【談話】

2004年人事院勧告にあたって
−寒冷地手当改悪勧告と本俸水準引き下げ報告に抗議する−

2004年8月6日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


  1. 人事院は、本日、一般職国家公務員の給与改定に関する勧告および報告を行なった。勧告の内容は、(1)寒冷地手当の支給地域、支給額、支給方法を抜本的に見直す、(2)寒冷地手当の見直しを前提に官民比較をした場合、月例給の較差は0.01%と小さくなるため本俸の改定はなしとする、(3)ボーナスは民間の支給月数と均衡しているため4.4月に据え置く、などというものである。6年ぶりに年収ベースで前年水準を維持できたことは、今後の賃金闘争の上で大きな意味をもつものであり、我々のたたかいの反映と考える。しかしこの間、公務員の年収は5年連続して引き下げられ、特に昨年度は平均年収16.3万円もの下げ幅を強行されるなど、公務労働者の給与改善への要求には切実なものがある。景気回復基調のもと、民間夏季一時金が「過去最高」の支給状況を示しているなかでの、今回の「据え置き」勧告は、到底納得のできるものではない。
  2. とりわけ、寒冷地手当改悪については、公共サービス確保のために寒冷地・僻地で業務についている公務労働者の職務事情と生活実態を無視し、民間の支給実態のみを基準として見直しをするなど、道理を欠いた内容となっている。支給地域を、北海道及び北海道と同程度の気象条件にある地域とし、本州でこれまで支給されてきた市町村のうち4割強は切り捨て、さらに水準自体も4割もの引き下げをするという内容である。一定の激変緩和措置は講ずるというが、実施時期をいきなり本年からとするなど、強権的なやりかたといわざるを得ない。当該地域の労働者の切実な要求を無視した勧告に対し、全労連として強く抗議するものである。
  3. また、報告では「給与構造の基本的見直し」をするとして、地域給与に20%もの格差をつけつつ全体水準を引き下げ、本省重視の配分とし、能力・業績主義強化の「査定昇給」を導入するなど俸給構造の抜本的見直しを一方的に打ち出している。地域経済の立て直しが、国をあげての課題となっているときに、地域間経済格差を助長し、地場における官民賃下げの悪循環を招く方向性を示す人事院の情勢認識について疑問を抱かざるを得ない。また、能力や業績を短期間で報酬に結びつける賃金制度は、管理職に過重労働を生み、職場では仕事のノウハウの継承を途絶えさせ、チームワークを破壊するなど、民間企業で失敗例が続出している。見直しの動きがある制度まで民間準拠することのないよう、全労連として撤回を求めるものである。
  4. 多様な勤務形態に関する研究会の報告に基づく、育児・介護制度に関わる施策の拡充については、育児を行う職員の部分休業の取得期間の拡大、男性職員の育児参加促進策を検討するなど、「次世代育成支援」が重視されるなかで評価できる方向性が出されている。しかし、給与と定数の保障なしに、制度の趣旨がいかされることはない。労働組合との協議をもとに、職業生活と家庭生活の両立支援のための具体的な条件整備を進めることが求められる。
  5. この夏、全労連、国民春闘共闘、公務労組連絡会は連携し、人勧闘争と最賃闘争とを結合させ、公務・民間共同のたたかいを進めてきた。前段の最賃闘争では5次にわたる統一行動を、人勧闘争では2次・3波にわたる統一行動を実施し、職場・地域で、また霞ヶ関で多くの仲間たちが労働者の要求の声をあげ、道理ある勧告を求めてきた。こうした公務・民間一体の粘り強いたたかいが、6年連続の年収マイナスという事態を回避させ、寒冷地手当の改悪についても一定の譲歩をさせることにつながったと考える。
     全労連は、この夏の闘争をとおして、今後の賃金闘争の発展へとつながる一歩を踏み出せたことに大きな確信をもつものである。この確信と運動の実績をもとに、秋の臨時国会にむけた寒冷地手当法改悪反対の取り組み、確定闘争でのプラス回答の引き出し、05春闘における攻勢的な賃金闘争の構築に向け、全力をつくす決意である。あわせて、公務・民間労働者の賃金・労働条件のみならず、国民全体のいのちと暮らしを支える根本である現行憲法を守りぬくたたかいに力を注ぎ、すべての労働者・国民に運動への参加・協力を呼びかけるものである。

以上