を撤廃させ、今後とも憲法と基本的人権を尊重することを誓わせた関西電力争議の勝利、女性臨時社員の均等待遇の貴重な到達点を築いた丸子警報器の勝利、労働者を隔離部屋に閉じ込め退職をせまるセガ・エンタープライズの人権侵害を国民世論によって廃止させたことなどは、いかなる凶暴な大企業の攻撃であっても労働者・国民の共同で打ち破ることができることを実証している。
 (2)労働者と国民の対話と共同も、新たな前進局面をきりひらいている。99年春闘では、労働法制の改悪に反対する全労連と連合の共同、戦争法に反対する陸・海・空・港湾労働者の共同、盗聴法や「日の丸」「君が代」法制化に反対する広範な労働組合・国民の共同が前進した。また2000年春闘では、年金改悪反対をかかげて全労連と連合が数次にわたる国会座り込み行動を展開、民主、共産、社民の野党の国会内での共同と結合して自自公政権を追いつめた。さらに、解雇規制や労働者保護法の制定を求めて、全労連、連合、全労協が同時に署名運動を展開するなど、新たな局面と到達点をつくりだしている。
 (3)終身雇用制や年功型序列賃金の崩壊のもとで、労働者の団結の障害となってきた企業第一主義や特定政党支持路線をゆさぶる変化が生まれている。また行政においても、地方労連に結集する組合員を組織人員としてカウントせず、全労連組織人員を「100万人以下」におさえ込んできた政府は、99年12月に集計方法を一部改善し、全労連組織人員を106万1千人と公表した。さらに、2000年に開催された第88回ILO総会の日本労働者代表団の一員に全労連を加えた。こうした情勢の変化に確信をもち、すべての労働者・労働組合との共同をひろげることが求められる。

<<目次