【談話】

労働時間法制の破壊、解雇の金銭解決制度などの導入を狙った労働条件分科会の「検討の視点」は容認できない

2006年4月18日
 全国労働組合総連合
 事務局長 坂内三夫


 去る4月11日、第54回労働政策審議会労働条件分科会が開催され、「労働契約法及び労働時間法制に係る検討の視点」という文書が提案された。労働条件分科会は、労働契約法制に関する審議を昨年10月から今年2月までに10回行なってきた。この間の審議では、法制度づくりに踏み込んだ議論はなされず、「労働関係の実態」についての意見交換が中心とされてきた。「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」報告にそった議論は、全労連をはじめ、弁護士団体なども意見書・要請書をとおして強く批判し、また、分科会の場で労働側委員も「あくまでも学者のまとめであり議論の叩き台とはしない」と主張、それを認めさせたために、建前上は「白紙からの議論」をすることとなったのである。

 ところが、今回、提示された「検討の視点」は「研究会報告」の重要ポイントはすべて盛り込まれたダイジェスト版となっており、「研究会報告はベースにしない」という確認事項が事実上反故にされた。全労連は分科会に対して、労働契約法の当事者となる労働者の実態資料を提出し、議論への反映を要請してきたが、まったく生かされることがなかったことに憤りを持ち、「研究会報告」の復活に強く抗議するものである。

 「検討の視点」は「労働契約法制」と「労働時間法制」のふたつで構成されている。重要な問題点として「労働契約法制」では (1) 就業規則の周知、変更に過半数組合の合意があれば合理性ありと推定。(2)過半数組合がない事業場において、労使委員会の設置の促進 (3)雇用継続型契約変更制度 (4) 解雇の金銭解決制度 (5) 有期労働契約の始期及び終期の明示、契約更新の有無の明示等。

 「労働時間法制」では「自律的労働時間制度の創設」として、現行労基法の労働時間規制の適用除外を拡大し、労働時間法制を骨抜きにしようとしている。

 分科会議論では財界代表が「解雇の金銭解決制度と労働時間制度(適用除外の拡大)」は実現してもらいたいと発言、その態度を鮮明にしている。

 厚生労働省は今後のスケジュールについて、あと4〜5回の議論で7月下旬には「中間とりまとめ」を行いたいとしているが、全労連はその強硬な分科会進行に抗議し、充分な議論時間の確保を強く求めるものである。

 全労連は、今、必要なものは労働者の雇用安定を図る「解雇規制の法制化」「有期労働契約の規制」であり、ますます増大する過労死、過労自殺、メンタル疾患への有効な対策としての労働時間規制の強化であると考える。これ以上の労働法制の規制緩和、働くルールの破壊を許さないため、すべての働く人々の課題としての運動へ押し上げる決意をあらためて表明する。