【談話】

厚国の責任を曖昧にしたままでの「幕引き」を許さない
―「アスベスト新法」の成立にあたって(談話)―

2006年2月3日 全国労働組合総連合
                          事務局長   坂内三夫


「石綿による健康被害の救済に関する法律」(いわゆるアスベスト新法)およびこれに関連する大気汚染防止法、建築基準法、廃棄物処理法、地方財政法の改正案が本日の参議院本会議で自民・公明与党の賛成多数により可決成立した。

全労連は「あやまれ、つぐなえ、なくせ」を合言葉に、国と石綿関連大企業の責任で、すべての被害者や遺族が継続して生活を維持できる健康被害補償制度の確立、アスベストにばく露した住民などの健康管理制度の確立、被害の防止対策の拡充など徹底した対策をとるよう求め、多くの団体とも協力・共同して運動に取組んできた。

にもかかわらず本日成立した法律は、こうした労働者・国民の声に背を向け、行政の不作為を放置し、関連大企業を免罪し、被害の一部だけを救済する内容となっており強く抗議するものである。

政府は、アスベスト新法で「すきまなく被害者を救済する」としてきたが、成立した法律はアスベストによる疾病から石綿肺、良性石綿胸水、びまん性胸膜肥厚を除外し中皮腫と肺がんだけに限定指定していること、特別遺族弔慰金を280万円、患者の療養手当を月10万円とするなど労災補償制度と比較しても著しく低い給付水準と限られた救済制度になっていること、労災補償の時効による制限など「すきまだらけの救済」であり、極めて不十分かつ不公正なものとなっている。

アスベストは、ヨーロッパ各国ではすでに80年代から輸入、製造、吹きつけ作業が禁止され、その危険性が早くから指摘されてきたにもかかわらず日本政府は実効ある規制措置をとらず、国際的にみても10~20年も遅れた対応が被害を拡大し、多くの犠牲者を生み出し日本社会を大きな不安に陥れてきた。アスベストの被害は数十年にわたって続くのであり、我々は引続き国の責任を明確にさせ、抜本改善を求めていく。また法制定にあたっては、「国民リスクの発見に政府一丸となって取組むこと」「健康相談・診断の充実をはかること」「指定疾病については中皮腫、肺がん以外の疾病についても被害の実態の把握につとめ必要に応じて対象にくわえること」などの参議院付帯決議も盛込まれた。

法律が成立したもとで、付帯決議の具体化をはじめまた新たな闘いの強化が求められている。疾病認定範囲を拡大する取組み、相談・調査活動などで被害の実相を全面的につかみ、労災申請など被害者を全面的に救済する活動、アスベスト使用建物の解体および廃棄物処理作業とその費用負担、処理作業労働者の安全と住民の予防問題など、粘り強く長期の闘いが必要である。全労連はアスベストを全面禁止し、安全な社会を実現するために引続き職場・地域から全力をあげるものである。

以 上