【談話】

“検査漏れ”の無責任体制をあらため、全国の原発を総点検すべきである

関電美浜原発・死傷事故は、安全確保こそが最大の教訓

2004年8月19日
全国労働組合総連合
事務局長 坂内 三夫


  1.  8月9日午後、関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町、加圧水型軽水炉・82万6千キロワット)で、蒸気発生器の二次冷却水配管が破裂し高温蒸気がタービン建屋内に噴出して充満し、蒸気を浴びヤケドをおって4人の労働者が死亡、2人が重体・5人が重軽傷をだす重大事故が発生した。現に運転中の原発が、緊急停止するほどの事故で死者をだしたはじめての重大災害になったその要因に、破裂した配管が著しく磨耗していたにもかかわらず、1976年に営業運転を開始して以後28年間、一度も検査をしていなかったことが指摘されている。「二次冷却水は“放射能漏れ”に直結しない」との理由から、その安全確保責任をめぐって、“検査漏れ”をひきおこした関西電力や国・経済産業省原子力安全・保安院など原発の安全管理への無責任体制がうきぼりになっている。
     われわれは、この重大事故で死傷された大阪市天王寺区・木内計測の11名の従業員・労働者の方がたに、こころからの哀悼とお見舞いを申しあげる。同時に、日本原発史上、最多の死傷者をだす深刻な事態をひきおこした関西電力および政府・経済産業省当局の安全対策とその責任を厳しく問うものである。そして、なによりも真に“安全確保”を最優先に、事故原因の徹底究明と再発防止に万全を期すとともに、同機のような老朽原発をはじめとする全国の原発を総点検すべきことを、政府当局、関西電力ならびに原発関連企業につよく求めるものである。

  2.  99年に国内初の犠牲者をだし周辺住民にも被害を及ぼしたJCO原発臨界事故が発生し、02年には東京電力・原発損傷隠しが発覚し、さらに今年は国と事業者による使用済み核燃料直接処分費用の試算隠しが明らかになるなど、原子力行政への国民の不安と不信がひろがっている。こうした住民の不安や反対の声が高まっているにもかかわらず政府は、原発の危険を増大させるおそれのつよい“プルサーマル計画”(使用済み核燃料を再処理してとりだしたプルトニウムを、ウランと混ぜた混合酸化物「MOX」燃料に加工し原発で再利用する仕組み)を強行しようとしている。
     このような国民の安全を軽視する原発推進政策の固執・強行は、もはや許されるものではない。いまこそ原発の「安全神話」を一掃して、なによりも安全確保第一の原子力行政へ転換するよう、われわれはあらためてつよく要求するものである。