【談話】

公務員給与改悪の閣議決定に抗議する

2005年9月28日
全国労働組合総連合
坂内三夫事務局長談話


  1. 9月28日、政府は給与関係閣僚会議および閣議において、平成17年度の一般職国家公務員の給与改定と、来年度以降の給与構造改革実施などを決定した。本年度の国家公務員給与については、人事院勧告どおり年間給与を平均0.1%(約4000円)引き下げるほか、平成18年度以降の総人件費削減に資するべく給与構造を見直すとして、俸給水準の4.8%引き下げ、地場賃金の反映、年功的給与上昇の抑制、勤務実績の給与への反映等の措置をとることとした。ようやく上昇に転じはじめた民間春闘に逆行した公務員賃下げを、不当にも4月に遡って「不利益遡及」させるばかりか、民間企業で失敗山積の「勤務実績反映の給与制度」の導入を進める今回の閣議決定に対し、全労連は断固抗議するものである。

  2. とりわけ「給与構造の改革」は、民間賃金相場が最も低い地域にあわせた俸給表全体の引き下げや、新たな評価制度がないままの「勤務実績反映の給与制度」導入、中高年いじめの「給与カーブのフラット化」など、多くの問題がある。50年ぶりと言われるほどの制度大改定をするなら、政府はまず、公務員労働者の労働基本権を回復し、労使関係を確立した上で使用者責任をはたし、労働組合との十分な協議をつくすことが必要である。ところが政府は、そうした立場に立つどころか、労働者不在で財界の主張を丸呑みする経済財政諮問会議の意向を受け、人事院勧告にあった一時金0.05ヶ月の上積みすら値切ろうとした。最終的にはこの措置は断念したとはいえ、遺憾の意を表明せざるをえない。

  3. また、今回の閣議決定では、人勧完全実施に加え、さらなる総人件費削減のための人件費改革「基本指針」を秋までに策定し、以下の諸措置を講ずるとしている。それは、(1)地方支分部局の整理、民間委託等による行政合理化、定員純減目標の策定と実施、(2)地場賃金反映のための官民給与比較方法の検討、(3)退職手当の支給率カーブのフラット化等の制度見直し、(4)独立行政法人の整理縮小・民営化と給与「適正化」、特殊法人の定員削減、(5)地方公共団体の定員純減、人件費増の施策の抑制、(6)地方公務員の給与水準「適正化」と構造改革、地場賃金の反映等である。これらの措置は、国民に対する国の役割や責任を放棄し、公務公共サービスを市場に切り出して低賃金労働に置きかえることで大企業の儲け口をつくりだそうとするものである。これでは質の高い公共サービスを日本の国民は享受できなくなる。

  4. 政府は安易に業務と定数の削減をいうが、日本の公務員は人口1000人当たり35.1人で、先進諸国中最も少ない。国が給与を支払う国家公務員65万人余りのうち、4割は自衛官が占め、国民生活に密着した多くの業務は今でも人手不足である。他方で公務員攻撃の的とされている郵政公社職員には、1円の税金も使われていない。財政事情を理由とした財界・政府の公務員人件費・定数削減論は的外れである。さらに、小泉構造改革路線で打ち出されている行政リストラによる支出削減、社会保障改悪、庶民増税等などの施策を、憲法改悪の動きとあわせてみれば、結局、軍事大国化のための財政基盤確立という狙いがみえてくる。その危険な路線を転換し、国民経済の健全な発展の上に財政再建をはかり、平和で安心できる暮らしを国民に提供するため、アメリカ追随の軍拡・覇権主義からの脱却を強く求めるものである。

  5. そもそも景気回復が言われながらも、政府の歳入が増えず、財政が厳しいのは、一部大企業が史上最高の莫大な利益をあげながらもその富を独占し、労働者にも下請関連企業にも還元しないばかりか、法人税減税の恩恵で国庫への貢献度を希薄化させているからである。法人税減税は「恒久的減税法」として、定率減税、所得税最高税率引き下げと同時に実施されたが、今、政府は庶民に痛みの定率減税だけを廃止し、法人税減税は継続しようとしている。強者に甘く、弱者に厳しい政治姿勢こそが、この国の財政バランスを狂わせていることに、政治は気づくべきである。

  6. 特別国会で小泉首相は、郵政民営化関連法の成立を突破口に、サラリーマン大増税や消費税増税、医療制度改悪に手をつけ、さらには「数の力」を借りた「憲法調査特別委員会」設置の強行で、改憲への道筋をつけようとしている。全労連は、「骨太の方針2005」にもとづく労働者・国民への痛み押し付けの小泉構造改革、公共サービスの営利企業化・商品化によって国民生活を切り捨てる攻撃と対決し、全労働者の団結と決起、国民との共同の拡大をよびかけ、たたかいを強める決意である。
以上