【談話】

労働安全衛生法等「改正」案の厚生労働委員会採択にあたって

2005年10月14日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内三夫


 本日、衆議院厚生労働委員会で労働安全衛生法等の一部を「改正」する法律案が可決された。

 今回の「改正」案は労働安全衛生法で事業主に義務づけられようとした「医師の面接」は、「本人の申し出」および「月100時間以上の残業」等があってはじめて医師の面接が受けられるというもので、過労死・過労自殺予防対策とはならないこと、また「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」を廃止し長時間労働を野放しにしかねないなど重大な問題を含んでおり、容認しがたい。

全労連は、前国会から改悪部分に反対するだけでなく「少なくとも月45時間以上の残業で医師の面接を義務化する」などの改善要求も掲げ、真に過労死・過労自殺を予防し働くもののいのちと健康を守る上で実効ある法律とするための運動を呼びかけた。いのちと健康を守る全国センター、全国過労死を考える家族の会などとともに国会議員との懇談会、厚生労働委員を中心にした議員要請行動、ハガキ要請運動、厚生労働省交渉や各県での労働局交渉など、積極的に運動を進めてきた。その結果、前国会で3月に上程されたにもかかわらず7月まで厚生労働委員会での審議が行われなかったことが示すように、審議入りを大幅に遅れさせ、55日という大幅な会期延長にもかかわらず廃案に追い込んだ。しかし、総選挙後の国会は与党が議席の三分の二をしめるという状況で、本法案もわずか6時間で審議終了、無修正で採決に付されるという事態に至った。

 日本経団連など財界は、JR西日本福知山線の脱線転覆事故やアスベストによる健康被害が社会問題になっているにもかかわらず、事業主の安全配慮義務、健康配慮義務を後退させる意図をすてていない。また労働基準法による労働時間規制を受けない労働者を作り出すホワイトカラー・エグゼンプションの制度化など、財界、政府は長時間労働をさらに野放しにしようとしているが、これらは過労死・過労自殺を増やすものと言わざるを得ない。労働安全衛生法等の一部「改正」法案はこの流れにそったものであり、労働者の健康と命を脅かすもので、法案採決に断固抗議する。

 今後は参議院に場面を移しての審議となるが、充分な審議を尽くし、従来の過重労働対策を後退させない実効ある防止対策が確立されるよう強く求めるものである。

以上