【談話】

労働者保護を後退させる「労働安全衛生法」「時短促進法」の改悪に反対する

2005年3月4日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


     本日、労働安全衛生法の一部改正、および「時短促進法」の一部改正法案が閣議決定された。この法律案には「労働安全衛生法」「労災保険法」「労災保険徴収法」「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法」の4つの法律の「改正」が一括されている。それぞれ別々の法律であり、重要な「改正」内容が含まれているものを、審議時間の短縮をはかるために一括審議する議会運営は問題である。個別法案として、議会での充分な審議を求めるものである。以下、それぞれの法案についての見解を述べる。

  1.  「労働安全衛生法」の一部改正案について

     法案では第1に「事業主の行うべき調査等」として、「事業主は、建築物、設備の作業等の危険性または有害性を調査し、その結果にもとづいて必要な措置を講じるようにつとめなければならない」とし、そして、そのような調査、必要な措置を講じている場合、インセンティブ措置として「機械等に係わる事前届出義務を免除する」というものである。事業主の自主的努力のみかえりとしてメリットを与えるというものである。第2に、製造業の元方事業主の講じるべき措置として、「元方が労働災害防止のために、労働者及び請負人労働者の作業管理者を指名しなければならない」としている。元下関係が重層化・複雑化するなかで、元請の現場の安全管理についての責任を明確にすることが急務となっているが、法案では元方の講じるべき措置が、作業間の連絡・調整の努力義務にとどまっている。建設業と同様、すべての事業場の安全管理と労災補償の元方責任を明確にすることが必要である。第3に過重労働・メンタルヘルスに関する対策である。法案では「厚生労働省令で定める要件に該当する労働者に対して、医師の面談指導を行うというものである。労政審の建議では「残業が100時間を超えた労働者のうち、本人の申し出のあったものに産業医の面談指導を行う」としており、厚生労働省令も同様の内容で具体化されると思われる。私たちは過労死・過労自殺を予防するため、少なくとも、残業を月45時間以上行った労働者に対して医師の面談指導を義務付けるべきと考える。

  2.  労働者災害補償保険法の一部「改正」案について

     法案では複数就業者の事業所間移動と単身赴任者の赴任先住居から帰省先住居への移動を通勤災害保護制度の適用対象とすることとなった。これは当然の措置であり、一歩前進といえる。しかし、複数就業者の給付基礎日額の算定方法は、移動先の事業所の賃金で算定されることとなった。すでに健康保険では、複数就業者の傷病手当の給付基礎日額は、複数事業所の賃金の合算で算定されている。休業補償の基礎日額は複数事業所の賃金の合算を要求する。

  3.  労働保険の保険料の徴収に関する法律の一部「改正」案について

     法案では「有期事業(建設等)のメリット制の上限を現行の35%から40%に引き上げる」となった。「メリット制」は個々の事業所での労災事故の多寡で保険料率が変わる制度で労災事故隠しの一因となっている。私たちは上限の引き上げに反対し、メリット制そのものの廃止を求める。

  4.  労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部「改正」案について

     この法律は06年3月31日までの時限立法であったが、この「改正」で法律名も「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」と改められる。法の目的も「事業主等による労働時間等の設定の改善にむけた自主的な努力を促進する」ものとなった。そして、事業主の責務では「業務の繁閑に応じた始業及び就業の時刻の設定、・・・・」と労働時間の弾力化を前提として「労使協議」による労働時間管理を推進しようとしている。また、「労働時間等の設定の改善」について、職場の衛生委員会等で審議し、労働者に意見を述べさせた場合、その決議を労使協定に代えることができるとしたなど、労働時間の決定を法律や行政の規制から、個別企業での労使間問題に委ねるという重大な方向転換をしている。
     違法な不払残業、長時間過重労働が横行する現在、時間短縮の数値目標をより明確に示し、より実効性の高い時短推進計画を策定するべきである。今回の法改正はその方向に逆行するものであり、容認することはできない。
     労働者の職場における安全対策、メンタルヘルス対策は長時間過密労働の解消と大きく係わっている。今日、職場における重大労災事故多発、過労死・過労自殺の増大、メンタルヘルスの悪化は企業の利益優先、市場原理優先主義による労働法制のあいつぐ規制緩和によってもたらされていることは明らかである。全労連は労働安全衛生法の実効ある改善、時短促進法の期限延長と強化を求めて引き続き運動を強めていく。