【談話】

日本ヒルトンホテル事件
「変更解約告知」を容認した最高裁の不当な決定を許さず、必ず争議勝利を

2005年5月26日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


 日本ヒルトン事件について、最高裁は2005年5月16日付けで、東京高裁判決に対する上告及び上告受理申立について、「上告理由に該当しない」と上告を棄却した。

 日本ヒルトンホテル事件は、月額4〜6万円の賃下げの通知に対し、労働者及び労働組合は「争う権利は放棄しないが、会社の示した労働条件の下で就労することを承諾する」という異議留保付承諾の意思表示をしたものの、ヒルトンホテルは「それは不同意と同じ」として解雇を強行したものであり、このような解雇が認められるのか否かを争っていた。2002年3月11日、東京地裁判決では、「労働条件の不利益変更に同意しないことを理由とした解雇が許されるとするならば、経営が必要と判断した場合にはいつでも不利益となる労働条件の変更を一方的に行えることとなり、社会通念に照らして認められない」と認定、解雇についても無効とする画期的な判決を下した。ところが、東京高裁の同年11月26日の判決は、東京地裁判決を全面的に覆し「異議を唱える労働者との雇用契約を義務づけることは使用者にとって酷であり、解雇は有効である」とした。この判決は、労働者が労働組合に結集し、団結して労使対等の原則のもとに、使用者と交渉して労働条件改善を図っていくことを、実質的に否定した異常な判決であった。

 そして、このような異常な高裁判決に対して、最高裁が口頭弁論も開かず上告を棄却したことは、憲法でも保障されている団結権・団体交渉権などの労働者及び労働組合の基本的権利を否定するものであり、断じて容認できない。

 厚生労働省に設置された「労働契約法制の在り方に関する研究会」は4月13日、「中間とりまとめ」を発表し、あたらしい法律の制定を視野に、労働契約全般の在り方についての方向性を示した。そこでは、「解雇の金銭解決制度」、「変更解約告知による労働条件不利益変更」、ホワイトカラーの労働時間法制の適用除外など、いっそうリストラ・解雇を促進しかねない危険な内容を含ませている。日本ヒルトンホテル事件の最高裁上告棄却はこのような流れに迎合するものとの批判は免れない。

 今回の最高裁判断は一方で労働法制への全面攻撃がねらわれている今、その与える影響の大きさを考えるとき、改めて強い危惧を感じる。

全労連は、労働法制の全面的改悪攻撃を許さない闘争体制を確立し、早急に運動を広げる決意である。そのことがヒルトン争議の解決に結びつくものと確信する。非正規労働者のみならず、すべての労働者の雇用と賃金、権利を守り、働くルールを確立するために引き続きいっそう奮闘するものである。